鹿砦社代表取締役会長 松岡利康
同誌5月号に4ページ割いてもらい、同誌創刊20周年に際しての私たちの想いを書き連ね掲載しています。
本来なら、発売まもない号の一部を転載することはめったにありませんが、同誌を購読されていない方にもぜひお読みいただき、これを機会に他の記事もお読みいただくためにご購読をお願いいたします。
私たちのこの20年の軌跡は4ページに収まるものではありませんが、創刊当時の出来事など概略はつかめるかな、と思います。
日本時間の2025年4月3日、米国のトランプ大統領は、米国製以外のすべての自動車に25%の関税をかける、と発表しました。また、日本など(米国にとっての)諸外国は「非関税障壁」で米国からの輸入を妨害していると決めつけ、「相互関税」と称して自動車以外についての完全を一方的に決定しました。対中華人民共和国が34%、対台湾34%、対日本24%、対EU20%、対イスラエル17%などです。
広島でも例えば、米国に日本から輸出されるマツダ車にもマツダの米国工場が日本から輸入する部品にも関税がかかることになります。
◆米国自身が最終的には打撃を受ける
ただ、そもそも、米国はIT関係や宇宙関係、農業や金融は別として、多くの産業が空洞化しています。いまさら、輸入品に関税をかけたとしても、米国産業が復活するとは思えません。そもそも関税は米国に輸出する日本企業が払うものではなく、米国の輸入企業が払い、最終的には米国の消費者が負担するものです。
米国政府の税収は増えるでしょうが、凄まじい物価高騰で米国の消費者が打撃を受けるだけです。
◆トランプ体制永続化へ、関税でパフォーマンス?
1980年代末の冷戦構造崩壊後、米国は、ブッシュ父─クリントン─ブッシュ息子の歴代大統領が約20年にわたり、自由貿易を金科玉条としたグローバリズムを進めてきました。それによって、一部の米国の大金持ちが儲かったのも事実ですが、多くの庶民が格差拡大で取り残されてしまいました。それに対する不満が強まったのが、2008年のリーマンショックで、民主党のオバマ大統領は格差是正を掲げて当選。ところが、十分な成果が上がらず、2016年の大統領選挙でトランプさんがいわゆるラストベルトの労働者層の支持も集めて当選。
ただし、一期目のトランプさんが思ったほどの成果がなく、2020年の大統領選挙では民主党のバイデンさんに大統領の座を奪われてしまいました。しかし、2024年大統領選では、バイデンさんの途中リタイヤという民主党側のアクシデントにも漬け込む形でトランプさんが復活。効果が本当にあるかどうかは別として「グローバリズムに対抗しているパフォーマンス」として関税があるのではないでしょうか?
ただ、合衆国憲法上、トランプさんは三期目の大統領にはなれません。だからパフォーマンスの意味はないように見えます。しかし、次はトランプさんが副大統領として立候補し、大統領には当選後すぐにやめてもらい、トランプさんが昇格という抜け穴を使うのでは?という説もあります。トランプさんは、イスラエルのガザでのパレスチナ人虐殺を批判した外国人学生への弾圧も強めています。令状なしでいきなり拘束された外国人研究者もおり、事実とすれば中国等よりも酷いと思われる状況が一部で生じています。こうした『独裁』はいずれ、『トランプさんたちが気に入らない』米国人に対しても向かうでしょう。そうした独裁体制を続けるためにも、関税で求心力を高めることは必須なのかもしれません。
◆G7広島サミットで「忖度」も米国に完全にコケにされた広島
広島市では地元選出の岸田文雄総理(当時、爆心地の広島1区が選挙区)が主導して2023年にG7広島サミットが開催されました。このころから、広島の米国への忖度が加速しているように思えます。具体的には、2023年度から平和教育の教材から「はだしのゲン」や「第五福竜丸」が削除されています。
サミットで採択された「広島ビジョン」は西側のみの核兵器保有を正当化し、核兵器の先制不使用にすら踏み込まない、西側、特に米国のご機嫌取りの文書でした。
また、サミット後には当時のエマニュエル駐日大使が主導する形で広島市=平和記念公園と米国政府=パールハーバーの姉妹協定が結ばれてしまいました。米国はいまだに、原爆投下への反省も謝罪もありません。しかし、この姉妹協定で『米国は広島に原爆投下を許してもらった』というイメージを広げてしまっています。
さらに、広島市は2022年2月のロシアのウクライナ侵攻開始以降、8.6の平和記念式典にロシアとベラルーシを招待していません。原爆を投下しても謝罪も反省もない米国や、2023年の〈10.7〉以降、パレスチナ人の虐殺を加速させているイスラエル、日本とは正式な国交のない朝鮮(金正恩氏)は招待しているのと比べても奇異に映ります。パレスチナ国を招待していないことと併せ、米国忖度と言われても申し開きは出来ますまい。2024年の8.9平和祈念式典にイスラエル招待は見送り、パレスチナは招待した長崎市と比べても、異常です。
だが、これらの『忖度』にもかかわらず、2024年5月には、当時のバイデン政権が臨界前核実験をしていたことを公表。そして、トランプ政権に交代してからは、マツダ車に25%の関税をかけられてしまいました。まさに、踏んだり蹴ったりです。
◆ロシア・イスラエル・ハンガリー・朝鮮との「権威主義の枢軸」へ突き進む米国
既報の通り、ウクライナ和平では、トランプさんはロシアのプーチン大統領の肩を持っています。そして、欧州やウクライナが提出しているロシア軍の撤退を求める国連総会決議案にロシア、米国、イスラエル、ハンガリー、朝鮮が反対をしました(欧州や日本は賛成、インドや中国、アラブ諸国の多くは棄権)。独裁的な体制のことを「権威主義」とも言いますが、まさに、米国はロシアやイスラエルやハンガリー、朝鮮など「権威主義」の国とお仲間になったのです。もはや、建前であっても自由や人権の側に立つ米国政府は存在しません。
◆広島は米国忖度路線から脱却を、日本政府は冷静に対策を
広島市や広島県は、今回のトランプ関税を契機にサミット以来の米国に忖度する路線を卒業するときです。米国は、甘い顔をすればするほど、結局増長するだけ、ということは皆様もお分かりになったと思います。核兵器廃絶については、ここ2、3年のような米国政府に忖度する姿勢は捨て、平和首長会議加盟の世界の自治体やNGOなどとの「横のつながり」を重視しようではありませんか。
他方で、筆者は米国に報復を!という論調に対しても慎重です。米国についてはなるべくスルーし、その間に、日本自身の立て直しに全力を尽くすべきです。
まず、第一に、日本政府は財政出動により、日本国内産業への打撃を押さえるべきです。また、減らしすぎた大学予算を見直しなどして研究開発を活性化していくべきです。日本政府自体、非正規雇用増加など、この30年ほど、企業が労働者の給料を減らすことに依存するようになる政策をずっと続けてきました(1995年の日経連の「新時代の日本的経営」)。今回の関税騒ぎを契機に、改めていくべきです。
