《本間龍12》「ブラック企業大賞」候補に選ばれた電通、別の過労死事件を隠蔽か?

DENTSU TEC 2017 RECRUITより

 
11月7日に全社員に向けた社長メッセージが発せられ、12月2日には社員の1割を配置転換するという社内体制の改革を発表し、改革イメージを懸命にアピールした電通だが、それは偽りの姿であったことがハッキリした。11月30日のMNJ(マイニュースジャパン)が、NHKニュースで感想を述べた社員が戒告処分を受けたことをスッパ抜いたのだ。

NHK『ニュース7』の字幕では、「捜索が入って急に騒ぎ出すのは自浄能力のない会社だなと思う」と記されていた。その直前に行われた社長の社内会見では、石井社長が「様々な社員のみなさんの声を取り入れて、みなさんとともに新しい電通を作っていければと思っています」と述べていたのに、感想を述べただけの社員を戒告処分にしたというのだから、まさに驚愕である。これに対し、電通労組が異議を唱えないとしたら、もはや存在意義などないに等しい。

しかも、何らかの社内機密を漏らしたというなら別だが、この社員はインタビューに対して自分の感想を述べただけだ。石井社長は「先日来、社内の文書が外に漏れている。ご自分の考えを述べることはもちろん構わないが、社内の情報を外に出すことは、明確な社規違反です」とも語っていたという。

もし経営陣が上記の社員の感想を「社内情報」と判断したとするなら、まさにソ連時代の小話である『「赤の広場」で「スターリンは馬鹿だ」と叫んだ男が逮捕された。裁判の結果、懲役25年が言い渡された。刑期のうち5年は侮辱罪、残りの20年は国家機密漏洩罪であった』を彷彿とさせる愚かな状況である。いくらなんでも電通経営陣はトチ狂っているとしか思えず、こんな感想を述べた程度で戒告なら、真摯な意見を述べる者は誰もいなくなってしまうだろう。

実は、この社員がなんらかの処分を受けるかもしれない、という情報は以前からメディアにも漏れていたのだが、それを確認した記者に対し、電通広報は「そんなことをすれば(批判に)火に油を注ぐだけだから、ありえない」と回答していたというのだから、もはや経営陣と広報間の連携すら取れていないということなのだろう。そして、このMNJ記事の確認をした記者に対しては「社内事情を公開する義務はない」として回答を拒否したのだ。

以前も書いたが、メディアの間で電通広報の評判は非常に悪い。問い合わせに対しては曖昧な返事しかせず、無視することも多々あり、細かく追求する記者に対しては「社内事情を説明する義務はない」などと偉そうに回答する。あまりにも多くの問題が勃発しているから質問されるのに、「そんなことはお前らの知ったことか」という態度なのだから、周囲からの評判が悪いのは当然だろう。私のスクープである、石井社長が安倍首相と会談した件に関しても、確認を求めた記者達に対し「社長の動静を外部に開示する必要はない」として回答を拒否しているほどだ。

電通(博報堂も)がスポンサー各社に提案している「事件・事故対応広報マニュアル」では、重大事件後は広報担当者を選任し、メディアの質問には誠実に答える態度が必要だと書いてあるはずだ。あの悪名高い東電でさえ、定例記者会見では(不十分ながらも)一応は回答する姿勢を見せている。それは、事件事故の勃発時には厳しかった記者にも誠実に対応すれば信頼関係を構築でき、事態が治まってきたときには冷静な記事を書いてもらえるなど、味方になってくれる可能性があるからなのだが、電通の対応は見事にこの自らが提唱するセオリーを無視している。恐らく、店頭で物を売るコンシュマー製品を作っている企業ではないから、メディアを通じた丁寧な説明など一切必要ないと考えているのだろう。傲慢さは少しも変わっていないのだ。

しかし、こうしたメディアに対する「塩対応」は確実に記者達に「不誠実な企業」という印象を与え、彼らは不満を募らせている。実は電通にはもう一件、ここ数年内に起きた過労死事件が存在するという情報があり、いま多くのメディアがその存在を追っている。もしこれが確認され発表されれば、電通の信頼はもはや回復不能な状態に追い込まれるだろう。不誠実な対応をすればするほど味方はいなくなり、さらに急所をスクープされるという泥沼に入り込んでいるのだ。

おりしも、電通は毎年開催されている「ブラック企業大賞」にノミネートされた。今年も佐川急便や関電など錚々たる面子が揃っているが、特に今年の下半期でここまでイメージが悪化した企業は他になく、大賞受賞は間違いないと思われる。だが電通がノミネートされることが確実とあって、毎年取材に訪れるテレビ各局が、今年は一社もなかったという。いまだに電波メディアに対する電通の威光は健在なのだ。


◎[参考動画]電通グループの広告制作会社、電通テック2017年新卒採用リクルートムービー(DENTSU TEC RECRUIT 2016年6月12日公開)

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

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『NO NUKES voice』第9号 好評連載!本間龍さん「原発プロパガンダとは何か?」

「浪速の歌う巨人」趙博の不可解すぎる裏切りの連続

 
 

  
『反差別と暴力の正体』は私たちの予想を超えて広く読まれている。編纂に関わった者としてはありがたい限りだ。そして予想通りながら読後感の多くに「正直びっくりした」「何か重たい気持ちが残った」が共通している。本書に綴った事実の羅列は、たしかに性悪の作家が敢えて、最悪の終末を用意した小説のようである。

しかしながら事実はそのように進行し、現在も加害者たちは同様の行為を継続しているのだから手に負えない。しかも一部の人間どもはさらに精鋭化しM君や鹿砦社への露骨な敵意を剥き出しにしつつある。

当該人物の名誉毀損攻撃はすべからく保存してあることは言うまでもない。鹿砦社の「言論弾薬庫」には次々と新型兵器が搬入され続けている。このようなことはわれわれの望む手法ではないが、これ以上の攻撃が続くようであれば、小型の迎撃ミサイルの1発くらいは発射せねばならない局面がやって来るかもしれない。

