「独裁」を掲げて大阪市長となった、橋下徹。就任早々、市の労働組合と火花を散らした。これから、道路で交通整理するだけで年収1000万円の役人天国が崩壊し、大阪府との二重行政が解消されていくのだろうか。

府知事時代、橋下は「財政破綻寸前だから、もう文化事業のパトロンになれません」と言った。大阪センチュリー交響楽団(現日本センチュリー交響楽団)は運営補助金を打ち切
られ、民営化の道を歩んでいる。
現在、市から運営補助金を受けている、大阪フィルハーモニー交響楽団は、補助を切られるのではないかと、戦々恐々としている。

府知事時代、「図書館以外の大阪府施設はすべて不要」と橋下は言った。
大阪市内に、府立と私立の両方の図書館があるのだが、これは二重行政の解消の対象にはならない? 本好きの読書人は安心していいのだろうか?

図書館だけは別な理由として、「図書館は知のセーフティネット」と橋下は言っていた。
試しに、大阪市立図書館のホームページを見てみると、一番上に「最近の予約ベスト30」が載っている。
現在図書館の多くは民間の運営会社、(株)図書館流通センター(TRC)に委託されている。大阪府立、大阪市立の図書館も同様だ。
本の貸し出しが実績となるため、ベストセラーとなっている本を重視して揃えるという傾向になっていて、それが公共の無料化資本屋と揶揄されるもととなっている。
「最近の予約ベスト30」を掲げるなど、如実にそれを示していると言えるだろう。

図書館でいくら貸し出しの実績が積まれても、著者にはロイヤリティは入らない。
昨年、作家の樋口毅宏が、自著「雑司ヶ谷R.I.P.」の巻末に、公立図書館での貸し出しを、新刊の売れ行きに影響が大きい刊行から半年間、猶予するよう求める一文を掲載した。
1年をかけた力作だが、定価1600円で初版6000部のため、印税は96万円。図書館で読まれてしまって増刷されないと、それがそのまま年収となってしまう。

今の図書館のあり方は、「知のセーフティネット」どころか、作家の生存を危うくする存在となっているのだ。

熱心な読者家にとっては、いちいち本を買っているとすぐに置き場所に困るという問題があり、図書館で借りて読むのは合理的な行動だ。
一番いい解決方法は、欧米で行われているように、図書館での貸し出しにも著者へのロイヤリティが支払われるような仕組みを作ることだろう。

しかしそれは、行政の出費、労力を増やすことだから、決して橋下市長はやらないだろう。
知のセーフティネットだから、という言葉の本音。それは、著者たちの血と汗の上にあぐらをかいた図書館という存在が、最も安上がりな行政サービスだからだ。

(FY)