読売新聞社は、同社発行の英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現ジャパン・ニューズ)が1992~2013年、従軍慰安婦問題を報道する際に「性奴隷」(sex slaves)などの不適切な表現をしていたとして、読売新聞の11月28日付朝刊に謝罪記事を掲載したという。

「性奴隷」は事実であるからその表現がそれほど大きな間違いであろうか。一般的に「慰安婦」を英訳する際には”comfort women”が用いられるが、これは「慰安」を”comfort”と直訳しているのであり、英語の語感としては、注釈でもつけないと違和感があるし、正しく理解しにくい。「慰安婦」は実態として「性奴隷」であったわけで、”Slave”が適切性を欠く表現とは思われない。

謝罪記事の中では、「慰安婦問題に関する読売本紙の翻訳など計97本の記事に不適切な表現があったことが社内調査で判明。このうち85本が『性奴隷』に当たる単語を不適切に使用し、政府・軍による強制連行や売春の強要が客観的事実であるかのように記述した記事も12本確認された」としている。

ちょっと待て。「政府・軍による強制連行や売春の強要が客観的事実であるかのように記述した記事も12本確認された」のどこが謝罪の対象となるというのだ。事実ではないか。

これは「謝罪」に名を借りた「慰安婦は無かった」と歴史のねつ造を画策する首相安倍や、右翼連中の主張を後押し、推進するための開き直りに他ならないではないか。読売新聞は「新聞がどこまで翼賛化できるか」の実験をしているようだが、歴史事実までを捻じ曲げないと「翼賛化」の先頭には立てないということか。朝日の「吉田問題」を散々叩いた以上、それに符合する歴史事実は全て歪曲しないと「翼賛化」は担えないということかこの新聞、中には良心的な記者もいるのだろうが、総体としては「市民の敵」でしかない。新聞の名に値するレベルに到底到達していない。嘘をばら撒く歴史改竄主義のアジビラだ。

◆トンデモ過ぎる2002年早大講演での安倍発言

安倍がまだ小泉政権の官房副長官であった2002年、早稲田大学で講演をした。その際安倍は以下のように述べている。

「有事法制を整えたとしてもですね、ミサイル基地を攻撃することは出来ます」

「先制攻撃はしませんよ。しかし、先制攻撃を完全に否定してはいないのです」

(日本に対するミサイル攻撃を準備した)基地を叩くことは出来るんです、憲法上ですね」

「大陸間弾道弾はですね、その、憲法上はですね、憲法上は問題ではない」

「日本は非核三原則があるからやりませんけども、戦術核を使うということは昭和35年の岸総理答弁で、違憲ではない、という答弁がされています。それは違憲ではないのですが、日本人はちょっとそこを誤解しているんです」

「憲法自体を変えるというのは(中略)ちゃんとやらなければいけないと思うのですが、安全保障の問題というのはいつ突然起こるか分かりませんから、解釈を変えておかないとですね、もう詭弁に詭弁を弄していますから、限界なんですよね」

この発言「サンデー毎日」6月9日号でスクープされたが、読売新聞はその時だって何もコメントを発していない。

安倍が首相になるなど、当時は「悪い夢」でしかなかったけれども、その後不幸なことに我々は、奴を2度も首相に頂いてしまった。

第一次安倍内閣では、「防衛庁」が「防衛省」に格上げされた。教育基本法が改悪された。そして安倍は本気で改憲に向かっていたところ、持病で辞任に追い込まれた。

その後自民党政権が崩壊して民主党が政権を取った際、私は大して期待はしなかったけれども、最低「改憲」や「軍事化」への速度が収まるなぁと少し安堵していた。当時自民党の総裁は谷垣。谷垣は宏池会(自民党の中では比較的リベラルとされる派閥)に属する人間で党内での受けはよくなかった。

野党時代の自民凋落が止まらないので谷垣は総裁選挙で出馬すら認められず、安倍が総裁に就任する。暗雲はこのあたりから見えてはいた。

そして民主党の野田政権の「自爆解散」により、安倍自民党が圧勝し、今日の暗黒時代へと続く。

◆詭弁に詭弁を弄す安倍、読売の「愚弄」行為

読売新聞は、万々歳だろう。そして安倍は2002年に早稲田大学の講演で言い放ったように、「憲法自体を変えるというのは(中略)ちゃんとやらなければいけないと思うのですが、安全保障の問題というのはいつ突然起こるか分かりませんから、解釈を変えておかないとですね、もう詭弁に詭弁を弄していますから、限界なんですよね」を「解釈改憲」で強行した。

注目すべきは安倍自身がこの講演の中で、「もう詭弁に詭弁を弄していますから、限界なんですよね」と本音を述べていることだ。

そうだ。「詭弁に詭弁を弄して」きたのだ。詭弁とは「大辞泉」(小学館)によると、「道理に合わないことを強引に正当化しようとする弁論。こじつけ」となっている。

「道理に合わないことを強引に正当化しようと弁論してきた」と自認するのが安倍なのだ。そしてその「詭弁使い」の尻馬を足らと血道を上げてるのが読売新聞だ(「産経新聞は新聞ではない(週刊金曜日社長北村氏)」の見解に私も賛同するので「産経新聞」は議論の対象とはしない)。

安倍や、読売の行為を日本語で「愚弄」という。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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