事件の周辺では、どす黒い思惑を持った連中が蠢いている。その中でまた不思議な動きが先日あった。M君に対して、驚くべき〈裏切り〉を行った趙博(通称パギヤン)が知人を介してM君に「会いたい」と打診をしてきたのだ。

仲介を依頼された知人はM君を助ける立場で一貫した発言を続けている方であり『反差別と暴力の正体』に仮名で登場する方だ。謎解きのような気分でツイッターを「ネットパトロール」して頂ければ、読者諸氏にもその書き込みは容易に発見することが可能だろう。ただ膨大な書き込みから当該箇所を見つけるのには骨が折れる作業なので、書き込まれたのは12月1日とだけ、ヒントを差し上げておく。

この書き込みの中で当該の方は「パギやんが謝罪を行ったのは、彼がツイッターの事情がよくわからないまま暴力事件のまとめサイトを作ったことで、ひどいツイートを集めてしまったことで混乱を招いた点について謝罪したのであって、事件への批判について謝罪をしたのではないということです。つまり印象操作です」と書いておられる。しかし事実は違う。「事件への批判について謝罪をしたのではない」は嘘だ。証拠を示そう。下記の趙博による《■李信恵さんへの謝罪文■》をご覧いただきたい。これは本年5月7日に趙博自身が当人のフェイスブックに書き込んだものだ。

この中で趙は、
「5月5日の会談で、私の『確信』はすべて根拠のないことが充分にわかりました。傷つき孤立しているCさん(著者注:M君を指す)を思う余り、私は彼の情報だけを頼りにしてきたのです。しかし、今その誇張と虚偽が判明した以上、私は李信恵さんに謝罪するしかありません(以下略)」
と書いている。

趙博による■李信恵さんへの謝罪文■
趙博による■李信恵さんへの謝罪文■
 
 

  
趙は事件後自ら「事件のことを知りたい」とM君に接近してきて、表面上は親身にM君のことを心配し、M君も趙に信頼をおいていた。しかし、5月初頭に趙は上記にある通り、腰を抜かすような〈手のひら返し〉を行う。この時も趙はM君を自分の事務所に呼び出し、何らかの話をしようと企図していた。過去に支援してもらった恩義を感じていたM君も「男と男の話をして来ようと思います」と趙の誘導に乗りかけていたが、取材班と松岡がそれを思いとどまらせた。当時松岡と趙の間で交わされたのが、下記のやり取りだ。

▼2016年5月6日 18:52 (※趙博から松岡及び複数の人たちに送られたメール)

昨日、李信恵とじっくり話しました。先ず、信義の問題として私が謝罪します。次に、被害者たるM君(著者注:元文ではM君の本名)の誇張と嘘がはっきりしました。今日、彼と会う約束でしたが「精神的にしんどいので日を改めて欲しい」とのことでした。僕は逃げたと判断します。ともあれ、大阪の運動を潰すわけにはいかないので、僕が悪者になります(笑)。李信恵たちとの信頼関係は全然壊れていませんので、ご心配なく

▼2016年5月7日 7:31(※趙博への松岡からのメール)

趙 博 様
拝復 メール拝受いたしました。 人の心の変わりようとはこんなものかと驚くばかりです。残念です。30年余りの付き合いのある私の親友も「わからんなあ」と頭を抱えておりました。 M君は真に趙さんを信頼していたんですよ。一夜でガラッと趙さんの態度が変わり、彼の精神的打撃は察するにあまりあります。何か一夜で趙さんが心変わりするほどの重大なことがあったのでしょうか? M君は直前まで趙さんに会いに行くつもりでしたが、私たちが止めました。彼が逃げたのではなく私たちが逃がしたのです。一昨年の12月、何かあると察し逃げていれば、くだんのリンチ事件は起きなかったわけで、今回も何か起きそうな予感がしましたので、会いに行くのを止めた次第です。特に精神的に参っている中で一人でのこのこ出かけていけば、自らの意に沿わないことにでも従わざるをえなくなりかねないからです。趙さんはどういう意図で彼を呼ばれ何を話されようとしたのでしょうか? 「誇張と嘘」──趙さんはこれまでM君の「誇張と嘘」に騙されていたんですね? また、私たちも彼の「誇張と嘘」に騙されているのでしょうか? 彼の「誇張や嘘」とは具体的にどのようなことでしょうか、教えてくだされば幸いです。 果たしてM君の「誇張と嘘」とはいかなるものか、臭いものに蓋がされることなく、裁判や報道などで、その〈真実〉が明らかになることを願ってやみません。 李信恵さんら加害者3人の謝罪文、事件翌朝の悲惨な写真、録音テープなどもあるのに、M君に「誇張や嘘」があるとは到底思えません。 私もこの歳になると争い事や暴力の匂いがあることから避けたいと思い生きてきたところ、ひょんなことで、この問題に関わるようになりましたが、これだけの証拠もあるのに「誇張や嘘」があると言われると、逆に私は〈真実〉を知りたいと思います。この件に限らず、私の信条として、あくまでも被害者や弱い立場の者の側に立ち、今後も陰に陽にM君をサポートしていく所存です。 趙さんは近々に「謝罪文」を出される由、大きな関心を持って拝読させていただきたいと思っています。 趙さんの更なるご活躍を祈っています!

敬具
5月7日 鹿砦社 松岡利康

その時、趙博に多大の期待をしていたM君のみならずわれわれの驚きと落胆は大きかった。この悔しさは忘れることができない。

5月のGW前後、4月28日に『週刊実話』がM君リンチ事件のことをコラム記事で小さく報じたところ加害者側が『実話』に抗議、『実話』はあえなく「謝罪・訂正文」をそのHP上に出し形勢逆転、機を見るに敏な趙は、それまでの勢いはどこに行ったか、加害者側に寝返った。その後、高島章弁護士や『世に倦む日日』らが、李信恵らの「謝罪文」、辛淑玉文書、そしてリンチ場面の生々しいテープ起こし、リンチ直後のM君の顔写真らを公開、一気に形勢再逆転、さらにくだんの『ヘイトと暴力の連鎖』『反差別と暴力の正体』出版によって形勢はM君側に大きく傾いてきている。そうした情況での、今回の「話し合い」の申し出、いくらなんでも虫が良過ぎるのではないだろうか!? 他のところでも、趙の似たような言動の情報が寄せられているが、風見鶏はやめろと言いたい。

趙博は「浪速の歌う巨人」と自称しているが、一連のコウモリ的行為を表するならば「浪速の謡う虚人」と言われても仕方ないのではないか。どれだけM君の精神を無茶苦茶にすれば気が済むのだ。

われわれ取材班は趙博の裏切りの連続に、たとえようもない腐臭を感じる。

(鹿砦社特別取材班)

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視聴率低迷続く「めちゃ×2イケてるッ!」はスポーツ番組化で延命か?

