「部屋がひとつあれば成りたつ」と言われる、メンタルクリニックのなり手が急増している。「メンタルクリニック」は精神科医が開業する。きわめて現代的な呼び方だ。
精神科医の数は年々、増えており、
「平成16年には1万2151人だったが、ゆるやかに増えており、平成22年度には1万7120人で掌握しています」(厚生労働医政局)
精神科や心療内科は近年になって急増。一九九六年から二〇〇八年で二・四倍に増えた。これに合わせるかのように、うつ病患者も九九年の二十四万人から〇八年には七十万人超に増加した。

そして五月病の季節に、駆け込む患者も急増しているという。
「五月病という呼び方でデータをとってはいませんが、普段の月より12%近く、うつの来院者は増えています。2010年3月の統計では2万3121人という数字です、」(厚生省障害福祉課)
精神科医の現場では、何が起きているのか。埼玉県さいたま市にあるクリニックを訪ねた。

匿名を条件に取材に応じてくれた精神科医のA氏(30)が語る。
―開業のきっかけは?
「親が資金を出してくれて3年前に、大学病院勤務を経て開業しました。マンションひとつで開業できるので、精神科医を開業しました。独立には事務機器、パソコン、医療器具で200万円ほどかかりましたね」
2階建てのビルの一室は、15坪というところか。サポートしているスタッフは5人。
―どれくらい患者を診ていますか
「1日10人ほど診れば成り立ちますよ。だいたい、売上げは200万円ほどと考えてください。詳細は話すことができませんが」
気さくそうなA氏はメガネ越しに語り始めた。

―五月病の取材で来た、というと
「五月病という病名は存在しないんですよ。もともと5月になると学校に行きたがらなくなる大学生が多かったことから始まった呼び方です。そのうち、就職した人たちでも五月に会社に行きたがらなくなる人が増えて、一般化しましたね」

今風に言うと、軽いうつは「プチうつ病」と呼ばれており、それこそ患者は続々と増え続ける。
―「メンタルクリニック」と「精神科医」はちがうのだろうか。
「巷にはメンタルヘルス、メンタルケア、こころの耳など診療所の名前が世間では踊っていますが、明確な線引きはありませんよ」
五月になると、普段よりも患者が2割増しになるというクリニックは、ひっきりなしに電話がかかってくる。
―電話が多いですね。
「患者は自分の住所や電話番号を入力しないと、電話はつながりません。そのようなシステムなのです」

A氏によると、精神医学界は団体ばかり作っているという。
「日本不安障害学会、日本産業精神保健学会、日本精神保健・予防学会、日本AD/H学会、うつ病リワーク研究会、日本ポジティブ・サイコロジー医学会などなど、限りがない。日本うつ学病学会なんてファイザー、グラクソ・スミスクラインや持田製薬など法人会員が出資してのパーティばかりやっている。薬の認可とはまったく関係ない話です」
(続く)

(鹿砦丸)