すっかり秋めいてまいりました。

このたび小社は28年にわたるジャニーズ問題(創業者ジャニー喜多川による未成年性虐待と事務所の横暴など)追及の〈集大成〉として『ジャニーズ帝国 60年の興亡』を刊行いたしました。

 

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』

本書は私たちにとって感慨深いものがあります。今から28年も前の1995年、ジャニーズ事務所から出版差し止めを申し立てられて以来、私たちは3度の出版差し止めにも屈せずジャニーズ問題を告発し続けてまいりました。

このかんのジャニーズ問題のヒートアップには驚くばかりですが、ずっと悲観的な想いでいたところ28年にわたる執念が実ったことだけは確かです。「蟻が象を倒すこともある」「針の一穴がダムを決壊させる」と嘯いてまいりましたが、現実のものとなりました。

現在、すべてと言っていいほどのマスメディアが日々ジャニーズ問題に狂奔していますが、「死人に口なし」で、なぜもっと早い時期、少なくとも『週刊文春』訴訟でジャニー喜多川の未成年性虐待が認定され最高裁で確定した時点からでも取り組むべきだったと思います。文春以前と以後、さらにジャニー喜多川が存命中と死後では、取材や記事の値打ちに天地雲泥の差があります。

毀誉褒貶はあるかと思いますが、まずは私たちの闘いの記録でもある本書をご覧になり、取材の参考にされたり、またご意見、ご批判などお寄せください。こういう記録書は他にはないことだけは確かであり、手前味噌ながら、これだけでも価値があると自負いたします。

まずは『ジャニーズ帝国 60年の興亡』刊行のご挨拶にて失礼いたします。

株式会社鹿砦社 
代表取締役
松岡利康

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

10月23日発売 鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315290/

広島県の湯崎英彦知事は広島カープがレギュラーシーズンで苦手としていたベイスターズを打倒したCSファーストステージ(14日、15日)で県内が盛り上がっていた10月13日から17日の日程で、フランスを訪問しました。ワインの即売会でカキや日本酒を売り込む、ということでした。

 

湯崎英彦広島県知事の2023年度外遊

それにしても、今年はやけに、知事はたくさん外国に行かれています。それもそのはずです。今回で6か所目の外遊だからです。

湯崎知事は、4月と8月に観光PRで台湾へ行かれています。また7月には友好連携先のハワイ、そしてNPT第一回準備会合のためウィーンへ。6月には英国に政務と公務を兼ねて訪問。そして、今回の訪仏に加え、今後、米国訪問も予定されているとのことです。

核兵器廃絶のためのNPT準備会合出席は、核兵器廃絶のためであって費用対効果を云々する性質のものではないでしょう。しかし、観光PRなり、商品のセールスに知事がわざわざ向かうことにどれだけの効果があるのでしょうか?今は、円安で渡航費も膨らんでいる折です。これまでに3000万円を使っています。

◆県民の声を聴かなくなった知事 外国ばかり行ってどうする?!

また、そもそも、知事は外務大臣ではありません。海外へ行く前に、知事として県民の声をもっと聴くことに時間を充てられたらいかがでしょうか? いま、湯崎知事の県政、そして知事が進める政策には、住民の声や社会的ニーズが全く反映されていないためにうまくいっていないのでは?と思われることがたくさんあります。
そもそも、知事は一期目(2009~2013)には【湯崎英彦の宝さがし】と銘打って、県内全市町を回って住民と対話を直接されていました。あのころの知事の産業政策にはそれなりに地に足についたものがあったように記憶しています。

また、福山市鞆の浦で地域を二分していた、埋め立て架橋問題では、賛成・反対両派の住民の対話集会を実施。『渋滞をなくす』という共通目標を達成するためにどうすればいいか、合意形成に務められました。

その結果、景観を壊す鞆の浦埋め立てではなく、山側にトンネルを掘って通過交通を捌く方向に落ち着いたのです。

筆者も、一期目にされたような対話重視の県政を期待して2009年の湯崎さんの最初の選挙では湯崎さんに一票を投じました。しかし、今となっては『湯崎英彦!俺の一票を返せ』とは言わぬが『打倒するしかない』という気持ちでいっぱいです。
以下に湯崎さんが早急に県民の声を聴くべき課題を目につくだけでも挙げます。

◆三原産廃問題、放置したままではカキにも日本酒にも打撃

 

原告団共同代表の岡田和樹様SNSより

三原市では湯崎知事が許可し、2022年秋から稼働を開始した本郷産廃処分場(JAB協同組合)から2023年6月以降、BODなどが基準値を上回る汚染水が流出。2023年10月現在も日中こそ流出は止まっていますが、早朝や夜間にはまだ出続けています。

周辺住民は田んぼに水を引くこともままならず、苦しんでいます。そして、この間、7月4日には、広島地裁は知事に対して産廃処分場への設置許可を取り消すよう命じています。しかし、知事は、控訴した上で、汚染水に何の実効性ある対策も取ろうとしないばかりか、住民たちの面会要請も無視しています。

知事! このまま汚染水が川や海に流れ込み続けば日本酒やカキにも悪影響が出ますよ?! 知事は、フランスに日本酒やカキの売り込みに行く前に、三原市民にお会いになり、現状把握をされるべきです。

 

湯崎知事が肝いりで進めている県病院

◆住民無視で暴走する県病院廃止

湯崎知事が肝いりで進めている県病院や中電病院、JR病院を廃止して新巨大病院を建設する構想。1300~1400億円かかるというのに試算根拠は不明です。そもそも、計画段階で県病院が地元から消えてしまう南区や、宇品港経由で県病院を利用してきた島しょ部の住民の意見を聞いた形跡もありません。一方的な説明会をしたうえで、補正予算案を知事に批判的な議員が少ないことをいいことにごり押ししました。

◆県庁から徒歩圏内でも課題山積

県庁から徒歩圏内でも課題は山積しています。県庁から北東へ徒歩ですぐの公立大学法人・叡啓大学も知事肝いり事業。入学者が定員割れするという惨状です。つくるだけつくっておいて、放置でいいのですか?きちんとチェックされないのですか?

高速道路5号線二葉山トンネル問題。県庁から歩いても30分程度の東区二葉の里がトンネルのスタート地点です。工期が2028年度まで延長する上、予算もまた30億円増額の1289億円に。シールドマシンも何度も壊れ、遅々として工事が進まず、工事現場の真上ではひび割れなどの被害も続いています。「住民を犠牲にして工事を進めることはない」と約束したのが湯崎知事でした。いったいどうなっているのですか?

また、県庁から徒歩圏内の小学校で、プールが壊れて、バスで他の学校へプールの授業を受けに行くという学校もあります。小学校は市教委の管轄とはいえ、財政支援などの面で県ができることもあるでしょう。

湯崎知事。フランスに行っている時間があるなら、県庁周辺を歩いて県民の声を聞かれたらいかがでしょうか?

◆県民をなめている湯崎知事・岸田総理から政治を取り戻すヒロシマ庶民革命を!

広島県選出の岸田総理についても、「外遊が多い一方で、庶民の声を全く聴かないのでは?」と、全国の皆様から批判が出ています。大変悔しいことです。広島県民が知事や総理と言った政治家に完全に舐められています。広島県民の手に政治を取り戻すことが今こそ大事ではないでしょうか?