1996年から続いているフジテレビの「めちゃ×2イケてるッ!」が視聴率低迷にあえいでいる。打ち切りの噂さえ浮上しているが、真偽についてフジテレビ関係者に聞いても「その話は箝口令がしかれた」ととりつくしまがない。

未成年との淫行で姿を消した「極楽とんぼ」の山本圭壱が7月30日に登場。この結果、スポンサー数社が激怒して降り、今年の10月に「存続」がアナウンスされたが来年の春から「深夜枠」へ移動が決定的とも。30分番組となり、予算も大幅に削られることが決定したとも報道があった。視聴率としては山本が出演した回は11.9%という高視聴率をとったが、それ以降、なかなか一桁から抜け出せない。 90年代前半は、20%を簡単に叩き出していたこの番組について、スポンサーたちは「視聴率15%ではじめて回収できる」としているのだ。

「やはり山本登場は禁断の果実だった。毒がまわってきた気がする。ところが代理店主導で、この番組は基本的にはメンバーがほぼリストラされるものの、『ナインティナイン』の岡村隆史と矢部浩之がMCのスポーツ情報番組となるかもしれません」(芸能ジャーナリスト)

『Quick Japan』Vol.113(2014年4月発売号)

どういうことか。

「フジテレビのバラエティ番組は、軒並み視聴率がとれていない。なおかつ『めちゃイケー』の場合は、もうロケ、コント、素人の発掘などありとあらゆることをやり尽くしてきた感がある.岡本も後輩芸人に『もうやりたいことは全部やった』と漏らしている。主導している広告代理店の示唆もあり、「これから東京五輪・パラリンピックで盛り上がっていくし、いっそ『めちゃ×2イケてるッ! スポーツ』 にリニューアルしたらどうか」という案が急浮。月曜の深夜は矢部がサッカー番組『やべっちF.C. ~日本サッカー応援宣言~」(テレビ朝日)がありますからかぶらないよう に、五輪種目のみに特化するなど工夫がいりますけどね」(同)

ただでさえ民放でも最低レベルの視聴率にあえぐフジテレビとしては、大胆に今年、すべての番組を対象にてこ入れを開始。その先鞭だとも言われる『めちゃイケー』の改革だが、この見せしめともいえるてこ入れの背景には、3つ理由があるとテレビ関係者は指摘する。

まずは帯で放送している深夜のニュース番組「ユアタイム」の低迷。

「もはや2~3%で視聴率が推移している『ユアタイム』は、当初予定していたMCのショーン・Kの学歴詐称疑惑ショックから抜け出せず“お荷物”のまま。すでに編成や広告代理店らが番組をバラしにかかっています。そのあいた枠をなんとかして人気番組で埋めて年間視聴率の帳尻を合わせないといけない。改革第1弾として、(仮)『めちゃイケ スポーツ』をスタートさせよう というのです。MCはナイナイがやりますが,残りのメンバーはもうカットされるでしょう」(同)

2つめは「スポーツ番組にすれば低予算でも制作できる」強みがあるという。

「かつてのスポーツニュース番組『すぽると!』のスタッフのツテもあるし、ギャラがほぼ無料のアマチュアのアスリート密着もすぐにできる。またフジ系のスポーツ評論家のギャラもほかの番組と抱き合わせで発注すればそう高くない。ただでさえ低視聴率ながら武田真治や鈴木紗理奈らベテラン組のギャラが高騰して予算を圧迫。もう採算バランスが狂っているのです。ジャンルをスポーツにすれば堂々とその『累積赤字』を一気に解決できる」(同)

3つめはこれからのスポーツ日程の問題。

「これからサッカーはロシアW杯のアジア最終予選で盛り上がってくるし、フジが押しているバレーボールも全日本女子は中田久美氏が新たに監督に就任し、注目度は高い。マーケティングでも『高視聴率が期待できる』と出ている。さらにフジが押しているバスケットボールのプロリーグ「Bリーグ」の特集もここの枠に押し込める、。ナイナイが二人ともスポーツに明るいのも好材料だ」(同)

ナイナイは岡村、矢部とも大阪府立茨木西高校でサッカーに興じていたスポーツ万能型。

矢部はいまだにサッカー番組でフリーキックを蹴ったり、岡村はコントなどで運動神経抜群なところを見せており、EXILEやAKB48 に混じって特番で踊った経験もある。

「災い転じて福じゃないけど『めちゃイケー』のリニューアルはけっこうフジテレビ復活の起爆材料になるかもしれない」との声も。

フジテレビに「めちゃイケが深夜に移動してスポーツ番組になるという話が出ているが」と聞いたが「そのような情報は入っておりません」とした。果たして文字どおり「イケてる」リニューアルとなるか。

(伊東北斗)

 
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女子キックボクシング闘魂史──熊谷直子からRENA、リトルタイガーまで

「女がキックなんかやるもんじゃねえ!」そんな声が聞こえた昭和の時代。マスコミの中にも一部そんな偏見を持つ者もいました。

その後、女子の可能性に閃いたプロモーターによって試合が増え、女子の世界タイトルマッチまで到達しても、そのマイナー競技の層の薄さに、そこに注目するファンも少なかった時代が続きました。

そんな邪道とされた女子キックも、次第にスポーツ全般の女子選手の活躍に負けない活動が注目され始め、近年の少年(少女)育成のジュニアキック卒業後の高度成長からも女子キックを、決して侮れない時代になりました。

