「優先座席付近では携帯電話の電源をお切り下さい」
よく耳にする電車内でのアナウンスに、見直しの動きが出ている。
電波の出力が強く、ペースメーカーの誤作動を引き起こす恐れのある第2世代(2G)と呼ばれる携帯電話のサービスが終了したことで、総務省が携帯電話からペースメーカーまでの距離を22センチ以上とした指針を15センチ以上に緩和したのだ。

だがそもそも、「優先席」の意味は、登場してから40年も経つのに定まっていない。
1970年代に「シルバーシート」として登場したが、席を必要とするのはお年寄りだけではない、との声から「優先席」となった。

ウェブを見ると、優先席には座らないという者と、優先席があるのだから、それ以外では高齢者や障碍者にも譲る必要はないという者まで、様々な意見がある。
私は、優先席には座らない。
どの席でも、高齢者や、妊婦、障碍者が来たら席を譲るのは当たり前である。もちろん、若作りのお年寄りが前に来た時、譲ったら気分を害するかもしれないなどと躊躇することもあり、これはなかなか簡単ではない。

だが、「優先席」に座らないというルールは守りやすい。
義足、人工関節、内部障害を持つ方、妊娠初期の方など、外見からは分からない人のために常に空けておく席が「優先席」だというのが、本来の考え方だと思う。

1999年に、阪急電鉄、能勢電鉄、神戸電鉄が全席を優先座席にし、2003年に横浜市営地下鉄もこれに倣った。
本来の「優先席」のコンセプトから考えると、これはおかしい。健康な者は皆立っていることになり、通路が混み合って困るだろう。健康な者だって、疲れて座りたい時もある。
阪急電鉄、能勢電鉄、神戸電鉄は2007年に、「優先座席」を再設定した。
「優先席」のコンセプトを理解したのかと思ったが、「譲り合いの精神挫折」と報じられたから、どうも違うようだ。

ウェブを見ていると、空いているなら健康でも優先席に座っていいと思う、という意見も少なくない。
「優先席」に座っているのは、たとえ外見から健康そうに見えても、なんらかの困窮を抱えている者と思っていたのだが、健康な者も座っているようだ。
一度、「優先席」に座っている人々のアンケートを採ったほうがいいのではないか。

(深笛義也)