新聞広告で、恐ろしいものを見た。なんと福島原発事故独立検証委員会が、政府や東電の対応を検証した、『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』がディスカヴァー・トゥエンティワンから緊急出版されるのだという。税込で1575円。しかも「大反響につき、現在増刷中です。書店店舗で品切れの場合も、近日中に入荷いたします」とあった。

「馬鹿ばかしいにも、ほどがある。福島の原発被害者に、政府ないしは行政が本来はタダで配るべきものだろう」(全国紙記者)
この調査報告書は、新聞社やテレビ局、政治家などに200部しか当初、配布されなかったという。

「開いた口が塞がらないね。出版社も、中身を検証することなく、そのまま売るとは。火事場泥棒とはこのことだね」(原発の被害者)
ディスカヴァー・トゥエンティワンは「取次会社を通さず、読者目線でヒットを飛ばす」ことで大きく成長してきた会社だ。取次を通さない直取引で全国4000店と取引しており、出した本の増刷率は75%と、業界平均の20~30%をはるかに上回っている。ネットも柔軟に活用しており、各出版社がどのようなフォーマットにしようと右往左往するなかで、いちはやく、独自の電子書籍販売サイトをスタートさせた。

『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚著)は、Twitterを駆使したマーケティングが奏功し、発売から2週間で5万部刷ることが決まった。勝間和代を発掘し、“勝間本”の元祖『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』や、婚活ブームの火付け役となった『「婚活」時代』(山田昌弘、白河桃子共著)、発売3カ月で39万部を突破した『超訳 ニーチェの言葉』など、出版不況をもろともせず、ベストセラーを連発している。

「しかしどうなんだろうね。売れればなんでもいいのかという気がする。出版社がすべきことは、この調査・検証報告書をさらに『検証』して突っ込みを入れることではないのか」(ジャーナリスト)
独立検証委員会の質問に、東電は答えていない。だとすれば「欠落した検証」を、東電に事故責任への回答として強く求めるのが、出版社としてのありようである。

対照的に『AERA』の気鋭の記者、大鹿靖明は、『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社)でかなり踏み込んだレポートを発表している。震災の日、1号機の爆発の様子を見て班目春樹・原子力安全委員会委員長が「うわっー」とうめき、頭を抱えたという事実を明らかにしている。「これが日本の原子力の最高の専門家の姿なのか」と大鹿氏は呆れたという。あのとき、いったい何が欠落していたのか。それを知るにはもってこいの、目撃者ゆえの魂のレポートである。私たちは、何が欠落していたのかを自分の足を使って、情報を集め、諸悪の根源を暴きだすべきではないのか。

鹿砦社の松岡利康社長は語る。
「名うての関西商人・鹿砦社なんか足元にも及ばない商売人だね(笑)」
ディスカヴァー・トゥエンティワンよ! 今すぐに『調査・検証報告書』を売らずに福島の原発被害者に無料で配れ!
私は、悔しくも『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』を買うだろう。しかしそれは「火事場泥棒」的な出版社の策略に乗るのではない。検査報告書には掲載されていない事項を、執拗に追及するためである。

(渋谷三七十)