自身初の単行本『秋山理央写真集 ANTIFA ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』が、11月21日に発売になった。是非お近くの書店で購入して欲しい。


『秋山理央写真集 ANTIFA ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』
写真=秋山理央 文=朴順梨 発行=鹿砦社
定価1944円(本体1800円)

もともとジャーナリズムに興味があったわけでもなく、何の志も持たないカメラマンである私はただただ「今の日本」を記録することだけに専念してきた。

3.11以降、福島原発事故に端を発した反原発デモが日本各地で頻発していたにも関わらず、大手メディアはなかなか取り上げなかった。もちろん様々な理由があって、それはある意味で仕方がないことだった。
「ならば自分でやってやろう」と、2011年6月から反原発のデモにカメラを向け徹底的に記録することにした。こんなにもデモが起こっているのに報道が少な過ぎるのは不自然だと思ったからだ。
当時は、あるいは今でもそうかもしれないが、デモはハードルが高く特殊な行為という感覚が強かった。私もその感覚を持っていた一人だったが、考えてみると私たち市民にとって一番身近な主張の場はデモだった。

次の行動に繋げてもらう為にも、明確な「原発反対」の立場の自分が一つのメディアとなり、人々の消えていくはずだった想いを記録し残すことにした。デモのマイナス・イメージを払拭し、デモ文化を根付かせようと心に決めたのだ。
現在でもほぼ全ての土日は取材に出掛け、年間100?150回程度の撮影を続けられている理由はそこにあるのかもしれない。

デモや抗議を行なう人々を撮り始めて4年半、反原発から反レイシズム、反安保法制を訴える路上の姿を追い続けて、遂に写真集が世に出ることとなった。正直なところ、出版が決まっても感動があったわけではなかった。月刊誌と季刊誌での連載を抱え、本・新聞・テレビ・その他に多数の写真や映像を提供していたので、本が出るからと言って特別な感情が沸き起こりはしなかった。…現物を手にするまでは。
制作の過程で見ることができたのは印刷見本のみで、きちんと製本されている完成状態のものがなく、出版の素人の私には想像が全くできていなかった。しかし、写真集の現物を手にしてみると、紙も印刷も良くて驚いた。質感も良かったし、重量感があって、「絶対に買って損はしない!値段以上の価値がある本だ!」と仲良くしている友達にメールしてしまった。自分が撮って選んだ写真なのに、だ。

この写真集には、2013年3月31日?2015年10月4日までの期間、12都道府県と韓国・ソウルの路上で行なわれた41の反レイシズム行動の写真140点が時系列に沿って収録されている。時が進むにつれて、路上でのヘイト・スピーチとの闘いが広がりを見せていくことを感じる事ができるはずだ。
今回、掲載写真にはキャプションはあえて付けず、記すのは日付と撮影場所だけにした。彼女自身がヘイト・スピーチの被害者でもあるライターの朴順梨さんに寄せてもらった文章に心を揺さぶる力を感じたので、写真ページはビジュアルに特化し「写真集」としての完成度を重視した。言葉は彼女に任せ、私の想いは全て『ANTIFA(アンチ・ファシズム)』と冠したタイトルに込めた。

ヘイト・スピーチに抗議するカウンターは広く理解され、多数の支持を得る必要はないのかもしれない。そもそも差別が無ければ不要の存在なのだから。しかし、カウンターをするしかない状況は今でも変わらず存在している。
私はこれからも記録者として、路上の事象を写し取っていくつもりだ。

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。
11月21日には全国の路上でヘイト・スピーチと闘うカウンターの姿を追った初写真集『ANTIFA アンティファ ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』(鹿砦社)が全国書店にて発売決定!

《ウィークリー理央眼》
◎《027》戦争法案に反対する若者たち VOL.21 金沢
◎《026》戦争法案に反対する若者たち VOL.20 新宿
◎《025》戦争法案に反対する若者たち VOL.19 川越
◎《024》戦争法案に反対する若者たち VOL.18 郡山
◎《023》戦争法案に反対する若者たち VOL.17 弘前