江幡ツインズは、キック界の大黒柱! SOUL IN THE RING.15

右ストレートで3度目のダウンへ繋ぐ江幡睦

後楽園ホールと両国国技館でそれぞれが勝利を上げた江幡睦と塁。
睦はいつもよりは格下のトートーとの対戦でしたが、そのトートーの蹴りと繋ぎ技は素早く、油断はならない。対する睦はいつもどおりながら様子見のローキックからパンチへ繋ぎ、隙を見つけるといずれも右ストレートが決め手となる3ノックダウンを奪って余裕のKO勝利。

緑川創のローキックでサグントーンにダメージを与える

両国国技館での「KNOCK OUT」興行では、塁が宮元啓介(橋本)と激闘の末、判定勝利。そのまま後楽園ホールへ駆けつけ睦のセコンドに着く慌しさ。重森陽太(伊原稲城)も「KNOCK OUT」興行に出場し、マキ・ピンサヤーム(タイ)に判定勝ちした後、後楽園ホールへ来場。江幡ツインズとスリーショットとなりました。

緑川創も第1ラウンドに様子見から左フックをボディに炸裂させダウンを奪い、第2ラウンドに右ストレートでダウンを奪ったところでタオル投入されKO勝利。

渡辺健司vs大和侑也戦はちょっと興味深いカードとなった試合でしたが、渡辺のいつもの下がってかわす戦法に、正攻法の大和は持ち味を活かせない。自分の距離を見極めると渡辺のローキックやフック系パンチのしぶとい戦法で判定勝利を掴みました。

終盤にパンチで出ていく大和侑也だが渡辺攻略は難しかった

斗吾が第1ラウンドにパンチで斉藤をグラつかせるも、その追撃が足りず、その後のダメージから回復した斉藤が長身を活かした前蹴りが有効的に使われ、首を組んでのヒザ蹴りをしつこく繰り出す。パンチで攻めた斗吾が辛うじて引分けに持ち込んだ印象。2014年3月に対戦した時は斗吾がヒジ打ちでTKO勝利しているが、今回は斉藤が持ち味を活かした試合でした。

長身の斎藤智宏前蹴りが斗吾を突き飛ばす

瀬戸口勝也は皆川の若さとスピードに出遅れ、皆川は若さと攻めの打ち終わりにフォローを入れる追撃の見映えも良かったが、瀬戸口の強打が皆川のリズムを崩し、ベテランの技で勝利を掴みました。

瀬戸口勝也の強打が若い皆川をたじろがせる

◎SOUL IN THE RING.15 / 2017年12月10日(日)後楽園ホール17:00~20:10
主催:藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆メインイベント54.5kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/54.5kg)
VS
トートー・ペットプームムエタイ(タイ/53.9kg)
勝者:江幡睦 / KO 1R 2:30 / 3ノックダウン
主審:仲俊光

右ストレートで2度目のダウンを奪う江幡睦

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)vsサグントーン・トー・ポンチャイ(タイ/68.0kg)
勝者:緑川創 / KO 2R 1:44 / カウント中のタオル投入
主審:桜井一秀

緑川創のボディへ右ストレートで上下どこでも攻めどころを捉えていく
第8試合勝者、ジョニー・オリベイラ。ラウンドガールもクリスマスバージョン
第7試合勝者、本田聖典
第6試合勝者、古岡大八
第4試合勝者、リカルド・ブラボー

◆68.0㎏契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城/67.8kg)
VS
大和侑也(元・WBCムエタイ日本同級C/大和/67.8kg)
勝者:渡辺健司 / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:宮沢30-28. 仲30-29. 桜井29-29

◆73.5㎏契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)
VS
斎藤智宏(Ys.k KICKBOXING/73.5kg)
引分け / 0-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-29. 仲29-29. 桜井29-29

◆フェザー級3回戦

日本フェザー級3位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/56.8kg)vs同級6位.皆川祐哉(藤本/57.0kg)
勝者:瀬戸口勝也 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:仲30-29. 桜井30-28. 宮沢30-28

◆ライト級3回戦

日本ライト級4位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/61.0kg)
VS
同級6位.大月慎也(治政館/61.2kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定2-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-28. 桜井29-28. 宮沢29-28

◆ミドル級3回戦

日本ミドル級2位.本田聖典(伊原新潟/72.3kg)
VS
萩本将次(CRAZY WOLF/71.0kg)
勝者:本田聖典 / TKO 3R 2:20 / 双方ともヒジ打ちによるカット、ドクターの勧告を受入れ、萩本将次をストップ、本田聖典は続行可能。
主審:宮沢誠

◆54.5㎏契約3回戦

日本バンタム級3位.古岡大八(藤本/54.5kg)vs鰤鰤左衛門(CORE/54.5kg)
勝者:古岡大八 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井30-29. 宮沢30-28. 仲30-27

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.渡邉涼介(伊原新潟/60.8kg)vsTASUKU(CRAZY WOLF/60.7 kg)
引分け / 三者三様 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 宮沢28-30. 仲30-29

◆68.0㎏契約3回戦

リカルド・ブラボー(アルゼンチン/67.6kg)vs山本ジエゴ(ウルブズスクワット/67.3kg)
勝者:リカルド・ブラボー / TKO 1R 2:23 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

◆フライ級2回戦

山野英慶(市原/50.8kg)vs空龍(伊原新潟/50.6kg)
勝者:空龍 / TKO 1R 1:20 / カウント中のレフェリーストップ
主審:仲俊光

◆女子52.0㎏契約2回戦

白石瑠里(藤本/52.0kg)vs加藤みどり(エイワ/51.8kg)
勝者:加藤みどり / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:桜井18-20. 仲18-20. 宮沢18-20

◆63.0㎏契約2回戦

KAZUMA(揚心/62.7 kg)vs中田憲四郎(藤本/62.3kg)
勝者:KAZUMA / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名20-19. 仲20-18. 宮沢20-18

《取材戦記》

藤本ジムでの緑川創は勝次とともにエース格。8月に「KNOCK OUT」出場も宮越宗一郎(拳粋会)にダウンを奪われ判定負けをしていますが、その後再起2連勝。来年こそは飛躍しなければならない、何とかビッグタイトルに挑んで欲しいところです。

2018年新春興行は1月7日(日)に後楽園ホールで治政館ジム興行「WINNERS 2018.1st」が開催されます。昔の新春興行は元旦から1週間以内に日本系、全日本系のタイトルマッチが豪華に行なわれたものですが、現在は国内主要タイトルだけでも昔以上に多くあるのに新春に限らずタイトルマッチは少ないのが現状。そして「KNOCK OUTに出場したい」と言う選手も多く、目指すはビッグイベント出場へ、価値観が変化してきた現在、来年もその勢いが増すことでしょう。

両国と後楽園で、江幡塁、重森陽太、江幡睦、勝利のスリーショット

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

三上治さんの『吉本隆明と中上健次』〈3〉「大衆の原像」と「路地」の基層

三上治さん

吉本隆明の一番弟子であり、また元ブント(共産主義者同盟)叛旗派の「親分」でもあり、さらに現在ではテントひろばメンバーとして活動を続ける三上治(味岡修)さん。2017年9月、彼の新刊『吉本隆明と中上健次』(現代書館)が上梓された。三上さんには吉本・中上との共著もあり、また雑誌『流砂』(批評社)でも繰り返し吉本などについて論じてきたのだ。

そして10月20日、「三上さんの『吉本隆明と中上健次』出版を祝う会」が、小石川後楽園涵徳亭にて開催された。今回、この書籍と「出版を祝う会」について、3回にわたってお届けする。今回はその最終回である第3回目だ。

◆「真実の世界が表現されることは、政治的な表現では不可能」

案内文は以下の通りだ。

「我らが友人、三上治さんが『吉本隆明と中上健次』を刊行しました。彼は今、経産省前での脱原発闘争や雑誌『流砂』の刊行を継続しながら、『戦争ができる国』への足音が近づくなか、それを阻止すべく奮闘しています。指南力のある思想がみえなくなっている現在、思想の存在と可能性を問う試みをしているのだと思います。

何はともあれ、出版のお祝いをしたいと思います。安倍政権のなりふり構わぬ解散の喧噪をよそに、都心の庭園を眺めながら歓談しようではありませんか。どうか万障お繰り合わせの上、お出かけください。心よりお待ち申し上げます。」

淵上太郎さん(「経産省前テントひろば」共同代表)

発起人は伊藤述史さん(東京女学館大学・神奈川大学講師)、今井照容さん(評論家・編集者)、菊地泰博さん(現代書館代表)、菅原秀宣さん(ゼロメガ代表取締役)、古木杜恵さん(ノンフィクションライター)。テントひろば、元ブント、元叛旗派のメンバーから、出版・文学関係者、評論家まで、三上さんの幅広い「友人」たちが、新刊の出版を祝うべく集まった。