筆者は我こそは庶民派広島県知事に、我こそは庶民派広島県議に、という方のご連絡をお待ちしております。ヒロシマ庶民革命で知事から広島の政治・行政をあなたの手に取りもどしましょう!

連絡先 090-3171-4437、hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

鹿砦社にとっても、私にとっても最大の事件だった、2005年の「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧事件の主任弁護人を務めていただいた中道武美(なかみち・たけよし)弁護士が亡くなられました。慎んでご冥福をお祈りいたします。

『救援』10月号より

中道弁護士には、『タカラヅカおっかけマップ』出版差し止め事件(民事。1996年)にも代理人を務めていただきました。

中道弁護士は、1967年10・8羽田闘争で斃れた、かの山﨑博昭さんの高校(大阪・大手前高校)の1年後輩(先輩には東大全共闘代表の山本義隆さんがいます)ですが、当時の時代の空気もあってか、反権力の塊のような方でした。また、死刑廃止の活動にも積極的に関わられました。

「名誉毀損」弾圧後、なしくずし的に音信が途絶えていきました。最後にお会いしたのは2年ほど前でした。

このところ、身近にあった方、お世話になった方、先輩,後輩らの死が続き、いささか滅入っていたところでした。

ちなみに、あまり知られていませんが、かの橋下徹は中道弁護士の弟弁の関係にあり、親弁は、かつてはRG裁判など新左翼系の弁護を先頭になって担っていた樺島正法弁護士で、光市母子殺害事件では、弟弁の橋下が兄弁の中道弁護士ら弁護団に対し懲戒請求を呼びかけ(橋下自身は請求人にならず。却下)、これに怒った樺島弁護士が,今度は橋下を懲戒にかけ(業務停止2カ月)、さらに損賠賠償請求訴訟を提訴するといったこともありました。この件についてご関心のある方はご自身でお調べください。

中道弁護士もそうですが、今後私の歳と前後する世代の方々の死が続いていくものと思われます。直近で著名人としては谷村新司もそうですし、坂本龍一もそうですね。「しんどい、しんどい」と喘ぎながらも仕事に追われているだけで幸せと思わなければ罰があたります。死んだら仕事できないわけですから。合掌。

(松岡利康)

10月23日発売 尾﨑美代子『日本の冤罪』(鹿砦社)

本稿は2022年12月18日大阪市で行われた「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西発足31周年の集い」の記念講演「福島第一原発事故から11年 今 伝えたいこと」の講演データです。一部再構成した上で、前編、後編の2回に分けて掲載します。

 

◆はじめに

2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故から早くも11年の月日が過ぎ(講演当時)、福島市で妻と二人の避難生活です。当時62歳の私も74歳を迎えました。この11年という時間は、私の人生ではどう捉えたら良いのか思いもつきません。あまりにも人生を考える上で想像を超えるものがあり、予期せぬ人生の一コマですから、これまでの人生の7分の1を費やしてしまったことになります。

(2011年当時は)人生の区切りの60歳を迎え、シニアライフプランをもって農業に復帰し、時代に即応した新しい農家経営の改善に取り組んだばかりでした。何代にもわたって村民の手で培ってきた平和な美しい飯舘村は放射能汚染によって避難・追放となり、コミュニティは崩壊しました。村民は引裂かれ、暮らしの根底を崩壊され、恒常的に安定して暮らす生活権を喪失したのです。

◆事実上の強制避難、高かった初期被曝

 

事故後、計画的避難とはいえ事実は強制避難だった。人生をかけて作り上げてきたものが全て壊され、一からのやり直しを強いられました。

飯舘村民の避難は、避難指示が事故から一か月以上も遅れたことで、避難先が見つからずに長く高放射線量下の村内に居住していて確実に高い放射線被曝を被ったはずです。

しかし、避難に当たっては、スクリ-ニングもなされず、線量検査もされなかったのは何故なのか。国・県の災害対応のマニュアルには記されていたはずです。

11年を経過した今では計測も出来ないし、行動記録も曖昧になってきているから判定は難しいと言うことになるのでは納得がいきません。しっかりした回答が欲しい。

◆何百年も続く汚染と住民の苦悩~原発事故の現実を伝えるべき

飯舘村では村の80%の除染ができておらず、山も川も放射能汚染はそのままで、野山の恵みである山菜もキノコも後何百年と食べることも出来ないという。まだまだ住民は苦悩しながら生きていかなくてはならない。

必ず原発事故が起こればこうなるのだという、この現実を日本国民は知り、後々の代まで伝えるべきです。

今の飯舘村は、8割近くの人が避難先で暮らしているのは何故か。生業の目途が立たないばかりではなく、事故前のような暮らしが出来ないからです。国・県による外からの移住政策ばかりがアピ-ルされていて、既存の住民の生活再建施策が乏しいからであると感じています。

◆「風評」はまやかし、「放射能汚染は健康に影響せず安全」とどうして言えるのか

「風評」という言語は、政治・行政が作り上げた戯言で、多額の公費を費やして如何にも安全だとアピ-ルし、国民を安心させ黙らせようとするまやかしの手法、全く本末転倒です。被災地では放射能による長期的汚染の被害が実在しているのですから。

 

ましてや国も東電も事故の責任を取る姿勢もないし、原陪審のいう慰謝料等の賠償金を支払うことで済まそうとしているように取れる。

たばこの煙が健康に影響するとして行政罰が科されるのに、なぜ放射能汚染は健康に影響しない安全な物と言えるのか、私たち被災者には到底理解できない。

いくつかの裁判の例を見るに、司法の場でも明らかにされないのかと思うときに、このままいくと私たちは棄民にされるのではと危惧しています。(つづく)

▼菅野 哲(かんの ひろし)
1948年、戦後開拓入植者の長男として飯舘村で生まれる。福島県立相馬高校卒。家業の農業に従事後、飯舘村森林組合に就職。1969年、飯舘村役場に奉職。2009年、定年退職後、農業に復帰。2011年3月、原発事故により福島市に85歳の母と妻の家族3人で避難生活。2014年7月、長谷川健一団長と共に「原発被害糾弾 飯舘村民救済申立団」を立ち上げ、副団長として「申立の趣旨」文案にかかわり、組織化につとめる。2019年7月、「飯舘村民救済申立団」解散。現在は公益社団法人相馬広域シルバー人材センター理事長。報徳会相馬理事。主著に『〈全村避難〉を生きる:生存・生活権を破壊した福島第一原発「過酷」事故』(言叢社2020年)。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

◎鹿砦社HP http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000729

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆冤罪はきょうも続いている

 

尾﨑美代子『日本の冤罪』(鹿砦社)10月23日発売

警察に「逮捕する!」といわれ、手錠をかけられる。最近あるのかどうか知らないが「刑事ドラマ」は二世代ほど前には人気番組だった。しかしあの番組群は、警察権力に迎合し過ぎた。やりたい放題な拳銃の発砲や警察権力の過剰な暴力を英雄化・美化して視聴者の感覚を鈍化させる作用を担っていた。

そういったエンターテインメントで描かれる、警察の正義性や、苦闘、あるいはヒューマンドラマの裏面に「作り物」ではない現実として、冤罪は悲しい旋律を奏でながら現在進行形、きょうも続いている。