第二に、日本としては、行き過ぎた自由貿易至上主義、あるいはグローバリズムがトランプ政権という化け物を生んでしまったことの反省に立ちつつ、トランプ政権とは違い、公正な話し合いでグローバリズムからの転換する方向性を提案すべきです。
第三に、中国・インドやいわゆるグローバルサウス諸国との関係強化です。米国がロシアや朝鮮と「お仲間」になりつつある中、どこもかしこも「敵」に回してしまえば日本は「詰み」です。その状態では、日本がいくら軍拡をしようとも追いつきません。そもそも、米国自体が中華経済圏全体(大陸・台湾双方)に高関税をかけているのです。米国に頼らない国際経済体制作りというところでは一致点が見いだせるのではないでしょうか。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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去る4月5日、東京日比谷・日本プレスセンターで開催された「鹿砦社反転攻勢の集い」は、新年度始めの慌ただしい中、実数105名のご参集にて開催されました。
以下は、当日会場にて配布した私の挨拶文です。ご笑読いただければ幸いです。
私の開会宣言ののち、足立昌勝先生が、志途上で亡くなられた方々を追悼し『紙の爆弾』『季節』の継続発行、鹿砦社の復活を願い献杯の音頭を取られ会がスタートしました。
リレートークの冒頭は、かの重信房子さんの発言で会場がざわめきました。重信さんとは面識がなかったのですが、先輩に知っている方がいて興味津々、彼女が東京拘置所勾留中、面会に行ったり公判を傍聴したり、ささやかながらカンパ(私の経験から、勾留されていると収入がないわけで、なにかと物入りなのです)したりしたことのお礼ということで参加されました。重信さんを冒頭に持ってきたのは、特段意味がなく、この後、彼女の母校・明治大学土曜会の集まりがあるので中座せざるをえないという理由からです。
なお、当日の司会は、北は網走から南は沖縄まで全国の刑務所、少年院を回り獄内(プリズン)コンサート500回超の実績(もっと評価されて然るべきです)を持つ女性デュオPaix2(ぺぺ)さんが行ってくださり、重信さんは八王子医療刑務所在監中にPaix2さんのコンサートを観て感銘を受けたということでした。
4・5の報告は適宜行っていきます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『紙の爆弾』創刊20周年/『季節』創刊10周年に際して開催された本日の集いを、生前サポートされた方々の遺志を汲み反転攻勢への一大転機に! 鹿砦社代表 松岡利康
本日は年度始めの慌しいところ、鹿砦社にとって重要な集いに駆けつけていただき有り難うございます。肩の力を抜いて歓談し共に有意義な時間を過ごしましょう!
以下、私の個人的な想いも盛り込みつつ、『紙の爆弾』創刊20周年についての感慨、及び、長年サポートいただきながら志途上で亡くなられた方々の名を挙げ、その遺志を汲み、反転攻勢を勝ち取ることを決意表明いたします。
『紙爆』20年間の軌跡は、出発時から「名誉毀損」に名を借りた大弾圧で強権的にペシャンコにされ、その後、復活しつつも、新型コロナという、予想だにしなかったパンデミックにより、創刊時とは違った形でどん底に落とされ、もがきながら本日を迎えました。正直のところは、10周年の時のように余裕を持って迎えたかったです。
20年という月日は、たとえ小さな雑誌とはいえ読者の皆様方に確固とした信頼を培い、この5年の苦闘を支えていただきました。あらためてお礼申し上げます。
20年の想いは『紙爆』5月号120ページから4ページにわたり中川と共に記述しましたので、ぜひお読みください。この20年の軌跡は4ページに収まるものではありませんが……。
小なりと雖も、一つの雑誌を続けていくことは大変なことで、これまでの意義と反省点などを捉え直し、皆様方のご意見、アドバイス、また叱咤激励をいただき、次の10年に向けて私たちの想いを真に理解される皆様方と共に再出発したいと願っています。
◆当社に関わってくださった方々を追悼します
私たちが決して忘れてならないことは、生前多大にお世話になった方々のご厚意です。
コロナ直前の2019年秋に鹿砦社創業50周年の集いを東京、関西双方で行いました。その際にも少なからずの亡くなられた方々を追悼いたしました。
その後コロナが蔓延した時期に入っていくわけですが、このかんも、ゆかりのあった方々が亡くなられました。以下の通りです。──
中道武美さん(弁護士) 1990年代初めから関西の事案を依頼。主な事件に『タカラヅカおっかけマップ』出版差止事件、アルゼ名誉毀損(刑事)事件など。別紙記事参照。
内藤 隆さん(弁護士) 東京の事案を依頼。本年1月6日急逝。「大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)加害者から、本日ご参加の森奈津子さんと共に提訴された訴訟を受任いただき係争中でした。内藤さんをめぐる象徴的なエピソードとしては、別途記事にも書かれていますが、デモで機動隊の暴虐を監視に行って、そのあまりもの暴虐に抗議したら逮捕され日弁連が抗議声明を出したということで、熱血漢の内藤さんらしいと思いました。主な事件に、1996年に東京地検特捜部に刑事告訴された日本相撲協会八百長出版事件(不起訴)、これ以来のお付き合いで、アルゼ名誉毀損(民事)事件を担当。別途記事参照。
北村 肇さん(毎日新聞記者→『週刊金曜日』発行人) 松岡と学年が同じことで意気投合、鹿砦社の出版活動の強力な理解者。生前は『金曜日』と鹿砦社の橋渡しをされ、毎月(毎週の時もあり)1ページ広告を掲載。北村さんが亡くなってから『金曜日』から広告掲載を拒絶され絶縁宣言をされました。
山口正紀さん(ジャーナリスト) 「名誉毀損」出版弾圧事件の訴訟の公判を、東京から毎回傍聴、そのレポートをその都度『金曜日』に寄稿。のち「大学院生リンチ事件」でも、裁判所に意見書(本日販売の『暴力・暴言型社会運動の終焉』に収録)を提出されたり準備書面作成にもご協力、本日ご参加の黒薮哲哉さんと共に積極的にご支援いただきました。
白井 順さん(経済学研究者) 1980年初めに出会う。私よりも1歳下ということもあり弟分的存在。学識があるにもかかわらず出世欲がなく生涯家庭教師やアルバイトで糊口をしのぎ、好きな分野の研究に専念。鹿砦社からは『思想のデスマッチ』の著書があります。もっと彼の学識を活かしてやれば、と悔やみます。
鈴木邦男さん(思想家) 1980年代前半に出会い、以降、鈴木さんの名を論壇に知らしめた『がんばれ!新左翼』はじめ当社から数々の書籍を出版、出版社としては今でもその数は一番多いです。「大学院生リンチ事件」で被害者側に立つ私と決裂、残念ながら歩み寄りなきまま逝去されました。