◆「何のために生きるのか」という問い

10月20日の「三上さんの『吉本隆明と中上健次』出版を祝う会」では、多彩な顔ぶれによる挨拶がおこなわれた。

9条改憲阻止の会やテントひろばの仲間である淵上太郎さんは、「『味さんは、革命家ですか、評論家ですか』という質問をしたところ、『私は革命家だ』との答えを得た」と振り返る。また、「互いにテントに足を運ぶのは、吉本さんの現場主義と密接に連動するのではと最近改めて思う」とも語った。

橋本克彦さん(ノンフィクション作家)は、「三上さんは刑務所にいた頃、吉本の『共同幻想論』(河出書房新社)をボロボロになるまで読み、育ってきた」と伝える。

橋本克彦さん(ノンフィクション作家)

そして三上さんは、「若い頃、僕らは何のために生きるのか、どう生きたらいいのかについて、ずっと悩んでいた。これに回答を出してくれるのではないかと思い、吉本にこの質問をぶつけたら、彼は下を向いて困ったような感じでありながら、共同性と個人性に関する思想の話をした。それをまどろっこしいと思って聞いていたが、やはり共同性のこと、詩(作品)のこと、自分の身体や病気のこと、連れ合いや孫など家族のこと、政治のことなどを並行して考えながらやっていくしかないということを吉本さんはいったのだろうと改めて考えている。そして、吉本さんも回答を出しきれなかったのだろうと思っている」と語った。

また、中上については、「悩みの中にある人間が大事で、それが人間の本質であることを示したのではないかということに安心・共感してきた」という。

そして、二人の共通性として、次の言葉も口にした。

「吉本も中上も、積極的に他者に関わる形の自意識のあり方が苦手というか、どちらかというと受け身の方でした。これは人間の他者との関係でもありました。その受け身の意識という問題を抱えていた。これは自我の問題でもあるのですが、受け身の在りようを日本人の意識の形として否定的ではなく考えようとしました。これは日本人の歴史的な在りように関わることでそこで近代自我と格闘したのです。それを最初にやったのは漱石でした。夏目漱石は当時、ヨーロッパと遭遇し、意識としての人間のあり方を考えたのではないかと思います。この自意識についてまともに考え、書いたのはその後は太宰治です。自意識を積極的に展開することに拒絶反応があり、受け身の意識の形の人間の価値や意味をうちだそうとして、吉本と中上は苦しんだのではないかと思います。そういう人間に対する理解ややさしさがあったのです。吉本の大衆原像論や中上の路地論には根底としてそれがあったように思います。僕は、吉本や中上と会って、自由や安らぎを感じた。それにはこれがあったのだと思いますが、若い世代に伝わるのだろうかと、本書を書きながら思いました。もう少し違う形で書ければという気持ちが残ったところです」

福島泰樹さん(歌人)

◆「真実の世界が表現されることは、政治的な表現では不可能」

祝う会の後半では、福島泰樹さん(歌人)による「短歌絶叫コンサート」もあった。

そして、足立正生さん(映画監督・元パレスチナ解放人民戦線ゲリラ)は、「『人間は幻想の存在だ』と60年代から世間を惑わした吉本と中上について書いているが、もっと悪いのは味岡。自然と非自然(倫理学で、道徳的な判断の対象となるのは自然的事実・事物によって構成され、快楽や進化を善と考える自然主義と、自然的対象・存在ではないとする非自然主義)、永久革命論(社会主義革命は一国内では不可能で、世界革命にいたって初めて可能になるとする理論)。そういう具合にまとめるのではないが、三上がまとめねばならない。中上や吉本は中間点。墓でなく、生きた革命の博物館がここにある。アジテーターはオレでなく味岡。今後も書くということは、永続革命をやるということだ」とエールを送る。

菅原秀宣さんは、「弟子として、味岡さんからは、人のことを下げて自分を上げない、人を排除しないことを教わった」という。

足立正生さん(映画監督、元パレスチナ解放人民戦線ゲリラ)

伊達政保さん(評論家)は、「ジョンレノンはニューヨーク・コンサートで『叛』の字の入ったヘルメットを被った。『イマジン』は共同幻想論」と三上さんの功績を告げた。

また、金廣志さん(塾講師・元赤軍派)は、「連赤(連合赤軍)の後に一五年間逃亡。いちばん読み、苦しいときに助けになったのは、味さんの文章だった。味さんだけが自分の言葉を使った」と評価する。

私は三上さんと出会い、吉本隆明や谷川雁と出会った。記憶が正確でないかもしれないが、「自由を求め、あがき続け、日々を更新し続ける」という三上さんが伝えてくれた言葉は常に活動する私を支えてくれる。原発について、人間の存在について改めて問いかける本書。ぜひ手に取ってほしい。(了)

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[文]
1972年生まれ。フリーライター。労働・女性運動等アクティビスト。『現代用語の基礎知識』『情況』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』『労働情報』ほかに寄稿・執筆。
◎「山﨑博昭追悼 羽田闘争五十周年集会」(『紙の爆弾』12月号)
◎「現在のアクティビストに送られた遺言『遙かなる一九七〇年代─京都』」(デジタル鹿砦社通信) 

 
『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点 [報告]三上治さん「どこまでも続く闘いだ──塩見孝也さんの訃報に接して」他

三上治さんの『吉本隆明と中上健次』〈2〉『枯木灘』と世界の裂け目

 
三上治『吉本隆明と中上健次』(現代書館2017年9月)

吉本隆明の一番弟子であり、また元ブント(共産主義者同盟)叛旗派の「親分」でもあり、さらに現在ではテントひろばメンバーとして活動を続ける三上治(味岡修)さん。2017年9月、彼の新刊『吉本隆明と中上健次』(現代書館)が上梓された。三上さんには吉本・中上との共著もあり、また雑誌『流砂』(批評社)でも繰り返し吉本などについて論じてきたのだ。

そして10月20日、「三上さんの『吉本隆明と中上健次』出版を祝う会」が、小石川後楽園涵徳亭にて開催された。今回、この書籍と「出版を祝う会」について、3回にわたってお届けする。このテキストは、その第2回目だ。

◆「真実の世界が表現されることは、政治的な表現では不可能」

この3回分の原稿は、『NO NUKES voice』掲載予定が変更になったのだが、当初は中上について、あまり触れなかった。それは、中上の原発への言及は本書で特に記されていなかったからだ。ただし、本書の第4章は「中上健次へ」、第7章は「再び、中上健次をめぐって」の章タイトルがつけられている。たとえば4章では、「中上と三島の差異」として、三島由紀夫との比較が綴られているのだ。

そこでは、中上の長編小説『枯木灘』が取り上げられている。以下、『枯木灘』のいわゆるネタバレを含む。主人公・秋幸は海と山と川にはさまれた環境でありながらも食い扶持の得られない「路地」に生まれ育つ。彼は父・龍造を「蠅の王」「蠅の糞」と呼び、龍造は「一向一揆の苦しみを伝える」浜村孫一(鈴木孫一を指すとも)の子孫であると主張して碑を建てる。「蠅の王」といえば、ウィリアム・ゴールディングの小説が想起され、わたしもハリー・フック監督による映画化作品を観たことがある。秋幸は異母妹と知らず、さと子と関係を結んでしまうが、それに対して龍造は「しょうないことじゃ、どこにでもあることじゃ」と口にするのだ。秋幸は、この関係を含め、「誰にでもよい、何にでもいい、許しを乞いたい」と願う。そして彼は、浜村孫一を「男(龍造)の手から」「取り上げる」ことで「男を嘆かせ苦しめ」ようと考えもした。だが、「日と共に働き、日と共に働き止め、黙って自分を耐えるしかない」と思い、「徒労」を快と感じるような労働によって「無」になる日常を続ける。しかし、盆踊りの唄「きょうだい心中」が暗示するとおり、そして異母兄の郁男が秋幸も龍造も殺せず自死したことなどにも似たように追いつめられ、結局秋幸は異母弟の秀雄を殺してしまう。育ての親である繁蔵は、秋幸をかわいがってきた。ちなみに「きょうだい心中」は類似の歌詞を作者不詳とし、山崎ハコが曲をつけて歌っている。

▼三上治(みかみ・おさむ) 1941年、三重県生まれ。66年、中央大学中退。75年、共産主義者同盟叛旗派から離れ、雑誌『乾坤』を主宰し、政治評論・社会評論などの文筆活動に専念。編集校正集団聚珍社に参画し、代表を務める。同社を退職後、再び文筆の活動をおこない、「9条改憲阻止の会」で憲法9条の改憲阻止の運動を遂行。著書に『一九七〇年代論』(批評社)、『憲法の核心は権力の問題である──9条改憲阻止に向けて』(お茶の水書房)ほか多数

