以前当欄でも紹介した東京地裁の「虚偽記者席」問題をめぐる国家賠償請求訴訟(http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=2202)の第3回口頭弁論が7月16日、同地裁であった。審理はこの日で終わり、10月1日に判決が言い渡される。

この訴訟の原告は、フリージャーナリストの今井亮一さん。訴状などによると、今井さんは2011年5月から2012年9月にかけて、東京高裁の警備員の頭を殴るなどしたとして公務執行妨害などの罪で起訴された男性被告人の計13回の公判を取材した。この間、東京地裁はいつも5席の傍聴席に「報道記者席」とプリントされた白いカバーをかけ、司法記者クラブに所属しない今井さんら一般の傍聴希望者を頑なに座らせないようにしたという。

ところが、実際にはこの5席の「報道記者席」は常に4~5席が無人状態だった。そこで不審に思った今井さんが司法記者クラブに確認したところ、そもそもクラブ側から東京地裁に記者席の用意を一度も要求していないことなどが判明したという。今井さんはこうしたことから今年1月、同地裁に「虚偽記者席」で傍聴を妨害されるなどしたとして、国に損害賠償金1万円の支払いなどを求める訴訟を同地裁に提起していた。

審理を終え、今井さんはこの国賠訴訟の感想をこう述べた。
「国の主張は要するに、裁判所が嘘や騙しを用いて国民に裁判を傍聴させなくても、法律にも判例にも違反していないから構わない、というものでした。こちらの主張は、法律や判例を見るまでもなく裁判所が嘘で国民を騙すこと自体がダメだろう、というものですから、話がかみ合っていない裁判でしたね」

ただ、被告(国)の準備書面を見ると、東京地裁が司法記者クラブ側の要求もないのに毎回5席の傍聴席を取り置いた上、クラブ側に傍聴席を取り置いたと通知していなかったことを認めており、事実上、「虚偽記者席」をもうけたこと自体は認めているように読める。そのあたりの事実関係を同地裁に問い合わせたところ、「お答えすることはない」との返事だったが、判決では、せめて同地裁が虚偽記者席をもうけたのが事実か否か程度のことにはきっちり言及して欲しいところだ。

「法律や判例に違反しなければ何をやってもいい、というのでは脱法ハーブと一緒。裁判所がそれをやったら、“脱法司法”です。裁判がどんな結果になろうと、今後は虚偽記者席で傍聴妨害するようなことはやめて欲しいと思います」(同)

判決の結果については、当欄でまたレポートする予定だ。

(片岡健)

★写真は、「虚偽記者席」訴訟の舞台の東京地裁。