安倍晋三総裁選特設サイトより

自民党幹部からも「軽量級安売りセール内閣」と揶揄されている第4次安倍改造内閣である。7期・8期組の、いわゆる閣僚登用待ちがその大半であるがゆえに、実力派ではなく派閥の数あわせとなったからの揶揄だ。とはいえ、筆者も直接知っている自転車議連でネトウヨの原田義昭環境相(福岡)や渡辺博道復興相(千葉)など、「地道に下働き(笑)」をしてきた苦労人も多いのは事実で、地味だから「軽量級」などと揶揄するのはいかがなものか。むしろ問題なのは、甘利明元経済再生相を党選挙対策委員長に、下村博文元文部科学相を党憲法改正推進本部長に起用したことだろう。あいかわらずの「お友だち人事」である。

 

衆議院議員甘利明Official Webより

◆黒い人脈のお友だちを党の中枢に

甘利明選挙対策委員長はUR(独立行政法人都市再生機構)への口利き疑惑で建設業者(任挟系右翼)から100万円の現金、下村博文本部長も加計学園から200万円の闇献金疑惑がある。

甘利氏の疑惑は、わずか2年前の2016年のことである。柏市にある建設会社「薩摩興業」が道路建設をめぐって甘利氏に口利きを依頼し、総額1200万円の現金提供や接待を受けたと「週刊文春」が報じたものだ。このうち、大臣室での50万円と地元事務所への50万円が事実として認定されるも、けっきょく不起訴になっている。

「良い人とばかり付き合っていると、選挙に落ちてしまうんです」という名ゼリフを残して大臣を辞任したのは記憶に新しい。ところが、この件の不起訴をもって、甘利氏は「禊ぎは不要」と記者会見では開き直った。そもそも、この薩摩興業なる建設業者の社長が元稲川会系の任挟ヤクザで、右翼団体の代表なのである。この黒い人脈こそ、俎上にのぼせられるべきであろう。

 

衆議院議員下村博文公式WEBより

◆政治資金規制法違反の「博文会」

いっぽうの下村博文氏は、上述した加計学園からの闇献金とは別に、後援会組織の「博文会」に政治資金規正法上の問題がある。この博文会は関係者が学習塾を経営する教育関係者だが、政治家の講演会として、下村氏への事実上の政治献金にあたる会費(懇親会など)を徴収しながら、政治団体登録をしていないのだ。

政治資金規正法は「特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体」は政治団体となり、届け出をした上で毎年、政治資金収支報告書を提出する必要がある。下村氏の「博文会」がこれに違反するのは誰の目にも明らかであろう。

さらにその支持者のうち、やはり反社会勢力に近いとされる塾関係者が名を連ねていることが、国会で野党から指摘された。「何が問題なのですか?」と逆に質問するなど、厚顔無恥ぶりを披瀝したものである。

 

安倍晋三総裁選特設サイトより

◆女性閣僚がわずか一人

記者会見では「日本の女性活躍はスタートしたばかりなのです」「片山さつき(地方創生)大臣は、女性ふたり分」などと、さすがに糊塗しなければならなかったが、それは自民党の「女性活躍」であって、日本のではないはずだ。

野田聖子元総務相(女性活躍担当)からも、今回の人事における女性軽視はあきれられる始末だった。「女性活躍担当」や「少子化対策」などの役職はなくなってしまい、庶民の子育ての苦労は絶えなくなるようだ。そのじつ、シビリアンコントロールを果たせなかった稲田朋美元防衛相、つまり安倍チルドレンで将来の女性宰相候補を筆頭幹事長に据えるなど、お友だち人事はここでも発揮された。

◆無理がありすぎる改憲

安倍総理が意欲をみせている改憲についても、少しだけ触れておこう。このかん、自民党憲法改正草案を親しい憲法学者と検証したところ、現行憲法の前文を取っ払ったことで、改正草案は明治憲法よりも封建的な内容であるとの指摘をいただいた。ルソーの社会契約説など近代法の理解がないまま、たとえば社内就業規則のようなものになっているというのだ。自民党の草案が近代法ではないとしたら、安倍の9条加憲論は「ただし書き(例外規定)」を設けることで、自衛隊の合憲を担保するものだ。この「ただし書き」が憲法条文そのものを掘り崩してしまうと考えられる。つまり一般法令のように例外規定をもうけて、法律の柔軟な運用を目的とする「ただし書き」は、憲法には馴染まないのだ。この憲法論の一知半解が暴露されるのは、そう遠くないはずだ。


◎[参考動画]安倍改造内閣が発足(ANNnewsCH 2018年10月2日公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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