三上さんは、この作品と、三島の『太陽と鉄』を比較し、「秋幸は三島のこの世界を連想させるが、三島の人工性と違って、秋幸には自然性が感じられる分だけ魅かれるところがある」と述べる。『太陽と鉄』は未読で恐縮だが、吉本さん・中上さん・三上さんの共著『いま、吉本隆明25時』(弓立社)の中上健次「超物語論」の冒頭で吉本は「日本の物語は、よくよく読んでいきますと、人と人との関係の物語のようにみえていながら、大体人と自然との関係の物語です」と語っているのが興味深い。もちろん三上さんの「自然性」と吉本の示す「自然」に相違はあろうが、共通する部分もあると思う。

また、三上さんは、「真実を書くのは恐ろしいことである」として、「濃密な親子、あるいは兄弟関係、愛と憎しみとが表裏にある世界、この真実の関係性を表現したのである。これが中上の作品が現在でも色褪せず、輝きを失わない理由である」「真実の世界が表現されることは、政治的な表現では不可能である。それが言い過ぎなら部分的である。このことは確かであり、政治的解放が人間の解放にとっては部分的であるのと同じだ」と記す。これもまた、『いま、吉本隆明25時』の「超物語論」の後に登壇した吉本が「党派的思想というのは全部無効ですよ。真理に近いことをいったりやったりするほうが左翼ですよ」と発言していることと結びつく。

◆土地や血縁の呪縛

『枯木灘』から個人的に、田中登監督の劇映画『(秘) 色情めす市場』を連想した。人は、「血」や環境や条件を選んで生まれてくることができない。だが、それに抗おうとして生きる。しかし、抗おうとするほど、深くそこに飲み込まれていくのだろう。『枯木灘』で秋幸は、ある種の復讐を果たしたかもしれないし、せざるをえなかったのかもしれない。『(秘) 色情めす市場』でも、女性主人公が絶望したからこそ、あのラストがある。現在、貧困、環境による「不幸」、絶望は見えづらくなっているが、わたしは、このような世界と紙一重の世界に生きているという実感をもつ。ただし、『枯木灘』は、徹の姿で幕を閉じる。徹もまた土地や血縁の呪縛から逃れることはできないのかもしれず、奇妙な読後感が残るのだ。ちなみに龍造の視点で綴られる番外編『覇王の七日』も書かれた。

ところでわたしが好きな作家は、「無頼」で、世間的には「ダメな人間」というレッテルを貼られるような登場人物を描く作品を愛する。この登場人物たちは、時代や環境が変わろうとも、このようにしか生きられないのだろうと感じたりするのだ。いっぽう、中上作品の登場人物は皆、社会の被害者であるように感じた。ひとことで表現してしまうと薄っぺらで恥ずかしいかぎりだが、このあたりに中上さんが吉本さんや三上さんとつながったポイントのようなものがあり、当時はまたそのような人同士がつながる時代であったということでもあるのかもしれない。いずれにせよ、土地や血縁の呪縛のようなものに一時期恨みを抱いていた、そして社会運動を続けようとするわたしにも、中上作品は興味深いものであることはたしかだ。

◆24時間の世界と「25時間目」の世界との裂け目をどうするか

三上さんは『吉本隆明と中上健次』で、「日本国の『共同幻想』」を「超える共同幻想とは、日本人や日本列島の住民の幻想という意味である。文化といってもよい。大衆原像の歴史的な存在様式といってもいい」などと述べている。

『いま、吉本隆明25時』のイベント冒頭で中上は、「十代のころから吉本隆明を読んでいてずっと読み続けているのだけれども、吉本隆明という人間はもともとマルチプル(多様・複合的)なのだけれども、さらにもう少しいままでのレベルをメタのレベルみたいに展開しはじめた。それで吉本さんと突っ込んで話してみたいと思いました」「吉本隆明っていう存在は、もっと、こう、何か一つの事件なんじゃないか。あるいは、一つのプラトーを示している」「一人の思想家が、やっぱりマルチプルにものを考えていくっていうのは、やっぱりすごいことだと思うし、驚異だと思うんです」と挨拶している。そして彼自身は、この集会で、「超物語論」について語っているのだ。

また吉本は、「超物語論」の冒頭で、「典型的な中上さんの物語は、もの狂いの世界に集約されるべき心理的要素といいますか、狂いの要素っていうのが、死者の世界と前世の世界みたいなもののところへまで、拡張されている」ともいう。いっぽう中上は、物語というのは、「コロス(古代ギリシア劇の中で劇の説明をする合唱隊)の問題、あるいはポリフォニー(複数の独立したパートからなる音楽)の問題、それを同時にはらんでると思うんですよ。これは共同性の問題ですよね」と述べ、ミハイル・バフチンのドフトエフスキー文学は各人の思想や人格を尊重されているとする「ポリフォニー論」に触れる。また、質疑応答で島田雅彦が「乱入」するわけだが、これを今改めて読むと、自分の思想を問い直される。個人的には実は、ネイティブアメリカンの「グレイト・スピリット」に共感し、1人ひとりに内なる神が存在する、その内なる神同士を尊重するというコミュニティの考え方が、行き着いた先の2000年代、2010年代にわたしがしっくりくる考え方なのだ。だから、同世代にローカリゼーションや東アジア連帯、エコロジーなどの運動に携わっていく人が多いこともうなずける。そこに吉本は、最低綱領と最高綱領の話をもってくるわけだ。

『吉本隆明と中上健次』終章で三上さんが触れた、24時間の世界と「25時間目」の世界との裂け目をどうするかという、「25時間目」が革命を意味する時の課題。これに向き合うために、『吉本隆明と中上健次』『いま、吉本隆明25時』『枯木灘』を並べて読むということを試みてみた。道楽者仲間の通信読者の方がいらっしゃれば、おすすめの方法だ。感想やご意見もお聞きしてみたい。(つづく)

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[文]
1972年生まれ。フリーライター。労働・女性運動等アクティビスト。『現代用語の基礎知識』『情況』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』『労働情報』ほかに寄稿・執筆。
◎「山﨑博昭追悼 羽田闘争五十周年集会」(『紙の爆弾』12月号)
◎「現在のアクティビストに送られた遺言『遙かなる一九七〇年代─京都』」(デジタル鹿砦社通信) 

 
12月15日発売『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点 [報告]三上治さん「どこまでも続く闘いだ──塩見孝也さんの訃報に接して」他

《我が暴走11》マツダ工場暴走犯が第2弾手記で明かす犯罪者と獄中のリアル

2010年に広島市南区の自動車メーカー・マツダ本社工場内で車を暴走させ、12人を殺傷した同社の元期間工・引寺利明(50)=無期懲役判決を受けて岡山刑務所で服役中=については、これまで当欄で服役生活の現状を繰り返しお伝えしてきた。去る11月28日には、引寺が当欄での公表を希望した獄中手記13枚を紹介したが、引寺が現在も自分の罪を何ら反省していないことはよくおわかり頂けたと思う。

そんな引寺から12月になり、また新たに計26枚に及ぶ手記が私のもとに届いた。前回紹介した13枚の続きとして書かれたものだが、内容を検討したところ、犯罪者の生態やその獄中生活の実相を知るための参考になる記述が散見された。そこでまた当欄で紹介させてもらうことにした。

◆刑事ドラマと違う現実の取り調べ

今回の26枚の手記の中でまず目を引かれるのは、引寺が受けた取り調べの状況が克明に綴られている点だ。たとえば次のように。

〈「何で刑事になろーと思ったん?」と聞くと、新人刑事は「やはり刑事ドラマの影響ですかねー、あぶない刑事(デカ)をよく見てましたねー」と語り、取り調べがヒマになる度に、世間話をしていた。〉

引寺は事件を起こしてほどなく警察に自首し、「マツダに勤めていた頃に他の社員たちから集団ストーカーに遭い、恨んでいた」と犯行動機を語っており、警察の取り調べには協力的だったと思われる。とはいえ、これほどの重大凶悪事件で取り調べ室の雰囲気がここまで和やかなものだったというのは意外に感じる人も少なくないだろう。こういうところ1つとっても、刑事ドラマと現実は違うようだ。

引寺から12月に送られてきた便せん26枚の手記(14~15頁=前回送られてきた13枚の手記の続きのため、頁番号は14頁から始まっている)
同上(16~17頁)
同上(18~19頁)
同上(20~21頁)

