「世に倦む日日」『SEALDsの真実』で問われている学者・文化人の言説と態度

「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

高橋源一郎、山口二郎、小林節、小熊英二、内田樹、上野千鶴子をはじめとする「シールズ」応援団の現・元大学教員に聞きたい。
あなたたちは人生の中で、とりわけ学究活動に身を置くようになり、何を学び何を経験し、何を学生に教壇から講義してきたのかと。

「シールズ」は20世紀の最終盤に産れた世代の学生が構成していた。だから彼らには60年安保、70年安保の実体験は当然ない。私自身だって60年安保、70年安保を自身の体験として経験している訳ではない。経験はないが書物や各種の情報、そして何よりも私自身がそれらを、決して軽視できない問題だと感じたから、断片的ながら調べることはしたし、私が生まれるより前に惨殺された、樺美智子の名前は、小林多喜二同様、頭から離れることがない。

数十万人の激しいデモに身を置いた経験もなければ、国会周辺を取り巻く「怒り」の一員になった経験もない。だけれども「どのようなことが起こったのか」、「人々の怒りはどう現されたのか」についての私の想像は、それほど的外れなものではないように思う。

ひるがえって、昨年の「戦争推進法案審議」の際に国会周辺で繰り広げられた「シールズ」による行動には、当初から極めて強い違和感があった。「本当に止める」と書かれたプラカードの文字は真逆の意味にしか受け取れなかったし、「とりま廃案」の「とりま」の意味は知り合いの若者に聞くまで解らなかった。シャボン玉よりも軽そうな、そしてシャボン玉ほどの瞬時の輝きすら持たないこれらの言葉は、本来自然に高まっていく「怒り」に穴をあけて、茶番劇が茶番劇を認める役割だけを果たした。

「シールズ」も大学生なのだから、言論については批判や責めを負う責任はあろうが、もっと指弾されるべきは、彼らの「無知」振りに「違う、そうではない」と豊かな経験と知識から諌めるべき学者や、教員があろうことかもろ手を挙げて、あの空疎な乱痴気騒ぎを称賛したことだ。全共闘運動の何たるか、何であったかを賛否はともかく経験しているであろうはずの、高橋、山口、小林、上野らが吐いた「ことば」がどれほど軽率なものであったことか。

しかし、よくよくこの面々の名前を見直すと実は共通項がある。彼らはいつの時代も根源的な正義ではなく、その時代に受け入れられやすいトピックに必ずと言ってよいほど顔を出す連中だ。上野は京大時代には学生運動の中でも相当に過激な運動を牽引する指導的学生と近しい関係にあったと聞いている。その経験と昨年のシャボン玉ほどの重さもない空疎なイベントを自身の中で学者として真摯に比較し、無知の過ぎる学生たちに彼女自身の経験(それが成功にせよ苦い経験にせよ)を何故語らなかったのだ。本気であのイベントが「新しい運動」だと考えていたのか。そうではあるまい。彼女の打算高さを考えれば別の計算が働いていたはずだ。

山口二郎は法政大学の教員として、なぜ足もとの法大キャンパスで起こっている、異常事態を問題にしないのだ。「ついに国民の怒りが爆発しましたね」などと、的外れなコメントする前に、学内でビラ配りも出来ない、立て看板も立てられない、公安警察が常駐する異常事態を何故問題にしないのだ。彼自身が積極的に動いた「小選挙区制」を導入すれば、今日のような政治的閉塞状態、多様性のある政党が存在できなくなることは自明であったにもかかわらず、それを積極的に推進した責任をどう考えるのだ。

「世に倦む日日」主宰の田中宏和さん

つまるところ、「シールズ」応援学者は、私の見るところ、インチキばかりだ。

このような粗雑な感想ではなく、社会科学的手法を用いて「シールズ現象」を読み解いた『SEALDsの真実』が発刊された。著者である田中宏和氏は、人気ブログとツイッター「世に倦む日日」で積極的な発信を行っている在野の研究者である。『SEALDsの真実』では、鹿砦社の本コラムや『NO NUKES voice』以外、一部の右派を除いては批判が皆無に近かった「シールズ」にメスが入る。

「忖度」や「自己規制」という言葉をメディア関係者からしきりに耳にするようになった。そんなものは不要だ。本書は「事実を直視することの大切さ」と「知識・学識への態度」について我々に多くの示唆を与えてくれる。

◎田中宏和さんのブログ「世に倦む日日」
◎「世に倦む日日」ツイッター 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

早くも増刷決定!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』
『NO NUKES voice』08号【爆弾対談】「世に倦む日日」田中宏和さん×松岡利康本誌発行人

地震学の泰斗、島村英紀さんが語る〈地震列島・日本〉の今とこれから

2016年5月14日土曜日。水道橋に所在する〈たんぽぽ舎〉にて催された講演会「地震列島日本の今・そしてこれからは?」(「地震と原発」連続講座第1回)に参加してきた。地震と原発に関する連続講座の第1回として展開された今回の講演会。ゲストとして招かれたのは、地震学者・地球物理学者・評論家として活躍する島村英紀氏だ。1941年、結核の権威である島村喜久治を父として生まれ、東京大学理学部物理学科を卒業。同大学院地球物理学博士課程修了。北海道大学助教授、北海道大学地震火山研究観測センター長を経て、現在は国立極地研究所所長、武蔵野学院大学特任教授として学問に従事している。

2016年4月14日以降、熊本県や大分県を中心に大きな地震が相次いで発生していることを受け、地震に対する世間の関心はいっそうの高まりをみせている。ここでは、島村英紀氏による2時間の講義の内容をより平易に再構成しようと思う。この知識が皆様の生活の一助となるよう尽力する。

◆海溝型地震と内陸直下型地震
──プレートの動く速さは「爪が伸びるスピードよりも速く、髪の毛のそれよりも遅い」

地震学の泰斗、島村英紀さん

日本で起きる地震には〈海溝型地震〉と〈内陸直下型地震〉の2種類がある。〈海溝型地震〉はプレートとプレートの境で起きるもので、2011年に発生した東日本大震災はこれにあたる。プレートの境というのは海底に存在するため、津波を生むことが多いのも特徴だ。

一方の〈内陸直下型地震〉は、ゆっくりと押し進められてくるプレートによって日本列島が歪んだりねじれたりすることに原因がある。その歪みやねじれが溜まり、岩が我慢できる限界を超えてしまったときに地震が発生する。地震の規模としては一般に〈海溝型地震〉よりも小さいが、人の住む陸地の直下で起きるため、被害が大きくなる。阪神淡路大震災はこちらのタイプであった。

