12月5日(日)、大阪西九条の靭公園で、「12.5老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」が開催され、1500名もの参加者が集まった。

13時から始まった集会の冒頭、中嶌哲演さん(原発に反対する福井県民会議)が主催者挨拶を行った。

◆4か月間で広島原爆の「死の灰」300発分を生み出した美浜3号再稼働(中嶌哲演さん)

全国各地で連帯して、本集会に結集されています全ての皆さんに心から感謝致します。また各地から素晴らしいメッセージを頂いた皆様にも御礼申し上げます。

昨年10月から関電と国が猛烈な攻勢を美浜、高浜両町と福井県にかけ、再稼働の同意をとりつけました。しかし、実際に動いたのは美浜3号のみで、わずか4ケ月だけでした。しかし、その稼働で23キロワット、電気料金にして約400億円近く関電は稼いだのです。一方、そのたった4ケ月の稼働により、原子炉の中の使用済み燃料には、広島原爆300発分の「死の灰」、長崎原爆にして10発分のプルトニウムが新たに生成・蓄積されていることを忘れてはならないと思っています。

ところで今、美浜3号、高浜1、2号は非公開でテロ対策工事を行っています。美浜3号は来年9月に、高浜1、2号は再来年4、5月に工事を終えるといっています。若狭の住民や関西等の市民に対して、関電と国の方こそ、あたかもテロリストのような行為を企てているのではないでしょうか? これを許してはならないと思っています。

福島以来、現在も尚、原発再稼働、ましてや老朽原発を動かすなという人の数は絶対的な数を占めています。それをいかに顕在化させるかが求められていると思います。1人デモから大集会に至るまで様々な試みが行われていますが、個々の地道な実践と大きな共同目標、原発ゼロ法案は廃案になりましたが、これを再び市民と議員とで共同作成、共同提出して、審議を見守り、その提携を図っていく、大きな運動をも必要としているかと思います。宜しくお願いいたします。

主催者挨拶を行う「原発に反対する福井県民会議」の中嶌哲演さん(写真提供=Eiji Etohさん)

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次に、井戸謙一弁護士より、美浜3号機運転差止仮処分裁判の報告が行われた。

◆来夏頃に関電が追い詰められているのは間違いない(井戸謙一弁護士)

今年の6月21日、大阪地裁に美浜3号機の運転禁止を求める仮処分を申し立てました。40年を超えた原発は沢山ありますが、ほとんどの電力会社は40年超の原発を諦めました。諦めなかったのが、日本原電の東海第二原発と関西電力の3基の4基です。

東海第二は既に水戸地裁から運転禁止の判決が出て、脛に傷を持つようになっています。関電の3基はまだ傷をつけることができていない。この4基がこのまま順調に40年超の再稼働が出来るかどうかは極めて重要です。

何故かというと、日本の大部分の原発は既に30年前後の運転期間が経過しています。これらの原発が40年超の運転を目指すかどうか? 各電力会社は、先行するこの4基がスムーズに運転できるのかどうかを注視しています。これが成功したとなると、我も我もと40年超の運転許可申請をすると思います。しかしうまくいかなかったら、規制委員会が許可を出しても、市民や司法の力で運転できないということになれば、ほかの電力会社は40年超の運転を断念することになるでしょう。するとあと10年も経てば、日本には動かせる原発がごくわずかになります。早期に原発をゼロにすることができるかどうかは、この4基がスムーズに運転できるかどうかは分水嶺なんですね。

関電の3基については、本訴訟を継続していたが、仮処分の申し立ては過去になかった。それが仮処分申し立てをして緊急に止めようということで、6月21日申し立てを行いました。既に3回の期日が開かれました。我々は6つの争点を提示しています。そのうちの1つをご報告します。

美浜3号機は活断層の巣の中にあります。東側1キロに白木―丹生断層が、西側2、3キロにC断層が走っています。しかもC断層は東側に傾斜しているので、美浜原発の直下を走っています。

ところで新規制基準は、震源が敷地に近い場合に基準地震動を策定する場合には、特別の考慮をしなければならないと定めています。我々は「関電は美浜3号機について、特別の考慮をしていない」と主張しました。これに対して関電がどう反論してくるか注目していました。

