WMO世界戦、馬渡亮太は幻の勝利か、王座は保留!

堀田春樹

7月13日に後楽園ホールに於いて行われたKICK Insist.23のメインイベント、WMO世界スーパーフェザー級タイトルマッチは前日計量から試合終了数日後まで波乱の展開となりました。

馬渡亮太が激戦の末、2-1判定で勝者コールされ、チャンピオンベルトも渡された後から、観衆は気付かずも、異様な雰囲気が漂ったリングサイド周りとその後の舞台裏。オーウェン・ギリスが第2ラウンドにノックダウン奪ってから大きく劣るラウンドは無いと見ている陣営は、採点の在り方に抗議すると、ジャッジ一人(タイ)の集計ミスを見付け、更なる猛抗議。運営進行係の集計ではなく、ジャッジの集計だった。

運営進行側のインスペクター(タイムキーパー等)は、ジャッジペーパーに集計ミスがあっても勝手に書き換えてはならない。間違いを認識した場合、変更指示出来るのは、この日の場合においては立会人だけだった。それでWMO立会人は、トータル記入どおりで良いと判断され、マイクで発表した運営進行側は指示に従うだけだったが、このジャッジ一人の記載ミスが大きな波紋を呼んだ。この担当ジャッジも、馬渡亮太がポイント優り、“勝者・馬渡亮太”と判断したなら、忖度したとしても明確に辻褄合う採点に気付くべきだっただろう。

ギリス陣営はWMO本部に直訴。審議され、試合結果は正規集計に基づき3日後、WMOサイトで三者三様の引分けに訂正。また、ジャパンキックボクシング協会側の言い分も伝えられたと考えられるが、発表された後、すぐ削除される様子もあり、裏舞台での攻防は、なかなか最終決定が下されなかったことに繋がりました。

プロボクシングでの各タイトルマッチは各ラウンド毎に集計され、インスペクターが記載しますが、今回のこのムエタイタイトルマッチの場合、ジャッジペーパー1枚には全ラウンドを採点記入し、ジャッジ自身で集計して渡す方式だった。

馬渡亮太の勝ちでも引分けでもいい。間違いない集計がされていれば大きな問題は起こらなかったはずである。

問題はここだけに留まらず、オーウェン・ギリスの計量失格となった前日計量にも遡ります。

前日計量は12日14時、水道橋駅近くの内海ビルにて行われ、オーウェン・ギリスは630グラムオーバー。15時55分、3回目の計量で330グラムオーバーで計量失格確定したが、陣営が持参したデジタルヘルスメーターを出して、「この正確な秤でリミット内だった!」と主張するギリス陣営。そんな個人所有のもの認められる訳もなく、出場者全員が公平に規定の正規計量器で量り、他2名の前座ウェイトオーバー者も最終的にこの秤でクリアーした。

オーウェン・ギリスは全裸で計量、3回目(15時55分)で計量失格は確定。

しかしオーウェン・ギリス陣営はここから理不尽な要求が始まった。「王座剥奪なら試合に出ない!」と言い出したらしい。試合中止は避けたいジャパンキックボクシング協会側は細かい制約は告げず、そのままリングに上がらせたが、実際はリング上でしっかり計量失格で王座剥奪をアナウンス。そこはギリス陣営は日本語が解らないと読み、抗議は起こらなかった。


◎KICK Insist.23 / 7月13日(日)後楽園ホール17:15~21:30
主催:(株)VICTORY SPIRITS、ビクトリージム
認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)、World Muaythai Organisation(WMO)

セミファイナル(第12試合)以下は前回掲載済。

◆第13試合 WMO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

前・選手権者.オーウェン・ギリス(イギリス/19歳/ 59.6→59.3→59.3kg/+330g/計量失格)
        VS
挑戦者11位.馬渡亮太(治政館/2000.1.19埼玉県出身/ 58.96kg)
結果保留(判定1-2、或いは三者三様)

スーパーバイザー:アウラチャー・ウォンティエン(タイ)
審判構成はWMOが指示。主審はタイ、副審はタイから2名。日本から1名選出されています。
主審:ナルンチョン・ギャットニワット(タイ/採点には加わらない)

オーウェン・ギリスはアグレッシブに攻めるファイタータイプで初回から強い蹴りを繰り出して来た。馬渡亮太は蹴り返して互角に進んだ印象も、圧力あるギリスに馬渡も必死の形相。第2ラウンドにはギリスのパンチ連打に馬渡はヒジ打ちカウンターするも右フックでノックダウンを奪われる劣勢。中盤以降は馬渡が初回から続けたローキックや首相撲でのヒザ蹴りで徐々に優って巻き返し、最終ラウンドも持てる力を繰り出した両者。最後までパンチとハイキックなどパワーと勢いあったギリス。馬渡はギリスの左足を折らんばかりに効かせながら終了まで熱戦を繰り広げた。

初回から馬渡亮太も強い蹴りで渡り合った。
第2ラウンドにギリスの右フックでノックダウンを喫した馬渡亮太。
ノックダウン後、ギリスのアグレッシブなパンチに圧された馬渡亮太。

「セコンドはインターバル中に相手の様子を見ることも重要。」

過去、そんなことを言った仲間の記者が居たことを思い出した。第4ラウンド終了後のギリス陣営はギリスの左足を持ち上げるだけで表情を歪めて痛がった。そこも重要な注視ポイントだろう。

馬渡亮太もムエタイ技の一つが活かされた前蹴りヒット。
ギリスのハイキックに馬渡亮太はローキックを合わせる。ダメージあるのはギリス。
馬渡亮太のローキックを避け、サウスポーに変えるも右足を狙われる。

でも攻められてもオーウェン・ギリスは強かった。馬渡亮太はラストラウンドにもっとローキック出していればギリスは倒れただろうという周りの想いもあるが、馬渡亮太本人の戦略と、蹴りに行けなかった、そこは戦う本人にしか分からない事情もあっただろう。

7月25日時点でもジャパンキックボクシング協会、小泉猛代表には経緯も詳しく話して頂きましたが、「結果保留。WMOの連絡待ち」という状況。

深く追求すれば諸々の問題点と対策があり、今後に改善されていくことでしょう。
今回はWMO世界スーパーフェザー級タイトルマッチの試合前後の経過のみとなります。

進捗状況がいつ発表されるか分かりませんが、ここでは速報性が保てませんので、7月25日時点とさせて頂きます。

勝負は差戻しへ。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」