日本列島は、〈ユーラシアプレート〉〈北アメリカプレート〉〈フィリピン海プレート〉〈太平洋プレート〉という4つのプレートが交わる地点であり、その分地震が多発する。プレートが交わる地域は地球上でも限られている。4つものプレートが関係する日本は、それだけでもかなり特異な特徴を有しているといえる。ちなみに、プレートの動く速さは「私たちの爪が伸びるスピードよりも速く、髪の毛のそれよりも遅い」という。

◆中央構造線
──この活断層群が地震を起こし、その被害を実際に“目にした”のは今回がはじめてだった

中央構造線の活断層群が地震を起こし、その被害を実際に“目にした”のは熊本大地震がはじめてだった

今回の熊本地震は典型的な内陸直下型地震だが、もうひとつの特徴がある。それは、日本最長の断層帯である〈中央構造線〉が起こした地震だということだ。〈中央構造線〉は長野県に始まって名古屋の南を通り、紀伊半島を横断し、四国の北部をかすめ、九州、東シナ海へと横断する活断層群で、長さは1000kmを超える。

地質学的な研究から〈中央構造線〉が過去に数百回以上の地震を起こしたことが分かっているが、この活断層群が地震を起こし、その被害を実際に“目にした”のは今回がはじめてだ。日本人がこの列島に住み着いたのは約10000年前、記録を残しているのはせいぜい直近2000年ほどなので、この大断層が地震を繰り返してきた時間の長さに比べて、あまりに短い間でしかないのだ。

◆活断層とはなにか?
──地震が起きてみないと断層を確認できない場合は多い

活断層は一般に枝分かれしていたり、途切れたりしているため、活断層の長さをどのように認定するか、というのは学者によってその方法が異なる。原子力発電所を作る前に“活断層の長さ”を決めてから“その場所で起きる地震の最大震度”を求めているが、“活断層の長さ”は学者による任意性が大きいためこの手法には強い疑問が出されている。

また、活断層はその定義が“地震を起こす断層のうち、地表に見えているもの”であるから、首都圏や大阪、名古屋など、川が土砂を運んできたり、海の近くだったりして堆積層が暑いところでは断層が見えないため、“活断層は存在しない”ということになってしまう。阿蘇山の近くのように厚い火山噴出物をかぶっているところでも、やはり断層は見えない。今回の地震では、事後、初めて活断層が確認された。国内の他所においても、実際に地震が起きてみないと断層を確認することができない場合が多い。

◆地震の連鎖について
──東への連鎖が続けば愛媛県沖、西南への連鎖が広がれば鹿児島へ

熊本での地震によって、その部分の地震エネルギーは解放された。しかし、それは隣の〈地震候補〉との間の留め金が外れたことをも意味するものだ。もし隣の〈地震候補〉が、いまにも地震を起こすだけのエネルギーを蓄えていれば、支えを失って連鎖的に地震が発生する可能性がある。

こうして、熊本に続き阿蘇山の下で、さらに大分でと地震が続いた。東へ連鎖が続けば愛媛県沖の瀬戸内海、西南へ連鎖が広がれば鹿児島に入る。ともに原発が所在する地点だ。この連鎖が連続するかどうかというのは、隣の〈地震候補〉にどのくらいのエネルギーが蓄えられているかによる。しかし、現在の科学ではその量を確認することができない。

◆原子力発電所の安全基準値
──益城町で1580ガル、原発設計基準は最大500~700ガル

益城町で1580ガル、原発設計基準は最大500~700ガル

内陸直下型地震の特徴として、地面の〈加速度〉が大きいことを挙げなければならない。地震が発生した際建物にかかる力は、そのものの重さに〈加速度〉をかけることで算出することができる。加速度が大きいほど、そのものに大きな力がかかり、場合によっては倒壊したり破損したりする。

今回の地震では、益城町で1580ガル(ガルは加速度を表す単位。詳細な説明は割愛する)という加速度を記録した。かつては“980ガルを超える地震動はあり得ない”とされていたが、阪神淡路大震災以後、多くの観測機が設置されたことにより今まで見落とされていた大きな値が記録されるようになった。

各地の原子力発電所は、ここまで大きな加速度を想定していない。いままでの設計基準では、せいぜい500~700ガルを最大として想定しているため、それを超える地震動を受けたときに発電所がどうなるかということは分からない。

※   ※   ※

以上、配布されたレジュメをベースに講義の内容をまとめてみた。生活を支える知識として役立てていただければ幸いだ。論調が個人的情緒に拠ったものであると、趣旨が見失われてしまう。こうした態度を反省させるような島村氏の淡々とした語り口(あまりに淡々としているために聴講者の笑いを誘うこともしばしば)に、非常な説得力を感じたものである。

▼大宮浩平[撮影・文]
1986年東京生まれ。写真家。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

たんぽぽ舎「地震と原発」連続講座第2回目の講師は広瀬隆さん。本日5月26日19時開演です!

スペースたんぽぽ(ダイナミックビル4F)5月末の予定

◎5/26(木)「地震と原発」連続講座(第2回) 広瀬 隆さん 
「熊本大地震と原発…九州電力川内原発大丈夫?」
日時:5月26日(木)18:30開場、19時より21時 会場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 
問い合わせ:たんぽぽ舎 TEL 03-3238-9035  参加費:800円

◎5/28(土)槌田ゼミ第18回原発基本講座 槌田 敦さん
「4/25四国電力との公開ヒアリングの報告と今後の方針」
日時:5月28日(土)14時より16時 会場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 参加費:800円

◎5/29(日)学習会 浅野健一さん(元共同通信記者)
 「日本でえん罪がなぜ多発するか
日本の司法には正義を実現する構えがない、日本には三権分立がない、裁判官・弁護士・検察官は三位一体」
日時:5月29日(日)14時より16時  会場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 参加費:800円
  
  

『NO NUKES voice』衝撃の08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
「世に倦む日日」主宰者による衝撃の書!田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

『NO NUKES voice』衝撃8号本日発売! 【特集】分断される福島

福島〈反原発〉のローザ・ルクセンブルク、佐藤幸子さん(撮影=大宮浩平)
NNV08号表紙の人は〈脱原発〉大熊町議の木幡ますみさん(撮影=大宮浩平)

