『告発の行方2』(鹿砦社)に携わって、今の日本において、組合というのはなんだろう? と考えてしまった。
日教組の仕事をしたことがある。本部は、神保町にある日本教育会館の中のワンフロア。抗議行動も多いためドアは施錠されていて、インターフォーンで応答して開けてもらう。中は、29万人もの組合員を抱える本部としては、簡素だ。
雰囲気は、生命保険のセールスの本部といったところ。考えてみれば、それもそうだ。一人でも組合員を増やして、組合費の徴収を多くするのが目標。万が一解雇や職場での不当な扱いを受けた時に役に立ちますよ、というのがセールストーク。保険とそっくりなのだ。

2004年に国立大学が法人化されたが、仕事をしたのは、その前の数年だ。法人化によって教職員は公務員ではなくなり労働三権が発生するので、日教組に組織化しようとしていた。そのための、メールマガジンを書いた。
さすがに天下の日教組だけあってギャラはよく、実働2~3日で10万円くれた。

とにかく目標は、組合員を増やして組合費としての収益を増やすこと。
打ち合わせの度ごとに飲みに行くので、日教組のスタッフとはうち解けた。
20代の頃の私が、「戦旗・共産主義者同盟」という新左翼の政治セクトに入っていた話もした。その時は、トラック運転手や工場労働者として働いたが、給料のうち8万円だけ手元に残すと、後は組織に上納していた。多い時は10万円近くを上納した。ボーナスは全額上納だ。
その話をすると日教組スタッフは、「その戦旗というのは、凄いな。どうやったらそんなに金を取れるんだ。見習いたい」と目の色を変えた。
とにかく、金が第一という感じだ。

余談だが、その日教組スタッフはいい人だった。私が、エロ・アンダーグランドの仕事をしていると知っても、気にしなかった。
大阪の西成には、売春防止法施行前から今まで、変わらぬ形で営業している飛田という地区がある。
明日から飛田の取材に行くと言うと、「飛田には一切暴力団は入り込んでいない。なぜだが知っている?」と彼は問うてきた。「知らない」と答えると、彼は得意そうに言った。
「あそこはずっと部落解放同盟がケツ持ちしているから、暴力団が入り込む余地がないんだよ」
いろいろ当たってみたが、さすがにガードが堅くウラは取れなかったので、真偽は定かではないが。

組合といえば、生活協同組合というのもある。街を歩いていると、スーパーのような生協の販売店がある。生鮮食品を組合員に配達するサービスなども行っている。
組合といいながら商売とさして変わらず、本部はおそろしく立派な建物だったり、幹部は高給を取っていたりする。
違うのは、労働者の待遇だ。「企業ではなく組合なのだから、組合員に奉仕するのは当然」だとして、サービス残業は当たり前。
上層部の意に添わない言動があると、いきなり事務職からトラックの運転手に配置転換される。「組合だからスタッフの職務に軽重はない」という建前で押し切られる。嫌なら、辞めるしかない。
そうやって労働者を酷使するから、収益は上がるわけなのだ。

『告発の行方2』にも登場する、個人でも加盟できる組合「東京ユニオン」。
知り合いが、リーマンショック後の不況で派遣切りにあい、東京ユニオンに相談に出かけた。
彼は3年以上、派遣労働者として同じ職場で働いていた。
相談した東京ユニオンの担当者は、「法律に違反していない派遣切りなので、対応は難しい」というものだった。
確かに、契約期間の終了後にそれを更新しないというのだから、違法ではない。だが、派遣切りとはそういうものではないか。違法な事例なら、労働基準局に駆け込めばいいわけで、何もわざわざ組合に頼る必要もない。
なんのための組合か? と首を傾げてしまう。

今、組合は企業のパートナーとなった御用組合か、利権集団、自らも収益を追い求めるプチ企業ばかりになってしまっているのではないだろうか。

(FY)