冤罪とは事件・事故の加害者ではないのに、まずは警察に加害者と決めつけられ、ほどなく、被疑者と呼称を変えられ(かつては「被疑者」とも呼ばれず氏名呼び捨てであった)、警察発表に従いマスコミが「こいつが犯人だ」、「こいつは劣悪非道な人間だ」と散々喧伝され、最悪の場合、無期懲役や死刑が言い渡された犠牲者を示す単語である。そこには司法の暴走・暴虐・組織防衛の力学が必ず働く。

◆著者は大阪市西成区の飲食店「はな」のママ

『日本の冤罪』著者の尾﨑美代子さんは、大阪市西成区に飲食店「はな」を経営する女性だ。西成といえば「釜ヶ崎」。「釜ヶ崎」はご存知の通り、日雇労働者が多く暮らす地域だ。著者は「どこにそんなエネルギーと発想が蓄えられているのか」と驚嘆させられる情熱の持ち主である。その情熱が『日本の冤罪』で二つ結実した。

一つ目は布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)と著者の対談だ。この対談はおそらく桜井さんが遺された最後のまとまった意見表明だろう。二つ目は冤罪事件解決、原発訴訟や福島原発事故被害者救済の裁判など広範な分野で最先頭に立ち、闘う井戸謙一弁護士からの寄稿「弱者に寄り添い 底辺の実相を伝える」である。桜井さん井戸弁護士お二人の力添えが『日本の冤罪』の価値をより高めていることは間違いない。

本書に推薦文を寄稿してくれた井戸謙一弁護士(左)と著者

◆16の事件の冤罪犠牲者たち

『日本の冤罪』には16の事件、18本の取材報告が収録されている。殺人事件から1万円の窃盗そして痴漢事件まで。「事件の軽重にかかわらず幅広く冤罪は作られる」ことを知るために、本書が有益であることを著者は意識したであろうか。さらにこれまで一度として報道されたことのない「京都俳優放火殺人事件」まで取材・執筆の幅が広がっていることが数ある冤罪関連書籍の中で本書を際立たせるのだ。読者は驚かれるかもしれないがと「京都俳優放火殺人事件」の冤罪犠牲者は現在も獄中に囚われたままだ。

著者の冤罪事件取材の方法は独特だ。対談した桜井さんや他の冤罪犠牲者から「こんな事件がある、冤罪だ」と紹介を受け、当該事件の冤罪犠牲者や、弁護士、関係者に取材に赴く(冤罪犠牲者が獄中に居れば手紙を書く)。多くの場合取材のきっかけに冤罪犠牲者の紹介や、要請があり、それが次の事件取材へと繋がる。

『日本の冤罪』筆者の主たる生業は執筆ではない。著者は20年続く飲食店「はな」の店主である。つまり著者は少なくとも「二足の草鞋」を履いているのであるが、それだけではない。「はな」はしばしば勉強会、講演、音楽ライブの会場として地域だけではなく全国から人が集まる場所として機能する。仕切るのはいつも著者、でも必ずたくさんの人が手伝ってくれるという。

冤罪の犯罪性を市井の視点から解き明かし、その射程を未だに誰もが触れぬ領域にまで広げていった。本書のエッセンスと価値はそこにある。

◆取材者の洞察力

 

布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)。本書収録の対談が桜井さんによる生前最後の意見表明となった

ひとつだけ『日本の冤罪』手に取る未来の読者に警告しておこう。冤罪取材は事実の確認作業が第一歩だが、その先にどんな恣意が隠されていたのかを洞察するのは取材者の洞察力に委ねられる。

さらには事件を文章化するにあたってはときに、凄惨な事件を描写しなければ全様を説明し尽くせない。冤罪を解き明かすには取材者が事件の全体像に踏み込む勇気が求められるわけだ。著者はどんな事件であっても全容を納得することなしには、文章を書いていない。冤罪の犯罪性同様、事件のむごたらしさも描かれていることを心して、読者は本書を手にしてほしい。

なお、著者は故桜井さんに「尾﨑さん、あの事件も書いてよ」と言われている冤罪事件をかなりの数抱えている。その取材が終わるまでは、桜井さんにお別れはできないという。ということは、冤罪事件がある限り、著者が桜井さんに「さようなら」を言える日は来ないのかもしれない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

「県病院問題を考える会」(代表代行・有田優子広島市議)の第一回学習会が10月9日(月)、広島南区民文化センターで行われ、福島みずほ参院議員が「地域の病院をみんなの力で残す」と題して講演しました。

広島県の湯崎知事が、地元住民の声も聴かず、積算根拠も不明確なまま、県病院(広島市南区)を含む病院の統廃合と巨大病院(広島駅新幹線口に予定)建設案を9月県議会に提出し、保守の一部と共産党は反対したものの、可決されてしまった中で行われました。

福島議員と筆者は大学の先輩・後輩です。福島議員がわたしの大学3年の1997年秋にOGとして母校に講演に来られたとき以来、半世紀以上交流させていただいています

福島議員は、全国を回り、公立病院の統廃合問題について情報を収集しておられます。また、厚生労働省や総務省に直接見解を問いただしておられます。

 

福島みずほ参院議員と筆者

◆社会保障費カットの流れは確かだが

福島議員は、講演の中で、まず、現在、社会保障費とくに医療費抑制と防衛費増大及び、防衛力増強のための積立金計上とセットで進んでいる、また、長年にわたって医療費抑制が進められ、病床数は28年間で36万床減少し、自治体病院は147減少、ICUは444か所減り、保健所は個所数を45%削減するなどの流れがある、と説明。そして2019年には424,のちに436病院を再編統廃合の対象として名指しして撤回していない、2021年には改悪医療法成立で消費税を使って病床削減を行っていると指摘。 

また、公立病院を独立行政法人化した場合、意思決定の迅速化や経営の黒字化、規模拡大によるコスト削減などのメリットはあるが、他方で、不採算部門が切り捨てられる、非公務員化で職員の離職が増える、その結果、人員不足、過重労働になる、議会によるチェック機能が低下するなどの問題点があると専門家への聞き取りを踏まえて指摘。

◆一方的な公的病院廃止の流れでもない

福島議員は、一方で、以下のように一方的に公的病院統廃合が進む情勢ではないことを強調しました。

1、総務省や厚労省は再編リストをつくってはいるが、自分が問いただしたところ、各都道府県に病院を統廃合しろという指示・命令をしているわけではない。国としては、都道府県に対応は任せるが、『統廃合するなら、国がお金は出すよ』というスタンス。強制はしないともいえるし、卑怯ともいえる。

2、他の都道府県では、病院統廃合の事業規模は50億円程度だ。広島県の1300億円~1400億円というのは異常。しかも、国(総務省・厚労省)による再編のリストにも入っていない。また、「(広島の新病院がめざす)1000床にならないと、良い医師の採用ができないということはないのか?」という問いに対して、厚労省は「そんなことはない」という回答をしている。広島県病院は他の地域の再編対象共違い、赤字で成り立たないというわけでもない。それが、他地域との大きな違いだ。