上記のように、ここ5年余りで私たちは、長年にわたり訴訟や言論における強力なブレーンとなっていただいた方々を失いました。この喪失感は私たちにとって大きいです。
もう私の時代も終わった感があります(とはいえ、現実問題、そうは問屋が卸しませんが)。今後は、次世代を担う中川が新たなブレーンを開拓、形成していくことになりますので、皆様方のご協力をお願いいたします。
本日お持ちした書籍を販売いたしますが、この一覧を見て、よくぞこれだけの本を作ってきたな、という想いにかられました。このリストの大半が私が直接担当したものですが、どの本にも思い入れがあります。ぜひお買い求めいただき、お読みいただければ幸いです。
最後になりますが、本日の集いは、今年74歳になる私にとって、いわば最後の檜舞台であり、このような日本のジャーナリズムを代表する会場で 私たちの出版活動をご理解いただいている皆様方と共に有意義な時間を過ごせる機会を与えられたことに心より感謝いたします。有り難うございました。
(松岡利康)
5月号では、開戦3年を過ぎたウクライナ戦争を“終わらせない勢力”の存在をジャーナリスト・田中良紹氏が指摘。現在を含め、戦争終結に向かう動きを封じ込めてきたネオコン勢力と、その影響を強く受けつつ世界を席巻する“リベラル・デモクラシー”に切り込みました。日本国内では、自公少数与党をなぜか打倒しようとしない野党勢力を国際政治学者の植草一秀氏が分析します。なぜ、昨年衆院選で国民が自公に鉄槌を下したにもかかわらず、政権交代の機運が早々に途絶え、自公政権存続の方向性が直ちに定まったのか。今国会の焦点のひとつであった高額療養費制度改悪とアベノミクスの関係、またそれが凍結ののちに、次期参院選の重要なキーポイントとなること。また企業団体献金禁止を妨げる野党勢力についても明らかにしています。
全国で「財務省解体デモ」が盛り上がる中、財務省が持つ“異常な権力”について、『消費税という巨大権益』『本当は怖い税金の話』などの著作を持つ元国税調査官・大村大次郎氏が徹底解明。「日本の財務省は先進国ではありえないほどの巨大な権力をなし崩し的に保持している」と断言する大村氏の言葉は、問題意識を持つ人のみならず必読です。さらに“減塩信仰”の嘘と「塩の効用」を神戸・ナカムラクリニックの中村篤史医師が解説。健康に関する情報としてはもちろん、私たちが日々いかに“洗脳”の中にあるか、考えるきっかけとなるものです。
本誌発売後に開催される「大阪・関西万博」で、石毛博行事務総長は“成功”の基準を問われ、「想定来場者の2820万人は想定であって目標ではない」と答えています。そもそも万博は、宣伝して客を呼ぶ商業イベントではないとは思っていましたが、人が来ないということは、関心を持たれていないということ。つまり、計画当初から問われていた「開催の意義」が、万博そのものにはやっぱりなかったということです。結局のところカジノ万博であり、加えて今月号で植草一秀氏は「産廃と淡路島」に言及しています。福島第一原発事故で国と東京電力旧経営陣を免罪した最高裁判事の顔ぶれを明らかにしていますが、危険が明らかな原発や失敗が明らかな万博を止められない政治・社会の構造をなんとか変えることこそ、いま求められていることです。
本誌はついに創刊20周年。編集長を務める私自身が「右も左も」どころかゼロから出発し、試行錯誤を繰り返してきました。いま、書店の減少がなお加速し、コンビニも雑誌を扱わない店が増えました(本誌はもともと書店のみですが)。一時は隆盛を見せた保守系雑誌も発行部数を減らしているといいます。ただし、経済的な意味での需要の減少は避けられないとしても、社会的需要=言論としての価値は増えていると感じています。課題は山積みです。『紙の爆弾』はそこにより深く楔を打ち込むとともに、読者に迫るメディアであろうと考えています。 全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いします。
『紙の爆弾』編集長 中川志大
〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司
◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DM4Y59YX/
『報道しないメディア』(喜田村洋一著、岩波書店)は、英国BBCが点火したジャニー喜多川による性加害問題の背景を探った論考である。著者の喜田村氏は、弁護士で自由人権協会の代表理事の座にある。メディア問題への洞察が深く、出版関係者や大学の研究者からありがたがられる存在だ。
その喜田村弁護士が著した本書は、ジャニーズ問題がほとんど報じられなかった背景に、報道すれば返り血を浴びる構図があったと結論づけている。喜田村氏は、ジャニーズ問題を報じてきたマスコミが『週刊文春』と『週刊現代』の2媒体だけであった事実を指摘した上で、次のように述べている。
ジャニー喜多川氏の性加害だけでなく、マスメディアにジャニーズ事務所の気に入らない記事が掲載されたりすれば、ジャニーズ事務所は、当該メディアを出入り差し止めにしたり、そのメディアの発行会社の雑誌全部にジャニーズ事務所の所属タレントを出演させなかったり、さらにはそのメディアの上層部に直接不満を言いつけるということをやっていた。
報道に踏み切ることで、不利益を被る構図が存在したという説である。改めて言うまでもなく、そのような構図を構築したのは、報道対象であるジャニーズ事務所の側である。
◆「押し紙」問題の性質とも重なるジャニー喜多川の事件の性質
ワイセツ行為がらみの事件の裏付けを取る作業はそう簡単ではない。ジャニー喜多川から提訴された『週刊文春』の代理人を務めた喜田村弁護士は、法廷でそれを立証するための着目点として、被害の「訴えが10年以上も続けられている」点を上げている。「そんな告発が続けられるのは何か理由があるはずだ。私は、ジャニー喜多川に対する反対尋問で、この点を衝くことを決めた」という。
告発の数量と連続性という観点から言えば、ジャニー喜多川の事件の性質は、やはりほとんど報道されない「押し紙」問題の性質とも重なる。後者は、1960年代から内部告発が始まり、半世紀以上も告発が続いている。現在も、毎日新聞社に対する「押し紙」裁判が大阪地裁で進行している。時代をさかのぼり、今世紀に入るころには、福岡地裁・高裁で読売新聞社に対する「押し紙」裁判が多発した。
後述するように『週刊新潮』も法廷に立たされた。これら一連の裁判における新聞人の主張は、「押し紙」は歴史的に見ても、一部たりとも存在しないというものである。とりわけ読売のK弁護士は、この点を宮本友丘専務(当時)に尋問の場でも証言させた事実もある。一貫して、「押し紙」行為の存在と連続性を否定してきたのである。
◆なぜ「押し紙」問題が、ほとんど報道されないのか?