「特別の考慮はしている」と言ってくるかと思ったら、そうではなく「特別の考慮をする必要がない」と言ってきた。どういうことか。関電は、特別の考慮をする必要があるのは、原子炉建屋と活断層の間の距離が250メートルの場合だと。美浜3号機は東の活断層が1キロ、西が2、3キロだから、特別考慮する必要がないと主張してきた。

これには驚きました。これは簡単に反論できます。争点は、新規制基準が特別の考慮をどの範囲の原発に求めているか。250メートルなのか、2、3キロはそれに含むのかどうか、極めて単純な争点です。これについての議論では当然勝てると考えています。

決定は、来年10月が再稼働予定ですので、それまでに出すよう求めているので、おそらく裁判官に決断をさせるのは、やはり運動の力、市民の力です。裁判官が一人の市民になったとき「やっぱり老朽原発は動かせてはいけないな」と思わせないといけない。止めるという判断をしたとき、それが裁判官の突飛な判断ではない、市民のほとんどが嫌だといっているではないかと、裁判官が言えるような運動を盛り上げていく、それが裁判官の背中を押すことになると思います。

来年10月まで約1年弱あります。その間に更に更に運動を盛り上げ、ぜひ美浜3号機をストップさせていきたい、いけると思います。がんばりましょう。

美浜3号機運転差止仮処分裁判の報告が行う井戸謙一弁護士(写真提供=Eiji Etohさん)

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名古屋地裁で争われている老朽原発廃炉訴訟の原告草地さんの報告のあと、老朽原発の地元の皆さんがアピール。福井県若狭町で美浜原発から15キロ圏内にお住いの石地勝さん。

◆大飯と高浜の使用済み燃料の総量はすでに六ケ所の再処理工場の容量(3000トン)を超えている(石地勝さん)

美浜原発から15キロ圏内(福井県若狭町)で暮らす石地勝さん(写真提供=Eiji Etohさん)

私は美浜原発から15キロ位の若狭町に住んでいます。老朽原発の美浜3号と高浜1、2号の再稼働を巡って、今年の2月の県議会で、一番の論点になったのは、使用済み燃料の中間貯蔵地を県外のどこにするかでした。知事と議会が対立して結論はでずに、先送りになりました。

5月に臨時議会が開かれ、そこで国から50億円の交付金の話と、立地地域の将来像をどうするかということで、共創会議を国が作って審議していこうという土産話をもって来たら、あっという間に議会がなびいて、美浜3号、高浜1、2号の再稼働が認められ、美浜3号は6月に入って再稼働しました。

あれだけ一生懸命論議した使用済み燃料の話は、それから10ケ月位経ってますが、一つも話になりません。それで関電の広報に使用済み燃料の確認をしました。美浜、大飯、高浜の3原発合わせて3555トンありました。六ケ所の再処理工場で3000トンの容量になっているところへ、大飯と高浜の使用済み燃料を入れるだけで3000トンを超える、それだけ若狭の原発に使用済み燃料が貯まっているということを、改めて判って頂いたと思います。

それだけではなく、高浜ではMOX燃料を使ったプルサーマルが運転されています。MOX燃料は行き場もなく、危険性はずっと高い。それらが全て若狭の原発にあるということを再度知って頂きたく発言させて頂きました。

最後になりますが、今言いました3000トンを超える使用済み燃料を抱えているうえに、新たな使用済み燃料を動かして増やしています。立地地域の将来像の死活問題になる話をしない共想会議の欺瞞性ついて、この無責任体制の若狭の現況を報告して、皆さんとともに老朽原発を止め、安全・安心な故郷にしたいと思いますので、皆さんのお力添えを宜しくお願いしたいと思います。

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原発事故避難者森松明希子さん、首都圏他全国からのアピール、関西の市民団体のアピールなどの最後に「老朽原発動かすな!実行委員会」木原壯林さんの集会アピールの提案と採択を終え、市内へのデモを行った。

「原発いらない福島の女たち」のバナーを持つ黒田節子さんと菅野みずえさん(写真提供=Eiji Etohさん)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

