「前田敦子の卒業宣言で、秋元康が手がけていたおニャン子クラブの最後のほうを思い出しましたよ。あのときも人気が落ちかけていたおニャン子を、解散をエサに相当引っ張ったでしょ」(芸能ジャーナリスト)
人気グループ「AKB48」の前田敦子(20)が3月25日、さいたまスーパーアリーナで開催したコンサートで、グループを卒業することを発表。どの年代も、ひとりの20歳の女の将来性をそこかしこで語り始めた。たいへんな影響力である。

ステージ上、「14歳の時、AKB48のオーディションを受けました。私の人生の中で大きな決断でした。2度目の決断をさせてください」と切り出し、「私、前田敦子はAKB48を卒業します」「20歳の夢に向かって歩きだします」と、卒業を涙ながらに発表した。日本で一番、売れているアイドルグループを引っ張る存在としてのプレッシャーに耐えかねて、卒業するという見方が強い。

「前田の卒業宣言は、秋元康の戦略のひとつに過ぎません。おニャン子だって番組『夕やけニャンニャン』で解散を宣言してから解散コンサートまで3か月も引っ張っている。今、さいたまスーパーアリーナですら8割しか客が入らないほど人気が凋落、ここいらで起爆剤として、総選挙が近いことも踏まえての仕掛けでしょう」(プロモーター)
業界内での見方は手厳しい。

「おニャン子は、メンバーをバラして『うしろ髪ひかれ隊』『うしろゆびさされ組』や『ニャンギラス』などグループ内ユニットを仕掛けたが、しょせんは素人だ。紅白歌合戦に出たのは、結局のところ工藤静香だけ。国生さゆりも渡辺満里奈も演技や歌では本格派ではない。リーダーの永田ルリ子は、AKBの高橋みなみよりもしっかりしていたが、おニャン子解散とほぼ同時に消えた。要するに、集団じゃないと勝負できないのです」(古参のテレビ局プロデューサー)

しかし半分素人集団「おニャン子」は、当時のティーンのみならず、世の中を熱狂させた。解散コンサートで見せた、会員番号18の永田ルリ子の最後のあいさつのMCでのセリフ「みんな、大好き~」は、今でもユーチューブで流れる定番だ。解散をエサに、素人のアイドルグループを輝かせてみせる「魔法」でシングルをさんざん売ったのだ。

「おニャン子のときは、エース格の河合その子を早く卒業させてしまったが、シングル曲がヒットして、あとに続くメンバーが楽になったという事実がある。前田の場合は、人気凋落に歯止めをかけたいという戦略が、一般人にすらわかる。今後の展開は、苦しいだろう」(識者)

素人丸出しの演技で映画「「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」は大コケ。ドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン パラダイス~2011」(フジテレビ)は視聴率低迷。歌はインパクトが足りずと、前田敦子の評判はあまりよろしくない。

前田敦子卒業は、AKB48の「魔法」がとけてきた序章である。
「せめて大島優子の半分くらい演技のセンスやバラエティ番組でも機転がきくクレバーさがあったら」と嘆かれる前田敦子の「卒業戦略」に、「嗚呼、AKB48は今という時代にしか見れないのだ」とまんまと乗せられるほど、大衆は愚かだろうか。

(渋谷三七十)