市販のランニングパンツで試合する、まだ女子キックも確率していない頃のエキシビジョンマッチ(1984年1月5日)

◆70年代──女性選手がやり難い時代

キックボクシングが1970年代の隆盛期を迎えた時代にもすでに女子キック団体は存在しており、しかしその存在は非常に小さく、低い技術の試合より、色気に目がいった観衆の異様な視線に、キックをやりたいと思う女性がいてもその環境は程遠く、やり難い時代だったかもしれません。

◆80年代の開花──WKA世界王座を勝ち取った熊谷直子

そしてこの女子の存在に本格的に力を注ぐ兆しとなったのは、女子プロレスのブームもそのひとつだったでしょう。1980年代のクラッシュギャルズ中心の“善玉悪玉の戦い”は競技性よりも、観衆に、特に女性から注目を浴びる輝いたリングでした。

キックボクシングそのものが低迷し、復興に力を注いでいたこの時代、女子の試合は重要視されない環境でも、実力ある選手が台頭してきたのは、新しい競技のシュートボクシングにおける若菜などの活躍、全日本キックボクシング連盟ではWKA世界王座まで到達した熊谷直子がスター的な立場となりました。後には熊谷の後輩となる三井綾、中沢夏美や、他団体にシュガーみゆき、神風杏子なども存在し、比較的軽量級では選手層が充実していた時代でした。

その熊谷が目指したもの、女子選手だけによる興行を実現させたのが1994年10月でした。後の通常の興行でも女子がメインイベント3試合を飾ることも実現させるなど、過去に無い女子キックボクサーの存在感をアピールするも、後の世代まで継続させるほどの勢いは無く、女子キック存在の厳しさは続きました。

[左写真]女子キックのレジェンド、WKA女子世界ムエタイ・フライ級、バンタム級チャンピオン熊谷直子。[右写真]神風杏子(左)vs熊谷直子(右)(1998年に2度対戦)
[左写真]JBCの女子公認前にエキシビジョンマッチで、プロボクシングのリングに上がったことがあるシュガーみゆき。[右写真]2000年代に入ってボクシングとキックで活躍した柴田早千予

◆タイ人オカマボクサー、パリンヤー・ギャップサバーの新風

その頃、異色の新風を起こしたのはタイ人オカマボクサー、パリンヤー・ギャップサバーの出現とタイでのブーム。これが話題中心に作られたものでなく、男子ムエタイボクサーとして実力が伴なったものでした。それが日本にもやって来るほど、“男性”ではある為、男子キックで戦い、その後、女子プロレスラー・井上京子との異種格闘技戦は話題を呼びました。こうしたオカマボクサーが強かったが為、男女とも刺激を受けた時期でした。

[左写真]一世風靡した“オカマムエタイ?”のエース、パリンヤー(1998年頃)。[右写真]ワイクーも女らしさを出したパリンヤーの戦いの舞
女子ムエタイのベテランエース、Littele Tiger(2016年9月25日)
女子シュートボクシングのエース、RENA(2015年2月11日)

◆99年協会設立を経て00年代女子「覚醒の時代」へ

一連の女子の活躍からひとつ世代が変わり、2000年代前半は徐々に各競技でも女子選手が増えた時代でした。特に女子プロボクシングの台頭は大きく、MA日本キックボクシング連盟の山木敏弘代表がキック興行の中に女子ボクシングを組み込む経緯を経た1999年4月、日本女子ボクシング協会を設立しました。

当時は女子キックボクサーのボクシングとの両立が中心でしたが、2005年11月に菊地奈々子が日本人女子として初のメジャー団体王座、WBC女子世界ストロー級チャンピオンになったことで世間に名を轟かすひとつとなり、一般女性にもボクササイズとしてのボクシングに触れる機会が増え、「蹴りがあるほうが楽しい」といった感覚でキックに目覚める女性もいたでしょう。

2008年春には女子プロボクシングがJBC管轄下の日本プロボクシング協会に吸収された“メジャー昇格”で、後には主要4団体の世界戦実現に至りました。

日本でのプロボクシングの伝統・格式の違いから、他競技との壁は出来たものの、競技性の面白さでは女子キックボクシング系競技も上昇気流に乗り、2000年代後半にはリトルタイガーやRENAのデビュー。幼少期からの育成時代に入ると、伊藤紗弥が4歳から男子に混じっての練習で力を付け、2015年には16歳で32歳のリトルタイガーから世界王座を奪う成長ぶりでした。

◆世界フライ級チャンピオンRENAが切り開く“ツヨカワイイ”の時代

男女に関わらず、タイ国同様に幼少期から鍛えれば本当に強くなるという現実があり、「女がキックなんか……」と言われた偏見が完全に崩れた現在、今後のこの競技の在り方次第で、女子キックもより選手層充実に繋がるでしょう。キックボクシング系競技で現在そのトップにいるのはシュートボクシングの世界フライ級チャンピオンRENAで、メディアに取り上げられるのも“ツヨカワイイ”のが武器であります。

厳密な経緯には程遠く語弊もあるかもしれませんが、大雑把に歴史を追った女子キックの発展経緯でした。当初、マスコミの中にいちばん女子キックに偏見を持っていたのは、実は私自身であり、全日本キック時代、女子がメインイベントを張ったラスト3試合を取材せずに帰ったのはマスコミで私一人だったでしょう。

「大人げないことするなよ!」と元・日本フェザー級チャンピオンの葛城昇氏に窘められた次第ですが、後に知人のカメラマン菊地奈々子や、キックをやるとは思えなかった知り合いの一般女性が鍛え、プロ出場した影響や、過去記事にあるように、男女どんな選手もスタッフも、生涯で公式リングに立っていられる時間というものを貴重に思い、そこで悔いの無い実力を発揮出来るよう、反省を込めて願うこの頃であります。

女子ムエタイの新スター、伊藤紗弥(2016年3月21日)

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』
 
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SMAP伝説の番組『SMAP×SMAP』は最終回をどう迎えるか?

