俗に「しばき隊リンチ事件」とか「十三ベース事件」などともいわれてきた「カウンター大学院生リンチ事件」に私たちが関わるようになって3年が経った──私なりに思うところもあり、時あたかも対李信恵第1訴訟が一審判決で鹿砦社勝訴‐李信恵敗訴となり、双方控訴し、また第2訴訟の審理が進捗しつつある中で、“準備書面の準備”も兼ねて、この3年の経過や想いなどを整理してみた。

 なお、対李信恵訴訟は2件あり、便宜上、鹿砦社が原告となり李信恵を被告として訴えたものを「第1訴訟」、これに李信恵が反訴し、反訴とならず別個の訴訟となったものを「第2訴訟」(原告李信恵、被告鹿砦社)とする。

 また、俗に「しばき隊リンチ事件」「十三ベース事件」の呼称は、おそらく東京の反しばき隊の人たちが作り広まった言葉で、関西にいて見ていると、「カウンター」と「しばき隊」も実態的に同じであろうが、当地では「しばき隊」よりも「カウンター」という表現が一般的のようで、「カウンター大学院生リンチ事件」と表現するほうが、より的確だと思われるので、本稿ではこう表現する。

 以下、本稿では全て敬称は省かせていただいた。

《1》私が「カウンター大学院生リンチ事件」に関わる契機

 

リンチ直後の被害者大学院生M君

 対李信恵第1訴訟は、李信恵による鹿砦社、あるいは同社代表の私への誹謗中傷、悪口雑言に対するものであり、一方第2訴訟は、李信恵が現場に同座し加担したとされる「カウンター大学院生リンチ事件」について記述した書籍に対するもので第1訴訟から枝分かれしたものである。

 もう3年にもなるのか──2016年2月28日、リンチ事件の被害者でK大学大学院博士課程に在学するMの知人Yが鹿砦社本社を訪問し、Mが李信恵ら5人による集団リンチに遭い重傷を負った事実の説明を受け、資料を受け取り、リンチ直後の顔写真に衝撃を受けた。また、リンチの際の)、マスメディアの報道の印象から、むしろ私は李信恵を“ネトウヨ・極右勢力と戦う勇気ある女性”と尊敬さえしていた。おそらく一般の人たちも、詳しく事情を知らない限りそうだろう。

 しかし、その本人が裏で(私たちが知らないところで)、このような集団リンチに同座し関与したことにも大きなショックを受け、さらに被害者Mが、一部の者らによって支えられていたこと以外に、集団リンチ被害者として正当な償いを受けず、いわば村八分状態にされていること、李信恵に連なる、著名人含め多くの者らによる隠蔽活動により、それも事件後1年以上も放置されていることにもショックを受けた。

 私のショックは、そうしたリンチ事件の実相をなぜかマスメディアが報じないこと、さらにその隠蔽活動に、私が経営する会社・鹿砦社に勤務していた藤井正美が、李信恵らの仲間として関わっていたことも判明するに至りショックは強まるばかりだった(藤井については、第2弾本『反差別と暴力の正体』、第4弾本『カウンターと暴力の病理』にて記載し、あまりの悪質さに給与返還、損害賠償を求め大阪地裁第16民事部に提訴している)。

 日頃、「反差別」や「人権」を声高に叫ぶ者が、リンチ被害者を村八分にし、被害者の人権を蔑ろにしている……私たちは、一致してリンチ被害者Mを支援し、事件の真相究明を行うことにした。これは、僭越ながら、私の長い出版人としての矜持による営為である。私も長い出版人生の中で、散々いろいろな方たちに迷惑をかけたり顰蹙を買ったりしたが、まだ人間としての良心の一片は残っている。

