内閣改造で初入閣を果たした小川敏夫法相は2012年1月13日夜の就任会見で、死刑執行について「その職責を果たしていくのが責任」と前向きな姿勢を示した。小川氏は死刑廃止論者とされているが、死刑執行はやむを得ないと判断しているようだ。

死刑囚というのは、どんな存在なのか?
深笛義也著『女性死刑囚』では、13人の女性死刑囚が書かれている。
昨年10月3日、北九州・大牟田で起きた連続監禁殺人事件の被告の一人、 北村真美の上告が、最高裁で棄却され死刑が確定した。戦後の女性死刑囚はこれで14人になった。それ以前の13人を扱っている。

死刑囚であるから、すべて殺人を犯している。被害者が1人というのは、戦後の最初の女性死刑囚である、山本宏子のみ。彼女は後に恩赦で、無期懲役に減刑されている。
他は、2人以上を殺めている。どんなに普通と思われる人間でも、何かの拍子に人を殺めてしまうということがあるかもしれない。だが1度ではなく2度3度とそれを繰り返す。あるいは1度に幾人もの生命を奪う。それも金銭の奪取、保険金の詐取などが目的となると、普通とは言えない。死刑が宣告されるのは、そんな罪だ。

恐ろしい女たちだ。世間は彼女たちを「悪女」「毒婦」と呼ぶ。だが本書には、「悪女」「毒婦」という言葉はどこにも出てこない。著者の深笛は、彼女たち1人1人の心に寄り添うことを心がけたのだという。

戦後の犯罪史の中で、14名を死に追いやった連合赤軍同志粛清事件は、凄惨さで群を抜く。主導した永田洋子が、戦後6番目の女性死刑囚だ。彼女は、尊敬する革命組織の指導者から、レイプされている。薬剤師として組合運動に取り組んでいた彼女は、暴力革命への路線転換に必死に付いていこうとする。そこには、暴力的性行為によっても動揺しない自立した女性として行動したい、という気持ちがあった。彼女をレイプした指導者が、獄中に囚われる。彼を奪還するための銃を、小さな銃砲店から奪う企てを主導したのが、彼女の初めての犯罪だった。レイプがなければ、永田は同士粛清などには向かわなかったかも知れない。

1980年にフェアレディZの女として騒がれた宮崎知子は、戦後7人目の女性死刑囚。金銭目的で女子高生とOLを連続して誘拐、殺害した。宮崎は100人に3人いるかいないかという、IQの高さ。学業も優秀で大学に合格したにも関わらず、家庭の事情で進学を断念。結婚して子宝を授かったが、立て続けに卵巣嚢腫、横隔膜下膿瘍、腸癒着症腹壁ヘルニアという病魔に襲われる。闘病しているうちに、夫は女を作り去ってしまう。絶望を心に押し込んで暮らしていく中で、宮崎は犯行に走った。

死刑にいたる罪を犯すまで、彼女たちが経てきた曲がり角を、丹念にたどり、その心の闇に迫っているのが、本書の特色だ。

また、和歌山毒物カレー事件の林眞須美、埼玉愛犬家殺人事件の風間博子の2人は、無実であるにもかかわらず、死刑判決が下されているという。証拠はないが、世間を騒がして逮捕して今さら間違いでしたではすまない。そんな、社会の体裁を保つためだけに、無実の者を死刑台に送ろうとしていることには、戦慄を覚えざるを得ない。

(FY)