『NO NUKES voice』第8号がいよいよ本日25日発売となった。熊本を襲った前例のない長期間にわたる地震の被害は読者の皆さんも心を痛められていることだろう。阪神大震災の時もそうだった。関東、東海地方には大地震の到来が予想されていたが、まさか神戸を中心に壊滅的な大地震が来ると予想できた市民は皆無に近かったし、熊本の人びともそうだろう。気象庁はついに今後の予想について「わかりません」と発言するに至っている。

しかし、不幸ではあるが、もし川内原発が熊本の地震の影響で過酷事故を起こしていたら、被災者の方々の生活はさらに語り尽せない悲劇に覆われていたのではないか。5年前の福島では、防護服を着た人間がマスクもつけない子供達の被曝線量を測っていたおぞましい姿が蘇る。

〈メディアの危機〉の前線で抗い続けるTBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さん

◆【特集】分断される福島――権利のための闘争

今号も本誌は福島に足を運び、現地の人びとの声を頂いた。【特集】分断される福島──権利のための闘争では大熊町議会議員に当選された木幡ますみさん。政府のあやふやな説明、官僚の逃げ腰を許さずに最前線で怒りをぶつける姿が印象的な佐藤幸子さん。ご自身国政選挙に出馬することにより被災地の問題を全国に問いかけた木田節子さん。南相馬市の汚染地帯に住みながらも新しい運動の模索を続ける國分富夫さん。どなたからも悲惨な現実と格闘する穏やかながらのっぴきならない、現実に直面する人の凄みが伝わってくる。諦めと忘却を「時間」という武器を用いて待ち受ける政府や東電に対する揺るぎのない闘いの意思は健在だ。

〈学〉の世界で闘い続ける京大「熊取六人衆」の今中哲二さん

◆金平茂紀さん、今中哲二さん、中嶌哲演さん──必読の3大インタビュー

TBSテレビ報道特集でおなじみの金平茂紀さんはテレビ人の中では原発問題に詳しい屈指の人だろう。金平氏が語るテレビ報道の現状はいかなるものか。本誌だけへの告白が注目だ。

今中哲二(元京都大学原子炉実験所・助教)さんからは事故が起きてしまった今日の闘う戦術について原子力の専門家の立場から語って頂いた。

中嶌哲演さんは名刹、明通寺の住職でありながら福井県の反原発運動の先頭で闘い続ける哲学を仏教者の立場から伺った。

いずれも反原発の世界では欠くことの出来ない個性と知性が織りなす3大インタビューは誇張なく全国民必読だ。

◆爆弾対談! 『世に倦む日日』田中宏和さん×松岡利康本誌発行人

そして、『NO NUKES voice』は広範な多様性を認めあう運動や思想を指向する。その結果として現在避けて通れない問題が所謂「反原連」による一方的な断絶宣言から生じた問題である。

反原連の中心人物はその後「反差別」運動へとウイングを広げるが、ここでもやはり「排除の論理」を横行させ数々の問題を引き越こしている。昨年あたかも何か新しい学生の運動のように登場した「シールズ」は彼らがお膳立てした学生のタレント部隊に過ぎないこと、そして彼らの主張が実は「憲法9条2項」改憲であることは重大な問題であるにもかかわらず、これまでのところ主要メディアでは一切報じられていない。

その問題性を人気ブログ『世に倦む日日』を主宰する田中宏和さんと本誌発行人の松岡利康とが激論! 文字通り内容は「爆弾対談」となった。反原連―しばき隊―シールズに通底する暗部を余すところなく暴き出す。

「しばき隊は黒百人組!」と喝破した松岡利康本誌発行人
顔出しOKで爆弾対談に臨んでくれた「世に倦む日日」主宰の田中宏和さん

「爆弾対談」に加えて松岡論考「再び反原連への異議申し立て!―人の思いや好意には真摯に答えよ!異論を排除しない自由な運動への願い」。この題名はやや無いものねだりの感もぬぐえないが、果たして松岡氏の意図は如何に。

◆執念のおっかけ直撃取材は〈シニア右翼の女神〉櫻井よしこ氏!

そして、暫く鳴りを潜めていた「鹿砦社名物」直撃取材、今回は「あの」櫻井よしこ氏を自宅前で取材に成功!しかも櫻井氏は質問にも答え始めたため予想外の展開となった。逮捕一歩手前で敢行された取材班の成果にもご注目を!

執念で実現した〈シニア右翼の女神〉櫻井よしこ氏の自宅前直撃取材!
岩波新書『原発プロパガンダ』が話題の本間龍さんによる連載報告も衝撃的!

その他全国からの運動報告も満載だが、すべてを紹介することが出来ない。少なくとも前号『NO NUKES voice』7号発刊後からこの間、高浜原発再稼働時の事故による緊急停止、大津地裁における運転差し止めの仮処分決定。再度の言及になるが、熊本を中心とする例のない長期間に及ぶ大地震、そして5月17日には関東地方でも震度5弱の地震と、文字通り日本列島は激震常態が続いている。

地震の制御が出来ない以上、人災を最小限に食い止める=原発全機即廃炉しか日本列島住民に未来はないことを私たちは何度でも訴える。抗うことなしに花など咲きはしない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。
    
   
   

『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
5月26日発売!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

3・11甲状腺がん家族の会、設立会見詳報《2》千葉親子=代表世話人の談話

2016年3月12日、3・11甲状腺がん家族の会が設立された。設立時の正会員は5家族7人、これまでほとんどタブー視されてきた福島での被曝被害の核心を伝える貴重な設立会見を7回に分けて詳報する。今回は千葉親子(ちかこ)さんの会見談話。

◆被曝者になってしまったという切ない思い

代表世話人の千葉親子さん(元・会津坂下町議会議員)

東日本大震災と、それに伴う原発過酷事故が起きてから昨日で5年になりました。この間、国内外の多くの方々に励ましをいただいたことに感謝申し上げます。今、私たちは福島県の現状に向き合いながら、悩み、苦しみ、励ましあいながら、傷つきながらも頑張っています。

時間の経過とともに諸課題も多岐にわたり、個人の力ではどうにもならないことがたくさん聞こえてきます。甲状腺がん問題もその一つです。小さなお子さんからお年寄りまで二百万人の県民が、原発事故により放射能の降り注ぐ下で生活をしていた事実は、けして忘れてはならないことと思います。

