野田佳彦政権が、国民に1人ずつ番号を付けて納税記録や社会保障情報を管理する「マイナンバー」を導入するための法案を閣議決定した。
「要するに、かつて議論された悪名高き国民総背番号制のニューバージョンの法整備ですよ。かつて民主党は元となる住民基本台帳ネットワークの導入に『個人情報は国家管理されるものではない』などと猛反対していましたが、マイナンバー制度は、国民から公平に税収をぶんどれるのに手っとり早いシステムなのです。財産や納税状況など情報管理も一元化できます」(アナリスト)

どういうことか。 国民と法人に個別の番号を割り振り、年金や介護、雇用保険や税務の手続きを一元化する。そのかわりに、国民は誰かに監視されているような気分になるであろう。もちろん、メリットもデメリットも両方ある。たとえば、メリットは、税収のアップであり、年金手帳や保険証などは不要となり、一枚のIDカードでおおよその手続きはこと足りる。

デメリットとして考えられる最悪のケースは情報の漏えいだ。あるアンケートでは、85%の人が「情報の漏えいが心配だ」と答えている。
「しかし実際問題として、社会保障の機関は情報があまりにもバラバラに管理されていました。ハローワークに通って失業保険をもらっている人が、親から譲ってもらった土地で何億も得ていたなんていうことが、税務署とハローワークの情報の連携不足で平然として行われてきたのです」(税理士)

つぎに懸念されるのは、ナンバーの不正利用だ。
「クレジットカードの番号を使って不正に金を引き出すように、ハッキングで電子マネーを引き出すなんていうことが頻発します。となると公安委員会のような監視機関が必要となってくる。要するに、情報統制社会の到来です」(経済ジャーナリスト)

かつて消えた年金問題に乗じて、「年金を取り戻します。ついては着手金を」なんていう詐欺も流行していた。そのような便乗詐欺も怖い。政府が得た国民情報を、たとえば行政サービスでどこまで民間まで公開するのか、という議論も必要であるように思う。
野田首相らは耳ざわりがいいことばかり強調する。つまり「消費税増税にともなう生活費の増加ぶんを援助する、税額控除制度の導入がしやすくなる」という論理だ。
このような言い回しだから不安と不満が増大する。
「なぜ、国庫がたいへんだから助けてくれと国民に頭を下げない。いや、その前にマニフェストの変節をわびるべきだが、彼ら民主党には無理な話だな、国民より官僚のほうを向き始めたからな」(民主党支持者)

マイナンバーは「社会保障と税の一体改革」の基盤となる制度で、消費税増税に伴う低所得者対策への活用も検討されている。2014年6月に番号を交付し、15年1月の利用開始を目指すという。民主党もかつて、総背番号制に反対だった。だが2009年衆院選マニフェストで「所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する」と〝変節〟したのだ。このようなカメレオン政権の管理下に入るなど、まっぴらごめんなのだが、諸兄はどうであろうか。

(渋谷三七十)