ここのところ、「ソープやデリヘルが歌舞伎町で激減している」と聞くが、歌舞伎町の最新流行では「ギャルの手こきサービス」がある。

「風俗のメッカだった歌舞伎町も、時代の流れで性風俗が減退。客もハードなエロスが求めなくなった。ただ、手軽な20分1500円の“手コキ”は大流行。AVルームに現役の女子大生や仕事を終えたOLが大量に働いていて、相場3000円程度でやっているんですが、現役の女子大生ですとか言って10万円以上の値段で案内したこともある。これは事前に値段交渉で提示するので絶対に揉めません。これこそメディアが報じない『隠れたプチぼったくり』なんですよ」

ぼったくりに遭わない方法は「キャッチを無視するしかない」という。

一方、「ガールキャッチ」も最近、復活しつつある。6月、歌舞伎町のキャバクラ店「LUMINE」で、22歳のホステスが逮捕。容疑は2015年3月11日の深夜、20代の男性会社員2人に「料理は何を頼んでも3000円。時間も無制限」と紹介しておいて、実際にはテーブルチャージ代7万円を請求するぼったくり。

男性2人は1時間超の飲食で24万円を請求され、全額支払った。一説には同店の背後には中国系のマフィアがいたとされるが、女性が客を誘う「ガールキャッチ」は過去、歌舞伎町で横行していた手口だ。

◆「ガールキャッチ」の元祖、影野臣直氏が嘆く「にわかぼったくり店」の跋扈

ぼったくりを始めた頃の影野臣直氏(撮影/渡辺克己)

1999年2月、新聞に「梅酒一杯15万円」の見出しで報道された「元祖ぼったくり事件」の逮捕者で、その後は「元ぼったくりの帝王」として作家になった影野臣直氏は「ガールキャッチ」を始めた元祖だ。美女を路上に立たせて「安く飲めますよ」と男性にしなだれかかり、そのまま彼女が客の相手をする。この「ぼったくり」の原型を作った人物だけに、現在のぼったくり事情にも精通している希有な人物だ。
「ゲリラぼったくりとは、聞こえがいいけど、私に言わせれば『ぼったくり』の美学も知らない『にわかぼったくり店』ですよ。ほかの場所からブラリとやってきて、1、2ヶ月で稼いではほかの盛り場に移るということをやっている。彼等は、客を踏みつけるように根こそぎ金を奪う。私たちがやっていた時代は、ぼったくった相手に、『せめてもの店からのプレゼントです』とヘネシーを一本プレゼントしたり、客の懐具合を見て適度なぼったくりをしていました。歌舞伎町には昔から私以前にも連綿とぼったくり業者がいたんです。ぼったくり条例は、『明確な料金の義務化』と『乱暴な言論や暴力による料金不当取り立ての禁止』をうたっていますが、値段表なんて、たとえば店内を赤い照明にして、細かい赤い文字で書けば読めませんし、料金取り立ても、やんわりと『遊んだ分は払って下さいよ』と丁重に請求すれば条例に触れない。キャッチと聞いた値段とは違う、という主張も店としては『そんなキャッチは知らない』と言い張ればいいだけで、抜け道はいくらでもあるんですよ。客は払わないと無銭飲食になるわけですしね。そもそも『飲食業』で登録していれば一定の値段をつけますが『サービス業』の登録店は、どんな値段をつけてもOKという仕組みがあります。そういうこともあって警察も民事不介入だったんです。『ぼったくり防止条例』もザル法だったので、成功例を見た半グレたちが、『みかじめ』さえ払えば堂々と営業できる歌舞伎町でぼったくりを始めました。だからこそ、ゲリラぼったくりの飲食店が増えたのでしょう」

◆現役ガールキャッチ女性の告白──「人生経験として、一度ぼったくられるのもいいかも」

風林会館の前にいた現役のガールキャッチ女性に話を聞いた。24歳で、鹿児島出身の真鍋かおり似。彼女は、ガールキャッチだが女性客を捕まえるのがうまい。

カップルを狙って、「彼女の前でかっこつけそうな男」をバーに連れて行くのだが、相方の女性の服装を褒めるなどして親しくなり、信用させる。ときには「前に会ったことある」とウソをついて近寄るという。

まずはこのカップルをしこたま飲ませて泥酔させ、数十万円を支払う伝票にサインさせる。2人を別の部屋に分けて彼には「彼女が支払いはあなただと言った」と言い、彼女には「彼が支払いはあなたからもらえと言った」と言い、二重に金をとるひどいこともやるという。

「1年くらい前は、居眠りをする薬をビールに入れて泥酔させて、ATMまで客を連れて行って、金を引き出させたこともある」と女性。ぼったくりに関して、罪悪感はないのか。

「歌舞伎町に来て、そんな警戒もせず安く飲めると考えるほうがおかしいでしょ。それに、こうして勉強になった方がいいんです。人生経験として、一度ぼったくられるのもいいかも」[つづく]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影小林俊之)

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる [近日掲載]

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