3、民意で病院統廃合をひっくり返すことは可能。徳島県では国立病院機構徳島病院の統廃合を県選出の国会議員への働きかけで阻止した。一時期、県立病院の独法化が検討されていた滋賀県では世論を受けて一応革新系の三日月知事が県立維持を打ち出した。青森県でも県病院と市民病院の統廃合へ前知事が市の意見も聞かずに突っ走っていた。しかし、自民系同士の交代ですが宮下知事に知事がかわったことで、防災対策の面などからも再検討されることになり、暴走にブレーキがかかっている。兵庫県の三田市では病院統廃合撤回を争点に現職市長を無名サラリーマンが打倒。そのほかにも市長の交代で公立病院統廃合を阻止している。

◆涙を誘う「県病院がないと生きていけない」 地元有権者からの手紙

 

有田優子広島市議

南区選出の有田優子市議から新人議員としての議会報告がありました。2歳の時に難病を宣告されて県病院に入院した経験を持ちます。また、衆院選、市議選と選挙活動をする中で、「県病院がないと生きていけない」という地元有権者の声をうかがい、どうしてもその声を政治に届けたいと決意しました。2023年春の市議選でも主に県病院の廃止反対を訴え、所属政党である社民党の基礎票を大きく上回る得票を得ました。

有田市議は広島市議会でも一般質問で30分間のうち10分間を県病院問題に割いたそうです。

県の所轄とはいえ、市民の命にかかわること。しかし、市の答弁は「県の動向を注視する」という主体性のないけんもほろろなものでした。有田市議は今も雨の日も土日も朝から県病院前電停近くに立って街頭演説をして県病院を残せと訴えています。

県病院問題を考える会の黒川事務局次長は「県は独立行政法人化を2025年4月にはしてしまおうとしている。県の責任逃れだ。また、JR西日本から土地を買うために県は180億円もの県費を出すつもりだ。税金の使い道としてどうなのか。経理の透明性はどうなのか。追及していかなければいけない。」と訴え、署名活動や学習会などへの引き続きの取り組みをお願いしました。

滝谷事務局長から最後のあいさつに代えて、「県病院がなければ生きていけない」と有田市議に声をかけてきた方で、現在は県病院に入院中、という方からのお手紙を代読し、有田市議に伝達、出席者の涙を誘いました。

◆浮き彫りになった湯崎知事の異常性、打倒するしかない

福島議員の講演で明らかになったことがあります。それは 別に赤字というわけでもない公立病院を潰すのに1300億~1400億円をかけるということです。こんな例は全国でも他にないということを知り、筆者も質疑応答の中で、「他の問題でも暴走が続く湯崎知事。彼は国以上に新自由主義を進める確信犯だ。広島県民の未来のためにも湯崎知事を打倒するより他ない。」と発言させていただきました。

確かに、国政レベルで医療費抑制の流れはあるし、軍拡を口実にそれが加速する恐れもある。それを阻止するのは総理の地元選挙区有権者としての責任でもあると思います。その上で、広島県の場合は国が名指しをしてもいない県病院を潰そうとしているわけです。

湯崎英彦・広島県知事の突出した異常な新自由主義、庶民斬り捨て政治を正していこうではありませんか。筆者は引き続き、暴走する湯崎知事から広島県政を県民の手に取りもどすヒロシマ庶民革命を呼び掛けています。我こそは広島県知事に!広島県議に!という方のご連絡をお待ちしております。 

◎連絡先 090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

藤田ゼン氏初興行WARRIOR開催はメインイベントが劇的TKOで締め括る。
馬渡亮太はヒジで斬られる惜敗。
浅井春香はまたも引分け防衛。
皆川裕哉は速攻のヒザ蹴りで完封TKO勝利。

◎WARRIOR/ 10月8日(日)後楽園ホール 17:30~20:41
主催:ROCK ONジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第9試合 70.0kg契約 5回戦 

JKAミドル級チャンピオン.光成(ROCK ON/ 69.85kg)
        VS
JKAウェルター級チャンピオン.大地・フォージャー(誠真/ 69.8kg)
勝者:大地・フォージャー / TKO 2R 1:17 /主審:少白竜

蹴りは牽制気味にパンチ重視で主導権を掴もうとする両者。光成の左ジャブが時折、大地の顔面にヒットする攻勢を維持する。

大地vs光成、ジャブの相打ち。ここまでは光成優勢

第2ラウンドにはパンチ交錯の中、大地の左のジャブというよりはストレートがヒットし、光成が後方に倒れるノックダウン。ちょっと効いた様子で立ち上がるが、再び大地の左ストレートがまともにヒットすると光成はまたも後方へ倒れ込む。

ダメージを見たレフェリーがほぼノーカウントでストップした。勝った大地はリングを駆け回り喜びを表した。

大地が左ジャブで光成をロープ際へ追い込むが強打はまだ温存

最後の左ストレートヒット後、光成は後方に倒れるとレフェリーは止める体勢

◆第8試合 58.06kg(128LBS)契約 5回戦

馬渡亮太(治政館/2000.1.19埼玉県出身/ 58.0kg)
        VS
ビン・リアムタナワット(タイ/18歳/ 58.0kg)
勝者:ビン・リアムタナワット / TKO 2R 1:09 /
主審:松田利彦

第1ラウンドは様子見ながら馬渡亮太が先手を打って出る

第2ラウンドの序盤この辺りでビンが馬渡の頭部を切ったか、この後更に左ヒジ打ちに移る

馬渡亮太はWMOインターナショナル・スーパーバンタム級チャンピオン。

ビンはタイトル歴は無いが、ラジャダムナンスタジアム常連のスーパーフェザー級メインイベンター。

ローキックで様子見の両者。ミドルキックへ繋ぐ中、馬渡亮太は前蹴りでビンのバランスを崩す先手を打つ上手さを見せる。

クリンチ気味に接近戦になると、どちからのヒジ打ちが出るようなスリルが漂う。

やや馬渡のペースになりつつある中、第2ラウンドにはビンが勢いを増して来た。

接近戦に入ると本領発揮か、一瞬の左ヒジ打ちで馬渡の頭部(髪の中)をカット。続行する中、鮮血が流れた。

更に接近した瞬間、ビンの左ヒジ打ちで馬渡の右眉上をカット。今度はすぐにレフェリーが中断。

長く1分程掛かったドクターチェックの末、続行不可能勧告を受け入れたレフェリーが試合はストップした。

直接的箇所は右眉上のカット。試合運びは馬渡が主導権を握りつつあったが、タイの一流どころはこんなヒジ打ちが怖いところである。

続行を訴えたという馬渡亮太の無念さが表れる傷の深さ

浅井春香が得意とする相手に体重をかけてのヒザ蹴り、掴まえてもっと圧倒したかった

◆第7試合 女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ 3回戦

選手権者.3度目の防衛戦.浅井春香(KICK BOX/ 55.15kg)
        VS
同級1位.MARIA(PCK大崎/TeamRing/ 55.15kg)
引分け 三者三様
主審:中山宏美
副審:少白竜29-29. 勝本29-30. 松田29-28

