おばんです。ちょっと言わせてください。あのですね、大阪万博をこのまま強行すれば、東京五輪の時以上の過労死者や自殺者がでますよ。新国立競技場の現場で若い現場監督が自殺したではないですか? 現場監督は、大きな現場の全体を把握してないと勤まらない。店に来る職人さんが少し大きな現場に入ると、監督が良いか悪いか、よくわかると言います。今日ある場所でコンクリ打ちするからミキサー車が入るというのに、入る予定のゲート付近に、ほかの業者が資材を山積みしているなんてことがあるそうです。「何やってんだ!ミキサー車来てるぞ、早く片づけろ!」と怒鳴り声が飛ぶわけです。

これは福島第一原発の収束・廃炉作業の現場を知るなすびさん(被ばく労働ネットワーク)も言ってました。福一の現場ではそれこそ毎日多種多様な作業が行われています。ある工事を行う作業員が現場にいくと、別の作業をやっている人たちがいて、自分たちはそれが終わるまで、被ばくしながら待たなくてはならないとか……。

広い現場の全体を把握できる人間がいないということです。しかも万博の現場、なかで作業が遅れているのを見せたくないためか、周囲をぐるりを囲む大屋根が先にできましたが、そうすると、中の工事に資材を搬入するなどの作業がやりにくい、やりにくい。違いますか?

◆ゼネコンの人間は、コンクリ打ったり、鉄骨組んだりできません

あと、万博の建設現場に中に入るゲートが少ないですね。以前、大阪の堺市で大きな電気関係の工場現場があったのですが、誰も行きたがらない。何故かというと、現場へ入るゲートが一本しかないため、行き帰り、とくに早く帰りたい帰り道、ゲートが混んで混んでなかなか出れないらしい。職人さんはキツイ仕事終えて早く一杯やりたいので、現場から戻るのに何時間もかかる現場はいきたがらない。
 
あと、皆さん、万博は大手ゼネコンが請け負うから、優先的に仕事が進むはずと考えていませんか? ゼネコンの竹中、大林に勤める人間がとつぜんコンクリ打ったり、鉄骨組んだりできませんよ。現場で働くのは下請けの作業員、その人数は限られていますよ。その人たちを奪い合うわけですよ。

さっき言ったように、キツイ仕事終わったら早く帰りたい、いっぱい飲みたい、風呂浸かってゆっくり休みたいと思うのが普通でしょう。だって人間だもの……(相田みつお風)。

誰が、帰りに何時間もかかる現場に行きたいと思いますか? 例えば、釜ヶ崎で、手に専門職をもたず、穴掘りなど土工の仕事しかできない人でも、当然ですが、労働者としての「誇り」があります。

阿倍野ハルカスの現場に穴掘りの土工さんとして入った人でも(失礼な言い方ですが、この人たちがいないと現場は始まらない)、「ママ、あのハルカス造ったの、俺だぜ」と自慢するのです。

それが、造っても半年ほどで解体する万博の現場に、「おれ、すごいだろう」と自慢して入れる人はどれくらいいますか? それなら、「能登に行って仮設住宅作って、えらい喜ばれたわ」という現場の方がナンボやりがいがあることか?

だから万博の現場に人は集まりません。首に縄着けて引っ張っていくのなら話は別ですが……。それでも金借りた、昔親方に世話になったなどの理由で現場に行かざるを得ない人、めっちゃ大変ですわ。私だったら単価が多少安くても能登の片づけ作業、解体作業そして仮設住宅造りにいきますわ。

だって、人として、人のためになることをやりたいじゃないか(相田みつお風)。


◎[参考動画]【万博間に合う?】「手が足りない」「めっちゃ急かされる」建設作業員たちの本音 工期遅れで残業やむを得ない状況も…大阪・関西万博の会場建設の現状(MBS NEWS 2024/02/11)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733