 私は、李信恵に対して一切の付き合いもなく直接顔を見たこともなかった(初めて顔を見たのは2017年12月11日、Mが李信恵らリンチの場に同座した5人を訴えた訴訟の本人尋問の法廷であり、それ以前も以後も会ったことはない)ので何らの私怨・私恨は一切なかったし今もない。このリンチ事件が、社会運動、とりわけ、いわゆる「反差別」運動の内部で、その運動の過程で起きたこと、また、李信恵がその運動の旗手のように頻繁にマスメディアに採り上げられることなどを鑑みると、李信恵は公人に近い存在、準公人であり、社会運動、とりわけ「反差別」運動の内部で起きたことで公共性、そしてこれを追及することに公益目的があることは論を俟たない。

《2》創業50年を迎えた鹿砦社は、その過程で独自の取材のノウ・ハウを身に付けた

 鹿砦社は1969年(昭和44年)に創業、本年で創業50周年を迎える。また、同社現代表の松岡も途中から加わり、代表に就いて30年余りになる。

 50年に至る過程で、当初は人文・社会科学関係を中心に出版し、ノーベル賞受賞作家、ボリース・パステルナークの『わが妹人生 1917年夏』(1972年)など、いわば硬派の出版社として名を成した。また、松岡が代表に就くや、出版の巾を芸能関係にまで拡げ、小さいながらも左右硬軟広範に渡り出版する、いわば総合出版社として現在に至り、今では年間100点前後の新刊書籍・雑誌を発行し、コンスタントに年間売上3~4億円を挙げ、ピーク時にはヒット作が続き売上10億円を超えたこともある。

 李信恵はじめ一部には、鹿砦社が、きのうきょう出てきた、“ぽっと出”のいかがわしい新参出版社の如く誤解する向きもあるようだが、半世紀も続く歴史と伝統のある出版社であり、手前味噌ながら、本社のある兵庫県では、信用情報機関の調査でも1位とされるし、関西でもおそらく10位前後にランキングされると思われる。

 鹿砦社は、創業50年の間に、独自の取材のノウ・ハウを身に付け、出版業界内外に一定の評価を受けている。

 今般、このリンチ事件についても、会社の規模からして、たびたびはないが、私たちは、これまでの出版人生で培った取材のノウ・ハウをかけて真相究明にあたることにしたのである。これには、リンチ被害者の人権を尊重し、これを支援するという、人間として当たり前の行為であると共に、被害者の人権が蔑ろにされたり村八分にされたりしたことに対する同情と義憤があった。

 想起すれば、人生の中で、このような場面に遭遇したことはたびたびあった。例えば、50年近く前の学生時代の学費値上げ問題、母子家庭に育った私にとっては他人事ではなかった。このことが李信恵代理人・神原元弁護士が「極左」呼ばわりするファクターになっているようだが、私にとっては、後先顧みず闘うしかなかった。ことは単純だ。50年近く前の学費値上げ問題にしろ最近のリンチ事件にしろ、実態を前にして放っておけるわけがない。どこかの誰かとは言わないけれど、殊更「正義」を振りかざすわけではないが、許せないことは許せないとハッキリ言うしかないという単純なことだ。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

《3》私たちがリンチ事件に対して調査・取材に着手した経緯

 私たちは、社内外の有志と東京編集室に出入りする者らによって取材班を結成し、次のように取材の手順を考え、早速着手した。この際、李信恵ら加害者側、Mら被害者側問わず、できるだけ広く多数の者に取材し、情報の真偽を見極めることに最大限努力した。

①M関係者からもたらされた資料の読解と解析。

②リンチ被害者M本人への面談と聴取。

③Mをサポートしてきた者らへの取材。多くの人物が応じてくれた。

④原告と同じ在日の人たちへの取材。在日同士で李信恵支持者が多いと思ったが、意外にも、多くの人たちが、このリンチ事件を知っていて、李信恵に批判的で被害者に同情的だった。また、情報提供などにも協力的だった。