事故後、甲状腺検査が始まりました。甲状腺がんの発見が相次ぎました。原発事故が起きるまでは、甲状腺がんという言葉などはあまり耳にしない病気でした。一巡目の先行調査から二巡目と検査が進む中、甲状腺がんと宣告されたご家族の方々の悩みや苦しみに私たちは出会いました。過酷な原発事故や放射能のことなど交錯する情報の中で、保養の手立ても無く過ごす中、子供のことを思い、親御さんたちは、「あの時、外出させなければよかった」「あの時、避難しておけばよかったのではないか」「無用な被曝をさせたのではないか」とご自分のことを責め続けておられます。3・11以降、甲状腺検査を受け、被曝者になってしまったという切ない思いを抱えながら誰にも相談できない状態に置かれているのです。

◆今、起きていることの事実に触れ、悲しい怒りがこみ上げた

福島県健康調査検討委員会では「放射能の影響とは考えにくい」と説明を繰り返すばかりです。専門家の間でさえも、原発に由来する・由来しないと意見が分かれました。そんな曖昧な中、がんと診断された方も、被曝をした多くの県民も不安を抱えた5年となりました。

私たちは昨年、ご家族の方々と集いました。その日の私は初めての出会いでとても緊張していました。きっと、ご家族の方たちも家族同士が出会えることの期待と、どんな集まりなのか、どんな人が来ているのか、と不安があったろうと思います。

懇談が始まってからは、話す家族も、聞く私たちも涙でした。今まで色々な所で聞いていた不条理な出来事が目の前で話すご家族の方に、今、起きていることの事実。そのことに触れ、私も悲しい怒りがこみ上げました。ご家族同士の意見交換では、医師への不信感や診療の制約、情報不足が話題になりました。「病気の症状がこれからどうなっていくのだろう」「毎日のとまどいを誰には話したらいいのだろう」「誰に相談したらいいのだろう」という生の声を聞き、ご家族の孤独感を知りました。

懇談が始まる前の緊張していた雰囲気も、お茶会のころには、皆で持ち寄ったお茶菓子を分け合って、とても和やかな雰囲気になり「来てよかった」「同じ思いで話すことができた」と明るいお顔になられたように感じました。

◆同じ悩みや痛みを抱えている方同士が話し合うことで癒される

子供たちは、原発事故の後、理不尽な形で甲状腺がんと診断され、心に傷がつき、手術で体にも傷を残すことになってしまいました。私たちは、日頃から情報交換や情報提供が出来て、気軽に話し合い、支え合えあうことのできる関係と気軽に相談できる場所が必要だと思いました。同じ悩みや痛みを抱えている方同士が話し合うことが、どれだけ癒されるのか、どんな力にも勝ることだと思いました。

一人で悩まないで下さい。多くの患者の家族の皆さんと手をつなぎ、語り合う場所を持ちましょう。情報を共有し、課題を共有しながらそこから希望を掴みましょう。患者家族の皆さまには、気軽にお声をかけていただきたいと思います。そして、周りには安心して集えるようどうか温かく見守って頂きたいと思います。わたしたちも、そのお手伝いをさせて頂きたいと思っております。このような会が身近な所で色々と広まり、家族の方が安心して話しのできるような場所ができることを望みながら私の挨拶とさせていただきます。


◎[動画]20160312甲状腺がん患者家族会設立記者会見(UPLAN三輪祐児さん公開)

▼白田夏彦[取材・構成]
学生時代に山谷、沖縄などの市民運動を訪問。その後、9・11同時多発テロ事件をきっかけにパレスチナ問題の取材を開始。第二次インティファーダ以降、当地で起こった非暴力直接行動を取材。以降、反戦や脱原発などの市民運動を中心に取材。現在、業界紙記者。

『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
5月27日発売!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

いまこそ論争を! 『NO NUKES voice』8号と『SEALDsの真実』が今週刊行!

『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争

鹿砦社の総反撃がいよいよ開始される。熊本の大地震を目の当たりにしながら、川内原発の運転を停止しない、原発マフィアどもに、反原発運動の仮面を被りながら、その実、警察権力と手を携え、ひたすら「排除の論理」で唯我独尊に陥った「反原連」へ、そして、「反原連」を出自とする、リンチ事件が専ら噂のしばき隊、その子分で「9条改憲」を持論とする「シールズ」の諸君へ!

◆25日(水)、『NO NUKES voice』第8号発売開始!

第一段は今週25日(水)発売の『NO NUKES voice』第8号である。第一線で闘ってきたジャーナリスト、研究者、市民運動家にご登場頂き、各持ち場での持論を展開して頂く。三者三様の立場から我々が学ぶべきものに限りがないことを、改めて認識させられる。

また、福島に寄り添う気持ちを忘れないためにも、今号も現地福島に取材班が足を運んだ。過酷な現実と向き合いながらも、将来を切り開こうとする揺るぎない意思をご紹介する。決して楽観論のみでは語れない福島の現実を私たちは直視してゆこうと考える。

田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

◆27日(金)、「世に倦む日日」田中宏和さんの『SEALDsの真実』発売開始!

そして27日の金曜日(場所によってはそれよりも早く)には「世に倦む日日」主宰、田中宏和さんによる『SEALDsの真実』がいよいよ書店に並ぶ。アマゾンで告知した直後、一時は人気第一位を記録した注目の問題作だ。

奥田愛基がすぐにTwitterで鹿砦社に対して侮蔑的な書き込みをしたことからも明らかなように、本書の出版については「シールズ」に関わった人々がかなりナーバスになっているようだ。しかし、心配は不要である。本書は「シールズ」に対して正面からの問題提起を行うものであり、彼らの庇護者である「しばき隊」が常套手段として用いる、恫喝、罵声浴びせ、身分明かしなどといった卑怯な手法は、当然の事ながら一切用いられてはいない。あくまでも社会科学的に「シールズ現象」とその背景についての考察が加えられた、学術書に過ぎない。しかしながら、であるからこそ、実は彼らにとっては痛撃となる可能性は低くないだろう。ツイッターの140文字空間にだけ、生息場所を持っている窮屈な言論に慣れ切った御仁には少々難解であるかもしれないが、それこそ「勉強」の為に、是非とも「シールズ」のメンバーには一読をお勧めするし、反論があれば是非有益な議論を交わしたいものである。

しばらく、大人しくしている間に、随分と座視できない〈事件〉が立て続けに起こっているようだ。その中に〈犯罪〉まで含まれているというから事は穏やかではない。

◆雑誌と書籍の使命は闊達な言論を喚起することだ!