◆犯罪被害者遺族の心情に触れても無反省

また、刑務所内で開かれた「命のメッセージ展」という矯正教育のためのイベントに関する描写も興味深い。

〈会場に入ると、人型のメッセージボードがズラーっと並べられていた。ボードには、身内を失ったやるせない遺族の心情、犯人に対する激しい憤りがビッシリと書き込まれていた。ボードのほとんどが、飲酒運転による死亡事故の事例だった。遺族の心情の中には、犯人に対してだけでなく、捜査に関わった警察や検察への不信感や憤りが書き込まれている事例がいくつかあり、ワシの興味を引いた。遺族の心情も様々であり、憤りの捌け口が警察や検察に向かう場合もあるという事だろう。時間が限られていたので、全部のボードをじっくり見る事が出来なかったのが、非常に残念である。機会があれば、また見てみたい。こういうイベントが、矯正教育の一環になるとワシは思う。〉

この「命のメッセージ展」の目的は、犯罪被害者遺族の心情に触れさせることにより受刑者たちに反省や悔悟の念を深めさせることだというのは誰でもわかるだろう。しかし、引寺は相変わらず自分の犯した罪を何ら省みず、犯罪被害者遺族の不信感や怒りが警察、検察に向けられていることに興味を引かれているのである。それでいながら、〈こういうイベントが、矯正教育の一環になるとワシは思う〉ともっともらしく締めくくっており、やはり引寺のようなタイプの犯罪者は一般的な人間と善悪の基準が違うのだと再認識させられる。

同上(22~23頁)
同上(24~25頁)
同上(26~27頁)

後半では、獄中でつくったというラップの歌詞を綴っているが、これも刑務所生活を経験した者でなければ書けないだろう表現が目白押しで、獄中における犯罪者の生活や心情をリアルに想像させられる。手記の原本26枚をスキャニングした画像は本稿にすべて掲載したので、関心がある方は全文にじっくり目を通して頂きたい。

同上(28~29頁)
同上(30~31頁)
同上(32~33頁)
同上(34~35頁)
同上(36~37頁)
同上(38~39頁)

【マツダ工場暴走殺傷事件】
2010年6月22日、広島市南区にある自動車メーカー・マツダの本社工場に自動車が突入して暴走し、社員12人が撥ねられ、うち1人が亡くなり、他11人も重軽傷を負った。自首して逮捕された犯人の引寺利明(当時42)は同工場の元期間工。犯行動機について、「マツダで働いていた頃、他の社員たちにロッカーを荒らされ、自宅アパートに侵入される集スト(集団ストーカー)に遭い、マツダを恨んでいた」と語った。引寺は裁判で妄想性障害に陥っていると認定されたが、責任能力を認められて無期懲役判決を受けた。現在は岡山刑務所で服役中。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

三上治さんの『吉本隆明と中上健次』〈1〉 3・11の衝撃と「25時間目」の革命

 
三上治『吉本隆明と中上健次』(現代書館2017年9月)

吉本隆明の一番弟子であり、また元ブント(共産主義者同盟)叛旗派の「親分」でもあり、さらに現在ではテントひろばメンバーとして活動を続ける三上治(味岡修)さん。2017年9月、彼の新刊『吉本隆明と中上健次』(現代書館)が上梓された。三上さんには吉本・中上との共著もあり、また雑誌『流砂』(批評社)でも繰り返し吉本などについて論じてきたのだ。

そして10月20日、「三上さんの『吉本隆明と中上健次』出版を祝う会」が、小石川後楽園涵徳亭にて開催された。今回、この書籍と「出版を祝う会」について、3回にわたってお届けする。

◆吉本の思想を超えていく三上さんの反原発

『吉本隆明と中上健次』では、序章が「3・11の衝撃」、第1章は「死の風景・精神の断層」となっている。

序章では、たとえば「福島原発阻止行動隊」の結成についても触れ、以下のような注釈がつけられている。

「福島原発阻止行動隊」は、「福島第一原発事故収束作業に当たる若い世代の放射能被曝を軽減するため、比較的被曝の害の少ない退役技術者・技能者を中心とする高齢者が、長年培った経験と能力を活用し、現場におもむいて行動することを目的として、2011年4月に「福島原発阻止行動プロジェクト」として発足、以降『一般社団法人 福島原発行動隊』と改名し、さらに12年4月より『公益社団法人』の認定を受け活動を続けている」

▼三上治(みかみ・おさむ) 1941年、三重県生まれ。66年、中央大学中退。75年、共産主義者同盟叛旗派から離れ、雑誌『乾坤』を主宰し、政治評論・社会評論などの文筆活動に専念。編集校正集団聚珍社に参画し、代表を務める。同社を退職後、再び文筆の活動をおこない、「9条改憲阻止の会」で憲法9条の改憲阻止の運動を遂行。著書に『一九七〇年代論』(批評社)、『憲法の核心は権力の問題である──9条改憲阻止に向けて』(お茶の水書房)ほか多数

私は当初、三上さんからこの話を聴いた際、反対した記憶がある。周囲の30~40代による東北・関東から関西・九州・沖縄などへの避難・移転が相次いでいた時期で、60~70代とはいえ皆さんの体が心配だった。だが、三上さんの決意は変わらぬように見えたことも憶えている。本書では、この時の緊迫した状態についても記されている。まさに、当初「決死隊」とも呼ばれていた理由がよくわかるのだ。

また、「吉本が従来の見解を変えることを期待して」吉本の発言を確認し、彼のもとに足を運んでいたことが述べられる。3・11後、私は、やはり三上さんから、吉本は原発推進であることを聴いており、三上さんの思いの複雑さを勝手に想像したものだった。ただし、本書に、吉本の発言を追う背景として明確に、「僕が脱原発、あるいは反原発の運動をしていたからではない。吉本と梅原猛、中沢新一による鼎談集『日本人は思想したか』(新潮社/1995年刊)で、原発の技術的克服という問題に留保をしていたところがあったからだ」と記している。ただし、「あまり積極的に脱原発の運動に関与してこなかったのは吉本の影響だったと思えるところがある」とも吐露する。

吉本は『日本人は思想したか』で、「反原発ということに対しても反対です。その根拠はとても単純で、技術は必ず現在を超えると思っているからです」「原発よりも有効でありかつ安全であるという技術が出てきた時には、必ず自然廃滅されるんですね。僕はそういう意味で、技術を楽観的に考えていて、エコロジカルな思想、反原発の思想に反対であると言ってきたと思うんです」と述べている。

『吉本隆明と中上健次』に戻れば、3・11後、吉本の『毎日新聞』掲載の発言からも、三上さんは「科学技術の後退はあり得ないということと、原発の存続ということがあまりにもあっさりと結びつけられていることに疑問を感じるのである。ただ、吉本はこの時期に原発問題をどう考えるかで揺れ動いていたとも推察できる」という。そして、『思想としての3・11』(河出書房新社)での、吉本の「利用する方法、その危険を防ぎ禁止する方法をとことんまで考えることを人間に要求するように文明そのものがなってしまった」という言葉も紹介している。

◆原発をめぐる山本義隆と吉本隆明の科学論

さらに、山本義隆さん(科学史家、自然哲学者、元・東大闘争全学共闘会議代表)が『福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと』(みすず書房)で、「かつてジュール・ヴェルヌが言った〈人間に許された限界〉を超えていると判断しなければならない」と記述していることにも触れた。これは、『海底二万里』で知られるジュール・ヴェルヌの小説『動く人工島』のもつ「科学技術には〈人間に許された限界〉があるのではないか」というテーマ、問いかけを指す。そして三上さんは、「科学技術は無限に発展するという近代的な考えに疑念が出てきているのが現在ではないかと思う。原発事故の衝動がもたらしているのはこのことである。こういう人類的な課題を原発事故は象徴しているところがあるのだ」「現在の原発の存続の理由は、これまでの原発投資で形成されてきた既得権益のためである。独占的な電機業界と官僚(原子力ムラ)や政界の一部で出来上がっている既得権益の維持がその理由である」と記す。

私が3・11後に考えたことを一つ挙げるなら、「結局、答えが完全には明確でないなら、より知り、より考え、より感じるしかない」ということだ。三上さんは「科学技術としての可能性でなく現実性」という旨の表現を用いており、これこそが、わたしがより知ろうとしたことなのだろう。

そのうえ三上さんは、吉本の科学論をマルクスの自然哲学にもさかのぼって考える。「進むも地獄、撤退するも地獄」で「撤退してしまえ」なのだが、「吉本にはかつて科学技術者であったこだわりが強くあるのだろうか」と。マルクスに、人間は矛盾に満ちた地獄に引き裂かれる存在であるというものが含まれるのなら、私が「人間の美しさは葛藤にある」けれども「知り、考えて選び決意(して行動)することにこそさらなる美しさがある」と個人的に考えていることへと、本書は連なっていく。三上さんの言葉や文章は、常に「現実性」を経て「人間とはいかなる存在か」へと導いてくれる。