「ここにきて『SMAP×SMAP』(フジテレビ)の最終回が通常のルーティーンの最後の放送日ではなく12月26日ではなく、プレ大晦日、つまり12月30日のスペシャル特番になりそうなのです」(芸能関係者)

 
SMAPアーカイブス コンサート編(ジャニーズ研究会)

関西テレビの福井澄郎社長は11月1日、秋の社長会見をでSMAPの12月31日解散に伴い、フジテレビと共同制作してきた『SMAP×SMAP』が12月26日に最終回を迎えることに「番組はいつか終わる。大きな番組にふさわしいフィナーレになってほしい」と話した。

この最終回がSMAPの5人が集う、解散の場となるとの見方も広がっていることを問われると「番組は生き物なので、こうという決めつけはしないし、私から注文はつけていません」と意味深にコメントした。「あくまでSMAPのメンバーと、現場の制作陣がこうしようぜ、という考え方でやっていただければ」と語った。

ここにきて、『SMAP』のメンバーたちは中居正広が各メンバー間の調整にはいり仲直りのために動き「最後くらい普段通りにやろうぜ」と、『エンディング』をどうするか話始めたとも。

「そのメンバーたちとの話合いでは、一緒に歌うのは難しいが、だれかビッグなゲストを交えれば、という条件がついて最後の歌のコーナーが検討されつつある。『5人だけで一緒に歌うのは難しい』という香取慎吾から出て、ゲストを呼ぶ話が前向きに転がっていったようです」(スタイリスト)

 
SMAPアーカイブス イベント編(ジャニーズ研究会)

ファンたちはツイッターで「スマスマでカウントダウン!!とかだったら嬉しい話だけど、(12月)26日ではなく前週に繰り上げ最終回とかはつらいわ」「スマスマの最終回は森くんを含めた6人で旅して思い出を語ってほしい」「最終回は事務所の後輩はもちろんのことさんまやタモリ、ナイナイ、AKBとかSMAPにお世話になった方々で盛り上げてほしいもんだ」「最後はマッチ(近藤真彦)が見たい」などなど最後のゲストに対する期待値は高まっている。

たしかにカウントダウンでSMAPが散るのは美しい。だが例年、フジテレビは「ジャニーズカウントダウン」として、ジャニーズのタレントが勢揃いして歌う年越しが恒例化。この枠をどかしてまで大晦日に放送するメリットはフジテレビにはない。

「フジとしては、現実的には、12月30日あたりに『SMAP×SMAP』の特番を放映する路線でいくでしょう。そもそもNHK籾井会長が無理くりに宣言した今回の“SAMP紅白出演騒動”は籾井会長が自身の会長再選を狙ってぶちあげた政治的なもの。水面下では、ジャニーズ事務所とNHK側の交渉が始まりましたが、ジャニーズ側が『向こう5年間、紅白の司会はジャニーズのタレントで『BSも含み、ジャニーズの冠番組を2つ作ってほしいとジャニーズ側が要望した』などとも伝えられ、いかにも『それは無理』とNHKが音をあげそうな条件が提示され『不可能』という結果となったことが大晦日にスマスマの特番が登場する憶測を広げたのでしょう」(芸能ジャーナリスト)

ただ大団円をめざす『SMAP×SMAP』の収録は、歌の共演者としてファンが納得の大物を制作サイドが呼べるのか「最終ゲストのブッキング」については今度はNHKではなくフジテレビ、とりわけ制作を担当する関西テレビのスタッフがオファーに苦労しそうだ。

 
[増補新版]ジャニーズ50年史(ジャニーズ研究会)

「いまから大物アーティストに年末のオファーをするのは至難の業。『SMAP×SMAP』に楽曲を提供してくれたアーティストや、海外アーティストなども含めて縦横無尽にオファーしないとならないでしょう。しかもファンが納得しないといけない」(同)

スガシカオは楽曲を提供した『夜空のムコウ』について「もう封印する」と宣言。槇原敬之は何回も「年末はゆっくりしたい」として紅白を辞退した経緯があるとされる。それではレディガガ級の大物を海外から呼びたいが、終わる番組に予算は使えない。

「いっそのことかつて出てくれたゲストを30人くらい出していっせいに歌えばいいのではないかと案も出ているが、今、メンバー間が険悪なのに出たがるアーティストは皆無。料理コーナーにフジテレビの男性アナウンサーを呼んでお茶を濁しているくらいですから。大物にオファーが断られると、またネタになるのでそれも怖いでしょう。どう転んでも茨の道になりますね」(放送作家)

フジテレビに『SMAP×SMAP』の最終回は通常の12月26日ではなく12月30日に特番で、という話が出ているが」と聞いたが「まだ決まっておりませんので」とのこと。
最後まで「SMAPの伝説の番組『SMAP×SMAP』の最後の場面をどう迎えるか」は難産となりそうだ。

(伊東北斗)

とどまることなく繰り返される芸能人の薬物事件! 過去から最近の事例まで網羅した決定版!『芸能界薬物汚染 その恐るべき実態』
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)
 
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『反差別と暴力の正体』残部僅少!M君裁判当日に表れた彼らの焦り

 
 

 
好評を頂いている『反差別と暴力の正体』の在庫がついにゼロになった。残りは書店でまだ売れておらず、あなたに買われることを待っている残部少々である。やや自慢のようになるが、増刷をかけなければ『反差別と暴力の正体』は、近く必ずプレミア価格が付与され、ネット上で取引されることになるだろう。

ここでは詳述しないが、直接、間接の「反発」も今回は散発的に見られた(見当違いの指摘がほとんどではあったが)。また11月28日大阪地裁で行われたM君が李信恵氏をはじめとして5氏を訴えた裁判の開廷前に、廊下で開廷を待っていると、被告(反訴原告)の伊藤大介氏がM君に近づき「何を気持ち悪い視線で見てるんだ!」「メンチ切ってるんじゃないよ!」と毒ついてきた(「M君の裁判を支援する会」ツイッターより)のも、追い詰められた彼らの焦りの表れといえよう。

