《脱法芸能42》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(2)

前回に引き続き、吉松育美対谷口元一裁判の証人尋問の模様をレポートする。
吉松さんの訴訟代理人である西川紀男弁護士が日本テレビ内での谷口氏と吉松さんのやりとりについて質問が続く。

理不尽に負けない生き方。(2015年10月13日付吉松育美FBより)

◆私は会いたくないと言いました

西川紀男弁護士 (谷口氏から)あなたに対する暴行はありませんでしたか?

吉松育美 ありました。生放送の番組が終わった後、スタッフの誘導により、私は控室に行きました。でも、そのすぐ後ろに本来ならば、付き添いであったテーラー氏が私のすぐ後ろにいなければならないのに、彼を無理やり押しのけて(谷口氏が)私の方に近づいてきて、控室まで追いかけてきました。そして私は控室に怖くなって入った瞬間に後ろから谷口さんが右腕をつかみ、私を控室から連れだそうとしました。

西川紀男弁護士 その前に確認したい。甲38号証を示します。これは星野陽平さんの『芸能人はなぜ干されるのか?』という本なんですが、最後の「あとがきにかえて――」というところで、石井さん、ご存じですか? (K-1の)石井館長。その石井さんが「われわれが日本の芸能界の掟を決めている。芸能の仕事をしたければ、バーニングプロダクションの周防郁雄社長の許しを得なければならないと諭した」とありますが、これは事実ですか?

吉松育美 はい。

西川紀男弁護士 で、その次に308ページ下の段落に自分と周防の親しい友人であるケイダッシュの幹部、谷口元一と面会することを求めたとありますが、これも事実ですか?

吉松育美 事実です。

西川紀男弁護士 で、面会するように求めたことに対してあなたは拒否されたということで、いいんですね。

吉松育美 私は会いたくないと言いました。(中略)

◆とても怖いし、どんな手を使ってでも、人を追い詰めてくるようなという印象がありました

西川紀男弁護士 最初に初めて谷口さんと会われた時に、谷口さんがどういう方か、あなたは知っていた?

吉松育美 面識はありませんでしたが、噂は聞いていました。とても怖いし、どんな手を使ってでも、人を追い詰めてくるようなという印象がありました。

西川紀男弁護士 腕を掴まれたとおっしゃいましたが、その後、どうされましたか?

吉松育美 何するのよと悲鳴を上げて振り払いました。

西川紀男弁護士 谷口さんは結局、どこまであなたのところに来たのですか?

吉松育美 細かく言うと、控室の中まで入ってきました。そして、谷口さんの後ろにいたテーラーさんがその状況を見て、危険と判断し、谷口を無理やり、押しのけて、すぐ控室のドアを閉めました。そのやり取りはほんの一瞬ですが、提出した録音記録の中にも残っています。

西川紀男弁護士 その時、谷口さんはあなたに対して、新しいマネージャーをつけるからねとか、そういった趣旨のことは言っていたんですか?

吉松育美 その後、テーラー氏が谷口さんを控室から追い出した後、関係者に事情を説明しているやりとりがありました。私はそのやり取りをドア越しに聞いていたのですが、その中で「本当のマネージャーじゃない、本当のマネージャーを用意した」とか、また日テレのとても力のあるような人の名前を出したり、自分の会社であるケイダッシュの名前を出したり、とても、自分には力があるということ言って周りに圧力をかけようとしていました。

西川紀男弁護士 「私の事務所を知ってるね」と谷口さんが言った言葉は聞きましたか? どういう趣旨でしょうか?

吉松育美 先程も言いましたように、インターネットには谷口さん、また関連する事務所は、反社会組織と深いつながりがあると言われていました。ですから、その名前を出すと、業界関係者であれば、誰でもが怖がってしまう状況が簡単に想像ができます。なので、彼はあえて自分の名前や名刺を差し出して、そういった名前を関係者に言ったのだと思います。

◆(日本のマスコミは記者会見に対して)ほとんどゼロに近い反応でした

西川紀男弁護士 そういった趣旨のことはあなたの陳述書や司法記者クラブでの記者会見とか全部入っているんですが、司法記者クラブでこういう会見をした、あなたの目的は何ですか?