2017年10月20日、小石川後楽園涵徳亭にて開催された「三上さんの『吉本隆明と中上健次』出版を祝う会」

◆「25時間目」の革命

実は、この3回分の原稿は、『NO NUKES Voice』掲載予定が変更になったこともあり、本書にも多く取り上げられている原発問題に関する内容を中心に紹介してきた。ただし、本書には、ほかにも現在の運動にみられる「自立」のこと、吉本が参加していた「自由さと自立性」ある「ラジカルな行動」、80年代や『マス・イメージ論』、『最後の親鸞』と仏教思想などについても述べられている。

だが、ここでは、個人的な最近の関心から、吉本のいう「25時間目」について触れたい。本書を読んでいる際、運動の中で私は「The personal is political(個人的なことは政治的なこと)」という60年代以降のフェミニズムのスローガンにたどり着き、そしてこの「25時間目」という言葉を知った。三上さんの本書での説明によれば、「『25時間目』とは幻想という時間を意識し自覚することだ。そして幻想的世界を作り出す時間である」「24時間の世界との裂け目を生むものだった。この裂け目をどうするかが、『25時間目』が革命を意味する時の課題だった。別の言い方をすれば、生活と幻想を紡ぐことの矛盾の解決(対応)だった」という。

そして私は『いま、吉本隆明25時』吉本隆明・三上治・中上健次他著(弓立社)をパラパラとめくり、合点がいったというか、2018年にかけての運動のテーマの1つとして、「The personal is political」と「25時間目」を心に留めおこうと考えている。つまり、多忙で活動に参加できず、参加できても自らの問題を解決できずに、しかも運動に希望をもちづらい現在。それでも時には100年後を夢見ながらも運動を継続するためにも、私たち1人ひとりのことを「25時間目」の革命によって、幾度倒れても起ち上がり続けようという思いを抱いたわけだ。

『いま、吉本隆明25時』の主催者3人の挨拶「究極の左翼性とは何か─吉本批判への反批判─を含む」で、吉本は「結局抽象的な概念ということと、具体的なことをどのように結び付けていくのかっていうことを、僕は自分の育ちっていうのが左翼なんですけども、そこの中にあるさまざまな欠陥を考えました」、「市民社会の大多数を占めている一般大衆の考えてる事柄をじぶんの思想に取り込むという考え方が全くない」批判本は「怪文書だ」、「国家と資本が対立した場面では、資本につくっていうのがいいんです」、「人間とは何なんだという問いを発したとき、自然的な人間に対して抵抗することで、人間であるっていうような部分がたくさんあるわけです」と語っている。

80年代すら遠くなり、3.11も経て、現在の私たちだからこそ考え得ることはある。そして私は、現在の運動のための哲学や思想が不足していると10年ほど考えきたが、実はこれまでの膨大な歴史がすべての現在につながっていて、直接的に交流できる「自由を追い求めてきた先人」もいる。それにようやく気づいたのだった。(つづく)

【参考】
図書新聞 評者◆三上治 未知の革命形態へ触手をのばす――それぞれの苦しみと格闘
No.3146 ・ 2014年02月15日 (9)「今、吉本隆明25時」のこと

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[文]
1972年生まれ。フリーライター。労働・女性運動等アクティビスト。『現代用語の基礎知識』『情況』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』『労働情報』ほかに寄稿・執筆。
◎「山﨑博昭追悼 羽田闘争五十周年集会」(『紙の爆弾』12月号)
◎「現在のアクティビストに送られた遺言『遙かなる一九七〇年代─京都』」(デジタル鹿砦社通信) 

 
12月15日発売『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点 [報告]三上治さん「どこまでも続く闘いだ──塩見孝也さんの訃報に接して」他

「困った人」香山リカ氏らによる鹿砦社への、筋違いな侮辱発言に抗議する!  株式会社鹿砦社 代表取締役 松岡利康

新刊書籍『カウンターと暴力の病理』において、精神科医の泰斗‐野田正彰氏に「困った人」と評価された、同じ(格はぐっと落ちるが)精神科医で立教大学教授の香山リカ氏――くだんの一件(「どこに送付したか、ちょっと書いてみては?」事件)以来、鹿砦社に対する発信をしばらく見かけませんでしたが、またしても「困った人」ぶりを発揮しています。小さなことにはいちいち相手しないつもりでしたが、「M君の裁判を支援する会」も反論している通り、ことはお金に関することでもありますので、あらためて抗議いたします。

香山氏は、今や刎頸の同志となった感のある野間易通氏による「(鹿砦社が)支援者のみなさんに広告・宣伝をして本を売るのです。そのために弁護士を雇って裁判を次から次へと起こさなければならないのです」(12月15日)とのツイートに応え、「出版の世界はいま構造的な不況で、最近会う編集者からも景気のよい話は聞かない。その中で『裁判を起こす→支援者からのカンパで費用を集める→本を出して支援者に買わせる』という小口ビジネスモデルに活路を見出したのだろうか。支援者は『カンパ』『本の購入』と二重取りされてることになるが」とリツーイトしています。野間氏にしろ香山氏にしろ、言うに事欠いて、根拠のないことを言わないでいただきたい。事実に反し筋違いの無責任な物言いには憤激を覚えます。

野間氏や香山氏らの同志、李信恵被告ら5人に対して、彼らにリンチを受けた被害者の大学院生M君が起こした民事訴訟は、多くの心ある方々の浄財によって支えられてきています。このお金については、弁護士が管理し、1円たりとも裁判費用以外には使われていません。支援会事務局のメンバーが集まる交通費や飲食費なども自腹です(時たま私がいる時には飲食費について私が負担することはありますが)。また、鹿砦社が李信恵被告を訴えた訴訟費用や鹿砦社の運転資金にも、当然ですが1円たりとも流用されていません。

香山氏の表現を普通に読めば、あたかも鹿砦社が、心ある方々から寄せられた浄財を使って「本を出して支援者に買わせ」て不当な利益を挙げているかのような誤解を与えます。そして「小口ビジネスモデルに活路を見出したのだろうか」だって!? 私はそんなセコいことはしません。鹿砦社は本年も(例年同様)年間100点余りの新刊を発行していますが、リンチ関係本はたった2点だけで、売上の比率は全体の1パーセントほどにすぎません。「小口ビジネス」と言うには小さすぎます。いい加減なことを言わないでいただきたいものです。香山先生、あなたも、それなりに名のある「知識人」でしょう、みずからを貶めるようなことは言わないほうがいいのではないでしょうか。

香山リカ氏のツイッターより

野間氏の言説にしても、全くいわれのないもので、どこからそんな発想が出てくるのか、到底理解できません。裁判ひとつ起こすのにも、それなりの費用も掛かりますし、神経も使います。できるならば、裁判など起こさないほうがいいに決まっています。それでも鹿砦社が李信恵被告を提訴したのは、「鹿砦社はクソ」発言があまりにも酷く、度重なる誹謗中傷が小社に対して名誉を毀損するのみならず、小社と業務上関係のある方々(取引先やライターさんら)への悪影響を懸念してのことです。何が、「支援者のみなさんに広告・宣伝をして本を売るのです。そのために弁護士を雇って裁判を次から次へと起こさなければならないのです」か。想像でものを言うのはやめていただきたい。

さらに香山氏は、「お金取り尽くしたらそこで終わり。この件ではもう本を出す価値なし、となったあと、協力者、支援者が冷たくあしらわれて傷つくことにならなければよいのですが」などとほざいています。

香山リカ氏のツイッターより

やれやれ。ここまで来ると、怒りを通り越して失笑を禁じ得ません。しかし、こうした物言いが続けば、これは名誉毀損であり偽計業務妨害であり提訴もやぶさかではありません。私はめったなことでは提訴することはありませんが、度を過ぎれば、李信恵被告に対する訴訟同様、〝賽を投げる〟こともあります。

私や鹿砦社が、李信恵被告ら「カウンター」による大学院生M君リンチ事件に関わったのは、「小口ビジネス」としてではありません。リンチ直後のM君の顔写真を見、リンチの最中の録音を聴いたりして、あまりに酷すぎると感じたことに発しています。それも1年以上も意図的に隠蔽されたり村八分にされたり、さらに事件隠蔽工作に当社の元社員が関わっていたり……。

香山先生、こうしたことについて、あなた自身は、ひとりの精神科医として、ひとりの人間としてどう感じますか? 正直にお答えいただきたい。今回の本にリンチ直後の被害者の写真はトップに出ていますし、リンチの最中の録音も付けています。香山先生にもお送りしています(「どちらに送付したか、言ってみては?」だって? 事務所です)。「釈迦に説法」かもしれませんが、まともな精神科医なら、まずは激しいリンチを受けた被害者の心中を慮り寄り添うべきではないのでしょうか。

また、このリンチ事件について、鹿砦社は4冊の本にまとめ出版しています。このシリーズは、取材費や製作費などに他の書籍よりも多額の費用がかかっています。「小口ビジネス」で本を出し不当に「利益」を目論んだと言わんばかりの言説は心外です。元々利益よりも義憤に感じて始めたのであって、外から想像するほど利益を出しているわけでもありません。

さらに言えば、この裁判は、個人間の諍いではなく、李信恵被告ら加害者らが平素から「差別」に反対し「人権」を守るとうそぶき「ヘイトスピーチ」に反対する訴訟を起こし社会的にも、いわば「反差別」や「人権を守る」運動の旗手のように認知されながら、裏では激しい暴力を行使し常識では考えられないほど凄惨なリンチを行ったことを顧みると、公共的な意味もあり、多くの皆様方に支えてもらい進めたほうがいいという趣旨で始められたと理解しています。これまでは多くの心ある方々のご厚意でカンパも集まり、それで裁判費用が賄えてきました。もし資金が足りなくなったら、鹿砦社や私の私財を投じてもいいとも思っています。それに対して、妙な言い掛かりをつけるんじゃない!

