リンゴの栽培は「神の領域」といわれる。その樹は病気になりやすく、あらゆる害虫がリンゴの果実によってたかる。農薬が欠かせないが、木村秋則氏は妻が農薬で体調を崩したことから「無農薬でリンゴを育てる」と宣言する。リンゴの無農薬栽培を実現させた例はない。「バカでねえか」「かまど消し(ゴクツブシ)だな」と揶揄されながらも、なんと無農薬でリンゴを立派に作った物語を描く「奇跡のリンゴ」がヒットし、ロングラン上映が続いている。青森ではロケ地を訪れる観光客がじわじわ増え、映画による地域活性化が期待されている。東宝によると、興行収入は全国で約9億8400万円(8月11日現在)。大ヒットとされる10億円の大台が確実な状況だ。

「木村を演じた阿部サダヲと妻を演じた菅野美穂の夫婦が絶妙な演技を見せている。また、息子を信じ続けて無農薬リンゴの成功を信じる、木村の義理の父を演じた山崎努の老練な演技もよかったです」(演出家)

小さい頃から「答えを必ず出す」ことに生きがいを感じていた秋則少年は、バイクを分解したり、時計を分解したり、とにかくこだわる性格だ。そのこだわりが、「無農薬でリンゴを栽培」することに執着しすぎて、10年も費やすことになる。その間の収入は、ほんの片手間で栽培している野菜や出稼ぎで警備のアルバイトをしたり、貯金を崩して補う。

このとき、村の反応は「バカでねえの。バカがうつる」として木村家を村八分にする。4つあった畑は半分になる。それにめげず、木村はついに「無農薬でリンゴを育てる」「しかも害虫を寄せ付けない方法」を発見するのだ。その答えが何かは、物語のキーなので伏せるが、ひさしぶりに常識をひっくり返す、痛快な物語を見た。

農薬など、使わないにこしたことはない。地域により、農薬ゆえに、ほぼ絶滅した植物もある。

「木村家の栽培は、農業界に一石を投じました。今では、木村家のリンゴはもう30年待ちでしか手に入りません。あらゆる意味で木村リンゴはスーパーブランドなのです」(農家)

この閉塞した時代を打ち破るのは「非常識」かもしれない。

(鹿砦丸)