筆者(黒薮)にとって、『報道しないメディア』は、「押し紙」問題や関係者の倫理観を考える上で参考になる。
なぜ、新聞業界の内部で公然の事実となってきた「押し紙」問題が、ほとんど報道されないのか? 答えは、本書で喜田村弁護士がジャニーズ問題を例に指摘した構図にある。「押し紙」行為を検証すれば、その連続性が明確であるにも関わらず、それを報じれば、マスコミが大変な不利益を被るリスクがあるからだ。その構図を構築したのも、ジャニー喜多川のケースと同様に報道対象にされる側である。つまり新聞社にほかならない。
具体的な不利益の中味については、たとえば自社の出版物の書評が新聞紙面から締め出されるリスクである。日本の新聞社が大量の「押し紙」を隠しているとはいえ、それにもかかわらず相対的に見れば部数は多く、書評の宣伝効果は高い。
新聞研究者やジャーナリストが「押し紙」にタッチしない点について言えば、新聞社問題の核心にふれると新聞紙上で自分の意見を表明する場を失うリスクが高くなるからだ。
しかし、誰もが最も恐れているのは、恐らく「押し紙」報道に対する高額訴訟である。読売による提訴件数は推論ではなく、具体的な事実が裁判記録として残っている。その記録は、今後も消えることはない。
◆福岡県の元販売店主が起こした地位保全裁判
意外に知られていないが、実はマスコミが「押し紙」を大々的に報道した時期が一度だけある。それは2008年ごろである。
その発端は、福岡県の元販売店主が起こした地位保全裁判で、福岡高裁が、読売の「押し紙」行為を認定したことである。これが2007年12月で、その後、「押し紙」報道が本格化するのである。
司法が新聞社の「押し紙」行為を認定したのは初めてだった。本題からはそれるが、参考までに判決文から、「押し紙」を認定した箇所を紹介しておこう。
販売部数にこだわるのは一審被告(黒薮注:読売のこと)も例外ではなく、一審被告は極端に減紙を嫌う。一審被告は、発行部数の増加を図るために、新聞販売店に対して、増紙が実現するよう営業活動に励むことを強く求め、その一環として毎年増紙目標を定め、その達成を新聞販売店に求めている。このため、『目標達成は全YCの責務である。』『増やした者にのみ栄冠があり、減紙をした者は理由の如何を問わず敗残兵である、増紙こそ正義である。』などと記した文章(甲64)を配布し、定期的に販売会議を開いて、増紙のための努力を求めている。
米満部長ら一審被告関係者は、一審被告の新聞販売店で構成する読売会において、『読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない。』とも述べている。
この福岡高裁判決の後、マスコミは「押し紙」問題を取り上げ始めた。『週刊ダイヤモンド』や『SAPIO』などが、新聞社特集を組み、その中で「押し紙」問題に言及するようになった。他のメディアも追随した。
しかし、同時に、読売による裁判攻勢が始まったのである。読売が裁判を連発して、言論機関が言論に対する審判を裁判所に委ねる異常な事態になったのだ。読売は、まず、最初に筆者に対して、2件の裁判を起こしてきた。メディア黒書に対する攻撃である。さらに『週刊新潮』が「押し紙」問題を連載すると、筆者と新潮社に対して約5500万円を請求する名誉毀損裁判を仕掛けてきた。この時点で、筆者に対する請求額は総額で約8000万円に膨れ上がった。3件の裁判の被告になった。
裁判を起こしていた元店主が、読売から「反訴」される事態も起きた。反訴で敗訴した元店主が、読売のK弁護士らによる法手続きにより、自宅を差し押さえられたこともある。提訴による委縮効果は計り知れない。
こうした状況の下で、極めて少数の例外を除いて、マスコミによる「押し紙」報道は沈黙したのである。喜田村弁護士が解析したジャニーズ問題の報道と同じ構図が、「押し紙」問題の報道でも表れたのである。
◆「押し紙」報道を抑制してきたK弁護士とは誰だったのか?
幸いにジャニーズ問題の方はBBCの報道により、一応の解決を見た。しかし、「押し紙」問題は、解決の目途が立っていない。筆者の試算では、35年で少なくとも32兆6200万円の不正な資金が新聞社に流れ込んでいる。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、統一教会の霊感商法による被害額が35年間で1237億円であるから、比較にならない状況が生まれているのである。
ところで読者は、読売から委託を受けて、「押し紙」報道を抑制してきたK弁護士の実名をご存じだろうか?それは、『報道しないメディア』を著した喜田村洋一弁護士なのである。喜田村弁護士は、一方ではジャニーズ事務所を批判し、もう一方では読売新聞社を擁護する。著者の思想の方向性が、筆者には分からない。
【参考記事】喜田村洋一弁護士に関するメディア黒書の全記録
【参考記事】読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由
【参考記事】国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に
※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年3月17日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu
睦雅はONE Friday Fightsへの雪辱誓う前哨戦をKO勝利。
瀧澤博人も再挑戦へ復活のKO勝利。
細田昇吾は実力発揮する前にKO負け。
西原茉央、17歳のテクニシャンに敗れる波乱。
プロ第1試合前に行われた2024年度年間表彰式は6名が表彰されています。
◎KICK Insist.22 / 3月23日(日)後楽園ホール17:15~20:40
主催:(株)VICTORY SPIRITS、ビクトリージム / 認定:ジャパンキックボクシング協会
年間表彰選手
最優秀選手賞:睦雅(ビクトリー)
優秀選手賞2名:西原茉生(治政館)、勇成(Formed)
技能賞:勇成(Formed)
KO賞:睦雅(ビクトリー)
殊勲賞:皆川裕哉(KICK BOX)
功労賞:政斗(治政館)
新人賞:菊地拓人(市原)
最優秀選手賞の睦雅は昨年7月、WMOインターナショナル・スーパーライト級王座獲得し、国内は3勝。ONEでは5月の初出場から2連勝し、2022年9月から11連勝となりKO賞も受賞。
西原茉生は王座奪取と、初戦の三日月蹴りによるKO勝利がインパクトがあった。
勇成は挑戦者決定戦で樹(治政館)に勝利し、皆川裕哉を倒して王座奪取した成長が見られ技能賞も受賞。
◆第13試合 63.0kg契約 5回戦
WMOインターナショナル・スーパーライト級チャンピオン.睦雅