 
2016年11月28日付け「M君の裁判を支援する会」ツイッターより
2016年11月28日付け神原元弁護士ツイッターより

沖縄、高江で抗議行動に参加していたとされる、しばき隊のメンバーが次々に逮捕されている。中には東京で沖縄県警に令状逮捕され、沖縄まで移送されたと言われている人物もいる。

鹿砦社特別取材班は沖縄県警の、この逮捕弾圧を糾弾し、被逮捕者の早期釈放を求める。逮捕された人間がしばき隊の人間であろうが、なかろうが権力の弾圧に与するような姿勢を鹿砦社は断じて取らない。沖縄現地の闘いと連帯し、不当長期勾留が続く山城博治さんの奪還同様に、しばき隊であろうが逮捕されている人々の奪還も求める。

まかりまちがっても「逮捕してくれてお巡りさんありがとう」などといった、社会運動の大原則を踏みにじる言動に鹿砦社は1ミリも与しないし、認めない。しばき隊にも人権があり、権力からの不当弾圧には、正面から抗議し被逮捕者の奪還を戦うべきだと考える。

しかし、ここで考えてほしいのは、鹿砦社の原則的な立場と、しばき隊がいまだに拘る言説の軽薄さの差異である。のりこえネットTVでは現地レポーターとして横川圭希氏などまで登場するようになっているが、横川氏は昨年経産省前で3名が不当逮捕された際、勾留理由開示公判のあと知人たちに「警察の逮捕には全く問題はなかったんだから」、「救援連絡センターがその場面の動画を上げるなって言ってきた。わけわからねぇ」と発言していた。

訳が分かっていないのは横川氏である。有料メルマガを配信し、いつのまにかしばき隊の隊列に加わった横川氏は、いまだに、いい歳をして〈権力対反権力〉の基本的構図すら理解できていないようだ。のりこえTVに出演した横川氏や現地での行動報告者の発言には司会の辛淑玉氏ですら「今何を言っているのか見ている人にはわからないと思うんだけど」と、ムッとして発言の要領の悪さを指摘される一幕もあった。

 
 


◎[参考動画]のりこえねっとTV「-高江特派員報告-とことんノーへイト!」(のりこえねっとTube 2016年11月22日ライブ配信)

相変わらず分かっていないのだ。極々基礎的なことが理解できていない。結果的にそれが沖縄現地の人々の足を引っ張ることに繋がってはいまいか。しばき隊連続逮捕劇が意味するも、それはもう権力はしばき隊が不要になった。いや邪魔ですらあるから「一掃してしまおう」との意思だ。本気になれば権力は遠慮などしない。

数年にわたり警察権力、なかんずく公安警察と懇ろであったしばき隊には、つけが回ってきたということだ。国会前で闘う学生や市民を「あいつら過激派だから逮捕してくださいよ」と警察に懇願した、あの許しがたい大罪が、今警察の翻意によって、しばき隊に襲い掛かっているのだ。彼らは可及的速やかにこれまで展開してきた運動の過ちを反省し、総括すべきだろう。

問題とする社会現象のすべてに「ヘイト」の冠をつけて語ろうとする無理無茶に早く気が付くべきだ。綱領なき(しかし暗黙の病理的体質を持つ)運動は、一度解体をして再構築するしかないだろう。

そうでなければならない理由のカギが『反差別と暴力の正体』には詰め込まれている。残部僅かである。一刻も早く書店へ!

(鹿砦社特別取材班)

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)

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《本間龍11》 元広告屋が見た「ファブリーズVSくさや」CMの問題点

今回は、ネット上で今ホットな話題となっている、消臭・芳香剤「ファブリーズ」と伊豆諸島の特産品「くさや」を対決させたCMが制作され、地元民から怒りを買っている、という件について書いてみたい。

 
 

◆くさやの臭いを「阿鼻叫喚の地獄」と称する感覚

私は未見だが、このCMは昨年からP&Gのサイトにはアップされていたらしい(現在は削除)。日刊ゲンダイの記事に拠れば、「くさや」だけのボックスと「くさや」と「ファブリーズ」が入ったボックスが用意され、CM出演者がにおいを嗅ぎ分けるという内容。「くさや」の匂いを嗅ぐシーンでは、出演者たちが顔を背けながら「えっ、スゴイ臭い」「何コレ」「くっさいですね」とその強烈な匂いを強調し「あまりの臭さに阿鼻叫喚の地獄と化すラボ内」という強烈なナレーションが流れる。

一方、ファブリーズが置かれたボックスに場面が変わると、「全然臭わない」「こんなに消えるんだ、スゴイ」と今度は全く変わって次々と称賛の声が上がる。「かくしてファブリーズはくさやのにおいに打ち勝つことができた。検証成功。ファブリーズの勝利」と締めくくられるという内容。

 

◆コンプライアンスに抜かりないはずの多国籍企業P&Gがなぜ?

これだけでもトンデモな内容だと分かるのだが、まず私が驚いたのは、これが「P&G」の作品だったことだ。同社は180カ国を超える国々で事業を展開、売上高も8兆円を超える世界最大の日用品メーカー。ファブリーズだけでなく、「アリエール」「パンパース」など数多くのブランドを有し、そのマーケティング力はMBAの授業などでも高く評価されているという。

もちろんコンプライアンスやガバナンスに関しても抜かりのない企業だ。広く様々な国で稼ぐ外資は、特にヘイトや国別の文化伝統への中傷などに敏感であり、企画段階で厳しくチェックされるから通常はこのような作品は作らない。それが今回、評判が良いからと言ってテレビCMも流しはじめたところ人目に止まり、騒動になったようだ。

 
 

◆固有の食文化への無神経な演出に唖然

まず内容的に言えば、くさやという日本古来の食品文化にファブリーズを掛け合わせるというその無神経な演出に唖然とする。たしかにくさやは強烈な匂いを発するが、それはその食品独特のものであり、匂いがあってもそれを作りたい、食したいという人々によって受け継がれてきた。つまり、その伝統を守り続けている人々が存在するのであり、今までファブリーズがCMで訴求してきたタバコ臭や汗の匂いなどとは根本的に異なる物である。