さて香山先生、あなたがまずやるべきことは、「(鹿砦社が)小口ビジネスモデルに活路を見出した」などという、子ども騙しのデマゴギーを振り撒くことではなく、前述したように、ひとりの精神科医、ひとりの人間として、凄惨なリンチを受けた被害者に寄り添い、被害者の傷ついた心中を慮り、あなたの仲間らがやった過ちを叱責し反省を促すことでしょう? そうではないですか!? もしリンチ事件に曖昧な態度を取ったり隠蔽したりリンチ加害者側に与するようなことがあれば、あなたも〈共犯〉です。

まずは、お送りした『カウンターと暴力の病理』に付録として付けたリンチの最中のCDをお聴きになって、ご感想を述べてください。

『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD(55分)定価=本体1250円+税

毎日新聞・後藤由耶(ごとう よしや)記者への公開質問状

「カウンター」・「しばき隊」内部で発生した大学院生リンチ事件が発生してから、17日で3年が経過した。鹿砦社がこの事件の情報を把握したのが昨年2月末、特別取材班が結成されたのが昨年3月はじめである。それ以来、取材班は被害者M君や周辺人物はもとより、加害者およびその関連人物にも取材を重ね、事件の全容を明かすべく努めてきた。これまでの成果は一連の著作物として世に送り出したが、過日4冊目となる『カウンターと暴力の病理』を刊行した。

「特別付録」リンチ事件の一部始終を記録した音声CDのインパクトもあってか売れ行きは好調で、Amazonカテゴリ「人権問題」部門でベストセラーの1位となっている。取材班は読者諸氏にあらためて感謝の意を表するとともに、今後M君リンチ事件の全容解明に向けさらに踏み込んだ取材、出版活動に邁進すべく誓いを新たにするものである。

◆M君リンチ事件隠蔽工作とマスメディアの罪

M君リンチ事件については、極めて組織的かつ計画的に、大規模で広範囲にわたる隠蔽工作が行われてきた。そこには、マスコミ関係者や大学教員、著名人、弁護士、果ては国会議員の名前までが登場する。その醜態はこれまで取材班が明らかにした通りである(詳細は『カウンターと暴力の病理』第3項、『反差別と暴力の正体』第4項および第5項を参照されたい)。

2015年12月までは「しばき隊」・「カウンター」と不可分の関係にある「反原連」を支援してきた鹿砦社でさえ事件後1年以上が経過するまではM君リンチ事件については「噂」レベルの話さえも把握していなかった。このことは、遺憾ながら「しばき隊」・「カウンター」関係者によるM君リンチ事件隠蔽工作が成功していたことの現れにほかならない。

ひと一人を半殺しにしたような事件を1年以上にわたって隠蔽することができた背景には様々な要因があろうが、最大要因の一つはマスメディアがこの事件を黙殺したことにある。それどころかマスメディアが、現在にいたるもM君リンチ事件を報じることを意図的に避けているとしか思えない事実の数々は、取材班が過去お伝えしてきた通りである。

「大阪司法記者クラブはなぜ、M君の記者会見を拒否するのか?」(2017年10月24日)
「鹿砦社の記者会見申し込みを大阪司法記者クラブが全社一致で拒否」(2017年11月2日)
「大阪司法記者クラブ(と加盟社)、そして全マスコミ人に訴える! 報道人である前に人間であれ!」(2017年11月4日)

一部マスコミ関係者はリンチ事件加害者の周辺人物と繰り返し酒食をともにする「仲間」となり、かかる馴れ合いに基づく人間関係のなかで提灯記事を書くことが常態化しているとの「噂」まで漏れ聞こえてくる(事実とすれば現政権がメディア関係者と「会食」を重ねているのと何が違うというのか)。

まさかとは思っていたが、その「噂」の一断面を示す証拠が見つかった。

◆毎日新聞・後藤由耶(ごとう よしや)記者に問う!

12月11日、M君が李信恵ら5名に対してリンチ事件の損害賠償を求めた裁判の本人尋問が行われた。2日後の12月13日、李信恵はみずからのFacebookに「男前たちに囲まれて飲んでたよー」というコメントとともに次のような写真を掲載した。

[画像1]
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李信恵とにこやかにツーショットにおさまるのは、毎日新聞の後藤由耶(ごとう よしや)記者である。さらにこの場にはリンチ事件主犯の「エル金」まで同席している。これはいったいどういうことなのか? 取材班は後藤記者に以下の通り公開質問をする。

[問1] あなたの所属する「毎日新聞」は2017年6月19日「大阪高裁『人種差別と女性差別との複合差別』在特会敗訴」と題した記事(https://mainichi.jp/articles/20170620/k00/00m/040/042000c)をあなたの撮影した写真とともに掲載しています。この他にも毎日新聞は「反ヘイトスピーチ裁判」と称する李信恵氏の裁判を複数回報道する一方で、李信恵氏が被告の一人として提訴され係争中の「M君リンチ事件」について現在に至るまで全く報じておりません。このような報道姿勢は「公正な報道」といえるとお考えですか?

[問2] 李信恵氏および「しばき隊」・「カウンター」関係者はあなたにとって「取材対象」であるはずです。その李信恵氏、さらにはリンチ事件加害者として李信恵氏ともどもM君に提訴されている「エル金」氏ほか「しばき隊」・「カウンター」関係者2名と親密に酒食を楽しんでおられる様子です。李信恵氏の発信からこのようなことは珍しいことではない様子が推認されますが、毎日新聞記者として適切な姿勢であるとお考えですか?

[問3] あなたが李信恵氏とともに会食していた「エル金」氏は、「M君リンチ事件」の主犯です。それにとどまることなく、伊藤健一郎氏とともに事件後水面下で「説明テンプレ」を作成。被害者であるM君を「M氏の異常性」などと事実無根の誹謗中傷を並べ、「差別加害者」とでっち上げて自らの保身と犯行の正当化、事件の隠蔽をもはかった人物です。「エル金」氏らがこの「説明テンプレ」を広く吹聴し、共有と賛同を図った人々を示すものリストが「声かけリスト」です。「声かけリスト」の中には、あなたの名前も入っています。あなたには「声かけ」がありましたか? あったのであればどなたからですか? 本年12月13日も「エル金」氏と酒食を共にしていたのは、あなたのところにも「声かけ」があったからなのですか?

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[問4] あなたは、本年9月5日「この李信恵さんのツイートを報道にたずさわる人は読んでほしい。李さんの感じる痛みを常に意識し、理解しなければならない」とご自身のTwitterで発信されています。では、あなたは報道人として、1時間にもおよぶリンチを受けたばかりか、事件後「説明テンプレ」で「差別加害者」の如くでっち上げられ、野間易通氏ら「しばき隊」・「カウンター」関係者多数に現在も誹謗中傷や嫌がらせを受け続けているM君の痛みを意識し、理解する必要はお感じにならないのですか?

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後藤由耶記者、以上の質問に対し、12月27日(水)正午までに取材班メールアドレス(genic@rokusaisha.com)まで誠実なる回答を求める。

(鹿砦社特別取材班)

『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD(55分)定価=本体1250円+税

今村卓也、再びの12・2ムエタイ王座挑戦は惜敗!

