福山雅治演じる湯川教授が、「苦手というより、嫌いだ」とする子供との交流を描いた「ガリレオ・シリーズ」でも異色の作品が『真夏の方程式』である。
東野圭吾の原作を、福山が物語の中心になると、こうもつまらなくなるのか、という点で、このシリーズはやはり「ゲストしだい」というイメージを拭えなくなった。

柄崎恭平は小学5年生。夏休みを親戚の旅館で過ごすため、玻璃ヶ浦にやってきた。電車の中で携帯を巡るドラブルで、湯川に助けてもらったことで交流が始まる。両親が多忙なため、一人で過ごすことも珍しくなく、ゲームで遊んでばかりいた。宿題がはかどらず、特に理科が苦手であったが、湯川との出会いで少しずつ心境に変化が訪れる。やがて彼のことを「博士」と呼ぶようになるが、ある日、旅館の主人と妻を訪ねてきた刑事が突如として死体として発見されて、恭平は「これは自殺ではない」と断言する。事件に遭遇した湯川は「ある人物の人生が捻じ曲げられる」ことを防ぐために、真相に挑んでいく。鍵を握るのは、16年前に塚原が担当した元ホステス殺人事件。そして、その裏には旅館の家族が隠さなければならなかったある重大な秘密があった。

子供が嫌いなことを差し引いても、湯川はあまりにも素っ気なく、冷たく見える。そこには明確な理由があるのだが、前田吟や風吹ジュンがあまりにも緊迫した演技を見せているので、なんとか物語は成立しているかのように見える。かろうじて杏のさわやかな日焼けした笑顔が物語の救いだ。なにしろ家族でありながら、互いに真相を隠して生きるドラマが、湯川によって明らかにされるのだ。

「東野圭吾のガリレオのドラマとしては、湯川がいやいや捜査に協力する形のほうがしっくりくる。この『真夏の方程式』は、捜査にあまりにも前のめりな湯川が描かれているのでしっくり来ないのでしょう。湯川は、本来は、こうした探偵ごっこが大嫌いなのですから、どうして捜査協力する気になったのか動機を描きこんでいないので、違和感がある」(ミステリーファン)
ガリレオ・シリーズとしては、やや失敗した感のある『真夏の方程式』。杏では、やはり軽い感じは否めなかったか。まあ、甘く見てあげて、海の美しさだけでも見る価値はあるかもしれない。

(鹿砦丸)