吉松育美 私の目的はそのような自分自身の経験により、社会の中には泣き寝入りをしている多くの女性、また、ストーカーの被害者がたくさんいることを知りました。なので、私は日本人初の世界一のミス・インターナショナルとして、この自分に陥った状況を自分の使命だと感じて、私が立ち上がらなければならないと思い、記者会見を開きました。

西川紀男弁護士 記者会見、司法記者クラブでの記者会見、日本のマスコミでの反応は?

吉松育美 ほとんどゼロに近い反応でした。でも、私の記者会見には多くの、ほとんどといっていいほどのメディア関係者が取材に来ていました。質問も多くいただき、感覚としてはみなさん、興味を持たれている、これは報道されることなんだなという印象でした。

西川紀男弁護士 海外は?

吉松育美 海外の反応は日本の反応とは真逆で、私が記者会見をした数分後からアメリカを中心に世界中に私の言ったことが報道されました。

◆電話口で谷口氏は(母親に)「育美さんが川田亜子さんのようになることを心配しています」と言いました

西川紀男弁護士 あなたのご両親、ご両親に対して、谷口さんのいろんな行為があったと?

吉松育美 ありました。まず、父親の携帯番号を知るはずのない谷口さんから職場にいた父親へ連絡がありました。また、谷口さんは私の実家にまで私のスキャンダル記事やテーラー氏(と谷口氏)の裁判資料、そして、私が嘘をついているという主張をして、とても両親は怖い思いをしました。

西川紀男弁護士 実家の住所とか、電話番号をどうして知ったのでしょうか?

吉松育美 分かりません。父親の携帯番号も私の実家も、公に公表しているものではないので、どうしてどうやって調べたのかと、父親は怖い、気持ち悪いという思いでいっぱいでした。

西川紀男弁護士 谷口さんは、郁実さん、さらにその先の郁実さんのお父さんやお母さんと関係ないじゃないですか? つながりとか、心当たりは?

吉松育美 谷口さんの行為を正当化する理由というのは特に思い当たりません。

西川紀男弁護士 お母さんはこの裁判で陳述書をお書きになっている。もちろん、あなたも読んでいますね? 非常に心配されている。苦しんでいる。

吉松育美 そうですね。母親も情報ソースがインターネットしかないので、谷口さんのことを調べると、さっきも言いましたように川田亜子さんの自殺の件が出てくる。そして、電話口で谷口氏は「育美さんが川田亜子さんのようになることを心配しています」と言いました。なので、いくら言葉が丁寧でも、インターネットに書かれているようなに自殺に追い込まれてしまうとか、もしくは自殺と見せかけて誰かに殺されてしまうのではないか、娘の命までなくなってしまうんじゃないかという恐怖で眠れぬ夜を過ごしたと言いました。その気持は私も同じです。(続く)


◎[参考動画]日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(日本外国特派員協会=FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

◎《脱法芸能41》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(1)
◎《脱法芸能36》宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎《脱法芸能37》『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎《脱法芸能38》音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなき傑作ノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)

「難民受け入れ」表明前にこの国が顧みるべき「中国残留日本人」帰国政策

シリアの政情不安長期化に伴い、膨大な数の難民が欧州に押し寄せている。あまりに急激な人口流入に戸惑い、国境を閉ざそうとする国もあるが、移民、難民受け入れ経験の豊富なドイツなどは(本音はともかく)「難民受け入れ」を表明している。


◎[参考動画]Germany’s winning refugee welcome formula(2015年09月07日にeuronewsが公開)