ノッパガーオの右ヒジ打ちをかわす余裕を見せるタクヤ
ノッパガーオの右ミドルキックを受けてしまうタクヤ

この1年半で、今村卓也はムエタイ二大殿堂のラジャダムナンスタジアム王座奪取し、2度目の防衛戦で明け渡すも、今度はルンピニー王座挑戦のチャンスを得て、12月2日(土・現地/日本との時差2時間)、現地でルンピニースタジアム・ミドル級王座に挑みました。

5月25日のラジャダムナン王座陥落後は、数戦を経て、10月22日にディファ有明での蹴拳プロモーション興行に於いて、ルンピニージャパン・ミドル級王座決定戦を、ジフン・エナジー・リー(韓国)に判定勝ちして日本王座に就いています。

このルンピニージャパンタイトルは2015年8月7日に新設の発表があってから1年掛かりで動き出し、徐々に日本王座が埋まって来ている状況。本場ルンピニースタジアムタイトルへの近道とされるルンピニージャパン王座を経て、今回、今村卓也の挑戦が決まりました。

本場ルンピニー王座に就いた日本人は未だ居らず、またムエタイの二大殿堂ルンピニー王座とラジャダムナン王座の両方に就いた外国人(タイ人以外)は過去一人も居ない中での新たな挑戦でした。

タクヤの右ストレート直撃
ノッパガーオも強い左ストレートを返す

◆タイ国ルンピニースタジアム・ミドル級タイトルマッチ(160LBS) 5回戦

チャンピオン.ノッパガーオ・シリラックムエタイ(タイ/72.57kg)
VS
挑戦者. 今村卓也(=T-98/クロスポイント吉祥寺/72.57kg)
勝者:ノッパガーオ・シリラックムエタイ / 判定

ノッパガーオも調子を上げていく左ミドルキック

今村卓也は重いパンチとローキックで慎重に攻めていきます。顔面にヒットする右ストレート、それ以上に応戦するノッパガーオの蹴りとパンチも強いものがありました。

今村卓也のヒジ打ちによるノッパガーオの左眉のカットは、勝利へ期待が持てるものでしたが、ノッパガーオの的確に当ててくる強い蹴りで試合は混戦模様へ。組んでのヒザ蹴り、離れいてもヒザ蹴りも上手いノッパガーオ、今村卓也が優るローキックとパンチでは好感度低いものの、「日本だったらタクヤが勝っていただろう」と言う声もタイ側から聞かれた試合後のリングサイドでした。

タクヤのヒジ打ちで左眉を切ったノッパガーオ
更に流血の顔面へパンチで攻めるタクヤ

再び挑戦へ向けた再起ロードは始まるのか、ラジャダムナン王座陥落後も過密に戦ってきた今年の今村卓也でしたが、しばらく休んでからの再起がいいかもしれません。

判定はノッパガーオに。左がセンチャイ氏(ルンピニージャパン代表)

当日は4つのタイトルマッチの予定があったようですが、今村卓也のひとつ前の試合では、スーパーミドル級王座が新設された試合が行なわれています。

◆ルンピニースタジアム・スーパーミドル級(168LBS)王座決定戦 5回戦

4位.コンピカート・ソー・タワンルン(タイ/76.2kg)
VS
10位.ウィアンニー・マックススポーツジム(フランス/76.2kg)
勝者:コンピカート・ソー・タワンルン(初代チャンピオン) / TKO 2R

6月20日(火)にラーフィー・シンパートーン(フランス)がポンシリー・PKセンチャイから判定勝利し、ルンピニースタジアム・ウェルター級新チャンピオンに就き、同スタジアムでの外国人3人目(フランス人3人目でもあり)チャンピオンとなっています。

この日(12月2日)のウィアンニーはTKOで敗れ、王座奪取成らず(4人目成らず)でした。

二大殿堂も任意団体で、高いレベルの試合を群集に魅せてきた長い歴史と伝統とその権威は高いものの、時代の流れとともに過去になかった規制の緩みが出てきているのも事実で、軽量王国のタイで、ルンピニースタジアムはスーパーミドル級も新設されるという今までに無い重量級まで拡大化された現状。更には、今村卓也もルンピニースタジアムランキングには入っていないが、傘下のルンピニージャパンタイトルを獲ったことで、王座挑戦のチャンスが得られたと現地でも報道されています。最高峰への道が楽になったことが今後、業界にどう影響してくるでしょうか。
また同スタジアムは2014年2月にバンコク中心部のラーマ4世通りから、やや郊外北部のラーマイントラ通りへ移転してからは交通の便が悪くなり、ギャンブラーですらあまり行かなくなったと言う声も聞かれる中、今後集客率や試合レベルはどうなっていくのかという権威の低下が心配される部分もあります。

その反面、2018年は一波乱ありそうな本場ムエタイの動きに、興味あるファンや関係者は注目となるでしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点

和歌山カレー事件新展開 鑑定人が再審請求棄却決定に反論する論文発表の衝撃

1998年に和歌山市園部で4人が死亡した毒物カレー事件で、殺人罪などに問われた林眞須美死刑囚(56)は今日まで一貫して無実を主張してきた。今年3月、和歌山地裁に再審の請求を棄却されたが、すぐさま即時抗告し、現在も大阪高裁で再審可否の審理が続けられている。

そんな林死刑囚の再審請求をめぐり、密かに興味深いことが起きていた。和歌山地裁の再審請求審に弁護団が「無罪の新証拠」として提出した鑑定書や意見書の作成者である京都大学の河合潤教授(分析化学)が連載中の法律雑誌に、和歌山地裁の再審請求棄却決定に反論する論文を寄稿したのだ。

◆裁判官たちの自信の無さが窺えた再審請求棄却決定

林死刑囚の裁判では、一審段階から「林死刑囚の周辺で見つかった亜ヒ酸」と「犯行に使われた亜ヒ酸」が同一と認められるか否かが常に大きな争点だった。結果、東京理科大学の中井泉教授(分析化学)が兵庫県の大型放射光施設スプリング8で行なった鑑定などをもとに、これらの亜ヒ酸が同一だと認定され、無実を訴える林死刑囚は死刑が確定した。

ところが、林死刑囚が再審請求後、弁護団の依頼を受けた河合教授が中井教授の鑑定データを解析したところ、中井鑑定に関する様々な疑問が浮上。河合教授は解析結果に基づき、「林死刑囚の周辺で見つかった亜ヒ酸」と「犯行に使われた亜ヒ酸」が異なるとする鑑定書や意見書をまとめ、弁護団がこれを和歌山地裁の再審請求審に提出した。そしてこの一連の動きの中、林死刑囚の冤罪を疑う声が世間で広まっていったのだ。

結果、先に述べたように和歌山地裁は今年3月、林死刑囚の再審請求を棄却したのだが、実はその決定書をよく読むと、裁判官たちの自信の無さが窺える。死刑判決の最大の拠り所となった中井教授らの鑑定について、〈証明力が減退したこと自体は否定しがたい状況にある〉と述べるなど、河合教授の鑑定書や意見書で指摘された様々な問題を否定し切れなかったことがわかる記述が散見されるのだ。

河合潤=京大教授(分析化学)の論文
河合教授の論文が掲載された「季刊刑事弁護」92号(現代人文社2017年10月20日)

◆「季刊刑事弁護」の連載で発表

そんな和歌山地裁の再審請求棄却決定について、鑑定人である河合教授が自ら反論した論文が掲載されたのは、現在発売中の「季刊刑事弁護」92号(現代人文社)だ。河合教授は、2015年10月に発売された同誌84号から和歌山カレー事件の鑑定を例に「鑑定不正の見抜き方」という連載を手掛けてきたのだが、92号に掲載された最終回(第7回)で、再審請求棄却決定の内容に詳細に反論したのだ。

たとえば、河合教授は和歌山地裁に提出された鑑定書で、犯人がカレーの鍋に亜ヒ酸を入れる際に使ったとみられる紙コップに付着していた亜ヒ酸が、林死刑囚の周辺で見つかった亜ヒ酸より濃度が高いという矛盾を指摘していた。和歌山地裁の再審請求棄却決定はこの矛盾を否定するため、林死刑囚が周辺にあった亜ヒ酸をいったん、押収されている容器「以外の容器」で保管した後に紙コップに入れ、犯行に及んだ可能性があると指摘した。

しかし、河合教授が同誌に寄稿した論文によると、仮に林死刑囚が周辺にあった亜ヒ酸をいったん「以外の容器」なるものに保管したとしても、それで亜ヒ酸の濃度が高くなることはないという。

また、和歌山地裁の再審請求棄却決定は、河合教授が中井鑑定に関して指摘した問題点について、中井教授が1回しか計測を行っていないことを根拠に〈何ら不自然ではない〉と述べている。河合教授はこれに対し、論文で〈人間ドッグで異常値を示したとき「1回しか計測されていない」から大丈夫といって翌年の人間ドッグまで再検査せずに済ますであろうか〉と喝破しているが、このたとえは分析化学の知識がない人間でもわかりやすいはずだ。

再審請求の審理は非公開で行われるため、公正な審理が行われたのか否かを検証するための情報は通常の裁判に比べて乏しい。鑑定人が自ら裁判所の決定に反論した論文を発表するというのは、この現状に風穴をあける試みだと私は思う。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

最新刊『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

本日発売『NO NUKES voice』14号 2018年の争点 脱原発と民権主義

12月15日発売『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点
中村敦夫さん(俳優・作家)
 
高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)