浅井春香は今年3月26日、引分け防衛となった相手、MARIAと再戦。

両者、パンチとローキックから組み付いて行くと浅井のヒザ蹴り。

離れればMARIAのパンチが目立ち、バックハンドブローは当たらなくてもインパクトを与えた。

浅井は組み合ってのヒザ蹴りは出るが離れた距離でのローキックやミドルキックが殆ど出ない。出しても単発で首相撲に入る。

3月の試合から大きな変化は無かった展開で三者三様の引分け。

浅井は2021年6月20日にKAEDE(LEGEND)との王座決定戦で勝利するも昨年5月21日、KAEDEに引分け初防衛し、これで3連続引分け防衛となった。

試合終了間近になって浅井春香がハイキックを繰り出す

◆ジャパンキック協会・ライト級2位内田雅之(KICK BOX/1977.12.26神奈川県出身)引退セレモニー

内田雅之は新日本キックボクシング協会で2011年12月17日に日本フェザー級王座決定戦で瀬戸口勝也(横須賀太賀)に判定勝利し王座獲得。4度の防衛戦を経て、2015年10月25日に重森陽太(伊原稲城)に判定で敗れ王座陥落。今年3月19日にジャパンキックボクシング協会のライト級王座決定戦で睦雅(ビクトリー)に大差判定負けが最後のタイトルマッチとなった。

セレモニーでは協会代表、小泉猛氏より功労金贈呈、記念のパネル贈呈、鴇俊之会長の労いの言葉、ジム、後援会などから花束贈呈の後、内田雅之氏の御挨拶と続いた。

「本日は御来場有難うございます。私、内田雅之はキックボクサーを引退させて頂きます。このようなセレモニーをして頂いたジャパンキックボクシング協会の皆様、今迄応援してくれていた皆様、KICKBOX鴇会長、本当に有難うございました。デビューして19年、山あり谷あり、谷の方が多かったかもしれません。でもそこで皆さんの応援してくれた御陰で自分はここまで来れたと思います。本当に有難うございます。雅之コールはもうリングの上では聴けませんが、あの時の気持ちを忘れないで、次の舞台でも挑戦し続けて頑張りたいと思います。これからのジャパンキックボクシング協会の御発展を祈念しております。本当に有難うございました。」

目線は会場の観衆に向け、メモ無しでしっかり自分の言葉で挨拶を終えた、結構インパクトある15分ほどのセレモニーだった。戦績61戦35勝(8KO)16敗10分。

引退セレモニーに臨んだ内田雅之、エキシビジョンマッチは出来ない事情があった

◆第6試合 フライ級3回戦

JKAフライ級2位.西原茉生(治政館/ 50.65kg)
        VS
WMC日本フライ級1位.シンイチ・ウォーワンチャイ(ウォーワンチャイ/ 50.65kg)
勝者:シンイチ・ウォーワンチャイ / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:少白竜28-30. 中山29-30. 松田28-30

組み合ってのヒザ蹴りで主導権を奪ったシンイチ。蹴りのタイミング、的確さで優り、リズムを崩された西原はシンイチより出遅れた流れで攻め倦む展開。シンイチが優勢を維持して判定勝利した。

◆第5試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級2位.皆川裕哉(KICKBOX/ 57.0kg)
        VS
チャット・ロックオンジム(元・ルンピニー系ミニフライ級7位/タイ/ 56.8kg)
勝者:皆川裕哉 / TKO 1R 2:06 /
主審:勝本剛司

ローキックからミドルキックで先手を打った皆川裕哉の速攻。蹴りからコーナーに詰めたところで右ヒザ蹴りをボディーに決めるとチャットは堪らずノックダウン。ダメージを見てカウント中のレフェリーストップとなった。

先手必勝の皆川裕哉、最後は青コーナー側でヒザ蹴りで仕留めた(位置的に撮れず)

◆第4試合 56.0kg契約3回戦

JKAバンタム級4位.樹(治政館/ 55.65kg)
        VS
JKイノベーション・フェザー級3位.前田大尊(マイウェイ/ 55.8kg)
勝者:前田大尊 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名28-30. 中山29-30. 勝本28-30

◆第3試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級3位.山内ユウ(ROCKON/ 66.3kg)
        VS
細見直生(KICKBOX/ 65.8kg)
勝者:細見直生 / 判定0-3
主審:松田利彦
副審:椎名28-29. 少白竜28-29. 勝本28-29

◆第2試合 ライト級3回戦

JKAライト級3位.貴雅(治政館/ 60.75kg)
        VS
デーシング・ロックオンジム(元・ラジャダムナン系ミニフライ級2位/タイ/ 61.0kg)
勝者:デーシング・ロックオンジム / 判定0-3
主審:中山宏美
副審: 松田28-30. 少白竜29-30. 勝本29-30

◆プロ第1試合 バンタム級3回戦

ストロベリー稲田(治政館/ 53.4kg)vs九龍悠誠(誠真/ 53.2kg)
勝者:九龍悠誠 / TKO 3R 1:59 / カウント中のレフェリーストップ

◆オープニングファイト.3

JKA29kg級タイトルマッチ2回戦(2分制/延長1R)
脇田剛士朗(治政館)vs野本かれん(WIVERN)
勝者:脇田剛士朗 / 判定2-0 (19-19. 20-19. 20-19)

◆オープニングファイト.2

JKA29kg級 Bクラスルール2回戦(90秒制)
藤田彪(ROCKON)vs松本将真(ビクトリー)
勝者:藤田彪 / 判定2-0 (20-19. 19-19. 20-19)

◆オープニングファイト(アマチュア)第1試合

JKA32kg級 Bクラスルール2回戦(90秒制)
藤原駈(ROCKON)vs武内宥護(JSK)
勝者:藤原駈 / 判定3-0 (20-18. 20-28. 20-18)

《取材戦記》

初のプロモーターを務められた藤田善弘氏は、藤田ゼン(横須賀太賀)として2010年10月に緑川創(藤本)の持つ日本ウェルター級王座挑戦し判定負けの経験があります。

現在はROCKONジム会長として今回の興行開催を終えて、「右も左も分からなくて気が狂いそうでした。終わってホッとしています。第1試合からいい試合が続いて、メインイベントも凄く良かったので選手の皆に救われました。」

次の主催興行予定については、「無いです!いや、1年に1回ぐらいですかね。またやります!」継続してこそプロモーターの経験実績が積み重なっていくでしょう。その意欲は感じられました。

大地・フォージャーは「1ラウンド目はジャブ貰って効いてしまって、ヤバイぞと思いましたが、自分の左(ジャブやストレート)を信じ切っていたので、しっかり打ち込みました。1回目のダウン奪って、ノックアウトはいけると思いました。あと、試合前にある関係者から『観客は少なくても動画(映像)は残るから、この先誰が観るか分からないよ。後々振り返られる歴史に残る名勝負を残してくださいね!』と言われた言葉が頭に残って、その結果だと思います!」と語った。

実際、メインイベント時点で観衆は少なく、これではモチベーションも上がらなかったかもしれない。でもこの日はペイパービューによる生配信が行われていました。更に録画はこの先、どんな運命でどこで使われるか分からない。好ファイトを残しておけば何かの縁で地上波放送にスポット的でも使われるかもしれない。そんな意識が働けば、下手な試合は出来ない感情になったかもしれないだろう。

