2013年から始まった「絆」興行も12回目を迎え、日本の各ジムがトレーナー兼選手として招聘した第一線級を退いたタイ選手でも充分なベテラン技でムエタイを披露。日本滞在が長く、勝利者インタビューで日野リングアナウンサーが日本語で感想を聞くと、片言ながら日本語で照れながら「ありがとうございます。また頑張ります」程度の受け答えでもしっかり応えてくれるタイの選手達でした。

ノックアウトを狙うような技は少ないが、ダメージを与えるよりバランスを崩させる技、踏み込んだ前足を払う、蹴ってきた軸足を払う、足を掴んで吹っ飛ばす崩し、突進を拒むジャブのような前蹴り、どこを狙うか分からない素振りからのヒジ打ち、ヒザ蹴り。裏の裏をかくような相手のフェイントを見破ってフェイントを掛ける上手を行く技。若い日本人選手3名はムエタイ戦士の巧みな技に、ムエタイ技術を学ばせて貰ったような実戦での展開。タイ3戦士とも日本に慣れて、日本の選手を育てる役割を果たす、そんな指導者のような存在だった。

追い詰めるとジョッキーレックの左ミドルキックを浴びてしまう誓

組まれると動けない。ヒザ蹴りを喰らう誓

◎絆 Ⅻ
2019年 6月9日(日)
埼玉県春日部市ふれあいキューブ 16:00~20:15
主催:PITジム / 認定:NJKF

◆スーパーフライ級5回戦

ジョッキーレック・DRAGON(タイ/51.9kg)
   VS
NJKFフライ級2位.誓(=飯村誓/ZERO/52.0kg) 
勝者:ジョッキーレック / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:君塚50-49. 松田50-48. 中山50-48 

蹴り足を取られ、吹っ飛ばされる誓

ジョッキーレックは過去にHIROYUKI、岩浪悠弥、佐々木雄汰といった国内チャンピオンを降してきた実力を持つ36歳。“ジョッキーレック・ポー・ポンスリン”が本来のリングネーム。

18歳の飯村誓がパンチを狙ってもジョッキーレックはスウェーでかわし、接近するとジョッキーは首相撲でしっかり組んでヒザ蹴りを出してくる。組んでから崩し倒すのが上手いジョッキーレック。中間距離では何を出してくるか読み難いムエタイ技に翻弄される誓。

第5ラウンドは勝ちを確信したら下がるパターンは仕方ないが、誓が出てくれば余裕の応戦。ムエタイの奥義見せたジョッキーレックだった。

誓のハイキックを軽くかわす余裕のジョッキーレック

ユットvs日下滉大。ロープ際でユットのパンチを貰ってしまう日下滉大

◆56.0kg契約3回戦

NJKFバンタム級3位.日下滉大(OGUNI/55.9kg)vsユット・ZEROジム(タイ/55.6kg)
勝者:ユット・ZEROジム / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:君塚27-30. 竹村27-30. 中山26-30 

初回から積極的に蹴りが出る日下だが、ユットは余裕で見ながら、かわしたり蹴り返したり、更にガードの空く日下へパンチを打ち込むタイミングを見計らう。第3ラウンドには日下は蹴りに行ったところにユットの素早い右ストレート貰いノックダウンを喫する。軽いヒットだがフラフラと倒れ込む。上手さが目立ったユット。更にロープ際で蹴りを出したところへユットの右ストレートを浴びると2度目のノックダウン。倒しきるほどラッシュは控えた感じの大差で判定勝利を掴んだユットだった。

ユットと打ち合う日下滉大

ユットの右ストレートを浴びてしまう日下滉大

ポンと打ち合う吉田凛太朗

◆59.5kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級7位.吉田凛太朗(VERTEX/59.3kg)
   VS
ポン・ピットジム(タイ/58.4kg)
勝者:ポン・ピットジム / 判定0-2 / 主審:松田利彦
副審:多賀谷29-30. 竹村29-29. 中山28-29 

吉田は正攻法な蹴りで前進気味に攻めるが、ポンは下がり気味でも圧力あるヒットが目立つ。組み合えばポンが吉田の頭をを押さえ付けて優位な態勢に持ち込んでヒザ蹴りを加える。吉田がパンチ連打で出るとポンは距離とって迎え撃つ。吉田のガードが空けばハイキックで顔面をかすめる。僅差ながらポンが上手さで優った。

ポンの右ストレートを浴びる吉田凛太朗

◆女子キック(ミネルヴァ)45.5㎏契約3回戦(2分制)

WPMF日本ピン級3位.田中“暴君”藍(PCK連闘会/45.3kg)vs祥子(JSK/45.3kg)
勝者:田中“暴君”藍 / TKO 2R 1:21 / レフェリーストップ
主審:君塚明 

◆女子キック(ミネルヴァ)48.0㎏契約3回戦(2分制)

アトム級1位.佐藤レイナ(teamAKATSUKI/47.8kg)
   VS
ライトフライ級6位.後藤まき(RIKIX/47.8kg)
勝者:後藤まき / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:多賀谷28-29. 君塚29-30. 松田28-29 

◆女子キック(ミネルヴァ)スーパーフライ級挑戦者決定トーナメント準決勝3回戦(2分制)

