JR東海傘下の『WEDGE(ウェッジ)』は原発推進団体からよほど金が流れているのか、摩訶不思議な雑誌だ。外交評論家の金子熊夫の原稿で、タイトルは「日印原子力協定は日本の非核主義と両立する」という脱力するようなものだ。

驚くべきことに「日本とインドの原子力協定を後押しする」というコンセプトのもとで、以下の残念な内容が展開されている。つまり金子は「インドが核実験をする」ということと、「日本が原発技術をインドに提供する」ことは別物だと言いたいのだ。

———————————————————————

外交評論家の金子熊夫

 2015年12月半ばに訪印した安倍晋三首相とナレンドラ・モディ印首相との間で、日印の民生用原子力協定を可能にするための二国間原子力協力に関する「原則合意」が成立した。長年この協定の重要性を唱えてきた者として、大変喜ばしいことである。しかし、日本国内では対印協力に対する懸念が繰り返し報道されてきた。世論への配慮からか、政府の締結に向けての歩みは決して早くない。日印原子力協定は、原子力の問題ではない。日本の安全保障、アジア全体の安全保障という、もっとも大きな文脈で捉えられるべき問題であり、細かい技術論で大局的な政治判断が損なわれることがあってはならない。残念ながら、日本人はインドに対する理解が浅い。日本が唯一の戦争被爆国としての立場ばかりを主張するなら、愛想を尽かすのはインドの方だ。日印の協定交渉は、民主党政権時代に始まってから間もなく6年になるが、この間もっとも双方が対立してきたのは、核実験再開時の扱いだった。日本国内では、インドが核実験を行ったら、直ちに対印協力を停止することを協定に明記すべきとの意見が根強い。(中略)
 日本としては、今回安倍首相がニューデリーでの首脳会談で、はっきり「インドが核実験を再び行った場合には、日本からの協力を停止する」と伝えているのであるから、これで十分ではないか。日印協定案を国会が承認する歳に衆参両院が付帯決議を採択して日本の立場を宣明するのも一案だろう。そもそも、インドが核実験を行った場合にどう対応するかというようなことは、協定や条約には本質的になじまない。そのような場合には何よりも必要なのは、日印両国政府が急遽協議することだ。協定や条約の運用について締約国同士が随時緊密に協議することは当然のことで、そのことを原子力協定に明記しておけばよく、それで十分だと筆者は考える。(『WEDGE』2016年4月号)
◎金子熊夫の略歴紹介HP http://www.eeecom.org/old/KKprofile.htm

———————————————————————

おいおい、金子よ! 正気か? 同じことを広島の原爆ドーム前で拡声器を使って真顔で言えるのか。インドが核実験を行う場合、その原子力のメカニズムは、日本からの原発技術供与と関係ないと誰が言えるのか。原発技術と核実験が密接に関係しているのは、小学生でももはや知っている事実である。

(渋谷三七十)