3度の防衛戦がすべて引分けになった浅井春香のジム会長、鴇稔之氏は、「浅井はいつもどおり何も出ないね。まあいつもよりはちょっとだけ3パーセント増しぐらい出たけど、練習では凄い迫力で強いミドルキック20連打5セット出せるのに、試合でそのちょっと、3連発でもいいからミドルキックでも出せば勝てるのに、なぜか試合では蹴りが何にも出ない。メンタルの問題だけど、何とか打開したいね!」と言うとおり、組み合ってヒザ蹴りは出るが、体勢が悪く圧倒するような強さは感じられず、ローキックやミドルキックも殆ど出なかった。

「練習では根性、試合では勇気!」といった輪島功一氏のように、意識を変えて次の防衛戦に期待したいものである。

次回のジャパンキックボクシング協会の興行は11月26日(日)ビクトリージム主催でKICK Insist.17が後楽園ホールで開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

最近のマスコミ紙面を賑わせているのは「汚染水放出」「ビッグモーター」「ジャニーズ問題」「風力発電汚職」などである。その一つ一つは、それぞれの問題がありSNS上でも論議されている。しかし何か的はずれの感を否めない。

今、米国は衰退する覇権回復のために米中新冷戦を掲げ、日本をその最前線に立たせるために日本を米国の下に統合する「日米統合」を異常なほどの早さで進めている。

このことを見なければ物事の本質が見えてこないのではないか。米国とその追随勢力は何を狙っているのか。今回は最近の各「事件」を読み解きながらそれを探っていきたいと思う。

◆風力開発収賄事件 ── 米国の狙い、「日本のエネルギー自立は許さない」

先ず、地検特捜部が動いた「風力開発収賄事件」から見ていきたい。地検特捜部は米国の機関というのは常識であり、そうであれば、そこに米国が何を問題視し、何を狙っているのかが分かるからだ。

この事件は、秋本衆院議員が、洋上風力の用地入札を巡って、その入札基準をこれまでの「価格」から「早さ」に替えるように国会質問などで要求したことが、「日本風力開発」に便宜を図った収賄事件であるとして摘発されたものである。

「日本風力開発」の坂脇社長の「自前のエネルギーが日本の安全保障を支える。風力が日本にとっての石油になる」との言葉は日本の国益にもかなった正しい見解だと思う。それ故23年3月に、国交省、経済産業省も評価基準を「安さ」から「早さ」に変更している。

風力発電は脱原発であり、米国は、「それは許さない」ということだ。

何故か? 日本はエネルギーでは米国に依存している。石油もさることながら、原子力も濃縮ウランは米国が供給している。米国は日本のエネルギーを支配することで日本を従属化しているのであり、日本のエネルギー自立を絶対に許さない。それは70年代に田中角首相が「自主資源外交」を唱え、ロッキード事件で失脚させられたことでも明らかだ。

風力発電では中国が世界の先端を走っており、風車などの設備も安価なものが世界を席巻している。日本で風力発電を進めれば、中国との関係が深くなる可能性は高い。

米国は、これを警戒しているのではないか。

米中新冷戦で日本をその最前線に立て中国と対決させようとしている米国にとって、日本が「自前のエネルギー」開発を進めて、「エネルギー自立」を図ることなど許せないことであり、ましてや中国との関係を深くすることなど、わずかな兆候でも許せないことなのだ。

◆汚染水放出問題 ── 米国の狙い、「日本と中国の対決を煽る」

内外の反対を押し切って福島原発で溶解したデブリを冷却した汚染水の海洋投棄が始まった。その結果は安全であるという「処理水安全」キャンペーンが張られている。

しかし放水は、廃炉まで続けなくてはならず、政府が言う、30~40年でなど政府自身も信じておらず、世界の専門家は200年、数百年は掛かるだろうと見ている。それまでの安全性を一体どうやって保証すると言うのか。無責任も甚だしい妄言だとしか言いようがない。

その安全性はIAEAが保証していると言うが、IAEAとは米国の核覇権体制であるNPT体制のための機関であり、実質、米国の機関である。

そのお墨付きで行った汚染水放出強行は米国の後押しで行ったということであり、そうであれば米国は何故、今、汚染水放出を強行させたのかを考えなければならない。他の方法は幾らでもあり、内外の専門家も貯蔵を継続し、その間に安全な他の方法を採用すればよいといっているのに、何故、今、それを強行させたのか。

これも米中新冷戦の下で米国は日本を対中対決の最前線に立たせようとしているという関係の中でこそ見えてくる。

即ち、対中対決のためには中国敵視の雰囲気を高めなくてはならず、そのために汚染水問題をもって、それを煽るということだ。

中国は汚染水放出に反対し、それを強行すれば、相応の措置を取ると明言してきた。だから放出強行に対して中国が日本の海産物輸入禁止などの措置を取ることは当然予想されていたことであり、それを利用して反中国キャンペーンを行うことは既定のスケジュールだったということだ。

汚染水問題では、政府の見解以外は全て「偽情報」とし、マスコミもこれに従えという報道管制が敷かれている。そこでは「汚染水」と呼ぶこと自体が偽情報であり、中国が汚染水放出の停止を要求し日本の海産物の全面禁輸措置をとったことも偽情報によるものとされている。

この戦前を髣髴させる大本営報道の渦の中で、汚染水放出に反対したり疑問を抱くことは非国民にされかねない状況になっており、対中対決の雰囲気が煽られている。

「処理水安全」キャンペーンは、そのためのものだということである。

その上で、「汚染水安全」は、米国の核戦略の上からも絶対必要なものであることを見ておかなければならない。

米国の核戦略は、原発と結びついている。原発稼動の過程で出るプルトニウムが核兵器の原料になるからである。そして原発からは必然的に汚染水が出るのであり、これを海洋放棄するしかない。その「安全性」はIAEAという米国の機関が「保証」するという自分で自分の正当性を「保証」するものでしかない。

米国が核覇権を維持するためには原発がなくてはならず、「汚染水放出は安全」でなければならないのであり、そのためにも「処理水安全」キャンペーンが張られているのだ。

さらには「汚染水は安全」は米中新冷戦で日本を最前線に立て核の共有化という「核武装」させるために桎梏となる日本人の核アレルギーを弱化圧殺するためのものになるということも見ておかなければならない。

今、米国は、日本を対中対決の最前線に立たせ、敵基地攻撃能力を保有させ、それに核を搭載する核の共同保有を狙っている。そこでネックになるのが被爆国日本の核アレルギーである。そこで「汚染水は安全」から「原発は安全」にすることで日本人の核アレルギーを弱化させ解体していく。そして日本人に核戦争の覚悟をさせる。

それは、米軍が指揮権をもつ核の共同保有の覚悟、米軍の指揮によって日本が核の戦場にされるといいうことであり。米国覇権のためにウクライナのような米国の代理戦争、それも核代理戦争をやらされるということである。

◆ビッグモーターとジャニーズ ── 米国の狙い、「日本的システム」は解体する

日本の自動車業界では中古車市場が独特の地位を占めている。日本車は高品質で中古品でも海外で人気があり、多くの輸出が行われている。自動車業界もこれに目を付けて新車を中古車として売るなどしており、これは米国の神経を逆なでする実質ダンピングになっている。

