「本当の事なんか言えない~本当の事なんか言えない~言えば殺される」
11月18日放送の、高校生向けの進路情報番組『ラジオキャンパス』の「コラコラコラム」の冒頭、今はなき忌野清志郎の歌声が響いた。RCサクセションの『言論の自由』。
1972年にリリースされた『初期のRCサクセション』に収録されている曲だ。

この間お伝えしているように、『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』『東電・原発おっかけマップ』を「コラコラコラム」で取り上げた、『ラジオキャンパス』が、FM熊本で番組ごと打ち切りになった。

FM仙台と青森、岩手、山形、琉球放送のAM各局では、改変されずに放送された。
FM秋田とFM新潟では、その部分のみが音楽に差し替えられた。その時に、差し替えるというなら曲はこれにしてくれ、と番組制作のキャンパスネットワーク代表であり、「コラコラコラム」の語り手である、納谷正基氏が指定したのが『言論の自由』であった。

「学校にいる時にはそれは許された~卒業したらそれは通じなかった」
『言論の自由』は、忌野清志郎自身が作詞し、歌っている。
皆さんご存じのように、清志郎は身をもってそれを体験する。

「寒い冬がそこまで来てる~あんたもこのごろ抜け毛が多い~それでもTVは言っている~『日本の原発は安全です』~さっぱりわかんねえ根拠がねえ~これが最後のサマータイム・ブルース」
そう歌うのは、『サマータイム・ブルース』

「放射能はいらねえ、牛乳を飲みてぇ~何言ってんだー税金(かね)かえせ~目を覚ましな~たくみな言葉で一般庶民をだまそうとしても~ほんの少しバレてる、その黒い腹」
これが、『ラヴ・ミー・テンダー』

この2曲が収録されたアルバム『COVERS』は、1988年8月6日(広島平和記念日)に、東芝EMI(現・EMIミュージック・ジャパン)から発売される予定だった。
清志郎は東芝EMIの邦楽最高責任者から、その2曲を含む4曲をカットしなければアルバムを出せない、と告げられる。
言うまでもなく、東芝が原発のプラントメーカーだからだ。
清志郎はその提案を受け入れず、アルバムは発売中止となった。

FM熊本で起きたのと、同じ事だ。
一つ違いで同世代の納谷氏にとって、清志郎は高校生の頃から憧れの存在だったという。
日々、教育者として高校生に向き合っている、納谷氏。清志郎から託されたバトンを、高校生に託そうと考えているのだろう。高校生たちにとって、なんと幸せなことだろう。清志郎が生涯を通して残したメッセージは、自分の声で歌い続けろ、ということなのだから。

憲法21条の「表現の自由」を、「民主主義社会を守るために私たちが決して手放してはならないものだ」と、納谷氏は高校生に語りかける。
特に電波は国民の共有の財産であり、公権力におもねってはいけない、と訴える。
国家権力やそれに限りなく近い存在と、一般人とを一緒にして、プライバシーなどを理由に政府批判に及び腰になるのは、根本的に勘違いしている、と納谷氏ははっきりと言い切った。

福島第一原発事故のもたらした災厄から、私たちは何を学ぶのか。
本当のことを言える社会を、なんとしてでも手に入れなくてはならない。

(FY)