「おそろしい世の中です。女性が身の危険を感じてストーカーからの保護を申し出ても、慰安旅行があるからといって、警察が届けを受理しないのですからね」(警察詰め記者)
2人が殺害された長崎ストーカー殺人事件で、千葉県警習志野署が被害届の受理を先送りし、担当幹部らが慰安旅行に出かけた問題は、世間を驚かせた。
千葉県警は4月23日、旅行の捜査への影響を認める再検証結果を公表し、当初の検証で旅行に触れなかった理由として、捜査への影響を過小評価し、国民の視点が欠けていたとしている。
「そうです。最初の検証では、ほかの事件が忙しいから対応できないとして、報告してあったのです。およそ民間会社なら倒産しているような不祥事なのです」(元警官)
警察庁と千葉県警は、鎌田聡県警本部長ら計21人を処分した。 当然の処置である。

ストーカーである筒井郷太容疑者=殺人容疑で逮捕=は、昨年12月9日、習志野市の女性宅に現れ、その後習志野署に出頭したが、口頭注意だけで逮捕せずに帰されている。それは、生活安全課長らが慰安旅行に出掛けた時期(12月8~10日)と重なっているのだ。

「さらにいえば、習志野署も、女性の肉親を保護するために連絡すべき長崎県警と連絡がとれていない。結果から言えば、警察に殺されたようなものです。女性からストーカー被害の相談を再三受けていた生活安全課長と、傷害事件の被害届を1週間遅らせるよう依頼した刑事課の強行係長が旅行に参加していなければ、傷害容疑での逮捕やストーカー規制法の適用でより踏み込んだ対応ができたのです」(全国紙社会部記者)
1999年10月26日に桶川で女子大生が殺された「桶川ストーカー殺人事件」で、上尾署は書類を改ざんし、告訴を取り下げるように家族に要求した。このときも警察の怠慢が問題となった。これをきっかけに「ストーカー規制法」ができたが、肝心の警察がこれだけゆるければ、法律など砂上の楼閣である。13年たっても、警察の怠慢は変わらない。

不思議なのは、習志野署警察協議会の委員は何をやっていたのか、ということだ。協議会には習志野署員の怠慢はクレームとしてかなりあったというではないか。市民を代表して、このような態度をとっている警察を叱咤できるのは、警察署長への詰問が許されている、警察協議会委員しかいないのだが。
「無理無理。警察署協議会委員なんて地元の権力者のしがらみで嫌々やっている人間がほとんど。ふだんから警察幹部に『まあ、どうです一杯』と酒漬け、女漬けされて籠絡されている連中ですから」(警察ジャーナリスト)

うむ、この構造は原子力を規制する組織と監視側が一体となっている「東電―原子力安全委員会―原子力保安院の構図」と似ている。要するに、なあなあだ。
「各都道府県の警察がやっている協議会委員の接待費用を調査すれば、おそらく億単位になる。裏金で処理しているから表向きは捜査費用だろうが」(警察詰め記者)
調べてみる価値はありそうだ。なにしろ習志野署の慰安旅行には、なんと警察署協議会委員も数人行っていたという情報もあるのだ。なんのための協議会なのだろう。警察署だけでなく、「警察署協議会」の「監視員会」が必要だ。いくつ機関を作ればいいのだろう。だんだん相撲界みたくなってきた、日本の警察組織。

「アメリカみたいに、保安官を町に設置したらどうだろうか。民間人を採用すれば警察よりよほどいい仕事をすると思うが」(民主党系市会議員)
さて、千葉県警は全面的に改革が行われるのだろうか。逮捕率が3割を切った「税金ごくつぶし」と化した警察全体の威信がこの事件への対応にかかっている。

(渋谷三七十)