『NO NUKES voice』14号をお届けする。本号の特集は「2018年の争点 脱原発と民権主義」だ。「大義なき解散」から総選挙をうけて、与党勢力は相変わらず衆議院で3分の2を確保しているがきたる2018年はどのような年になるのか、すべきなのか。

◆中村敦夫さん、怒涛の〈反原発〉一人芝居『線量計が鳴る』を語る

数年がかりで原発の誕生から日本へ持ち込まれた事情、構造的問題や福島第一原発事故被害の事実、それを隠蔽しながらまだ再稼働や原発輸出に血道をあげる総体を2時間およぶ一人芝居『線量計が鳴る』の脚本として書き上げ、みずから演じる中村敦夫さんにおはなしをうかがった。

俳優、作家、参議院議員で活躍された中村さん。エコロジストを自認し福島第一原発事故あと「逃げるわけにはいかない」なかから生み出された“線量計が鳴る”に込めた想いとは? そして日本社会へ中村さんが感じ取る危機とは? ロングインタビューでそのすべてを語っていただいた。

◆高野孟さんの長文論考「原発ゼロの政権はいつ誕生するのか?」

高野孟さんは総選挙の結果から、2018年の政治地図の可能性についてまでを分析、予想する論考を寄せて頂いた。「原発ゼロの政権はいつ誕生するのか?」に対する高野さんの回答は読者にとっては意外なものかもしれない。旧民主党誕生に深くかかわり、長年政治を取材し続けた高野さんの見る2018年とはどのような姿であろうか。

泉田裕彦さん(自民党・衆議院議員)

◆東電再稼働圧力に抗した前・新潟県知事、泉田裕彦さんはなぜ自民党から出馬したのか?

 
磯貝潤子さん(市民連合@新潟共同代表/原発事故自主避難者)

最年少知事として新潟県知事に就任し、一貫して東京電力の企業体質や原発の安全性に疑問を呈してきた泉田裕彦さん。知事を辞職しまだその後の身の振り方が明らかにされなかった時期に編集部は『NO NUKES voice』12号で泉田さんのお話を伺っている。全国から「保守ながらも脱原発派知事」と注目を浴びた泉田さんの弁舌は実に鋭く印象深かった。その泉田さんが総選挙では自民党から出馬し当選した。原発につての態度に変化はあるのか? なぜ自民党から出馬したのか? 改憲についてのお考えは? 初登院の直後に編集長が直接泉田さんを直撃した。「与党内から原発政策を変えられるのか?」は必読のインタビューだ。

その泉田さんに福島からの自主避難者礒貝潤子さんが思いを届ける「泉田裕彦さんへの手紙」が続く。泉田さんはどう受け止められることだろう。国会議員としての泉田さんに目を離すことができない。

 
淵上太郎さん(「経産省前テントひろば」共同代表)

◆〈改憲〉と〈五輪〉をめぐる電通利権から2020年暗い時代を本間龍さんが予言する

2020年が近づいてきた。フクシマを隠蔽するための“東京オリンピック”なる擬制の広報は既に大々的にはじまっている。そして首相安倍は2020年に改憲を目指すと明言している。一気呵成(いっきかせい)の大反動はどのようなシステムが世論誘導を担うのか? 本間龍さんが「電通プロパガンダ〈改憲〉国民投票と〈五輪〉無償奉仕」で巨悪、電通が担う役割とメカニズムを具体的に紹介している。東京を中心にすでにはじまっている、いやというほどの〈五輪〉広報。数々の世論誘導総仕上げとしてどのような策謀があるのか?

◆経産省前テントひろばの淵上太郎さんが不当逮捕の顛末を暴露する!

経産省前テントひろば共同代表で先に不当逮捕・勾留された淵上太郎さんは、長年の闘士らしく(らしからぬ?)余裕綽々に逮捕の様子や勾留中の様子、今後の闘争方針についてインタビュアーの小林蓮実さんと語っている。この「余裕」に闘いの永続性の源を感じる読者も多いことだろう。

◆映画『被ばく牛と生きる』監督、松原保さんが語る福島の〈復興〉とは?

映画『被ばく牛と生きる』監督の松原保さんは「福島は〈復興〉の食い物にされている」現状を映画作成の過程を通じ、作品でなぜ複数酪農家を取り上げたのかなど被害を見抜く、視点の在り方が語られる。

映画『被ばく牛と生きる』より

◆福島避難と共に成長してきた渥美藍さん、18歳の告白

渥美美紀さん・藍さんのお二人は、母子で福島から兵庫へ自主避難した。美紀さんは介護施設で働き、藍さんは当初公立中学に通ったものの「デモクラティックスクール」へ転校する。14号を迎える『NO NUKES voice』でおそらくは最年少話者(18歳)の登場だ。藍さんは多弁ではないが、その言葉は本質を突く。彼女の作文にも読者は驚かれることだろう。悲劇が生み出した成長なのであろうか。渥美さん母子のインタビューは飾り気はないが、迫力に満ちている。

◆山崎久隆さん、板坂剛さん、佐藤雅彦さん、三上治さん、納谷正基さん──連載執筆陣の強力報告満載!

その他、山崎久隆さん「2017年回顧・日本の原発10大問題」、小林蓮実さん「『生業を返せ!地域を返せ!』福島原発被害原告団・弁護団『正義の判断』」と報告が続く。

常連執筆陣の熱はいっこうに下がらない。板坂剛さんの危険極まる「昨日、テロリストに会った」、斎藤武一さんと佐藤雅彦さんはともにラドン被ばくについて紹介し、三上治さんは鬼籍に入った塩見孝也さんや見送った同志に思いをはせながら闘いへの思いを語る。納谷正基さんの「本来の視点から見た“先生”と“生徒”の関係性について」は永続的沸点に達した納谷さんの怒りが飛んできそうだ。

ほかに全国からの報告記事も満載の『NO NUKES voice』は2018年もさらに広範な、そして力強い「反・脱原発」実現のための一翼を担う覚悟を宣言する。

11月11日〈脱被曝〉新宿デモ(『NO NUKES voice』14号より)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

12月15日発売『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点

NO NUKES voice Vol.14 目次
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【新年総力特集】
脱原発と民権主義 2018年の争点
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中村敦夫さん(俳優・作家)
[インタビュー]線量計は鳴り続けている
3・11後に辿りついた〈異化・覚醒〉の一人芝居

高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)
原発ゼロ政権はいつ誕生するか?

泉田裕彦さん(自民党・衆議院議員)
[インタビュー]与党内から原発政策は変えられるか?

磯貝潤子さん(市民連合@新潟共同代表/原発事故自主避難者)
泉田裕彦さんへの手紙

本間 龍さん(著述家)
〈改憲〉国民投票と〈五輪〉無償奉仕
電通2大プロパガンダがはじまる

淵上太郎さん(「経産省前テントひろば」共同代表)
[インタビュー]経産省前から〈反原発の声〉を結集させ続ける
不当逮捕を経たテントひろば淵上さんの「思い」

松原保さん(映画『被ばく牛と生きる』監督)
[インタビュー]福島は〈復興〉の「食い物」にされている

渥美美紀さん、藍さん(原発母子避難者/兵庫県在住)
[インタビュー]鼻血を出したり、心臓が痛い同級生はたくさんいた
原発事故から避難した十八歳の訴え

山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
二〇一七年回顧・日本の原発一〇大問題

小林蓮実さん(アクティビスト/ジャーナリスト)
「生業を返せ! 地域を返せ!」福島原発被害原告団・弁護団「正義の判断」

田所敏夫(本誌編集部)
史上最強の盛り上がりを見せた九回目の熊本「琉球の風」

板坂剛さん(作家・舞踊家)
昨日、テロリストに会った!

斉藤武一さん(岩内原発問題研究会代表)
旧産炭地ではなぜ「がん死」が多いのか?
北海道・ズリ山(ボタ山)のラドンを測る

佐藤雅彦さん(翻訳家)
在日米軍住宅を蝕むラドン汚染

三上治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
どこまでも続く闘いだ──塩見孝也さんの訃報に接して

納谷正基さん(高校生進路情報番組『ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)
反原発に向けた思いを 次世代に継いでいきたい〈13〉
本来の視点から見た “先生”と “生徒”の関係性について

再稼働阻止全国ネットワーク
原発再(再々)稼働の嵐を阻止する二〇一八年に!
・《東京》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
・《青森》中道雅史さん(なくそう原発・核燃、あおもりネットワーク)
・《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
・《東京》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
・《東京》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
・《新潟》清水 寛さん(脱原発市民グループ「なの花の会」世話人)
・《浜岡》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
・《福井》坂東喜久恵さん(たんぽぽ舎)
・《伊方》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
・《福井》若泉政人さん(サヨナラ原発福井ネットワーク)
・《伊方》名出真一さん(伊方から原発をなくす会)
・《伊方》小倉 正さん(原発さよなら四国ネットワーク)
・《玄海》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
・《書評》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)