日本で行われる「反差別」を標榜する集会やデモなどで「Refugee Welcome」(難民歓迎)を掲げる人びとの姿も増えてきた。この国で市民が「難民受け入れ」に歓迎の意向を示したことは初めてではないだろうか。古くは朝鮮半島から日本に渡り工芸、芸術、文化などを伝えた「渡来人」、「帰化人」と名付けられた人々が「文化の伝道師」としての尊敬を集めたとの記録があるが、それ以降この島国では他国からの積極的な「定住意思」を持った人々を歓迎してきた歴史は見当たらない。

◆村長、町長や中学校校長らに選出ノルマが課せられた「満蒙開拓団」

私の気持ちは複雑である。

海に囲まれた島国だからだろうか、第二次大戦で敗北し経済成長を遂げた後もこの国は外へ門戸を開くことにことのほか後ろ向きであった。政策的にまとまった数の外国生活背景のある人々を受け入れたのは、おそらく「中国残留日本人」(「中国残留邦人」、「中国残留孤児」などと呼ばれることもある)の帰国活動が初めてだろう。

日本の傀儡国である「満州」を中心とする中国へ渡った人々の数は確定していないものの500万人を超えるとする説もある(彼らは一義的に『侵略者』であった)。自由意思で「一旗揚げよう」と移住した人の他に、「満蒙開拓団」と呼ばれる主として裕福ではない人々が全国の市町村長や中学校長などにより選出され、中国大陸に送り込まれた。

「五族協和」、「王道楽土」といった甘言をぶらさげた渡航者の選出にあたっては村長、町長や中学校の校長に「ノルマ」が課せられていたそうだ。「満蒙開拓団」に選出された方々はそれを拒否することなどできなかった。

敗戦と同時にいち早く敗走した関東軍と異なり、下級兵士や中国大陸でも貧しい生活を送っていた人々を中心に日本への帰国がかなわず、現地に留め置かれることとなる。帰国できず亡くなった方も多い。

その時期幼少で現地の中国人に身柄を預けられた人が、後に帰国することになる「中国残留日本人」だ。日本にやってきて服装も表情も当時の中国人と違わない人々が悲痛な思いで親族を探す姿は、当時多くの紙面や時間を割いてマスメディアで扱われた。幸い親族が見つかった方々が日本に帰国し定住した。その際に本人だけではなく配偶者や子供、場合によっては義理の兄弟などの親戚も入国、定住を認められたことから中国から定住した方々の総数は数十万人にのぼる。

帰国後は日本語のトレーニングや一定の生活支援、就業支援が行われたものの、日本の生活にはなじめず、家に引きこもりっぱなしの帰国者も少なくなかった。


◎[参考動画]アーカイブス中国残留孤児・残留婦人の証言 Eさんの場合①(2013年10月24日に藤沼敏子さんが公開)
※藤沼敏子さんのHP「アーカイブス中国残留孤児、残留婦人の証言」には中国残留孤児・残留婦人による貴重な証言インタビューが多数掲載されている。http://kikokusya.wix.com/kikokusya

90年代はじめに彼らが住んでいた公営の集合住宅を訪れたことがある。生活支援をしているボランティアの方の案内で数件を尋ねると、帰国者ご本人はほとんど日本語が話せなかった。そのお子さんは工場労働などに出ているというから社会生活が可能な程度には馴染まれていたのだろう。そしてお孫さんは地元の小学校に通っているとのことだった。お孫さんは言葉に不自由はないし不都合も感じていないようだった。

私が訪問した数件のご家族は、不幸せそうではなかったけれども「帰国」したことを心底喜んでいるようでもなかった。

「残留日本人」を除けば日本に「政治難民」として逃げてきたい、という人々に対して法務省や入国管理局は実に冷淡だった。私も10人以上の難民申請の支援に関わったことがあるが私の知る「政治難民」は全員が門前払いだった。

