8月7~9日にかけて大麻草検証委員会主催の『まつりの祭り』という大麻の産業利用普及を促すイベントが、山梨県の西湖で開催された。

大麻、ということで、不健康なジャンキー集団による怪しい集会をイメージしていたが、すぐに誤解は払拭された。参加者の多くはオーガニック(有機農法)やロハス(健康と持続性を意識した生活)を実践する20~40歳代で、食事や環境問題について真剣に考えて生きる人が大半だった。また子供連れも多く和やかな雰囲気でイベントは進行する。

大麻というと、麻薬というイメージが一般的だが、日本では古くから神社のシメナワや日常の衣類として大麻繊維(ヘンプ)が利用されてきた歴史がある。乳幼児には大麻のようにすくすくと育つようにと麻の葉模様の初着を着せる風習もあり、忍者が修行のために毎日もの凄い速度で成長する大麻の苗の上を飛び越えていたという逸話は有名だ。

では、どのようにして大麻が規制されるようになったのか。
そもそも日本の大麻取締法は、太平洋戦争(大東亜戦争)終結後にGHQ(連合国軍総司令部)からの押し付けで大麻の栽培を免許制にしたことに端を発する。明治期から戦前までは国策で大麻栽培は奨励されていたし、ぜんそくの特効薬として「ぜんそくたばこ印度大麻煙草」 が薬局にて販売されていた。

アメリカで大麻の様々な有用性に脅威を感じた化学繊維やエネルギーなどの石油業界・綿花やタバコなどの農業界・医薬品業界・酒造業界からの圧力によって強引に制定された大麻取締法が占領下の日本に輸入された結果、「ダメ・ゼッタイ」のキーワードの下に「大麻=麻薬=悪」という方程式が成立しているのが現状だ。日本の大麻の固有種には麻薬成分とされているTHC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量は極めて少ないにも関わらず。

出店ブースでは30程の店がヘンプ(大麻)製品を販売していた。大麻の繊維から作られたヘンプ100%のフンドシ・麻の実から搾りたてで美容にも効果のある栄養満点のヘンプシードオイルなどが紹介され、フードブースでは麻の実、有機野菜、玄米を用いた動物性タンパク質ゼロの健康志向の食品が供された。麻の実は摂取しづらい必須脂肪酸やアミノ酸、亜鉛や鉄などのミネラルを含む作物であり、市販の七味唐辛子にも配合されている。

私は麻のフンドシに魅了され、脱パンツ宣言(通称ダッパン)して、褌ユーザーに寝返った。
『まつりの祭り』は基本的には野外音楽フェスのようなものをイメージしてもらえれば差し支えないが、数々の大麻に関するワークショップが催されるのが特色だ。大麻油と蜜蝋を練ったキャンドル制作や、アイヌ文化伝統の飾り花(木の枝をささくれ立たせて作る木工芸)、麻炭を混ぜた蕎麦打ち体験など豊富なイベントが盛りだくさんだった。

注目すべきは栃木農業高校環境科学部の研究発表だった。栃木県で伝統的に行われてきた大麻栽培に関する研究や農業実習を重ねて全国各地で講演会を行なっている。大麻と蕎麦の二毛作が相互の肥育条件を満たす利点をいかして、麻の実を配合したご当地ソバで地域振興を呼びかけている。東日本大震災の津波で塩害被害を受けた農地に大麻を植えることで地中の塩分を除去できること、果ては放射能の除染にも有効な可能性があるということを示唆している。先見性の高い高校生に、頭の下がる思いだ。

9日正午に大麻種子のSVO(ストレート・ベジタブル・オイル)を燃料に走る『ヘンプオイルカー』が出発して、イベントは幕を閉じた。

委員会幹事の中山康直(なかやまやすなお)氏は現材、大麻取締法に関するユーモラスな法廷闘争を繰り広げている。7月3日に行われた第五回公判ではバイオマス研究者の赤星栄志氏を招いての証人尋問で、大麻の知られざる真実に関するプレゼンテーションが行われた。

大麻が石油や原子力のような地下資源にとって代わる地上資源(代替燃料)になりうること、繊維・建材・製紙といった産業利用の可能性が充分にあること、大麻取締法がGHQに一方的に押し付けられた法律であること、西欧諸国で大麻は医療品や嗜好品として社会に受け入れられていること、アルコールやニコチンに比べて大麻の依存性の低いこと。こうした約1時間半にわたる授業が法廷内で行われたのだが、裁判官や検察官はこれまでに学校で教えられてきた周知の事実との相違点に戸惑い、目をパチクリさせている。

同委員会は大麻取締法の違憲性を指摘し、法改正を目標として活動している。更に面白いのが、大麻は原発問題の突破口の一つになるという理論を展開しているのだ。
興味のある諸氏には是非とも裁判の傍聴に行くことをお勧めする。次回は9月19日東京地裁にて第6回中山大麻裁判が行われる。

(原田卓馬)