『ご都合の良い日時を2~3頂けると助かります』との榛野氏から頂いたメールの文面通り空いている日程を送る。それにプラスして、私からも榛野氏に『何枚ほどで電子書籍化は可能なのでしょうか?』という質問を投げかけた。返事としては『400字詰めで30枚程度あれば、100円から300円で販売しても良いかなと思っています。芳川さんの作品はそんな感じです』と軽い感じのメールが送られてきた。芳川氏も過去に豊穣出版から一冊kindleにて発売して、100位以内を収めベストセラーに入っていたとのことである。今思えば、当時はKDPで販売している人数が少なかったのでありえない話ではない。現在では大手出版社も多くの書籍をkindleにて出版しているので難しい話だとは思うが。

私は榛野氏のメールを見て400字詰めで30枚の作品で100円というのは高いのではないか? と、率直に思った。300円となれば紙の書籍以上の値段である。大物作家でもない自分がこのような値段で売れるのだろうか? などと考えていた。ただ、kindleについてはさっぱりとわからない状態であったのでkindleの相場がそのくらいなのでは? という思いもあった。

もう一点メールのやり取りで気になったのは、文末の『では!』という締め方である。この『では!』というのは一度だけではなくずっと続いている。芳川氏も私のメールの改行がないことを気にするよりもこの『では!』という文末を気にするべきではなどと思ったりもした。仕事関連の方でも、ある程度親しくなった場合は軽い形のメールを送り合うということもあるが……榛野氏にとって私が年齢的にも下であり、kindleも出版してあげる側だと感じているようにも感じられた。
私に改行について注意した芳川氏は、このメールについては何も言わないのであろうか?それとも、芳川氏の立場は榛野氏よりも上なのであり、芳川氏に対しては丁寧な文章を送っているのだろうか? いろいろ考えたものだが、メール一つでごちゃごちゃと揉めるのは芳川氏だけで充分なので、その時は気にしないことにした。

同時期に榛野氏からfacebookに友達リクエストが届いた。まだ、会ってもいないのだがとも思ったが、facebookに関しては、私の尊敬する先輩が友達だったこともあり躊躇わずに申請を承諾した。会うことが決まった今、会って話をしてからいろいろと考えれば良いと考えていた。
私がいくつか提示した日程の中で、お互い都合の合う日を見つけ、私が榛野氏のオフィスに行くということで話はまとまった。その時に会社の規模について、榛野氏の人間性についてわかるだろう。

打ち合わせ当日、オフィスへと向かう。ビルはまずまずの大きさだ。インターホンを押すと出迎えてくれたのは、事務員と思われる40歳前後であろう女性であった。その方は感じ良くパーテーションで仕切られた来客用のスペースに私を案内してくれた。オフィスもワンフロアあり、それなりに綺麗である。来客用の紙を渡され名前と目的を書きながら、榛野氏を待つことになった。

(但野仁・ただのじん)

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