自民と旧公明「改憲勢力」大幅伸長 仕組まれた高市自民圧勝

植草一秀(紙の爆弾2026年4月号掲載)

◆究極の「自己都合解散」

2025年2月8日投開票の衆院選で自民党が大勝し、2月18日に第2次高市内閣が発足しました。この選挙について、さまざまな見解が語られています。

まず総選挙そのものについて述べておくと、一般に衆院解散は首相の専権事項とされていますが、そのような規定は日本国憲法にはありません。憲法上で、衆院解散について書かれた7条と69条のうち、まず69条は、
〈内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。〉

つまり内閣不信任案が可決された場合に、内閣は衆院解散の選択肢を持つと解釈できます。もう一つの7条は天皇の国事行為を十項目で規定したもので、その一つに衆院の解散があります。

しかしこれは、69条により解散する時に、天皇が国事行為としてその手続きを行なうことを指しているにすぎず、憲法は基本的に「69条解散」しか想定していないと考えるべきです。ところが、天皇の国事行為が「内閣の助言と承認」によって行なわれると規定(第3条)していることから、内閣が天皇の国事行為を助言、承認し、都合の良いタイミングで衆院を解散できるとのいわゆる「7条解散」が、吉田茂内閣(1948年)以降、踏襲されてきました。

ここから明らかなように、首相に衆議解散の「専権」があるというのは一種の俗説であり、権力の濫用にほかなりません。

特に第一次高市内閣は発足してまだ3カ月にすぎず、しかも予算審議を行なわず、気候条件においても投開票日がまさにそうであったように、北海道・東北ほか日本海側の各地で大雪が降り続いて選挙費用が800億円とかさんだだけでなく、国民の参政権(なかでも高齢者の参政権)が侵害されかねない状況でした。

その意味でも「自己都合解散」であり、加えて背景に通常国会で統一教会との関係に始まる多種多様な疑惑に加え、昨年11月7日の「台湾有事発言」以降の経済的損害の責任を追及されることが想定されていたことから「疑惑隠し解散」ともいわれています。

これほど正当性のない衆院解散はなかったという根本的な問題は、いまだ残っています。

◆高市体制誕生をめぐるフェイク

そもそも、昨年10月に高市内閣が生まれた経緯を振り返ると、最大の背景は「政治とカネ」問題です。この問題を受けて2024年の総選挙で自民党が惨敗。翌2025年7月の参院選も、石破茂内閣がその対応を避けたために大敗し、自民党内で石破退陣の動きが強まったことで、9月に総裁選が行なわれました。

総裁選に際して、自民党は「解党的出直し」を掲げました。解党的出直しとは、特に政治とカネ問題について抜本的な取り組みを行なうことを指していたはずですが、高市新総裁が、公明党が提案した最低限の企業・団体献金規制強化すら拒絶した結果、同党が連立政権から離脱します。

こうして、日本維新の会を取り込みつつ政治とカネ問題を放り投げ、議員定数削減にすり替えて発足したのが第一次高市内閣です。私が本誌2025年12月号で「自維金権腐敗政権」と指摘したとおり、この経緯を見れば、メディアが高市新内閣に対し、まず政治とカネ問題を全面的に追及すべき局面であったことは、誰が見ても明らかです。

ところが、なぜかメディアは一切触れず、むしろ礼賛に徹したために高支持率が生まれました。この状況を利用し、高市首相が解散・総選挙を決定したことを踏まえれば、高市自民が大勝する懸念はこの時点ですでにあったといえます。

現行の選挙制度の下では、小選挙区の勝敗が選挙結果を左右します。それゆえ立憲民主党が、離脱した公明を味方につければ小選挙区で勝算が生まれると考え、中道改革連合を結成したのは、戦術としてはあり得たと思います。

ただし、そこには複数の問題がありました。まず、立公合流に際しての綱領と基本政策において、従来の立民の主張がほとんど封じられ、公明主導の内容になった点です。

また、ここ数年間、若年層の票を取り込むことが選挙の要諦となってきたことを考えれば、「中道改革連合」という党名がふさわしいとは思えません。同じ理由で、各党が女性や若い党首を前面に押し立てる中、野田佳彦・斉藤鉄夫両党共同代表はじめ「5G(爺)」というオールドフェイスを並べたのは若者・女性票を捨てる行為に映ります。

これら戦術上のミスがあったとはいえ、高市自民に有利な情報空間が創作されたことが、結果を左右したといえるでしょう。

前述のように政権発足時点で一丁目一番地の「政治とカネ」をメディアが追及していれば、そもそも高市内閣の高支持率スタートがなかったかもしれません。選挙中も高市新体制を持ち上げる報道が続き、中道に対しては発足した瞬間から全面否定するような報道が展開されました。

実は、類似した状況が、2001年の小泉純一郎政権、2012年の第二次安倍晋三政権でも発生しています。2001年から03年にかけて、日本経済は金融恐慌に突入するかの事態にあり、小泉政権はいつ崩壊してもおかしくない状況でした。その間の02年に人々の関心を逸らす形で北朝鮮から拉致被害者が帰国していますが、小泉政権が終了する2006年までの日本の情報空間は小泉支援一色でした。

第二次安倍政権においても、2013年7月の参院選ではメディアが「自民党が再び勝てば衆参ねじれが解消される」と強調し、安倍全面支援の方向性を打ち出しました。それを振り返ると今回の選挙における情報空間には非常に強い既視感を覚えます。

なにより、小泉・安倍・高市の三者に共通するのが、いずれも米国にとって都合の良い首相だということです。それゆえに、日本のメディアが誰に支配されているのかに着目すべきでしょう。

中道=シン・公明党という本質

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