『NO NUKES voice』8号は(毎号そうではあるが)編集部が総力を挙げ、やや危険と思われる水域にも敢えて足を踏み込んでいる。そのくらいの危険を冒すことなしに闊達な言論を喚起することはできないであろうし、雑誌を提供する者の最低限の義務だと私たちは考える。原則はゆるぎない。原発全機即廃炉を目指し、読者諸氏からの叱咤を期待する。

『NO NUKES voice』は決して不偏中立ではない。科学と人道に立脚しながら、非人間的存在である「原発」とそれが包含する「差別構造」を常に視野に入れながら敵を撃つ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
5月27日発売!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

〈鬼神〉羅紗陀、ここに復活!──NJKF2016.2nd

調印式と記者会見に臨むメインイベント出場の羅紗陀(右端)とヤスユキ(左端)─

ニュージャパンキックボクシング連盟が4月1日より一般社団法人に認可されました。前日公開計量も恒例となったNJKF興行。話題の中心は2年ぶりの復帰となる羅紗陀(キング)の復調ぶりと、昨年の最優秀試合となった健太(ESG)vs 大和侑也(大和)戦の再戦。WPMFで世界を獲った一戸総太(WSR池袋)とWMAFで世界を獲った駿太がWBCムエタイ世界をも制覇へ乗り出し、その第一歩、WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン. MOMOTARO(OGUNI)への挑戦権を争います。

NJKF 2016.2nd / 5月8日(日)後楽園ホール17:00~21:30
主催:NJKF / 認定:NJKF、WBCムエタイ日本実行委員会
前日公開計量、調印式:5月7日後楽園ホール5F 展示場14:00~15:00

◆61.0kg契約3回戦

羅紗陀(キング/60.85kg)vs ヤスユキ(Dropout/61.0kg)
勝者:羅紗陀 / 3-0 (主審 山根正美 / 竹村 30-29. 和田 30-29. 小林 30-29)

2年前に折ったスネでキックも問題なしの羅紗陀

2014年2月の中嶋平八(誠至会)戦で右スネを骨折した羅紗陀が復帰し、話題のヤスユキに激しい攻防の中、羅紗陀の我武者羅な攻めの、一発の破壊力を持つパンチも決め手に成らずも僅差の判定勝利。羅紗陀は右スネを蹴られる場面もあるも、ブロックも蹴って出ても問題ない動きで、駆け引きの緊迫感ある展開の中、終了。5回戦でやるべきカードだった。

◆WBCムエタイ日本ウェルター級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.大和侑也(大和/66.5kg)vs 健太(前チャンピオン/E.S.G/66.35kg)
勝者:健太 / 0-3 (主審 多賀谷敏郎 / 竹村 47-49. 和田 47-49. 小林 46-48)

日本人キラーだったゴンナパーからダウン奪ったハイキックも多様した健太
一発貰えば敗北の危機は昨年同様。大和侑也も諦めないラッシュ

健太が昨年のベストバウトとなった大和侑也戦で敗れた試合の雪辱戦に勝利して王座奪回し、第6代チャンピオンとなる。3Rに右フックでダウンを奪い、ポイントを守りきる。

一発貰えば敗北に繋がる緊張の攻防。一戸総太のパンチ

◆WBCムエタイ日本フェザー級挑戦者決定戦(58.0kg契約) 5回戦

WPMF世界フェザー級チャンピオン.一戸総太(WSR池袋/57.76kg)vs 駿太(谷山/58.0kg)
勝者:一戸総太 / 3-0 (主審 竹村光一 / 多賀谷 50-48. 和田 50-48. 山根 49-47)
一戸総太が的確差で優り勝利を掴み、MOMOTAROへの挑戦権を獲得。

◆66.0kg契約3回戦 

WBCムエタイ日本スーパーライト級チャンピオン.テヨン(キング/65.8kg)vs 喜入衆(フォルテス渋谷/65.85kg)
勝者:テヨン / TKO 1R 1:32 / 主審 小林利典

パワーあるハイキックで距離感を掴んでいくテヨン

テヨン(キング)がベテランの喜入衆(フォルテス渋谷)を左ストレート一発で倒す、カウント中のレフリーストップ。

◆NJKFスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦 

次回興行のタイトルマッチで対戦するチャンピオン.MOMOTAROと挑戦権獲得した一戸総太

1位.金子貴幸(GANGA/55.26kg)vs 2位.雄一(TRASH/55.05kg) 
勝者:金子貴幸 / 3-0 (主審 和田良覚 / 多賀谷 50-46. 竹村 50-46. 小林 50-47)

金子貴幸(GANGA)が雄一(TRASH)に距離感を支配し、ダウン奪って判定勝利、NJKFスーパーバンタム級王座決定戦を制し、第5代チャンピオンとなる。

◆67.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級チャンピオン.浅瀬石真司(東京町田金子/67.0kg)vs 栄基(MTOONG/66.78kg) 
勝者:栄基 / 0-3 (主審 山根正美 / 和田 28-30. 小林 28-30. 竹村 28-30)

若武者会主催のDUELでのラウンドガールとNJKF興行でマスコットガールを務めるタレントの菜緒さんと勝利のツーショット

元NKBウェルター級チャンピオンで現J-NETWORKウェルター級チャンピオンの栄基が過去倒している浅瀬石を返り討ち。

◆NJKFスーパーライト級挑戦者決定戦3回戦

1位.嶋田裕介(Bombo Freely/63.35kg)vs 2位.一輝(OGUNI/63.65→63.5kg)
勝者:嶋田裕介 / 引分け1-0.延長戦2-1
(主審 多賀谷敏郎 / 和田29-29.9-10/ 小林29-28.10-9/ 山根29-29.10-9)

いつも終盤になると怒涛のラッシュを懸ける一輝、嶋田の蹴りの攻勢に傾いたか、微妙な見極めの結果。

◆その他3試合

主要カードを飾る名選手が多くなった時代で、突出した実力や個性が無いと、更なるこの時代のエース格に選ばれ難いところ、羅紗陀はその風格を持ちつつ、怪我による戦線離脱が長く、勿体ない時間を過ごしました。元・日本ウェルター級チャンピオンだった父親(向山鉄也)に似た風貌やファイトスタイルも強いインパクトを与えています。自らも国内王座奪取し、タイトル歴は父親に追いついたものの、まだ名勝負は少ないところ、それは今後に期待です。