しかもくさやの匂いは、それを食べようと思わない人の前には通常絶対に表れない。要するに、もしブルーチーズやシュールストレミングに掛け合わせたらどうなったか、と考えると分かり易い。当然ながらその産地の生産者や愛好家から猛烈な批判や抗議を受けただろう。くさやの産地である八丈島の八丈町議会議員、岩崎由美氏の発言が全てを物語っている。

「漁師や生産者はもちろん、くさやを好きな人が見たらどう感じるか、ショックで悲しむのが分からないのか、それを考えずに作っているようにしか思えません。(中略)300年以上にわたって守り継いできた伝統食を、こんなくだらない演出で侮辱するのは許せない。地元の貴重な産業にどれだけの影響力を及ぼすか、想像できないのでしょうか。意図はなくても結果としておとしめています」

良識のある人間なら誰でも同じように考えるだろうし、こんなことになるのを予測できないのでは、CM制作者として失格である。また、P&Gは直ちに関係者に謝罪すべきだ。


◎[参考動画]ファブリーズvsくさや CM (チャンネル2 ワクワク2016年11月27日公開)

◆博報堂はなぜ、事前に問題をチェックできなかったのか?

実はこのCMの制作は博報堂だった。正確に言うと、P&Gの日本での窓口であるTBWAが博報堂と組んで受注し、MONSTERという制作会社がCMを制作した。2つ目の驚愕は、博報堂がこんな内容をチェックできなかったという点だ。

通常、CM制作の最終責任者はCD(クリエイティブ・ディレクター)だが、内容に法律的な問題(虚偽、中傷、いわれなき批判等)がないかどうかをチェックするのは営業の仕事だ。時には法務室などにも絵コンテをまわし、法務的側面から内容チェックをすることもある。クリエイティブは自由な発想が命だから様々な突拍子もない案を出してくるのが仕事で、時には無意識に今回のような伝統や生産者を侮辱するような内容を書いてくることがある。それを見つけ、問題になる前に修正するのが営業職に科せられた非常に重要な役目なのだ。

それがこのCMでは、結果的にノーチェックでパスしてしまっている。法務チェックをすれば、生産者に対する中傷や妨害に繋がる微妙な内容だということがすぐ分かったはずなのに、それを省略したのか。いやいや、あのP&Gが相手なのにそれも有り得ない。だとすれば、リスキーな内容であることを承知でP&GがOKしていたということになる。

 
[追記]この問題でP&Gは11月28日、同社製品HP上に上記の謝罪文を掲載した。電通に比べると同社の手際の良さは見事だ

 

◆「うなぎ少女」CMも博報堂だった

そういえば、うなぎを少女に擬人化して気味が悪い、性差別だと騒ぎになった鹿児島県志布志市の「うなぎ少女」CMも博報堂だった。あれももし私が担当営業なら絶対に通さないような、ハイリスクな内容だった。どうも最近、同社(営業)のCMチェック能力が落ちていると感じるのは、私だけだろうか。でも、これに関係する画像を消しまくっているのは手が早い。

そしてさらにもう一点。大手メディア、特にテレビ局はこの問題を全く報道していない。それはもちろん、P&Gが超巨大広告スポンサーであるからだ。電通はかなり叩かれたが、大きなスポンサーは批判できない、という不文律はいまだに健在である。


◎[参考動画]鹿児島県志布志市PR動画 「養って」( Commercial Japan2016年9月26日公開)

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

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『NO NUKES voice』第9号 好評連載!本間龍さん「原発プロパガンダとは何か?」

地獄に堕ちた「AV界の寵児」バッキー栗山にもあった冤罪疑惑

出演強要被害を訴える女性の声を伝えるなどAVを「社会問題」として扱った報道が増えている。そんな中、私の脳裏に蘇ってきたのが、10年余り前に「ガチンコ」の輪姦AVが強姦致傷の容疑で立件されて世を騒がせた「バッキー事件」だ。あの事件の「首謀者」とされるバッキー栗山に「冤罪疑惑」があることを、あなたはご存じだろうか――。

◆地獄に堕ちた「AV界の寵児」の腑に落ちない裁判結果

バッキー栗山こと栗山龍(当時40)は2000年代初頭、AVメーカー「バッキービジュアルプランニング」(以下、バッキー社)を設立。それ以前の経歴は謎めいていたが、アメックスのブラックカードを2枚所有する大金持ちというフレコミで、会長の自分自身が広告塔となって会社を売り出した。当時、男性週刊誌やスポーツ紙では、同社の作品や企画を紹介した記事がすさまじい頻度で掲載されており、栗山はまさに「AV界の寵児」だった。

しかし2004年になり、同社がウリにしていたガチンコ輪姦AVの撮影中、女優が肛門などに重傷を負う事故が発生。それ以降、水責めや強制的な飲酒など、同社の非人道的な女優の扱いが社会問題になり、ついに警察も本格的捜査に乗り出した。そして強姦致傷罪などで起訴され、「首謀者」とされた栗山は07年12月に東京地裁で懲役18年の判決を受ける。こうしてAV界の寵児は地獄に堕ちた。

ただ、それ以前に栗山と会い、言葉を交わしたことがある私は、裁判の結果が腑に落ちないでいる。

栗山の裁判が行われた東京地裁

◆子供のように澄んだ瞳

私が栗山と会ったのは03~04年頃、週刊誌の仕事で同社の「AVの虎」というシリーズ作品の撮影現場を取材した際のことだ。この作品は当時の人気テレビ番組「マネーの虎」をパクったもので、参加者がプレゼンするAVの企画が面白ければ栗山が金を出し、実際にAVを撮らせるという内容だ。正直、作品の詳細はまったく覚えていないが、この時一度会っただけの栗山の印象は今も記憶に鮮烈だ。

「栗山です。よろしくお願いします」

それは、とてもソフトな声だった。栗山は金髪に日焼け顔、華奢な体をホスト風のスーツに包み、見た目こそいかにも怪しげだが、物腰の柔らかい人物だった。名刺交換した時、屈託のない笑顔と子供のように澄んだ瞳には、不覚にもドキリとさせられた。栗山はなんとも言えない人を惹きつける力を持っていた。