(=瀬戸睦雅/ビクトリー/ 1996.6.26東京都出身/ 62.7kg)27戦20勝(13KO)5敗2分
VS
ポムロップ・ルークスワン(元・S-1スーパーフェザー級覇者/タイ/ 62.8kg)
98戦70勝24敗4分
勝者:睦雅 / TKO 1ラウンド2分30秒
主審:少白竜
初回、睦雅はローキックから前進し、ボディーブローから顔面狙った追い足でポムロップをロープ際に下がらせるとパンチ連打。ミドルキック、ローキックを加えて様子を見て更に戦略は練られて行く。ポムロップは前蹴り、間合い見て右ミドルキックで出て来るも、睦雅もハイキックで返し、軽くパンチの交錯後、左フック一発で仕留め、カウント中のレフェリーストップとなった。
睦雅は控室で「もう少し長いラウンド行きたいプランではあったのですけど、試したかったことや、引き出しも増やしたかったですけど、やっぱり前回のONEでの負けがあったので、1秒でも早く倒したいという気持ちが出てしまいましたね。」と語った。
リング上でのマイクアピールでは「前回、負けちゃったんで気が張ってて駄目だった部分もあるんですけど、まあKOで復活出来たので、でもまだ完全復活ではないので、近くまたあの舞台へやり返しに行くので、そっちの舞台でもKOするので楽しみにしていてください。」とONEでの雪辱戦も誓っていた。
睦雅は昨年5月からタイ・ルンピニースタジアムでのONE Friday Fights に出場し2連勝していたが、今年1月31日のONE Friday Fights 95ではエー・ミウ(ミャンマー)に第2ラウンド、ダブルノックダウンでの41秒KO負けで初黒星を喫した。
今日は勝ったが、ONEでの雪辱は果たしていないことが、まだ大舞台での完全復活ではないということだろう。
◆第12試合 57.5契約3回戦
WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 57.2kg)
43戦27勝(15KO)12敗4分
VS
プラカイトーン・トー・タラヤン(タイ/ 57.5kg)
79戦55勝21敗3分
勝者:瀧澤博人 / KO 2ラウンド2分23秒
主審:椎名利一
長身の瀧澤博人がローキックとパンチを上手くコントロールし。プラカイトーンの出方を見て臨機応変に攻める。プラカイトーンが圧力掛け、やや前進するも瀧澤はロープやコーナーに詰められても落ち着いて捌く、首相撲に持ち込むと上背の有利さからウェイトを掛け、左ヒジ打ちでプラカイトーン右眉辺りをカットした上、プラカイトーンの蹴りに合わせた右ストレートヒットをボディー打ち込み、ノックダウンを奪った。諦めた表情のプラカイトーンはテンカウントを聞いた。
瀧澤博人は控室で、「最後はボディーストレート、みぞおちを打ち抜きました。その前の縦ヒジ打ちが眼球に当たった感じだったので、これは心折れたかなと。今後はもう一回ぐらい説得力ある試合で倒さないと納得して貰えないんで、皆が納得した形で再挑戦したいです。」と完全復活と昨年叶わなかった世界への再挑戦を誓っていた。
リング上では、「昨年、結果が振るわなかったこともあったんですけど、それでも応援してくださる皆さんの御陰で強くなった帰って来ることが出来ました。今日、更に強くなったことを証明することが出来たので、もう一度、昨年獲り損ねたWMCの世界王座と、そしてラジャダムナンスタジアム王座挑戦していくことをここに表明したいと思います。難しい夢だからこそ、叶わないと言われる夢だからこそ追う意義がありますし、叶った時は嬉しいんだと思います。だから僕は諦めず、最後までその夢を叶える為に一生懸命頑張って行きたいと思います!」と語り、このままでは終わる気は全く無く、ヤル気満々の闘志を物語っていた。
◆第11試合 52.0契約3回戦
ジャパンキック協会フライ級チャンピオン.西原茉生(治政館/2003.6.27埼玉県出身/ 52.0kg)
16戦10勝(5KO)5敗1分
VS
WMOインターナショナル・ミニフライ級チャンピオン.コウシ・ノーナクシン
(=曽我昂史/ノーナクシン/2007.10.3埼玉県出身/ 51.85kg)
18戦12勝(2KO)6敗=タイ現地5勝5敗含む
勝者:コウシ・ノーナクシン / 判定0-3
主審:西村洋
副審:椎名28-30. 中山28-30. 少白竜27-30
ローキックから距離が詰まり首相撲へ移るとムエタイテクニック優るコウシがバランス良く組み合ってヒザ蹴りで攻め西原茉央を苦しめる。ヒジ打ちで西原の鼻の左側面カットと腫れ上がらせるダメージを負わせた。ウェイト掛け優位に立つ首相撲はコウシが上手い攻め。離れても蹴りのタイミングが上手い17歳のムエタイボクサーが日本人でも可能なんだという時代となった。コウシがテクニックで圧倒の大差判定勝利となった。
「今、17歳なんですけど!」とマイクで言った途端、場内が響めいた。「17歳でこんなテクニシャンとは!」といった空気。
「タイで試合と練習多くやっていて、自分(コウシ)のこと知らない人沢山居ると思うんですけど、今日リングに立って、フライ級チャンピオン倒して自分の名前売ろうと思って、階級上(の相手)でも勝てまして、それで今日、別の会場なんですけど、ONEとかやっていて、凄いなと思っているんですけど、自分も数年後、ああいう場所に立ったりとか、タイでラジャダムナンスタジアムのタイトルとか狙っているので、今日、自分の名前覚えて帰って貰えると有難いです。そうなる自信ありますし、それぐらいの覚悟決めてやっているので、自分のこと注目してください!」と1分半に渡る説得力あるアピール。17歳でこれだけ言えるのは大物の風格があった。
帰り際の控室では「まだ使っていないムエタイ技いっぱいあるんで今後も注目お願いします!」と語っていた。
◆第10試合 スーパーフライ級3回戦
ジャパンキック協会フライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/1997.6.4埼玉県出身/ 51.9kg)
23戦14勝(3KO)7敗2分
VS
NKBフライ級5位.滑飛レオン(テツジム滑飛一家/ 52.1kg)10戦7勝(5KO)2敗1分
勝者:滑飛レオン / KO 1ラウンド2分21秒
主審:勝本剛司
ローキックの様子見からパンチに入った滑飛レオン。右ストレートヒットしてノックダウンを奪うとすでに効いてしまったか細田昇吾。再開後も滑飛が間合いを計り、細田の反撃を警戒しながらパンチで詰めていく中、再び右ストレートでノックダウンを奪った。このラウンドを凌ぎたい細田だが、滑飛のラッシュを凌げず連打を受け、3ノックダウンを喫してしまった。あっけないノックアウト負けに、この先の展望も後退となってしまった細田はまた出直しだろう。
◆第9試合 ウェルター級3回戦
ジャパンキック協会ウェルター級3位.正哉(誠真/ 66.4kg)11戦7勝(3KO)4敗