自動車を所有すれば自動車保険に入らなければならない。保険会社にとって自動車保険は大きな市場。そこで損保各社が中古車販売会社に出向して、その保険を取る。そのために中古車会社が意図的に自動車に傷をつけたものも賠償する。そうした持ちつ持たれつの関係を破壊する。それは米国保険のこの分野への進出を図るものになる。

日本的システムの破壊は、日米統合のために不可欠だ。「ビッグモーター」問題で経済産業省が動き「社長の辞任だけでは済まない」と息巻いている背後には米国がある。

今、日本では米国ファンドが「もの言う株主」として様々な業界で、米国式の株主主体の会社にせよと要求しているが、日本的システムもその標的にされている。そうした関連の中で、「ビッグモーター」問題があるということを見なければならないと思う。

一方、ジャニーズ問題は、久しい以前から様々なメディアに取り上げられて来た。それが今になって、世界のメディアも取り上げる大事件、日本のテレビ業界、マスコミ、広告企業も巻き込む大事件として連日のように報道されている。

その報道ぶりに、「何故、今になって」との声も聞くが日米統合のためという観点から見れば、その疑問も解ける。

今ジャニーズは社名を「SMILE-UP」に変更し、タレントと個別にエージェント契約を結ぶ形式を基本にした経営を行う、内部通報制度を改革するなどの方針を打ち出している。

それは、米国式経営だということではないか。

日本の場合、芸能会社が強く、それにテレビ界、マスコミ界が関与して、強固な「芸能村」を形成してきた。この封建的とも言える日本的なシステムを解体し、米国が日本の芸能界や芸能村を指揮し管理する、そうした狙いがあるのではないか。

確かに古めかしい日本的システムを解体することは必要である。しかしそれを壊して米国が日本の芸能界、芸能村を取り仕切るということになってはなるまい。

問われているのは、芸能人や関係者が主体的に時代に合った新しい日本のシステムを作っていくことだと思う。

◆日米統合一体化を促進する「資産運用特区」

9月22日に岸田首相がニューヨークで講演し、「資産運用特区」を創設して、ここに外資を呼び込むという政策を発表した。

岸田首相は、これまでもNISA(小額投資非課税制度)の拡充、恒久化に取り組んできたと述べながら、今後さらに「資産運用の高度化を進め、新規参入を促進し、資産運用特区を始めとした各種の規制緩和を通じて運用能力の高い海外人材の受け入れを積極化する」と表明した。

要するに日米統合一体化を促進し、日本国民の2000兆円もの資産を外資に開放するということである。

その講演では「英語のみで行政対応を完結できるようにする」とある。90年代に規制緩和を要求してきた米国に対し、「これじゃあ、日本語も障害になると言われかねない」と笑い話し的に語られたが、今や笑い話しではなくなったということである。

岸田首相は「日本独自のビジネスルールの是正」にも言及している。上で述べたような「中古車市場」「芸能村」などのルールも日本独自のビジネスルールであって、それをなくして日本を外資が自由に闊歩するような「外資天国」にして、一体どうしようと言うのか。

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魚本公博さん

米中新冷戦で日本を対中国対決の最前線に立たせる、そのために日本の全てを米国に統合する。そこから見てこそ、物事の本質が浮き彫りになる。それは日本国民の財産を米国に売り渡し、ひいては日本の国土を米国の代理戦争、核代理戦争の場に提供するところにまで至るものとしてある。

そのようなことを決して許してはならない。今、日本には様々な問題が山積している。しかし、それを正すのは日本、日本人でなければならず、決して米国やそれに追随する者たちであってはならない。

今ほど、日本人としての主体的な対応が求められている時はないと思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGGRXRQ/

広島駅の南北でいま、大規模な再開発が進んでいます。その中で、広島県知事・湯崎英彦さんと広島市長・松井一実さんの暴走が目立ちます。松井市長の暴走は、以前ご紹介した中央図書館の『エールエールA館移転』問題です。

今回取り上げるのは湯崎知事の暴走です。湯崎知事は、広島県立広島病院、JR広島病院、中電病院、広島がん高精度放射線治療センターなどの機能を集約した1000床規模の巨大な新拠点病院建設を計画しています。

こうした中、広島県議会9月定例会は10月2日、212億円の補正予算案を可決しました。この補正予算案には、新拠点病院建設へ向けた予算も含まれています。もちろん、今回の補正予算案で可決されたのは病院建設へ向けた費用のほんの一部です。湯崎知事がすでに発表している基本計画によれば1300-1400億円の総事業費がかかるということです。

[左]広島県立広島病院(いわゆる「県病院」)。[右]JR広島病院。いずれも筆者撮影

◆試算根拠不明、議決に値しないボロボロの議案に賛成した国政与党と立憲

今回の補正予算案に賛成したのは自民党の多数派、公明党、立憲民主党などの県議です。逆に、自民党少数派(自民党広志会)など保守の一部と日本共産党は反対に回りました。広志会の女性県議は反対討論で総事業費の試算根拠が全く示されていないと指摘。これでは賛否の判断のしようがないと切り捨てました。日本共産党も、県病院周辺住民の合意が得られていないことなどから、反対に回りました。

他方で、立憲民主党所属のある県議は「まだまだ見通しが立っていないことや課題も多いことから今後も様々な角度で引き続き議論が必要」と認めながらも、賛成に回ってしまいました。そんなに課題があるなら、知事に顔を洗って出直してもらうべきだったのではないでしょうか? こんな議案に賛成してしまったことについて、立憲広島は恥を知るべきです。

◆『独裁』で突進してきた湯崎知事さえも早くも『逃げ』の態勢

湯崎知事は予算が可決された翌3日の定例会見で「病院の統合も含めた長期的な計画なので、事業や財務の計画には当然さまざまなリスクがある。物価のほか医療制度や技術も変化していくので、常に計画をアップデートして、発表していきたい」とおっしゃいました。

湯崎知事自身も早くも、逃げの態勢に入ったと言わざるを得ません。さまざまなリスク……すなわち、この病院計画案がボロボロであると知事自身が認めたようなものです。『常にアップデートして発表』といえば、いかにも柔軟そうで聞こえはいい。しかし、そもそも、県病院や中電病院など廃止される病院の周辺住民の合意をきちんとり、病院を作るうえで必要な様々なことを住民の意見も聞いて詰めていれば、こんな発言は出てきません。

ここまで湯崎知事の事実上の『独裁』で生煮えの計画をつくる。そんな計画に基づいて、補正予算案を出してしまう。そして、問題点が噴出すれば「常にアップデートします」と聞こえの良い言葉で逃げる羽目になったのではありませんか? そんな知事のいい加減な仕事ぶりにあきれ果てました。

◆リスク・疑問点だらけの計画

知事もお認めになった通り、この病院の計画にはリスクや疑問点が多すぎます。

第一に、新拠点病院はJR広島病院がある地区にできるから、JR広島病院を再利用するかと言えばそうではありません。JR広島病院は新しい建物になって10年もたっていないのに、解体して立体駐車場にするという。あまりにももったいない、と言わざるを得ません。

第二に、この広島駅北口地区は渋滞が慢性化しています。とくに朝夕の通勤時間帯やマツダスタジアムでカープの試合がある前後は酷い渋滞で、歩いた方が早いことがよくあります。筆者と妻が外食をして帰るとき、妻はバスで、筆者は自転車で帰りますが、筆者の方が圧倒的に早く家に到着し、筆者の帰宅を喜ぶ犬の写真を妻に送る余裕があるありさまです。そんな状況で、救急車がうまく病院に到着できるのでしょうか? 外来の患者さんも円滑に来院できるのでしょうか? 命に係わる一刻を争う時にこれはまずいと思われますが、筆者の友人が県の担当部局に問い合わせた時も納得できる回答は得られていません。

第三に、県立広島病院の現在地だと南海トラフ地震の津波のリスクがあると県は主張しますが、広島駅北口とて大差はないのではないでしょうか? 地震動についてはむしろ広島駅北口の方が強いというデータもあります。そもそも、現在地に津波で救急車が到着できないなら、広島駅新幹線口にも到着はできないでしょう。むしろ、何か所かに病院を分散しておいた方が災害時のリスク分散になり良いのではないか?

