ソープランド業界に激震が走った。
吉原で人気のあった、「オレンジグループ」のソープ8店舗を経営する「サン・ワールドホールディングス」(東京都台東区)の会長小松崎伸男容疑者(67)や同社員ら男性21人が売春防止法違反(場所提供業)容疑で、10月29日、警視庁に逮捕されたのだ。

「オレンジグループ」は、総額のプレイ料が1~2万円の激安で、サービスも女性も悪くない。庶民男性にとってはありがたい店で、人気があった。約640人の女性を在籍させ、2009年春以降、101億円を売り上げていたという。

一方で、今回の逮捕は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例)違反の容疑によるものだという報道もある。8店はそれぞれ、風営法の許可を得ていたが、売上金が「サン・ワールドホールディングス」に集められ、そこから各店従業員への給与などが支払われていた。サン社は風営法の許可を得ていなかったので、違法だというのだ。

今一度、風営法を読み返してみたが、それぞれの店舗が許可を得ていて、なおかつ、それを上部で管理する会社までが風営法の許可が必要である、というふうには読めない。
今までにも、こんな解釈での摘発は聞いたことがない。

法律とは複雑なものだが、風営法はそれに輪をかけて複雑だ。
一般用語と法律用語が異なることはままあることだが、風営法で「風俗業」というとクラブやキャバクラ、ガールズバー、ホストクラブなど、異性を接待する店を指す。
一般に風俗といわれるソープ、ファッションヘルスなどは、「店舗型性風俗特殊営業」という。デリバリーヘルスなどは「無店舗型性風俗特殊営業」となるわけだ。

あまり知られていないことだが、吉原は都内で唯一、合法的に「店舗型性風俗特殊営業」が営業できる地域だ。風営法に関する都条例で、「台東区千束四丁目(十六番から三十二番まで及び四十一番から四十八番まで)の地域」では営業できると明記されている。そこが、吉原と呼ばれている地域だ。

他の地域で合法的な「店舗型性風俗特殊営業」は、1985年の改正風営法施行以前に許可を得ていた店が、既得権として経営できているにすぎない。それらの店は一度閉店してしまえば、その地で他の経営者による新規開店は、基本的にできない。
だが吉原では、新規の開店もできるのだ。

ソープランドで、売春をやっているのは常識だ。店に行ってセックスができなければ、客は怒るだろう。合法的に「店舗型性風俗特殊営業」ができる地域で、皆「売春防止法違反」をやっている、という矛盾がそこにある。

通常ソープでは、フロントで入浴料を払い、プレイルームに入ってから女性にプレイ料を払う。お金を払ってセックスするという合意は客と女性との1対1の間でできた、店は関与していない、というタテマエを守るためだ。また、売春防止法には「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」とあるが、1対1の売春には罰則がない。

そういうタテマエで、1~2万の料金を入浴料とプレイ料に分けるのはめんどくさい、と思ったのかオレンジグループでは、総額をフロントで徴収していた。
そんな法律的にアバウトなところも、摘発を招いたのだろう。

閑古鳥の鳴く老舗の高級店が、繁盛しているオレンジグループをねたんでチクッたのではないか、という噂も、吉原界隈で囁かれている。
こういう世界に、粋がなくなったらお終いだ。

(FY)