VS
梅沢遼太郎(白山道場/ 66.0kg)10戦3勝(1KO)2敗5分
勝者:正哉 / TKO 2ラウンド1分9秒
主審:中山宏美
蹴りの攻防からパンチ、正哉が連打の猛攻を掛けたが、何とも危なっかしい打ち合いの中、ラウンド終了間際に右ストレートでノックダウンを奪った。梅沢遼太郎はゴングには救われず、カウントは8で第1ラウンド終了。第2ラウンド、正哉は蹴りもパンチも貰う危なっかしい中、右バックハンドブローでノックダウンを奪い、梅澤が立ち上がったところで連打のラッシュ。レフェリーストップとなった。
◆第8試合 ライト級3回戦
ジャパンキック協会ライト級2位.菊地拓人(市原/ 61.1kg)8戦6勝(3KO)2敗
VS
青木大好き(OZ/ 60.5kg)13戦7勝6敗
勝者:菊地拓人 / 判定2-0
主審:少白竜
副審:西村30-29. 勝本30-28. 中山29-29
殺伐とした開始から互いの蹴り合う間合いとパンチの攻防。青木のローキックがヒットしていたが、菊地拓人は効いた様子は無く、蹴りを加えたパンチの打ち合いとなるも、激しさ増す中、忍耐の戦いは菊地拓人が圧していく中、僅差で制した。
◆第7試合 58.0kg契約3回戦
ジャパンキック協会フェザー級5位.眞斗(KIX/ 57.4kg)13戦5勝(2KO)6敗2分
VS
同級6位.石川智崇(KICKBOX/ 57.7kg)8戦4勝3敗1分
勝者:石川智崇 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:少白竜26-30. 勝本27-30. 中山27-30
初回、上下の蹴りの攻防、石川智崇がバランス良くやや圧した流れ。第2ラウンドにはパンチ連打か、石川がノックダウン奪い、組み合っても攻勢を維持してヒジ打ち、眞人の右眉尻辺りをカット、打ち合いから蹴りで両者の攻防が増し、第3ラウンドも激しい攻防の中、石川のヒジ打ちで更に眞人の額上部もカット、首相撲も石川が優勢を保っていく。眞人も諦めないパンチと蹴りで前進するも、石川智崇が大差判定勝利を掴んだ。
◆第6試合 70.0kg契約3回戦
我謝真人(E.D.O)VS白井大也(市原)は白井大也が体調不良に陥り試合中止
◆第5試合 バンタム級3回戦
松田悠哉(誠真/ 53.5kg)5戦1勝(1KO)4敗
VS
JKイノベーション・バンタム級8位.翔力(拳伸/ 53.1kg)9戦5勝(1KO)3敗1分
勝者:翔力 / KO 1ラウンド1分2秒
主審:勝本剛司
パンチとローキックの攻防の中、翔力の左ボディブローヒットで松田悠哉は効いて蹲ってしまい、そのままテンカウントとなった。
◆第4試合 53.0kg契約3回戦
花澤一成(市原/ 53.0kg)10戦1勝(1KO)6敗3分
VS
カズキ・シッソー(トースームエタイシン/ 53.0kg)11戦5勝(1KO)5敗1分
勝者:カズキ・シッソー / TKO 2ラウンド1分52秒
主審:中山宏美
蹴りの攻防は花澤一成がやや優勢気味に進み、第2ラウンドも花澤が蹴りで優る攻勢からカズキ・シッソーが花澤の左前蹴りに合わせた右ストレートでノックダウンを奪うと花澤は立ち上がろうとするも立ち上がる前に崩れ落ち、カウント中のレフェリーストップとなった。花澤はまたも打たれ脆いところを突かれた様子。
◆第3試合 ミドル級3回戦
前田啓伍(SOGA KICKBOXING)、怪我により欠場
JOE(=カンパイ・カンパナート/タイ/ROCK ON/ 71.6kg)代打出場
VS
タイン・ノーナクシン(タイ/ 72.5kg)39戦27勝10敗2分
勝者:タイン・ノーナクシン / 判定0-3
主審:少白竜
副審:中山28-30. 勝本29-30. 西村28-30
◆第2試合 フェザー級3回戦
日本猿サトルJSK(治政館/ 57.0kg)1戦1勝
VS
久住裕翔(白山道場/ 56.6kg)4戦1勝3敗
勝者:日本猿サトルJSK / 判定3-0 (30-28. 30-29. 30-29)
◆プロ第1試合 ライト級3回戦
西郷隆道(野本塾/ 61.0kg)1戦1敗
VS
山守浩司(OZ/ 60.8kg)1戦1勝(1KO)
勝者:山守浩司 / TKO 2ラウンド1分10秒 / タオル投入による棄権
◆オープニングファイト アマチュア80.0kg級2回戦(90秒制)
西村寿一(SOGA KICKBOXING/ 78.4kg)VSTAKUMI(Y‘zd石神井公園/ 79.6kg)
勝者:TAKUMI / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:椎名18-19. 西村18-19. 少白竜18-19
《取材戦記》
今、注目の出場したい舞台は「ONE Champion Ship」と皆が口にするようになりました。これも現在のステータスである。瀧澤博人が目指すラジャダムナンスタジアムなどの殿堂スタジアム王座は90年代までのようなスーパースター揃った隆盛期には及ばないが、最高峰として永く継続して来た伝統が強み。プロモーター主導のビッグイベントタイトルは今盛り上がっていても、いつ廃れるか分からないからその時代の旬のものと、殿堂タイトルを獲得しておく意義はあるだろう。それが歴史に名を残し、群衆の記憶に残る存在となるのである。
睦雅は国内では10連勝中。タイ・ルンピニースタジアムでのONEで負けたと言っても今回が再起戦とか復活したとは感じ難い。ただ大舞台での敗戦は大舞台でしか返せないリベンジ精神はあるでしょう。
西原茉央をテクニックで優った17歳のコウシ=曽我昂史はアマチュアで268戦223勝(40KO・RSC)32敗13分。ジュニアキックで50冠という幼い頃から戦って来た戦歴である。プロでは国内8戦7勝(2KO)1敗。タイで10戦5勝5敗。さすがにタイでは勝率圧倒とはいかない壁の厚さがあります。幼い頃から始めるジュニアキックは2010年頃から始まり、那須川天心がその先駆者とも言える存在だが、曽我昂史が17歳でこれだけのテクニシャンとはタイで鍛えられてきた経験値が大きいが、今後が恐ろしく楽しみな選手である。これから先、いろいろなメディアにも登場するであろう。古い考え方だが、コウシでなく本名でやって欲しいな。
次回、ジャパンキックボクシング協会興行は、5月25日(日)に市原臨海体育館に於いて、「Road to KING3」が開催されます。メインイベントは、2月にONE Friday Fightsに出場し1ラウンドKO勝利したジャパンキック協会フェザー級チャンピオン、勇成(Formed)が出場します。昨年は皆川裕哉が務めたメインイベント。その皆川裕哉から11月に王座奪取した勇成が今年のメインイベンターとなりました。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
