リクルートホールディングス元会長の江副浩正(えぞえ・ひろまさ)氏が、2月8日亡くなった。76年の人生は、新しい情報ビジネスを開拓するなど「情報化時代の寵児(ちょうじ)」と呼ばれる一方、戦後最大級の汚職事件、リクルート事件で有罪判決を受けた。晩年は「社会に貢献したい」とオペラ歌手の育成など文化活動に取り組んでいた。
「関連会社の未公開株を政治家にバラまいて起訴されて有罪。政治と金の象徴だった。いかにも昭和の典型的なビジネスマンのやりかただ。政治資金規正法などは、リクルート事件が端緒となったと思う」(政治ジャーナリスト)

江副氏は、東大在学中に手がけた学生新聞の広告事業を基に、一代で情報産業グループを築き上げた。07年に出版した自著「リクルートのDNA」(角川oneテーマ21)では、「成功する起業家の二十カ条」の一つとして、「若くかつ就職しないで起業すること」と企業家としての持論を披露するなど、情報ビジネスの生みの親としての成功体験を振り返っている。

今思うのは「政治が金で動く」という時代が終わった、ということである。
ある議員秘書が語る。
「企業が政治家のパーティ券を購入する。それで政治家が企業の便宜をはかるという構図そのものを壊すきっかけになったのがリクルート事件だ。いい教材を得たのではないか。政界にとってはね」
情報をタダで配信し、広告で生業を立てるがゆえにリクルートは、出版でも広告代理店でもないビジネスモデルを作り出した。江副氏の業績には目を見張るものがあるが、やはりリクルート事件の汚点を拭い去ることは難しかったようだ。

(鹿砦丸)