首都圏での興行は7月3日(日)NJKF若武者会主催のDUEL.7が新宿フェースで開催。7月23日(土)はディファ有明の昼の部でWBCムエタイジュニアリーグ第2回全国大会、夜のプロの部でNJKF 2016.5thが行われます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

5月26日発売!「世に倦む日日」主宰者による衝撃の書!田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』
5月25日発売!『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争

小雨の中、裁判傍聴列に並びながら想う「清原和博の悲劇」

5月17日の朝9時すぎ、日比谷公園には、覚せい剤取締法違反で逮捕された元プロ野球選手、清原和博の裁判傍聴抽選にやってきた人たちで溢れかえっていた。
小雨が寒さを倍加させる。
「3列に並んでください」と整理スタッフが叫ぶ。

栃木から来たという51歳の会社員は語る。
「俺もPL学園高校のOBです。世代を代表するスターだから、ぜひ立ち直って俺等の先頭を走ってほしいです。でもこういう発言が清原のプレッシャーになったのかな、とは思いますけど」

◆清原を助けるリスク

清原を助けようとしている連中の何割かは真剣だろう。

だが何割かは、清原を利用しようといるのにすぎないのではないかと思う。

清原を救うのに、証言した野球評論家の佐々木主浩は「野球のことをやらせるのが一番更正にはいいと思う」として、「親友だから証言をすることは即決で決めた」とまで言う。

だが、記者なら誰もが知っている。
佐々木は、裁判寸前まで「清原の情状酌量のための出廷」はさんざんぱら悩んだことを。

清原と暴力団のつながりがまた囁かれたら、佐々木の野球解説や講演の仕事まで激減する。
そうしたリスクを清原は、常に背負う覚悟が本当にあるのだろうか。

清原はヤクザに憧れて刺青を入れたというが、いまどき、現役のヤクザだってそうそう刺青は入れない。
サウナに入れない、子供とプールに行けない、銭湯に入れないなど失うものが多すぎる。
キックボクシングや総合格闘技の世界だって「刺青はご遠慮下さい」という案内が興業主からやんわりと選手に伝わっている。

◆「ヤクザがまわりにいれば、わしも大きく見える」と考えた清原の悲劇

清原の悲劇は「ヤクザがまわりにいれば、わしも大きく見える」と考えたことだ。
周囲にヤクザが何十人いようが、実際、大きく見えることはない。

僕も清原と仲がいいヤクザと酒を飲んだことがあるが、そのヤクザは「清原は俺等を利用して、高いギャラをあちこちからとれるように演出しているだけ」と清原の狙いを見抜いていた。

清原は、いったい更正までにどれくらいの年数がかかるのか。
かつてKKコンビと言われた桑田真澄は「苦しくてもホームランを打って何度も助けてくれた彼のことですから、人生でも放物線を描いてくれると信じている」と語った。
今の段階で判決は出ていない。だが、いずれにしても同世代のスターの復活を祈りたいものだ。
    

         
▼小林俊之(こばやし・としゆき)
裏社会、事件、政治に精通。自称「ペンのテロリスト」の末筆にして松岡イズム最後の後継者。師匠は「自分以外すべて」で座右の銘は「肉を斬らせて骨を断つ」。

5月26日発売!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』
5月25日発売!『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争

3・11甲状腺がん家族の会、設立会見詳報《1》河合弘之=代表世話人の談話

2016年3月12日、3・11甲状腺がん家族の会が設立された。設立時の正会員は5家族7人、代表世話人には河合弘之さん(弁護士)と千葉親子さん(元会津坂下町議)が就いた。これまでほとんどタブー視されてきた福島での被曝被害の核心を伝える貴重な設立会見を7回に分けて詳報する。

冒頭、設立趣意書が読み上げられる

◆司会者からのことわり

家族のお二方は、福島県からの中継での参加になります。お二方は、マスコミの前に出るのは、未だセンシティブで難しい状況になります。スカイプで、顔を隠しての会見になることをご了承ください。代表世話人3人のあいさつ後、甲状腺がんのお子さんを持つご家族二人のお話、質疑応答という流れになります。時間は1時間ほどと考えております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

◆代表世話人、河合弘之弁護士による「甲状腺がん家族の会」設立主旨談話

右から代表世話人の千葉親子氏(元・会津坂下町議会議員)、河合弘之氏(弁護士)、世話人の牛山元美氏(医師)

代表を務めております弁護士の河合でございます。本日、甲状腺がん家族の会を設立致しました。名称は「3・11甲状腺がん家族の会」といいます。目的は、社会的に孤立している甲状腺がん患者家族同士の親睦を高めるとともに、患者の治療および、生活の質を高めることができるように情報交換を行い、関係機関に働きかけることであります。現在の正会員はご家族7人であります。中通り在住が4家族、浜通り在住が1家族。男の子の家族が3家族、女の子の家族2家族であります。

それから、代表世話人は私、千葉親子(元会津坂下町議)、副代表世話人が武本泰(医療学校教師)、飛田晋秀(写真家)、世話人が牛山元美(医師)でございます。また、甲状腺専門アドバイザーとしても、医師の方に何人かお願いしてあります。

設立趣意書の読み上げ。※参考(当会HP)http://311kazoku.jimdo.com/

◆現行の訴訟では被曝被害の損害がスポッと抜けている

会設立の概要としては以上になりますが、代表世話人としての私の考えを少しご説明したいと思います。3・11以降、本当にひどい、規模の大きな深刻な被害が出ている訳ですが、ADR(裁判外紛争解決手続)で問題にされ、訴訟で問題とされているのは、全部、財物損害と慰謝料だけです。放射能被曝の被害、損害の核心はその放射線から発生した病気であります。健康被害などという、甘い表現で私は申しません。放射線による病気、そして、とりわけ小児甲状腺がん、それから小児にも青年・大人にも発症する白血病、これが被害の核心であるというふうに考えます。

放射能被曝被害の考え方が図で示される

日本で今、大変なADRと訴訟の争いが発生しています。訴訟は、一万人もの人が起こしています。でも、それは全部、財物損害と慰謝料だけなのです。ちょっと図で書きますと、この様に膨大な賠償の請求がきているわけです。まず、財物の損害。それから、精神的な苦痛とか恐怖に対する慰謝料。で、それだけが問題にされていて、こうした白血病になった人や甲状腺がんになったという、病気になった・身体に損害を被ったということがスポッと抜けているのです。

