沖縄県の翁長雄志知事が10月13日、辺野古基地建設に関する「埋め立て許可」を正式に取り消した。

「オール沖縄」選出知事として翁長氏が就任して以来、私は一刻も早く「埋め立て許可」の取り消しを行うべきだと考えていたが、自身が元自民党に所属していた関係もあっての事であろうか、9月の一時休戦を経てようやく踏み切ることになった。そもそも辺野古の「埋め立て許可」は仲井真弘多前知事が県民を裏切り、基地建設反対を反故にしたことがことの始まりだった。沖縄防衛局はそれ以前から虎視眈々と仲井真氏籠絡、埋め立て許可の強引な引き出しを露骨に狙っていて、当時の沖縄防衛局長は地元での記者との懇談の席で「ヤル前にヤルという人はないでしょう」という暴言を琉球新報の記者にスクープされた経緯もあった。

翁長雄志沖縄県知事の公式HPより

◆沖縄の意識の変化は基地問題にとどまらず、「琉球独立論」へ結びついていく

仲井真氏は中央からの恫喝、あるいは飴と鞭で簡単に姿勢を変え、県庁を市民が取り囲み書類の搬入を何度も阻止する中、姑息にも見せかけばかりの「手続き」を経て出されたのが、翁長知事によって取り消された「埋め立て許可」だ。沖縄以外の地域では地方の意思や反中央の気概が希薄化する中、この間の選挙結果だけを見ても、沖縄はもう完全に自立した意志を確立したといえよう。

「基地がないと食べていけない」、「基地は嫌だけどないと困るから」というかつての「基地経済根拠論」は既に破綻を来たしており、沖縄での大手資本や企業経営者も「基地はいらない」と公言し、先の知事選でも翁長氏が仲井真氏を圧倒した。そしてこの意識の変化は基地問題にとどまらず、即座にとはいかないだろうが「沖縄=琉球独立論」へ結びついていくのではないかと私は考えている

本土にとっての「主権回復の日」が沖縄では「屈辱の日」として毎年強く意識されるようになっていることからも顕著な通り、この島国の政府が本気で考えを改め、謝罪しない限り、沖縄との和解などあり得ない。この期に至ってまだ補助金をちらつかせ「全額を受け取って欲しい」などと舐めきったコメントを吐く政府の本音を代弁すれば「沖縄は本土の植民地でいろ」だ。

◆米軍基地さえなかったら沖縄は充分観光で食える

沖縄に行くと本土では目にしないサービスが目にとまる。その1つが免税店の存在だ。タバコや酒は買えないが有名ブランド品を扱う免税店のみをテナントとした巨大なショッピングモールが新都心といわれる、モノレール「おもろまち」駅横に立っている。国内で免税店が利用できるのは沖縄だけだ。

ラジオ沖縄を聴けば、昼間にはその日の新聞を完全な「ウチナーグチ」(沖縄語)で読み、それをバイリンガル(日本語・沖縄語)の司会者が解説をする「語学教育」番組が放送されている。本土に暮らす我々が聞いても、本格的な沖縄語で新聞を読まれるだけで、固有名詞程度しか理解することは出来ない。ましてやそれが日常会話になれば完全な異言語世界である。

沖縄の人たちは日本語を話すが、年配者を中心とした「バイリンガル」の語る沖縄語は私にとってはハングルよりも聞き取れないかもしれない。

もちろん、長きにわたるヤマトからの差別、弾圧の歴史がある。「琉球処分」とは時代が変われどこの島国の権力者たちが沖縄を見る本音をあらわした言葉として象徴的だ。

こんな腐りきった政府が支配する島国からは抜けてしまおう。「そんなこと言ったってお前達独立して経済はどうするんだよ」とまたぞろ「経済主義者」の揶揄が聞こえてきそうだが、そんな低い次元の話ではないのだ。あなたたち薄汚い連中にほとほと嫌気がさしたんだよ。東京なんかちっとも羨ましくない。沖縄には「金」では買えない自然がある。クジラが泳ぎ回る美しい海がある。

観光客だって世界中からやって来る。米軍基地さえなかったら充分観光で食えるのさ。

と、私は思うけれども、心優しい沖縄の人びとはどう考えるだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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