不良と秀才がともに人気者になる。いまは知らぬが30年ほど前の中学・高校ではよく見られた現象である。わたしは不良でも秀才でもないから、いつも傍観者であった。いま『NHKから国民を守る党』の立花孝志と『××○○組』党首の山本太郎氏の言動を見ていると、その程度が本質だろうと感じる。

◆極右勢力再編の触媒の役割を果たすN国党

『NHKから国民を守る党』の立花隆じゃなかった、立花孝志氏はかつて自身を『Youtuber政治家』と称したことがあった。非常に的確に自己分析ができている。が、加えて『極右』であることも正直に告白すべきだったろう。

立花氏と直接話を交わしたのは1度切りだが、彼のネット上での「活躍」(?)は何度も目にしていた。若者は新聞はおろかテレビにすら興味をを失い、インターネットが最も身近な情報源となっているこんにちにおいて、立花氏の半分危険なNHKをターゲットとした、集金人撃退や電話での激怒シーンに留飲を下げた視聴者も少なくなかったのではないか。

ところが、『NHKをぶっ壊す!』だけが主たるマニフェストであった、立花氏率いる『NHKから国民を守る党』は議員会館の個室にテレビがあることを知ると「法律で定められているから『契約』は結ぶ、が受診料は払わない」と宣言。しかし数日もおかずに、理屈が全く理解できないが「8割の受信料は払う」と、さっさと敗北・白旗を上げてしまった。

その代わりなのかどうかは知らないけれども「北方領土返還のためには、戦争しかない」との本音を発露し、維新から除名された丸山穂高衆院議員議員に急接近したり、もう役割を終えたと思われ、多くの人々が忘れていた渡辺喜美氏に「みんなの党」再興を促し統一会派を組むに至った。渡辺喜美氏は橋下徹氏を熱心に応援したファシストであり、自民党の極右路線の中で存在が希薄化していたが、思わぬ触媒により息を吹き返した。

このように『NHKから国民を守る党』は選挙前に立花氏が述べていた通り「理念もありませんし、大きくなりすぎると怖いから党は解散します」が妥当であったのが、いまや「NHK」との対決ではなく、某タレントに攻撃目標を変えながら、政界では極右勢力再編の触媒の役割を果たしている。

非常にたちが悪い。


◎[参考動画]放送法4条違反をしているテレビ局に出演しているマツコ・デラックスに対するデモ行為は今後も続けて参ります(立花孝志 2019/8/16公開)

◆山本太郎氏人気に危険な米国型2大政党誕生の萌芽をみる

一方、山本太郎氏が立党した『××○○組』(天皇制を肯定しないわたしには、あまりにも破廉恥すぎるから、その党名を記すことができない)は、選挙後一気に注目を集め、勢いが収まる気配はない。三流評論家で極右の三橋貴明氏の番組に出たのは、選挙前だったようだが、その後もいわゆる、「MMT」(Modern Monetary Theory=大きな政府、財政出動、自国通貨で国債を吸っている限り破綻はしない)にすがりたい、三橋氏同様の低レベルな藤井聡氏、はては「チャンネル桜」からも一定の評価を得ている。

広範な支持はいいだろう。山本太郎氏が掲げる「消費税廃止」、「累進税率の引き上げ」、「法人税の引き上げ」にはわたしも全く異論はない(彼が主張する前からこのことは主張してきた)。ところが三橋氏は「アベノミクス」賞賛者であり、藤井氏も、最近に至るまで「消費税廃止論」を聞いたことはない。ましてやチャンネル桜が、政策の一部とはいえ山本太郎を応援するなど想像できなかった。


◎[参考動画]【三橋貴明×山本太郎】Part1 絶対にTVでカットされる国債の真実(「新」経世済民新聞 三橋貴明 公式チャンネル 2019/3/18公開)

山本太郎氏は自身を「オポチュニスト」と語っているそうだが、三橋貴明氏や藤井聡氏。差別者の集まりチャンネル桜は山本太郎氏どころの「オポチュニスト」ではない。80年代消費税導入の前に内容は同じだが「売上税」との名称で政府が導入を強行しようとした時期があった。時はバブルのまっただなか。わたしの通う大学の前の通りには、政治に無関心な学生も「売上税絶対反対!」、「売り上げ税 右も左も 絶対反対」といった具合で、「自分が買うものに3%の言われなき税金がかけられることへの」健全な反対があったことが記憶にある。

それ以降は予想通り。あれよあれよというまに、次々と税率が上がり、近く消費税は10%に増税されることがきまっているらしい。この天下一の悪税は税率が上がるほど逆進性が強まる。山本太郎氏の指摘する通りだ。だから「究極的には消費税の廃止」を求める山本氏が立党した政党の「消費税」に対する姿勢に異論はまったくない。

けれども、財政出動はいいが、5兆円を超えた軍事費の削減、や自衛隊の存置についての議論はまったく彼の口から聞かれない。だから三橋氏や藤井氏、チャンネル桜といったいかがわしい連中が、安心して『××○○組』の政策を部分的にせよ評価できるのだ。思い返してほしい。山本太郎氏は園遊会でアキヒトに手紙を手渡した人であることを。そして、これまで一度も公然の場で天皇制批判をおこなったことのない人であることを。


◎[参考動画]【直言極言】戦後日本のなれの果て、山本太郎の皇室軽視について(SakuraSoTV 2013/11/1公開)

6年前、無所属で参院選に出馬したとき、彼の周りには「政治の素人」だけではなく、新左翼(組織された、あるいはノンセクトの)が付きっ切りで応援していた。

日韓問題について質問を受け、「ようは国益の問題だと思うんですよね。日韓の間には6兆円の貿易がある。インバウンドでたくさん観光客も来ている。それをチャラにしちゃうのかっていう視点がないですよね」

もうたくさんだ。!

「国益」、「経済」?あなたの口からそういう言葉が発せられるのは、いよいよ末期症状だ。末期症状とは『××○○組』を核にして次期総選挙もしくは参院選で、米国のように極めて危険な2大政党(かつての民主党とは違う)が誕生する萌芽ををわたしはみるのだ。

山本太郎氏は日韓の歴史を知っている。河野洋平の不肖の息子河野太郎外相よりも、朝鮮半島民衆の抗日史を知っている。その彼が「国益」を口にする。稲川淳二の怪談よりも背筋が冷える。


◎[参考動画]山本代表生出演“天下取り”への勝算は(ANNnewsCH 2019/8/3公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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