この時、もう1つ印象的だったのが、栗山が制作スタッフに演技指導されながら「バッキー社の会長」を演じていたことだ。栗山はこの日、現場で制作スタッフに「こんな感じでいい?」と聞きながら、札束を鷲掴みにしてカメラをにらみつける“決めポーズ”をつくっていたのだが、何もかもスタッフに任せて言われるままに演技していた。私が裁判の結果が腑に落ちないのは、この時の彼の様子をよく覚えているからである。

というのも、裁判で栗山は、「バッキー社には資金を提供していただけで、作品の制作には何ら関与していない」と無実を訴えていた。マスコミはこの主張を歯牙にもかけなかったが、私には、現場で目撃した栗山の様子からすると、裁判での主張通りにバッキー社において、「金は出すが、口は出さない」タイプのオーナーだったとしても何ら不思議はないと思えるのだ。

ネット上には、今もバッキー作品を販売するサイトが存在

◆真っ二つに割れていた関係者たちの証言

しかも、実は裁判では、関係者たちの証言が真っ二つに割れているのである。共犯者とされた制作スタッフたちは、栗山が「首謀者」だったという趣旨の証言を重ねた一方で、バッキー社の営業や内勤の社員たちは「栗山は月に数回出社するだけで、出社しても仕事の話はしなかった」と全面的に栗山のAV制作への関与を否定しているのだ。

どちらの証言が正しいかは、私も正直、現在把握している情報だけでは断定しかねる。しかし、一般的に複数犯の事件では、罪のなすり合いなどで事実関係が歪みがちだ。また、このような組織ぐるみの事件では、警察や検察は組織の中で少しでも地位が高い人間を罪に問いたがるものである。少なくとも、世間の多くの人が思うほどには、栗山の有罪は絶対的ではないと私は思っている。

実は数年前、私は栗山本人に取材したいと思い、バッキー社の後継会社とされるAVメーカーに連絡し、どこかしらの刑務所で服役しているはずの栗山への仲介を依頼したことがある。その時、電話口の社員は「私自身は当時会社にいなかったので、当時から会社にいた人に話をしてみて、何かわかればお返事します」と丁寧な対応だった。しかし結局、返事をもらえずにそれっきりになっている。

実際、どうだったのだろうか――。AVを「社会問題」として扱った報道が増える中、私はあの日の栗山の笑顔や澄んだ瞳を思い出し、ふと立ち止まって考えている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
 
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出口流「ビジネスに効く読書術」に参加した

 

10月22日、土曜日。午後2時から行われた出口治明氏(ライフネット生命株式会社代表取締役会長)の講演が東京都立中央図書館にて開催された。知る人ぞ知る知識人である出口氏は、読書家であり、知識人だ。歴史から経済から歴史からその造詣は深く、あまたの著作もある。その出口氏はネットのみで申し込める保険会社を立ち上げたのも見事であるが、これからの日本を憂いて嘆き節になっている点には共感した。

出口氏は「2030年には、労働人口が800万人も減り、あと50年で65才以上が4割を超える」として、人口が増える社会を望んでいる。また、「ドイツ人は年間1500時間の労働でGDPの成長率が昨年1.45%あるが、日本では2000時間も年間働いているのに成長率は0.5%しかない」と指摘した。その上で「働きかたが変わってくる」と指摘している。もう9時にタイムカードを押してひたすらに残業する時代ではない。効率が求められるし、「残業」は罪ですらある。

また出口氏は、成長する要素として、①人から学ぶ、②本から学ぶ、③旅から学ぶことが重要だと指摘した。①は、とにかく誘われたら、人に会うことが大切で、交流会や勉強会には積極的に参加せよと。②は、とにかく古典を読むことが大切で、たとえばアダム・スミスの本は何度も書き直しているから古典として読みやすいと。そして③は、旅とは旅行ということのみではなく、知らない街を歩いたり、博物館に出向いたり、「知識を広げる」ことが大切なのだと説く。

 

観点がとても参考になったのは、日本人が英語が得意になるのには経団連の会長が「TOEFLの点数がない者は企業で面接しない、と言い切ればいい」という論理だ。これには、目から鱗が落ちる思いだった。まあ、講義の中身はチャンスがあればここで小出しにして紹介するが、とりもなおさず教養人の「頭脳」に触れることは重要だ。

「古典を読んで分からなければ、自分がアホだと思いなさい。新著を読んで分からなければ、著者をアホだと思いなさい」という言葉が印象に残った。古典はかくもわかりやすく書かれている。出口氏は古典として「東方見聞録 マルコポーロの旅」やアリストテレスの「ニコマコス倫理学」などもあげられている。ぜひ読んでみたい本だし、また出口氏の講演は聞いてみたい。ただし抽選で当たるのがたいへんなほど盛況だが。

▼小林俊之(こばやし・としゆき)
裏社会、事件、政治に精通。自称「ペンのテロリスト」の末筆にして松岡イズム最後の後継者。師匠は「自分以外すべて」で座右の銘は「肉を斬らせて骨を断つ」。

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総合格闘技「BFC」──有力選手の「体調不良」引退で多難な人気復活への道

「ヘビー級の体重を維持できなくなってしまった……」

川口雄介選手

9月29日、総合格闘技「BFC」(10月10日 ディファ有明)の対戦カード発表会見で、異例の“しょんぼり”コメントをしたのが無差別級の試合に出る川口雄介。海外強豪相手にやってきたことで戦績は14勝12敗2分とイマイチだが、DEEP初代メガトン級チャンピオンとして、日本の総合格闘技ヘビー級のトップファイターとして戦ってきた有力選手だ。

しかし、36歳という年齢もあり少し前に「あと7試合で引退」を決め、これまで2勝3敗。6試合目が今回の瓜田幸造戦なのだが、会見では「実は引退を決めたのは年齢より体調面なんです」と吐露。

「糖尿で入院したところ体重が90キロをきってしまい、ヘビー級の体重を維持するのが困難になってきたんです。今年1年をなんとか頑張ろうと決意しました」

瓜田幸造選手

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(伊東北斗)

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