舞台や映画、テレビドラマなどに数多く出演し、豪快で男らしい演技で知られた俳優の夏八木勲さんが5月11日、神奈川県内の自宅で亡くなった。73歳だった。夏八木さんは、東京・足立区の出身。大学を中退後、昭和38年に劇団俳優座の養成所に入り、同期の原田芳雄さんや村井国夫さんらと共に「花の15期生」と呼ばれた。

卒業後、昭和41年に映画「骨までしゃぶる」でデビューし、その後も「白昼の死角」や「野性の証明」など数多くの映画で活躍した。とりわけ、昭和54年に公開され、自衛隊が戦国時代の日本にタイムスリップする映画「戦国自衛隊」では、戦国武将の長尾景虎役を演じ、男らしい豪快な演技で人気を集めた。

テレビドラマでも活躍し、昭和49年に出演したNHKの連続テレビ小説「鳩子の海」で演じた脱走兵の役が話題となるなど、高い演技力が印象に残る。個人的には、中山美穂主演の「眠れる森」でキーマンとなる医師としての演技が渋かったと思っている。
最近では、平成22年に放送されたNHKの大河ドラマ「龍馬伝」に出演したほか、映画では昨年公開された園子温監督の「希望の国」で、原発事故で家族が引き裂かれる主人公の酪農家の男性を熱演して高い評価を受けていた。

「何気なく発するひとことが非常に重い役者です。そうした意味ではオーラをまとっていた役者でした」(演劇関係者)
夏八木さんは、こうした功績が認められ、今年3月、芸術の分野で優れた業績を挙げた人に贈られる文化庁の「芸術選奨文部科学大臣賞」に選ばれた。園監督は「男を演じたら彼の右に出るものはいなかった。男を演じられる日本最後の俳優。そういう人はもういない」とコメントした。
いぶし銀の演技は、多くの人に強烈な印象を残した。

最後の映画「永遠の0」は12月に公開となる。今から楽しみだ。

(鹿砦丸)