知り合いの女性が最近、ホストクラブにはまっている。
しばらく前まで、ホストクラブは初回の料金が3000円というところが多かったが、今は500円というところが増えているようだ。そこで楽しさを覚えさせて、2回目からの来店は通常の料金となるのだ。長引く不況での生き残り競争で、初回料金は価格破壊しているというわけだ。
ホストたちは、女性の喜ばせ方を知っている、と彼女は嬉々として語る。
確かにそうだろうな、と私も思う。

友人にナンパ塾の校長がいる。ナンパの仕方を教える学校を経営し、自ら教えているのだ。
彼はとにかく褒めるのがうまい。カラオケの受付の女性にまで、「そのネイル、きれいだね。自分でやったの?」などと話しかけている。その女性を褒めてもなんの得にもならないはずだが、そうやって日頃から褒める鍛錬をしているのだ。
日本人はなぜか、褒めるのは簡単、批判するほうが難しい、と考えている人が多い。
しかし、実際には褒めるのは難しい。
熱海で、芸者をしているライターに会った時のことだった。見るからに地味な浴衣を身につけていたが、それはこちらが素人目だからだろうと思った。
「浴衣、渋くていいですね」と褒めると、「えっ、これがですか!?」と仰天されてしまった。

ホストたちはやはり、褒めるのがうまいのだろう。
ホストクラブにはまった女性は、男性がキャバクラにはまる理由が分かる、と言うのだが、果たしてそれはどうだろうか?
仕事関連のつきあいなどで、キャバクラに行くようになったのは、30代になってからだ。
最初の頃は、普通の女性と会っている時と同じように、相手を喜ばせようとおもしろい話をしていた。
ライターだからおもしろいネタはいくらでもあるのだが、金を払って相手を喜ばせるのは、あまりに馬鹿馬鹿しい。
ライターなのだから、若い女性たちが普段何をしていて何を考えているのか、取材するべきだと、考えを変えた。
だが、「君の夢はなんなの?」と訊くと「結婚」、「趣味は?」「ショッピング」、「休みの日は何をしているの?」「寝てる」。そんな答しか返ってこない。
まともに会話のできる若い女性と話したかったら、銀座のクラブに行くべきなのだろう。
男性たちはキャバクラに何をしに行くかと言えば、キャバ嬢を口説くか、自慢話をするか、愚痴を言うか、のいずれかなのだ。

彼女たちには、男性を喜ばせる、というスキルはない。
何年も前のことだが、話の流れで、自分は年男だと言ったことがあった。
「それじゃあ、48歳ですね」と言うので、「お金をもらって男性を喜ばせる仕事なんだから、一応は36歳と言ってみたほうがいいよ」と教えてあげたことがあった。

だがキャバクラも、何とか生き残ろうと、最近では努力を始めている。
「お客さん若いですよね。絶対若いと思う」などと、こちらの年齢も聞かずに言ったりする。これでは、お世辞にもなっていない。
「君は、どんなタイプの男性が好みなの?」と聞いてみると、「お客さんみたいな人」と答えたりする。「まだろくに話もしてないのにそんなこと言うんじゃ、誰にでもそう言ってるって思われちゃうよ」と、また教えてあげることになる。

キャバクラにおける男性を喜ばせる術は、やっと黎明期を迎えたといったところだろう。
どんな業界でも、女性は頑張っている。
だが、圧倒的に女性の世界であった水商売の世界は、それだからなのだろうか。男性のほうがスキルが上だという印象がある。

(FY)