去年3月の東日本大震災と原発事故で漁ができない状態が続き、福島県の地元の漁業者たちは、ことしの漁の再開に大きな期待をかけて、津波で失った船を発注するなど準備を進めてきた。
「アワビやウニやヒカリメなどが豊富に獲れたのはもう昔の話だ。今は福島県沖で漁業ができない。しかたないから、小笠原諸島のほうまで遠征してマグロなんかを追いかけているよ」といわき市小名浜の漁業組合の男性は語る。
「船を遊ばせるわけにはいかない。船を停泊させていないと補償金が出ないし、やはり用がなくても港には来てしまうな。それにしても津波はひどかったが、今年の方が2倍も3倍も苦しい。放射能問題さえ無ければなあ」(漁師)

いわき市立小名浜漁協の市場は、ゴーストタウンのごとくなっていた。かつてにぎわいを見せたこの港は復活しないのだろうか。
福島県いわき市の沿岸は、県内で最もウニ漁やアワビ漁が盛んな地域として有名だ。
中でもウニはホッキ貝の殻に載せて蒸し焼きにする「貝焼き」が地元の名産として知られている。
だが4月、沿岸の9か所でウニとアワビに含まれる放射性セシウムを調査した結果、1か所だけから国が定めた食品の基準の2倍を超える1キログラム当たり270ベクレルが検出されたという。

「残りの場所ではすべて基準を下回りましたが、風評被害を心配して漁協はことしの漁を自粛することを決めた。漁師たちは『貝焼き』に必要な貝殻を集め始めるなど早くも来年に向けて準備を始めているよ」(漁師)

福島のウニやアワビは絶品だ。味わったものならだれでもそう思うだろう。
そんな折、海江田元経済産業相が国会の事情聴取で、原発事故対応については「まるで伝言ゲームのようだった」と、事故直後の混乱した状況を語っている。政府は地震発生当日の午後7時3分に原子力災害対策特別措置法に基づく「原子力緊急事態宣言」を発令した。ところが第1原発1~4号機の非常用電源が津波で喪失したのは同午後3時42分。宣言発令が3時間半近く遅れたことについても海江田氏は「首相の理解を得るのに時間がかかった」と責任を管になすりつけた。

「信じられない。いったい『私が悪かった』という人間は政府にはいないのか」(福島の原発被害者)
海江田は、原発事故での日々をまとめた本をリリースするというではないか。いったい事故の対応のまずさをだれのせいにするのだろう。この神経にはあきれるが、もはやこの連中につける薬はないのだろう。今度は伝言ゲームから「責任なすりあいゲーム」を始めたのだから。
海江田よ、もし報道の通り、本を出すなら、全額、売上を福島県に寄付せよ。

漁港にいた年配の漁師が言う。
「海に出れないなら、死んだも同然じゃねか?」
その通りである。海江田よ、もう東京から選挙に出るな。本当に自分に責任がないというなら、福島から出て当選してみせよ。
なにしろ福島の漁業を壊滅させた責任があるのだから。

▲写真は、小名浜漁港

(渋谷三七十)