◆政府の「外国人受け入れ」に対する姿勢変化と「ユニクロ」柳井正のインタビュー

ところがここへきて政府の「外国人受け入れ」に対する姿勢は変化を見せはじめている。理由は簡単だ。人口減に歯止めがかからずこのままでは「労働力」の確保がままならない、と考えた奴らは突如善人ぶって「さあ、さあ日本は門を開いていますよ」とその実またしても「経済奴隷」としてのみ外国人を招き入れようとしているのだ。

その本音を代弁しているのがブラック企業「ユニクロ」で有名なファーストリテイリング会長兼社長柳井正のインタビューだ(2015年11月21日付産経新聞)。

柳井は「移民・難民を受け入れなければ国そのものが滅ぶ危機」と題したこのインタビューの中で、
--日本企業の問題点は
「完全な実力主義になっていないことだ。古い制度を根本から変えていく必要がある。国主導ではなく、民間が主体的に変えていくことも必要だ。政府に頼めば何とかなる、という発想をやめなくてはならない」
--人口減少問題も企業経営に影響する
「人口減少は非常に深刻な問題だ。このまま放っておくと、日本は労働人口が不足する社会になる。人口が減って栄えた国はない」
と「移民・難民」の受け入れの必要性が、あくまで「国」(=日本)の利益のためであることを正直に告白している。

このインタビューの中では「国際感覚を身につける」などといった美辞も見られるが、ならば今よりも日本の「集中豪雨的輸出」が世界で問題とされた70年代後半から80年代になぜこのような「移民・難民受け入れ歓迎」という主張が国や大企業からなされなかったのか。

理由は簡単、当時は日本人だけで労働力が充足していたからだ。ここへ来て政府もこのまま行けば2030年に労働人口が200万人不足する、などと言い出した。あったりまえだろう。これだけの貧困と格差社会で非正規雇用がさらに増加すれば出生率は低下し、人口は確実に減っていく。日本は既に人口激減期に入っている。

◆経済奴隷になり果てることを希望する難民がいるだろうか?

そこで冒頭の命題だ。難民受け入れ。移民受け入れに私は賛成の立場である。しかし、今それを政府や大企業が主張し出した狙いは単に「労働力」の充足を目的とするものである。「人道上」の配慮では断じてない。難民は母国を何らかの理由で追われ、仕方なく他国に安心を求め移動する人びとだ。

彼らの目的は一義的には「生きること」であり「金儲け」ではない。だから言語や生活習慣の全く異なる背景をもった難民をこの社会で生活してゆけるようにするためには、様々なトレーニングやサポートが必要とされる。当然お金もかかる(為政者が「社会的コスト」と呼ぶものだ)。

本当にそこまでの覚悟が総体としてあるのか。「難民を不足する労働力の補填へ」とのユニクロ柳井や政府の下心は経済的侵略者のそれと変わりない。そんな理由での難民受け入れなら私は反対する。経済奴隷になり果てることを希望する難民がいるだろうか。難民の立場で我々はこの島国のありようをもう一度見直す必要を感じる。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《脱法芸能41》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(1)

2015年8月6日、東京地方裁判所806号法廷において、ミス・インターナショナル2012年グランプリの吉松育美さんが大手芸能事務所、ケイダッシュ幹部の谷口元一氏を訴えた裁判の証人尋問が行われた。

2014年2月4日付吉松育美FBより

裁判に至るまでの経緯をざっと説明する。

吉松さんと谷口氏とのトラブルの発端は、2012年春、吉松さんがミス・インターナショナルのグランプリを獲得すると、元所属事務所顧問で総合格闘技団体、K-1の元プロデューサー、石井和義氏が現れ、吉松さんを「芸能界のドン」と呼ばれる周防郁雄社長が経営する芸能事務所、バーニングプロダクションに連れてゆき、「われわれが日本の芸能界の掟を決めている。芸能の仕事をしたければ、バーニングプロダクションの周防社長の許しを得なければならない」と諭し、バーニンググループに入るよう要請した。