第四に、新拠点病院では過疎地で医療に従事する若手医師を育成するという。しかし、広島駅という県内でももっとも煌びやかな地域(東京にはもちろん及びませんが)に来たがる若い先生方が、そもそも過疎地に赴任したがるか疑問です。

第五に、県病院の医療スタッフは現在のところ公務員=広島県職員ですが、移転後は独立行政法人になります。この際、身分の不安定化から、今いる医師も、バカバカしくなって、もっと都会の給料が高い病院に流出する危険があるのではないでしょうか?そうなると、湯崎さんが掲げる高度医療の提供も画餅に帰すことになります。また、独立採算制になれば、儲け主義にも結局なりかねません。

第六にそもそも、県病院周辺の住民、あるいは同じく新病院に統合が予定されている舟入市民病院の小児救急周辺の住民の納得は得られていません。県病院が近いから、舟入市民病院が近いから、ということで、医療ケアが必要なご家族を抱える方が家を購入しているケースも多いのです。

◆病院の存続を求める市民団体

こうした中、県立広島病院の存続を求める市民団体「県病院問題を考える会」が3日、県庁で記者会見しました。黒川冨秋事務局次長は、「県病院は長く県民に親しまれてきた病院だ。新しい病院が出来ても地元の人はタクシーなどで通院しなければならず、病気の人には負担が大きい」「県病院を残して今までどおりの医療体制を維持するべきだ」と訴えました。 
その上で、「古い病院を壊すだけではいいものにはならない。お金の使いかたを充実させてほしい」と述べ、湯崎知事が新病院でやるとしている若手医師の育成については広島大学病院との連携を通じて図るべきと指摘しました。『県病院問題を考える会』の連絡先は以下です。 

〒734-0005 広島市南区翠町1丁目10番27号 
電話 082-250-3155 FAX 082-250-3157

ここまでこの問題で独裁的に猪突猛進してきた当の湯崎知事が『柔軟に見直す』と明言せざるを得ない状況です。あきらめずに知事をしっかり監視していきましょう。 

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

◆優美な文体による悲劇と描写のコントラスト

『広島の追憶』は悲しく痛みに満ち溢れた物語であるが、全編優しい表現で描かれている。物語の激烈さを優美な筆致で書き上げる、内容と表現の見事なコントラストにより、この物語が発するメッセージはさらに輝きを増している。

 

1梓 加依『広島の追憶 原爆投下後、子どもたちのそれからの物語』(鹿砦社)四六判、上製カバー装、本文192ページ+巻頭カラー4ページ、定価1650円(税込み)0月12日発売

物語の登場人物には、ついぞ意地悪や性根の曲がった人物が見当たらない。子ども、大人を問わず一人も現れない。他方情景や食べ物、心理の描写は、輪郭が明確で色鮮やか、しかも繊細である。まるで万華鏡を覗くようだ。わたしはさながら追体験をしているかの如き感覚を抱きながらページをめくった。この作品が児童文学への造詣が深い著者の実経験と筆力、そして力強い意思で貫徹された物語だからであろう、美しくも繊細でありながら重大なメッセージを込めた作品の力量と、構想の精緻さに読者は圧倒されるだろう。

本書の帯には「担当編集者が何度も泣いた。」とある。わかる。素直に悲しく、可哀そうで落涙したり、優美な文体による悲劇と描写のコントラストに涙する読者は少なくないだろう。

◆苦痛や煩悶を丁寧で穏やかに描写

物語は、原爆投下後12年を経た広島市(現広島市南区あたりだと思われる)で同じクラスの小学校6年生4人がまず登場する。物語で主役を演じ、おそらくは著者の実体に基づくであろう「由美子」、八百屋の父親を手伝う元気な「和也」、細身で音大進学を望む「裕」、勉強も運動も得意、優等生の「進」。

小学校6年生の4人に「病」と「死」は容赦なく近づく。苦しかっただろう、怖かっただろう、悲しかっただろう。が、物語の中で著者は死者にも生き残った者にも、ほとんど強いトーンの発言や行動をとらせることがない。押し殺したわけではない。苦痛や煩悶が丁寧で穏やかに描写される情景こそが、かえって読むものに惨状の実態を強く感じさせるのだ。

近年わたしは映像でも文章(物語)あるいは音楽、つまりは文化一般における、揶揄競争、激烈さ競争、さらには圧倒的な痴呆化に飽きてしまっている。『広島の追憶』はそんなわたしの欠乏感と欲求を、ものの見事に埋めてくれるどころか、驚くべき展開を見せてくれた。漢字さえ読めれば年齢に関係なく誰にでも読む価値があるし、心が揺らされるのは必至だ。数十年ぶりに文学の名著に出会うことができて、わたしは満たされた。

◆「由美子」はおそらく幼少時代に長崎で被爆している

上記が『広島の追憶』への一般的な感想である。以下は『広島の追憶』とわたしの個人的接点だ。

一般的に読者が文学作品に接する際、個人的経験との接点(共有・または共振)が作品への同一感を強化することはありがちである。本書とわたしの間にもそれは生じた。

まず物語冒頭の主たる舞台である広島市南区翠町。そこは1945年8月15日にわたしの母及びその家族の居宅があった場所である。当時5歳の母は疎開しており原爆投下の日、同所には居なかったが、叔父たちは近所に下宿していて原爆の直撃を受けた。

直後に死んだり大怪我した叔父は居なかったが、50歳を超えると不思議なことに叔父は癌を発病し、短い治療期間で死んでいった。被爆と癌発症の因果関係を科学的には証明できないのかもしれないが、彼らが「被爆手帳」を持って事実は重たい。

そして物語の主人公「由美子」が転居する道程である。「由美子」は長崎から大阪そして広島から再び大阪へ移動する。「由美子」はおそらく幼少時代に長崎で被爆している。

わたしの母は長崎で生まれ下関を経て広島そして神戸へと転居を重ねた。上記の通り広島原爆投下の日には広島市内に家がありながら疎開して直撃弾は免れた。しかし、祖母から聞いた話によれば原爆投下からほどなく家のあとかたずけに一家総出で翠町に赴いている。母は100万人に1人と言われる珍しい癌に数年前罹患した。つまり、本書のテーマである原爆、被爆とわたしは無関係ではいられないのである。

まだ存命であるが最近母の見当識は相当に怪しい。

わたしの母の名は由美子だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

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