ライトフライ級4位.佐藤”魔王”応紀(PCK連闘会/51.9kg)真美(TeamlmmortaL/51.8kg)
勝者:真美 / 判定0-2 / 主審:竹村光一
副審:中山29-29. 君塚28-30. 松田28-29  

同日、大阪市平野区で行なわれているNJKFミネルヴァ実行委員会西日本主催興行で、もう一方の準決勝で聖愛(魁塾)が楓(LEGEND)を破り、決勝戦は真美vs聖愛となります。

佐藤応紀vs真美。女子キック、ミネルヴァの戦いに勝ち上がった真美

◆55.0㎏契約3回戦

篠田兼一(DANGER/54.9kg)vs NJKFバンタム級4位清志(新興ムエタイ/54.8kg)
勝者:清志 / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:中山27-30. 君塚28-30. 竹村27-30 

◆80.0kg契約3回戦

J-NETWORKライトヘビー級6位.中平卓見(北眞館/80.0kg)
   VS
クイック・チョップリー(打撃武道我円/78.0kg)
勝者:中平卓見 / TKO 1R 1:15 / カウント中のレフェリーストップ
主審:松田利彦 

◆ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級7位.佐野克海(拳之会/66.68kg)
   VS
星裕久(ワイルドシーサー高崎/66.4kg)
勝者:佐野克海 / 判定2-0 / 主審:君塚明
副審:松田29-29. 多賀谷30-28. 竹村30-28 

◆52.0kg契約3回戦

清水保宏(北眞館/51.2kg)vsナカムラン・チャイケンタ(teamAKATSUKI/51.8kg)
勝者:ナカムラン・チャイケンタ / KO 2R 2:58 / テンカウント
主審:中山宏美

◆スーパーバンタム級3回戦

紺野大(DRAGON/55.1kg)vs雅(クローバー/55.0kg)
勝者:雅 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:松田29-30. 中山28-29. 君塚28-30 

大場総vs希望。タイを主戦場に戦うプロボクシングの大場総

◆70.0kg契約3回戦

中川達彦(打撃武道我円/69.6kg)vs謙(PIT/69.0kg)
勝者:謙 / 判定0-2 / 主審:多賀谷敏朗
副審:竹村29-29. 中山28-30. 君塚29-30 

◆ボクシングルール59.0kg契約3回戦

WBCアジア・スーパーフェザー級13位.大場綜(チームバカボン横浜西/58.3kg)
   VS
希望(D-TRIBE/56.8kg)
引分け(3R終了無判定) / 主審:松田利彦

大場綜はJBC管轄下のジムには所属せず、タイで実績を積み上げてきた選手。タイでのインターナショナル・スーパーフェザー級王座も獲得する経験を持つ。日本国内ではキックボクシング系のリングでボクシングマッチに出場している様子。

御挨拶に立つ権守幸男議員

《取材戦記》

今回、リングネームでちょっと不便に思うことがありました。実力を発揮したムエタイ3選手は在日タイ人で、タイで登録されるリングネームとは違った日本式リングネームで出場する場合がありますが、頻繁にリングネームを変えることは、過去の戦歴を調べ難いものとしてしまいます。

ポン・ピットジムは過去“ポンチャン”と言うリングネームで試合しており、来日経験豊富で国内チャンピオンクラスを下すベテラン選手。パンフレット製作者によって作られるものはしっかりインタビューや経歴、過去数戦の戦歴が載せられること多くなりましたが、過去の経歴や来日戦績を公表することは大事だなと思います。

松永嘉之プロモーターの御挨拶

各々の興行プロモーションによってはWebサイトで出場選手の詳しい戦歴・経歴が載せられるところもあるようですが、日本のキックボクシングの団体となる協会や連盟などの集団レベルではルールを基準とした管理・規制が行き届かない問題点。

プロボクシングでは昨年4月より、日本で試合するタイ人選手のリングネームは本名に限定されています。タイ人選手が複数のリングネームを使い分けることや、同一人物で複数の戦績が存在し、実力の無い選手、無気力試合をする選手を招聘する側が審査を逃れる手段であったところ、規制が厳しく改訂された訳です。但し、世界戦を戦うレベルの著名選手が来日した場合は特例でリングネームが認められるようです。

JBCのような管理体制がしっかりしたコミッションなら国内戦績・経歴がすべて管理されるところで、キックボクシング界も現在は団体単位でも、しっかりした体制造りが求められるところです。

マイクを持って立つラウンドガールの未来さん

毎度のラウンドガールを務める未来(みく)さんは今回は珍しくマイクを持ってちょっとだけ御挨拶。次の登場の埼玉県議会議員の権守幸男氏をコール。

権守氏は松永嘉之興行プロモーターと幼稚園からの同級生、とは何度か触れましたが、今回も演説慣れした御挨拶にリングに上がられました。選手が命を削る思いで今日まで練習してきて戦いに挑んでいることに敬意を表された権守氏。いつもは業務に追われ、早々に会場を後にすることもありましたが、今回はゆっくり最後まで観戦・歓談されました。

絆XIIIは来年6月14日(日)と1年後になってしまいますが、春日部パフォーマンスが行なわれます。 

ラウンド板を持ってファンに応える未来さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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