月刊『紙の爆弾』創刊20周年/唯一の反原発情報誌『季節』創刊10周年にあたり企図した「4・5鹿砦社反転攻勢の集い」が迫ってきました。
このかん再三申し述べさせていただいているように、新型コロナ襲来以来、引き起こされた鹿砦社の苦境を寄稿者、読者の皆様方と共に突破し、流れを変えようと、4月5日、反転攻勢の集いを開催することになりました。『紙の爆弾』の寄稿者を中心に、ちょっと声を掛けたところ、またたくまに30人ほどの発起人が集まってくださいました。
また、ご支援のカンパ、ご祝儀も日々お寄せいただいています。有り難いことです。あと数日後になりますが、日々、緊張感がみなぎってきています。
この20年間、いろいろなことがありました。なんと言っても『紙爆』創刊直後の私の逮捕―勾留で会社が壊滅的打撃を被ったことでしょう。囚われの身、それも接見禁止で、面会も手紙も、弁護士以外にはできなく、動こうにも動けなくて、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある」という心境でした。今は、会社の情況が苦しくても、電話もできるし動き回れます。これだけでも大きな違いです。
詳しいことは4月7日発売の『紙爆』(20周年記念号)5月号に記述してありますので、ぜひ購読いただきご一読ください。
4月5日の集いのご報告は、「デジタル鹿砦社通信」、『紙爆』6月号(5月7日発売)などで行います。
(松岡利康)
3月29日朝、筆者は右肩の激痛を含む広範囲の痛みで体が動かなくなりました。急遽、勤務先に電話をし、夜勤明けの上司に報告して、休ませてほしいと伝えました。たとえ、タクシーで職場までたどり着いたとしても、とてもではないが仕事になる状況ではないからです。
少し痛みが治まった段階で土曜日の午前中の診療時間ギリギリに近所の病院へたどり着き、レントゲンを撮影してもらったところ、肩の骨が真っ白になっていました。いわゆる「関節炎」ですが、激しく腫れていたのです。
4月1日には筆者も仕事に再び出ましたが、肩が痛い状態は予断を許しません。
◆動けなくても「見守りだけでも」という状態
弊社でも、世間の介護事業所のご多分に漏れず、このところ退職者が相次ぎ、人手が不足している状況です。日中は本来3人ですべき仕事を2人でなんとか繰り回している状況です。こうしたことも筆者の疲労蓄積の背景にありました。
ただ、こうした状況で誰かが休めば大変なことになります。筆者が休んだために、11連勤になってしまった人がおり、恐縮です。筆者も上司からは「先日は仕方がなかったが、今後は、たとえ仕事ができなくても、見守りだけでも来ることも検討してほしい」と言われました。
◆執行体制確保に責任を果たさない政府
とはいえ、そもそも、こうならないように余裕を持った業務執行体制を組む責任は経営者にあります。さらに言えば、介護保険制度は、日本国政府が法律で定め、それに基づいて市町=地方政府が保険者として執行する制度です。きちんとした執行体制を経営者が組めるように政府が制度を設計し、予算措置すべきです。市町も運営主体の保険者として努力すべきです。
都道府県は、市町が足りない部分で、国がなかなか腰を上げない部分については、市町を支援しつつ国を突き上げていくべきです。だが、現実には、そうなっていない。だから、こういうことになるのです。
◆世間の物価上昇・賃上げに追いつかず
岸田文雄前総理は、2021年の自民党総裁選および衆院選において、「賃上げ」を一丁目一番地とし、特に介護や保育などのケア労働者の給料アップに力を入れると公約。2022年は、期待ほどではないが一定程度それを守ってくれはしました。しかし、物価上昇も、また他業種の賃上げもはっきりしてきた2023年は、さらなる追加の手立てがありませんでした。
2024年は3年に一度の介護報酬改定の年であり、一定の対応がされました。しかし、平均2%、月6000円のアップではあまりにもショボすぎた。しかも、これはあくまで平均であり、中央値で見ればそんなにもらっている人はいない。さらにこの2024年度の介護保険法改定では訪問介護については、介護報酬本体の一律カットが強行されました。これにより、賃上げなど難しい状況になった事業所も多くあります。若い人がそんな希望のないところに来るはずもなく、訪問介護の従事者の高齢化はさらに進みました。
この年、全産業平均では5.33%という賃上げが行われるも、介護はそれに取り残されてしまいました。岸田政権一年目でせっかく縮小しかかった全産業平均との差が拡大。現場での退職が急増しています。
しかも、近年では、「金を払っているのだから」と、何でもかんでも事業所側に押し付けてこられるご利用者のご家族も少なくはありません。いわゆるペイハラ、カスハラです。職員たちも「そんなにおっしゃるならご自分で見られたらいかがですか?」と言い返したくなるのを押さえています。
また、最低賃金が引き上げられる中で、基本給が最低賃金に満たず、国からの処遇改善をあわせようやく最低賃金超えという事業所も多いのです。そういう事業所から最低賃金引き上げに応じて賃上げした事業所にどんどん職員が移動していく状況もあります。
介護職員が辞める時は「家庭の事情」などを理由にするのが定番です。だが、周囲もそんな理由を本気にする人はいません。「賃金が低すぎるから他所へ」というのが本当のところだし、そのことで、退職した人を責められません。
この状況をこれ以上、放置すれば、まさに介護「戦線」の完全崩壊となります。そうなれば、現役世代にも悪影響が及びます。いわゆるヤングケアラー、若者ケアラー、ダブルケアラー(子育てと介護)そしてビジネスケアラー(仕事をしながら介護)の問題が深刻化します。
◆ショボすぎる石破政権
石破政権は今通常国会で正規の介護職員平均で5.4万円の給付をする補正予算を成立させています。他方で野党第1党の立憲民主党は1万円の賃金アップ法案を出しています。
だが、どちらも「ショボすぎ」ます。せめて、ここ2,3年の全産業平均の賃金アップの遅れ分を補償するくらいの勢いがなければ、生活が成り立たずに辞めていく職員が増える一方です。れいわ新選組の「10万円アップ」を暴論とされる方も少なくはないですが、そこを最終的に目指すくらいの勢いで取り組まないと、大変なことになります。もう限界です。
広島県知事の湯崎英彦さんにも申し上げたい。県内の介護保険の保険者=市町で介護崩壊が食い止められないのなら、県が国の制度改正までのつなぎとして、バックアップをすべきではないか?
だが、湯崎知事は、大型箱物や啓発イベントなどには熱心ですが、現場が潤うような支援には後ろ向きです。湯崎英彦知事よ。あなたは、巨大病院建設にご執心のようですが、それよりまえに、介護の現場で働く職員に直接行き届く支援をすべきではないですか?