12月11日発売!〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

〈原発なき社会〉を求めて
『NO NUKES voice』Vol.30
2021年12月11日発売
A5判/132ページ(巻頭カラー4ページ+本文128ページ)
定価680円(本体618円+税)

総力特集 反原発・闘う女たち

[グラビア]
高浜原発に運び込まれたシェルブールからの核燃料(写真=須藤光郎さん)
経産省前の斎藤美智子さん(写真・文=乾 喜美子さん)
新月灯花の「福島JUGGL」(写真=新月灯花)

[インタビュー]山本太郎さん(衆議院議員)×渡辺てる子さん(れいわ新選組)
れいわ新選組の脱原発戦略

[インタビュー]水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」原告共同代表)
「子ども脱被ばく裁判」 長い闘いを共に歩む

[報告]乾 喜美子さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
経産省前のわたしたち

[報告]乾 康代さん(都市計画研究者)
東海村60年の歴史 原産の植民地支配と開発信奉

[報告]和田央子さん(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
福島県内で進む放射能ゴミ焼却問題
秘密裏に進められた国家プロジェクトの内実

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
「もんじゅ」の犠牲となった夫の「死」の真相を追及するトシ子さんの闘い

[インタビュー]女性ロックバンド「新月灯花
福島に通い始めて十年 地元の人たちとつながる曲が生み出す「凄み」

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
検討しなきゃいけない検討委員会ってなに?

[報告]森松明希子さん
(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表/原発賠償関西訴訟原告団代表)
だれの子どもも“被ばく”させない 本当に「子どもを守る」とは

[書評]黒川眞一さん(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)
森松明希子『災害からの命の守り方 ─ 私が避難できたわけ』

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[報告]樋口英明さん(元裁判官)
広島地裁での伊方原発差止め仮処分却下に関して

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈14〉避難者の多様性を確認する(その4)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈23〉最終回 コロナ禍に強行された東京五輪

[報告]平宮康広さん(元技術者)
放射性廃棄物問題の考察〈後編〉放射能汚染水の海洋投棄について〈2〉

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
「エネルギー基本計画」での「原子力の位置付け」とは

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
問題を見つけることが一番大事なことだ

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
《追悼》長谷川健一さん 共に歩んだ十年を想う

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
チャーリー・ワッツの死に思う 不可解な命の重みの意味

[報告]佐藤雅彦さん(ジャーナリスト/翻訳家)
21世紀の国家安全保障のために原発は邪魔である!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈14〉現状は、踊り場か後退か、それとも口笛が吹けるのか

[報告]大今 歩さん(高校講師・農業)
「脱炭素」その狙いは原発再稼働 ──「第六次エネルギー基本計画」を問う

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナはおーきく低下した。今後も警戒を続ける
対面会議・集会を開こう。岸田政権・電力会社の原発推進NO!
《北海道》藤井俊宏さん(「後志・原発とエネルギーを考える会」共同代表)
特定放射性廃棄物最終処分場受入れ文献調査の是非を問う
《北海道》瀬尾英幸さん(北海道脱原発行動隊/泊村住人)
文献調査開始の寿都町町長選挙の深層=地球の壊死が始まっている
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
内部被ばくが切実になっているのではないか
《反原発自治体》けしば誠一さん(杉並区議会議員/反原発自治体議員・市民連盟)
脱炭素化口実にした老朽原発再稼働を止め、原発ゼロへ
《全国》柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表)
衆議院選挙中も、原発止めよう活動中―三つの例
《関西電力》木原壯林さん(老朽原発うごかすな!実行委員会)
老朽原発廃炉を勝ち取り、核依存政権・岸田内閣に鉄槌を!
《中国電力》芦原康江さん(島根原発1、2号機差し止め訴訟原告団長)
島根原発2号機の再稼働是非は住民が決める!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
裁判、県との「対話」、乾式貯蔵施設問題
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク、経産省前テントひろば)
島崎邦彦元原子力規制委員会委員長代理の責任を糾弾する!
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『科学・技術倫理とその方法』(唐木田健一著、緑風出版刊)

反原発川柳(乱鬼龍さん選)

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