◆「考えにくい」は「考えられない」と同義

メディアの人は感じてほしいのですが「変だな?!」と「一番肝心の損害や救済の追及が欠けているな」と。それが皆、何のせいかというと、原発と因果関係があると「考えられない」、「考えにくい」ということで押さえこまれている、否定されているから。「考えにくい」というのは「考えられない」というのと社会的には同義語です。

そして、この財物損害は、要するに放射能のある所にいると、健康被害を被るから、病気になるから、怖いから(自宅など、すなわち放射線計測区域から)出るわけです。子供が病気になる、怖いから出るわけですよね。だから財物損害の原因も、その放射能によって病気になる怖れなわけです。精神的苦痛も、放射能で病気になるのではないかと思うからです。だから、膨大に発生し、追及されている損害の中核部分が、スポッと台風の目のように空白になっているのです。

◆ジグソーパズルの一番の中核部分

これが、(原発事故と放射線被害の)因果関係が、あるのかどうかわからないということになると、財物損害とか精神的慰謝料とか、全部、根拠が無くなるのです。気のせいだとか、大丈夫だよ、ということになると、全部根拠がなくなる。全てここから発生しているから、財物損害や慰謝料が発生する。ここを無くしてしまおうというのが、今のやりかただろうと私は考えています。ここが、スポッと抜けたままだとどうなるのか?まるでジグソーパズルの一番の中核部分がスポッと抜けたままになっているのですが、文字通り、底抜けになるのです。

つまり、放射能の被害はよくわからない、気のせいだよ、因果関係が考えにくい。そうなると、じゃあ、財物損害も発生しないということになりかねません。それから、慰謝料というのも気のせいだよと、家が放射能で住めなくなる…それも本当にそれで病気が発生するかどうかわからないから、はっきりとしないということになると、放射能は怖くない。放射能が怖くなければ、原発は怖くない、だから原発を再稼働しよう、原発をどんどんやろうと、こういう論理になっていくのです。

◆一番肝心な部分の戦い

だから、この事実をきちん明らかにして、そして因果関係があるのだということをはっきりさせていくことが、全ての面、被害者救済にも重要だし、原発を無くしていくことにも重要なんだ、ということが私の考えです。ここが、まさに天下分け目の戦いというか、一番肝心な部分の戦いにこれからなっていきます。今までは、この問題が、なぜスポッと抜けていたかというと、患者の皆さんが完全に分断されています。お互い、顔見知りでもありません。だから、団結も生まれていません。お互い名前もろくに知りません。完全に分断されているだけでなく、この治療の過程において、現代医療において当然認められるべき、インフォームド・コンセントとセカンド・オピニオンが完全に否定された状態です。

「なぜ、私がこんなことになったのでしょうか?」と患者さんが医師に聞いた時、「あなたは、こうこう、こういう訳で、結果こうなったのだよ」という「だから、こういう治療が必要で、こうで、こうやって手術するんだよ」と、さらに、それでも不安が出てくれば、さらに説明を受けるという形でやっていくというのが普通の医療じゃないですか。それが(医師が)「あなたは癌です。切りましょう。」―(それに対し、患者が)「原発事故が原因でしょうか?」と聞くと、(医師により)「違う!」と、そういう風に言われてしまう。

そこには、問答無用の恩恵的な、家父長的な治療があっても、インフィームド・コンセントがないんです。そして、不安だからセカンド・オピニオンを求めようとしても、そんな事をして、ばれようものなら大変なことになる、というような恐怖感を持っているから、セカンド・オピニオンを求められない。

また、セカンド・オピニオンが、本来出せる人たちも、今の体制の中では、福島県立医大とか福島県とかに遠慮して、余計なことを言うと後で面倒なことになるからということで、(例えば、福島県外の病院でセカンド・オピニオンを求めた場合)「私は福島県から来ました。がんと言われています。本当でしょうか?」と聞こうにも、福島県の方だと分かると「県立医大に行ってください」ということになる。セカンド・オピニオンも求められない。こうやって分断され、完全に抑え込まれている。

◆押さえきれない気持ち

そして、僕たちも、さっき申し上げたように、ここが原発の放射能被害の中核ですから、何度かアプローチをしようとしました。しかし、一切アプローチできなかった。たとえば、福島県庁や県立医大の方にお聞きしようと思っても「とんでもない、個人情報ですから、そんな事は教えられません。」となる。

分断と、個人情報保護ということの二つの壁により、私たちは166人という数が分かっても、どこの誰というのは分からなかった。私としては、これがこのまま放置されていたら、本当にこれは憂慮すべき事態だ、と思っていたところに「もうこれは、我慢できない!」とカミング・アウトする人たちが出てきた。これは、押さえきれない気持ちから出たのだと思いますよ。そして、私の所に相談があったので、私が最終的に代表世話人を引き受けることになった。それまでは、千葉さん、牛山さん御二方が大変尽力されたわけですが、私の問題意識としては、以上、お話しした通りです。

全ては何から始まるのかと言うと、患者さんがお互いに住所氏名を知り合い、どういう状態にあるのかということを情報交換することから始まる。そこからスタートするというのが、今日の会の設立主旨であります。


◎[動画]20160312甲状腺がん患者家族会設立記者会見(UPLAN三輪祐児さん公開)

▼白田夏彦[取材・構成]
学生時代に山谷、沖縄などの市民運動を訪問。その後、9・11同時多発テロ事件をきっかけにパレスチナ問題の取材を開始。第二次インティファーダ以降、当地で起こった非暴力直接行動を取材。以降、反戦や脱原発などの市民運動を中心に取材。現在、業界紙記者。

『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
5月27日発売!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

原発推進インチキ・メディアを斬る!《1》三橋貴明『原発ゼロの真実』

愛国者として名高い三橋貴明氏(経世論研究所所長・中小企業診断士)が書き下ろした「原発ゼロの真実」(TAC出版)は、冒頭から終わりまで突っ込みどころは満載だ。僕は第五章「原発と核燃料サイクル」の「小泉元総理のあきれた主張」に注目した。三橋はこう書く。

———————————————————————

三橋貴明『原発ゼロの真実』(TAC出版2014年7月)

