客が真面目に話を聞こうと集まっているのに、壇上の司会者とゲストは生ビールをあおり、焼きそばをほおばっている。
初めて行ってこういう場面に出くわすと驚くが、都内にいくつもあるトークライブハウスでは、よく見かける光景だ。

トークライブハウスは、1995年7月、新宿富久町にできた「ロフトプラスワン」が発祥。以後、規模やコンセプトが微妙に違う店が次々にできた。
政治や宗教について熱く語り合う日もあれば、音楽、映画、文学、漫画、アニメについてまったりと語り合ったり、普段はOLをしている女性が裸になってショーを展開するエロイベントもある。

本家ロフトプラスワンでも200名入ればいっぱいになるキャパだが、島田洋七のお笑いイベントがあったり、政治イベントで田原総一朗が来たり、音楽イベントに大瀧詠一が飛び入りしたりなど、著名人を間近に見られたりもする。

著名人に客席から質問や批判を投げかけたりもできる。また、それまで客席にいた無名人が、自分でイベントを主宰して壇上に上がることもできる。
イベントは玉石混合で、それがまたおもしろいのではあるが……。

トークライブハウスは当初、トーク居酒屋とも言われた。
居酒屋で飲んでいたら、そこで知り合ったおじさんが盆栽について語り出して、それがおもしろかった。それをお店として成立させてしまおう、というのが発想の元だったという。

記者会見をやるから来てほしい、と言われて、トークライブハウスの一つに行った。
エロマンガ家が映画を撮ったので、その発表だという。
会見だと言うし定刻に行ったのだが、開始時間になっても監督のエロマンガ家は来ていない。司会者が携帯に電話すると、楽屋に着いたところだという。

昼間の会見でもあるし、こちらはコーヒーを飲んでいたが、ようやく登場した監督は、生ビールをあおり始め、司会者は焼きそばをほおばり出す。
居酒屋だから、登壇者も飲んでいいという考え。客が少ない場合、ギャラはなかったりするが、登壇者の飲食は無料。それで少しでも元を取ろうという考えなのだろう。
サブカルチャーをまったり語るイベントだったら、それでもいいが、今日は会見ではなかったのか。

それでも、話がおもしろければいいが……。
「撮影では女優さんと本番したと聞きましたが」と聞かれて俳優が「ええ、もちろん本番です。リサーハルじゃなくてカメラ回ってたんで、本番です」
仲間同士で飲んでいるときならいいが、これがお金を払って聞くギャグだろうか。
ここにも、居酒屋というコンセプトへの甘えがある。
だが、司会もなく誰が話者になるか分からない、普通の居酒屋での飲み会のほうが、よっぽど革命的だという気がしてきてしまう。

(FY)