しかし、契約書を交わしているのだから契約期間の3年間は付き合いをしなければいけない。揉めるのも面倒だと思い、10作についてはそのまま販売してもらうことにした。その後も無料キャンペーンを行うというメールが榛野氏から来るので、それに対しての返事をする。そのメールにはHP、ブログでの告知をお願いします。と書いてあるので、告知だけは行うことにした。Facebookで繋がっているというのは面倒なもので告知を行っているか、いないかがすぐにわかる。榛野氏はシェアもしてくるのでチェックしているのは明白だ。発売された時には新刊出ました。というような告知を私が行っていたので、無料キャンペーンの際に告知を行わないわけにはいかなかった。

その頃、告知を行っていたこともあり昔から仲良くしている小説仲間の友人からskypeにて連絡が来た。kindleで発売されている小説を読んでの感想を言いたく連絡してきたそうだ。その友人は発売されている全ての小説を読んだという、大変有難く思った。どういう経緯で発売されたものだとしても、お金を出し読んでもらえるというのは大変嬉しいものである。
その友人は話すうちにどういう経緯で発売されたかを聞いてきた。そこで、これまでにあったことの全てを話した。しかし、友人はどんなに面倒な会社でも小説が電子書籍として発売されるのは羨ましいというのだ。友人は会話中にHPにて豊穣出版がどういう会社かを確認している。そこで友人は作家募集中のページを見つけ、会社を紹介してほしいという話をしてきた。
友人も苦労するような気はしたので、kindleは自分でも販売できるということを伝えた。しかし、友人はパソコンが全く使いこなせないのでお願いしたいという。無料で発売できるものにあれだけのお金を取られるということは全く持って良い条件ではないということも伝えた。はっきりとオススメしないとも言ったのだが、友人は引き下がらず。それでも多くの人に読んでもらえる機会があるのならやってみたいと言った。
友人は下積み時代も長い、真剣に小説家を目指している、書いている本数、賞に応募している本数も圧倒的に多い。苦労も努力もしている。お金や契約内容の問題ではないのだろうと思い、榛野氏に紹介することを約束した。

翌日、榛野氏から無料キャンペーンのメールが送られてきた。無料キャンペーンにて何冊売れたかという報告もメールにてしてくるので、頻繁に榛野氏から連絡が来ていた時期ではあった。
その際『まだ作家の募集って行っていますか?』と送ると『まだ募集しています。もし出版したい方いらしたら是非紹介して下さい』との返事があった。自分から榛野氏に頼む形になるのも嫌であったし、友人が是非、出版したいと話しているのですが……というようなメールを書く。すると、『では、私のメールアドレスに連絡して下さい』と返事が来る。そこには、『これから先、作家さんからのお金の負担も考えていますので作品の内容を見て無料か負担にするかを判断します。但野さんはこれから先も無料ですよ』という風にも書かれていた。
これは足元見られたな……紹介すると決めた時点で私からオススメの小説家が居ると言った方が良かっただろうか。
とりあえず友人に榛野氏のメールを転送した。友人はありがとうと言いながらも迷っていたようで数日後に電話があった。
「やっぱり、お金の負担っていうのが気になる」と言われたので「それに関してはどうなるかわからないけど、払えって言われれば無視して断っていいから」と伝えた。私に悪いなどとは思わないでほしいということも伝えた。実際にどうなるかはわからなかった。私の後に発売している人も無料で発売しているらしいことを、榛野氏が言っていたため、まだ無料で販売するのではという思いもあった。
しかし、考えが甘かった。ああいったメールを私に送る時点で無料で販売などする気がなかったことぐらい察知できたはずだ。翌日、とんでもないメールが友人から送られてきた。

(但野仁・ただのじん)

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