 筆者は本書を執筆するに際し、「できるだけ、現場を訪れ、取材したうえで本を書く」と決意していた。そこで、実際に日本各地の「電力サービスの現場」を訪れ、各施設を自分の目で見たのである。だからこそ、日本のサービスについて、ろくな知識もないくせに、「原発ゼロ!」などと無責任に言ってのける政治家たちを軽蔑する。その代表が、2014年2月の東京都知事選挙において、引退していた陶芸家の元首相(細川護煕氏)を担ぎ上げ、「脱原発一本!」と例の調子で東京都の権力を奪おうとした小泉純一郎元総理大臣だ。小泉元総理は、「原発ゼロ」を謳い、我が国のエネルギー行政を混乱に陥れた挙げ句、2月9日投開票の東京都都知事選挙のために、細川元首相を引っ張り出した。小泉元総理の一連の発言は、以下の通りである。
「即時原発ゼロにすべき」
「(原発を)再稼働すると言っても核のゴミの最終処分場が見つからない。原発の運転の再開はせず、直に原発ゼロの決断をすべきだ」
「これから日本において、核のゴミ(使用済み核燃料のこと)の最終処分場のめどをつけられると思うほうが、楽観的で無責任すぎる」
「政治で一番大事なことは方針を示すこと。原発ゼロの方針を政治家が打ち出せば、知恵のある人が必ずいい案を作ってくれる」
「総理が決断すれば、原発ゼロ反対論者は黙ってしまう。原発ゼロに反対なのは自民党だけ」
 ひと言だけ、感想を述べよう。無責任きわまりない。使用済み核燃料の再処理や地層処分の技術は、ほぼ確立している。あとは、地層学的にもっとも適した地点を検討し、政治が決断すれば済む話なのである。
 ついでに書いておくと、たとえ時の総理大臣が原発ゼロを決断したとしても、筆者は黙らない。なぜならば、原発を再稼働しないことで、我が国のエネルギー安全保障が極端に弱体化し、貿易赤字が拡大し、我が国の国民が働いて稼ぎ出した所得が奪われ、経済成長が抑制され、エネルギー関連の投資も減少せざるを得ないためだ。
 脱原発を主張することは、それは個人の価値観である以上、構わないと思うが、それにしても「脱原発のプロセス」について、高レベル放射性廃棄物の処理を含めて提案しなければ卑怯というものだ。(三橋貴明『原発ゼロの真実』TAC出版)

———————————————————————

いいか、三橋よ! まずは脱原発のプロセスは、現在の政府に要求せよ。もはや「単なる老人」と化した小泉元首相が、過去を反省し、現在の政府に「脱原発」を突きつけていることは、過去を猛省している証左であり、これはこれで「是」ではないか。原発を推進するロジックを過去の人に求めるのはフェアではない。

まあ、こうした「原発推進猪突猛進文化人」に冷静な議論をせよというほうが無理というものかもしれないが。

(渋谷三七十)

『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
5月27日発売!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

上野路上ライブの定番スポット〈アメ横〉が生む成功神話

上野の路上ライブの定番スポットといわれるアメヤ横町周辺で、最近「無事にライブを終えたほど成功する」というジンクスがあるという。

現場はアイドルや歌手の新人や卵たちが場所を取り合ってライブをするため、道路使用許可をとる警察署では行列ができたり順番待ちもよくあるというほどだが、観光客の集中する繁華街とあって何かとライブが中断されやすい。何事もなくライブを負えるのは幸運であるため、アーティストの間では「無事にライブを終えたほど成功する。中断されたら売れない」なんてジンクスが生まれたようだ。

中断理由は様々。現場でギター片手に歌っていた男性歌手に聞くと「中国人観光客が押し寄せてスピーカーを蹴っ飛ばされ音が出なくなった人もいれば、揉め事でパトカーがやってきたり、目の前で迷子の子供が大声で泣き出したりで中断されることもあります。僕は前回、うるさい右翼の街宣車が近くに止まったままになって中断。その前は酔った花見客に絡まれケンカになってしまった」という。

逆に「14回連続で中断ナシという脅威のミュージシャンが先日、レコード会社の人にスカウトされたなんて話もある」という。ちょうどこの時期は、42年続く老舗のライブハウスグループRUIDOが開催するバンドコンテスト「L-1グランプリ」もあって、「私たちに投票してください」とPRしながら演奏する若いバンドもあり、4月25日の夕方に登場したのは、その「L-1」に準決勝進出を決めている女性デュオのespoir(エスポワール)。4年前から活動する華のある美女2人組だが、歌い始めて間もなく、すぐそばの雑居で火災が発生。「5Fのレストランから火が出た!」と、テナントの居酒屋やレストランの店員や客ら裏階段からドッと非難し始めた。サイレンが鳴り消防車が駆けつけ周辺は騒然。ライブ前に集まっていた見物客もそちらに気を取られ人が減ってしまった。それでも、2人組は力一杯歌い、一部ペンライト片手の熱心なファンが応援を続けた。

幸い火事はボヤ程度で済み、あたりに煙が立ち込めるようなこともなかった。espoirにとってはとんだ災難で、ファンからは「賞金20万円を狙うライバルバンドが非常ベルを押したんじゃないか」なんて邪推も聞かれたが、実際にボヤの発生は確認された。ジンクスに沿えば、espoirのライブにこんなハプニングがあったのは悪い兆候ということになってしまうのだが、ただしこの騒ぎで、周辺のライブミュージシャンは大半が演奏を中断しており、その中では唯一、諦めずに歌を完遂したのが彼女たち。その意味では「無事にライブを終えたほど成功する」というジンクスを死守したともいえる。

しかし、現場にいた取材カメラマンには不運があった。取材帰りに確認すると、撮ったはずのespoirのライブ写真がひと通り消失。あとで分かったのは火災が起きたとき、その様子を収めようと動いた際に何かにぶつかってカメラの記録部分に不具合が生じていたということ。美女2人組の路上ライブを伝えようとしたものが遮断されるとは、これがジンクスに従ったものかどうかは、「L-1」の行方で分かるのだろうか?


◎「espoir」ブログ http://ameblo.jp/espoir01/
◎ L-1グランプリ http://ruido.org/L1_grandprix/

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論! 蹴論!」の管理人。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』!
[増補新版]本当は怖いジャニーズ・スキャンダル
[増補新版]ジャニーズ50年史