アメリカの総人口、約3億3千万人のうち、およそ1割にあたる3千万人強が軍産複合体に属しているという。軍隊と兵器産業およびその周辺業界の従業員と家族の総計である。軍隊が移動をふくめた戦闘行為で組織を維持するのと同じく、兵器もまた使用と廃棄、開発と増産をくり返すことで維持される。

したがってアメリカ社会は世界でも飛びぬけた軍事力と兵器生産を維持し、その関係者が生活していくために、つねに戦争を作り出さなければならない宿命を持っている。日本の自衛隊のように、世界でも有数の自然災害国にあって、災害出動が期待され、感謝されるような「軍隊」とは違うのだ。

◆10年に1度、本格的な戦争が準備される

トランプが就任とともに行なった、イラン核合意からの離脱はまさに、10年に1度は行わなければならない戦争を準備するためだった。6月には単独で軍事行動に出ようとしていたところ、10分前にトランプは思いとどまった。まだ「大義名分」が十分ではないと判断したのである。単独ではマズいと判断したのである。戦争準備はホワイトハウスの強硬派スタッフおよびペンタゴンで練られていたという。国連の共同行動決議は鼻っから無理と見込んで、有志連合の形式が追求されてきた。そしてその準備も始まった。


◎[参考動画]イラン核合意から米が離脱 次の展開は(BBC News Japan 2018/5/10公開)


◎[参考動画]【報ステ】イラン沖警備 アメリカが有志連合検討(ANNnewsCH 2019/7/10公開)

制服組のトップであるダンフォード統合参謀本部議長が、7月9日に「ホルムズ海峡とバブルマンデブ海峡の航行の自由を確保するために、有志連合をつくるために多くの国と連絡をとっている」と、メディアに軍事行動を示唆したのだ。議長は「2週間ほどで決定したい」としている。すでにフリゲート艦でイラン艦艇と準軍事接触しているイギリス(革命防衛隊によるイギリスタンカー拿捕未遂)、そしてソマリア沖に護衛艦を海賊対策で派遣している日本を念頭に置いたものであるのは明白だ。

すでに日本の海運会社のタンカーは、何者(アメリカとイランが、相互に責任を非難しあっている)かによって攻撃されている。原油の輸入の8割以上を中東に依存している日本にとって、格好の艦隊派遣理由となるはずだ。航行の自由を確保するためであって、戦闘のための海外派遣ではないとして、おそらく秋の臨時国会で派遣特別措置法が、安全保障法制のもとに決議されると思われる。

いうまでもなく、改憲論議の呼び水として自衛隊の海外派兵が議論されることになる。その意味では、改憲議論を促進したい安倍自民党政権にとって、願ってもない「素材」がやってきたのだといえよう。自衛隊派遣で考えられる4つの法的枠組みは、安全保障関連法、自衛隊法、海賊対処法、特別措置法である。

ダンフォードの発言に対して、野上浩太郎官房副長官は7月11日の記者会見で、米国がホルムズ海峡の船舶航行の安全確保のための有志連合を呼びかけていることについて「イラン情勢について米国と緊密にやりとりしているところだ」と述べた。さっそくアメリカに尻尾を振ったかっこうだ。


◎[参考動画]2019年7月11日午前-内閣官房長官 記者会見(Ripbanwinkle 2019/7/12公開)※有志連合に関する会見は動画3:24頃より

◆日米同盟の破棄をチラつかせながら、派兵を強要

トランプ大統領は6月26日にテレビ番組で「日本が攻撃されれば、米国は第三次世界大戦に参戦し、米国民の命をかけて日本を守る。いかなる犠牲を払ってもわれわれは戦う。だが米国が攻撃されても、日本には我々を助ける必要がない。ソニー製のテレビで見るだけだ」と語っている。

ようするに、日米同盟を維持したければ、アメリカが攻撃されたら日本は反撃のために兵力を出せと言っているのだ。日米安保不要論などではない、あの発言は有志連合への参加およびアメリカの対イラン戦争に参加しろと言っているのだ。その証拠にトランプは6月24日にも、ツイッターで「なぜ米国が他国のためにタダで航路を守っているのか。彼らが自国の船を守るべきだ」と日本および中国を批判している。

トランプはその場その場で、不規則発言をくり返す「トンデモ男」と思われているが、そうではない。かなり用意周到にツィートを行ない、つぎの行動に結びつけてもいるのだ。


◎[参考動画]トランプ大統領 イランを牽制「圧倒的な力で対応」(ANNnewsCH 2019/6/26公開)

2016年の大統領就任以降(大統領選当時)の発言を再録しておこう。

「アメリカが撤収した後、日本や韓国が自力で中国や北朝鮮に核に対抗しなければならないなら、私は日韓の核武装を容認する」(2016年3月ニューヨークタイムズのインタビュー)

「米軍の日本駐留経費の負担増を求め、応じなければ「在日米軍の撤収を検討する」(2016年5月CNNインタビュー)

これらの発言が、今回のような有志連合への参加をよびかける布石であるのは明らかだ。欠陥機ともいわれるF35を140機も押し付けて、それにともなう護衛艦いずもの空母改装、そしてイージスアショア配備。こうしてアメリカの日本属国化がますます強固に進められている。

今後、イラン情勢、中東情勢をアメリカが過度に政治焦点化することで、石油を中東にたよる日本も有志連合に参加すべきという議論が起きるのは目に見えている。しかしアメリカが政治焦点化しているのは、戦争と兵器を必要とするアメリカ社会の要請によるものであることを、われわれは見ておかなければならない。アメリカのためのアメリカによる戦争産業に、日本が参加する謂れはないのだ。


◎[参考動画]なぜアメリカは戦うのか(1-4)WHY WE FIGHT(2004年 米シャーロット・ストリート・フィルムズ)(dark goldenyellow 2019/3/6公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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