筆者は、広島県庁職員時代(2000-2011年)に、主には山間部や島しょ部の医療や介護事業所の指導をさせていただいた時期が長くありました。介護職員の皆様のお給料を見せていただき、「若造の公務員の俺より、現場の皆さんのお給料がこんなに低くて、これでいいのか?」「日本は将来大丈夫なのか?!」と衝撃を受けるとともに憤りを覚えました。
筆者は、今後、広島県知事としてであろうが広島市長としてであろうが、広島地盤の参院議員としてであろうが、県庁職員時代の憤りと、介護福祉士として体験したことを絶対に忘れず、高齢者・障がい者もご家族も安心して過ごせる、そしてサービス提供者も安心して働ける広島・日本へ体を張って取り組んで参ります。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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「凡事徹底」── いい言葉です。小さなことや当たり前のことを徹底的にやることによって見えてくるものがあるという意味ですが、なかなかできそうでできるものではありません。四字熟語は中国から由来するものが多いということですが、これは最近(といっても、20、30年前ですが)日本で誕生したとされます。通説では、イエローハット社の創業者・鍵山秀三郎氏が作ったといわれています。プロ野球の野村克也やラミネスがよく使ったといわkれます。「凡事徹底」というタイトルの書籍もあります。
当社も1995年に「日々決戦」「一日一生」「一所懸命」などと共に社是に定めましたが、なにか精神的な訓示を上から押し付け、説教臭く思われたのか、あまり歓迎されませんでした。
とはいえ、環境が苦しい時にこそ、基本に立ち返り「凡事」を「徹底」して「一所懸命」にやることが大事で、そして、そこにまた見えてくるものがあるということでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「4・5鹿砦社反転攻勢の集い」で流れを変えよう!
このかん再三申し述べさせていただいているように、新型コロナ襲来以来、引き起こされた鹿砦社の苦境を寄稿者、読者の皆様方と共に突破し、流れを変えようと、4月5日、反転攻勢の集いを開催することになりました。『紙の爆弾』の寄稿者を中心に、ちょっと声を掛けたところ、またたくまに30人ほどの発起人が集まってくださいました。
また、ご支援のカンパ、ご祝儀も日々お寄せいただいています。有り難いことです。もう4日後になりますが、日々、緊張感がみなぎってきています。
この20年間、いろいろなことがありました。なんと言っても『紙爆』創刊直後の私の逮捕―勾留で会社が壊滅的打撃を被ったことでしょう。囚われの身、それも接見禁止で、面会も手紙も、弁護士以外にはできなく、動こうにも動けなくて、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある」という心境でした。今は、会社の情況が苦しくても、電話もできるし動き回れます。これだけでも大きな違いです。
詳しいことは4月7日発売の『紙爆』(20周年記念号)5月号に記述してありますので、ぜひ購読いただきご一読ください。
4月5日の集いのご報告は、「デジタル鹿砦社通信」、『紙爆』6月号(5月7日発売)などで行います。
(松岡利康)
◆中国語と北京語を混同するTBS
極右からリベラル左派まで、音律が狂ったカラオケのように中国についての見方が歪んでいる。これらの層(セクト)を形成する人々は、声高々に「反中」を合唱している。背景には、新聞・テレビによる中国報道を過信して、現地に足を運んで事実を確認したり、自力で海外の多様な情報を収集しない姿勢があるようだ。一種の情報弱者にほかならない。
2025年2月8日、TBSは、報道特集で「中国による『同化政策』……言葉をめぐって揺れる『2つのモンゴル』」と題する番組を放送した。中国のモンゴル自治区で、中国共産党がモンゴル語よりも中国語を重視する教育を進めていることを捉えて、漢族への「同化政策」だと批判する内容だった。
この番組の問題点はいくつかあるが、最も根源的な間違いを指摘しておこう。それはTBSが中国語と北京語を混同し、それを前提として自論を展開している点である。議論の前提に重大な誤解があるわけだから、番組の最初から最後まで論理の歯車がかみ合っていない。最初にストーリーを組み立て、それに整合する事実だけを我田引水にこじつけたような印象がある。
◆多言語国家・中国の公用語
周知のように中国では中国語が主要な言語である。しかし、ひとくちに中国語と言っても、下記のイラスト地図が示すように、方言を含むさまざまな言語体系に分化している。発音も異なる。これらの言語の総称を中国語と呼ぶのである。
そこで必要不可欠になるのが、共通言語であり、公用語である北京語である。多言語国家といえば、日本ではインドがその代表格のように言われているが、中国も典型的な多言語国家のひとつなのである。インドでは英語が公用語に、中国語では北京語が公用語になっている。これらの国では、公用語が普及していなければ、国民相互のコミュニケーションが成立しない。
2024年10月、筆者は北京を訪れた。その際、現地の旅行会社が運営する観光ツアーに参加した。観光バスには、中国全土から北京にやってきた人々が乗車して、筆者がまったく聞いたことのない中国語が飛び交っていた。友人の中国人にこれらの多言語が理解できるかどうかを確認してもらったところ、まったく理解できないという答えが返ってきた。しかし、円卓を囲んだ昼食の席では、互いが北京語でコミュニケーションしていた。その光景に接して、わたしは多言語国家における公用語の役割を理解したのである。
このエピソードは、中国ではいかに北京語が重要な役割を果たしているかを示唆している。北京語が話せなければ、政治参加も社会参加できない。特定の言語空間の中に閉じ込めれてしまう。日本でいう「井の中の蛙」のなってしまうのである。
◆「北京語」の充実は「中国語による同化政策」か?
こうした国の事情を考慮して、中国では小学校の低学年から、北京語のピンインや声調の習得が義務付けられているのである。中国語が多種に及ぶから、このようような教育方針が敷かれているのだ。
余談になるが、言語の普及を重視する政策は、中国以外の社会主義を目指す国々でも常識になってきた。たとえば1959年のキューバ革命の後、大規模な文盲撲滅キャンペーンが始まった。無知から脱皮して、国政への参加を促すのが目的だった。
1979年のニカラグア革命の後も、文盲撲滅キャンペーンが展開された。読み書きを習得しなければ、革命が成就しても、政治参加ができないからだ。言語の習得は、参政権を行使するために不可欠な革命のプロセスなのだ。
TBSは、「中国語による同化政策」などと難癖をつけているが、中国政府が意図しているのは、「北京語」の充実である。公用語教育はむしろ必要不可欠なプロセスなのである。
モンゴル自治区の若者だけが、「北京語」の能力に劣るとすれば、知識の習得も遅れ、平等に高等教育を受ける機会も奪われてしまいかねない。
TBSは、このあたりの事情をまったく取材していない。現地へ特派員を送り込んでいながら、中国が多言語国家であることも十分に認識していないようだ。日本人の感覚で、自分勝手な暴論を吐いているのである。
※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月21日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu