自称作家の売文屋・曽野綾子が『週刊現代』8月31日号に寄稿した「何でも会社のせいにする甘ったれた女子社員たちへ」の内容が、大きな話題となっている。産休制度は会社に迷惑千万な制度であるとし、働きながら子育てする女性を切り捨てており、これにネット上で反論が続々と寄せられた。

もともと曽野綾子は、図々しいほど自分には甘く、冷酷なほど他人には厳しいことで知られる。あの悪名高い雑誌『WILL』では、被災者は瓦礫で飯を炊けと放言したが、チェルノブイリ原発事故のときも、事故の死者より妊娠中絶のほうが多いから原発は止めないで中絶を禁止しろ、とカトリック教会も大迷惑する発言をしていた。こんなことを出演させて言わせていたのはNHKである。

自称カトリックの曽野綾子は中絶反対を産経新聞の『正論』にも書いたが、これでよく問題になっているのが強姦の被害者の場合であり、よく欧米では議論となり、信者は悩む。ところが曽野綾子の旦那の売れない小説家・三浦朱門は、文化庁長官として民間から入閣した当時、「強姦できる体力がない男は駄目だ」と雑誌に書いて問題になったものだ。

また、他人に対しては、昔は貧乏が当たり前だったのだから贅沢言うなと叫ぶ曽野綾子だが、自分は幼稚園から大学までお嬢様学校の聖心というのが唯一の売りで、在学中に当時学生だった皇后に会ったことがあるというのが自慢。これは筒井康隆の文壇内幕暴露小説『大いなる助走』及び映画化『文学賞殺人事件』でも、皮肉られていた。

筒井の小説が皮肉って描いたとおり、曽野綾子は聖心のお嬢様が芥川賞候補になったという話題づくりに出版業界が利用し、「有吉佐和子と並ぶ才女」と持ち上げたが、有吉が話題作を次々と発表し『複合汚染』『恍惚の人』など社会性のある作品でも注目されたのに、曽野は振るわない。だから、夫婦そろって権力にすりより弱いもの虐めの商売を始めたと、かつて『噂の真相』誌に書かれていた。そして文学賞はまったく受賞できず、受賞できたのは産経の『正論大賞』というお粗末。

このような処世術を駆使する曽野らしい行動として、角川書店の角川春樹社長に対する言動がある。同社長が「時代の寵児」と持て囃されていた時は批判しなかったのに、不祥事を起こしたら途端に、前から反感を持っていたと言い出し、同社から自著の版権を引き上げた。この露骨さと嫌らしさを、ベストセラー作家の内田康夫らが批判し、特に同社長と親しかった作家の森村誠一は「お嬢様育ちの太平楽」と指摘していた。

こんな人を、どうしてマスメディアとくに出版社系雑誌は利用するのか。それを、すでに二十年以上前に、社会学者の上野千鶴子(現・東京大学名誉教授)が『月刊朝日』誌上で、女性右派論客が人材難により後継者難であるためだと指摘していた。そして、これは今も相変わらずで、他に見当たるのは、思い込み発言で問題になる櫻井よし子など、もっとお粗末な女性ばかり。だから超高齢の曽野綾子に、まだお座敷からお呼びがかかるのである。

(井上 靜)