⑤李信恵本人への取材。李信恵拒。逆に、このことにより、リンチ事件の存在と李信恵の関与の情報の信憑性が強まった。

⑥日本人、在日問わず李信恵周囲、李信恵に連繋する者らへの取材。これは、直接面談、電話取材など多岐に渡り、かなりの時間と労力と費用が掛かった。少なからず心ある人物が、身分が判らないようにすることを条件に応じてくれた。それは、李信恵の仲間らからの報復を怖れてのことであるが、Mの支援者らに対するバッシングはじめ他のケースでも、筆舌に尽くし難く酷いものだったからである。

 このようにかなりの時間と労力と費用をかけたことにより、私たちは事件の実態に迫ることができた。リンチ事件が実際に起き、李信恵はリンチの現場に同座し、これに関わっていることに私たちは確信を持ったのである。なお、取材の際には、必ず録音を録るように努め、これは膨大な量になるが保存し、一部は下記書籍に掲載している。

 そうしたことを現在まで行い、鹿砦社は次の5冊の出版物にまとめ発行、世に送り出し一般書店での販売を行っている。

(1)『ヘイトと暴力の連鎖──反原連・SEALDs・しばき隊・カウンター』(2016年7月14日発行。本文104ページ)。以下「第1弾本」とする

(2)『反差別と暴力の正体──暴力カルト化したカウンター‐しばき隊の実態』(2016年11月17日発行。本文187ページ、カラーグラビア4ページ)。以下「第2弾本」とする。

(3)『人権と暴力の深層──カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(2017年5月26日発行。本文132ページ、カラーグラビア4ページ)。以下「第3弾本」とする。

(4)『カウンターと暴力の病理──反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』(2017年12月11日発行。本文195ページ、カラーグラビア4ページ。音声データCD付き)。以下「第4弾本」とする。

(5)『真実と暴力の隠蔽──カウンター大学院生リンチ事件の闇を解明する!』(2018年5月28日発行。本文179ページ、カラーグラビア4ページ)。以下「第5弾本」とする。

 この間に鹿砦社は「デマ本」「クソ鹿砦社」「鹿砦社潰れろ」「ネトウヨ御用出版社」とか李信恵、及び彼女の周囲の者らから散々罵詈雑言、誹謗中傷を浴びてきたが、鹿砦社はこれまで、1つの案件や事件で、このように5冊もの本にして出版したことはない。李信恵がリンチの現場に同座して関わったとされる「カウンター大学院生リンチ事件」に対する綿密な取材や調査を、時間と人と金を費やして行った証左である。5冊の本で、実に本文合計797ページ、カラーグラビア16ページ、総計813ページにもなる。さらにリンチの際に被害者Mが必死に録音した音声データのCDまで付けている。鹿砦社50年の歴史の中でもなかったことである。


◎[参考音声]M君リンチ事件の音声記録(『カウンターと暴力の病理』特別付録CDより)

 総計813ページにも及ぶ取材・調査の堂々たる内容は、じかに現物を紐解いてもらえれば歴然だが、遺憾ながら、李信恵が対在特会らを訴えた訴訟で李信恵勝訴の判決を出し“李信恵リンパ”と言っても過言ではない当初の増森珠美前裁判長は、対李信恵第2訴訟において原本提出を拒絶している。繰り返すが、李信恵が「不法行為」とか「名誉毀損」とする一部箇所のみならず、これに至る前後の文脈から読解すべきと思慮するので、裁判所は上記5冊の本の現本を受理すべきだし、判断の材料とすべきである。そうでなければ、公平・公正な判断もできないだろうし、「木を見て森を見ない」偏頗な判断しかできないと懸念する。その後、増森裁判長は突如異動になり新たな裁判長により原本提出は認められた。当然だ。[つづく]

◎「カウンター大学院生リンチ事件」被害者支援と真相究明の闘い、この3年間に思ってきたこと(全3回) 鹿砦社代表 松岡利康
[1]2019年3月4日公開
[2]2019年3月5日公開
[3]2019年3月6日公開

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541