吉松さんがミス・インターナショナルを獲得し、それまで所属していた芸能事務所から独立すると、石井が再び現れ、「独立は支援するが、われわれのグループに入ることが条件だ」と主張し、自分と周防社長の親しい友人であるケイダッシュの谷口氏と面会するよう求めた。

それからしばらくして、吉松さんが出演していた日本テレビの番組「真相報道 バンキシャ!」の撮影現場に谷口が現れ、控室まで吉松さんを追いかけ、腕をつかんで拉致しようとし、番組スタッフに吉松さんに新しいマネージャーをつけると主張した。以降、谷口氏は業界中に圧力を強め、様々な嫌がらせが続き、吉松さんは仕事を失ってしまった。

2013年12月16日、吉松さんは日本外国特派員協会で記者会見を行い、谷口氏から受けたストーカー被害の実態を明らかにし、その後、提訴に踏み切った。


◎[参考動画]日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(日本外国特派員協会=FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

一部報道では、2014年8月15日に吉松さんの訴えが却下されたと報じられているが、これは仮処分の申請についてのものであり、その後、吉松さんは東京地裁に提訴し、今回の証人尋問はそれに関わるものである。なお、谷口氏からも吉松さんに対し、名誉毀損があったとして反訴している模様だ。

以下、吉松育美さんの主尋問(吉松さんの訴訟代理人側からの質問)の模様をレポートする。

◆私は谷口元一氏という名前を聞いただけでも怖い、恐怖を感じていました

西川紀男弁護士 本件で被告になっている谷口さん、ご存じですか? お会いしたのは、2012年の12月30日が最初でしたね。日本テレビが最初。それ以前に噂とか、あるいは雑誌、新聞で話を聞いたことは?

吉松育美 あります。私が最初に谷口元一氏の名前を知ったのは、2008年の元アナウンサーであります川田亜子さんの自殺の件で知りました。

西川紀男弁護士 その時から怖い人とか、優しい人とか、どういう印象を持ちましたか?

吉松育美 その事件をきっかけに、川田亜子さんの自殺は、不明な点も多く、大きな波紋を呼んでいました。謎の死、謎の自殺に深く関わっていたのが谷口元一氏であり、また、谷口さんの所属している事務所、反社会的組織と深く繋がっていると噂されております。それはネットや週刊誌、新聞などからでも一般的に誰もが知っている知識です。そういうことから、私は谷口元一氏という名前を聞いただけでも怖い、恐怖を感じていました。

西川紀男弁護士 司法記者クラブでお話になったのがありますね。甲24号証に出ているんですけど、司法記者クラブで言ったのと間違いない? マットさん(※)からは谷口さんのことについて、何か聞いていますか?(※マットさん=吉松さんの海外エージェントであるマット・テイラー氏のこと。)

吉松育美 谷口さんとマット・テイラーさん、間に1000万円の債務関係があることを知っています。

西川紀男弁護士 それはいつごろの話ですか? 聞いたのは?

吉松育美 私が(マット氏から)コーチングを始めてわりと最初の方です。

西川紀男弁護士 日本テレビにおける、谷口さんとあなたが最初に会ったその時の出来事を、2012年の12月30日、『バンキシャ!』という番組でしたよね。その時に谷口さんが来た。谷口さんは、その番組の関係者だった?

吉松育美 当時、谷口さんは『バンキシャ!』の関係者としてまったく関係がない。でも、なぜ彼がその場にいたかというと、別の入館許可証を首からぶら下げていて、その番組にいました。

西川紀男弁護士 そうすると、谷口さんは番組と関係ない。いわば無断侵入のようなものですか?

吉松育美 はい。その後、谷口さんが現れたあと、スタッフさんからも、大変申し訳ありませんでしたと何度も言われました。

西川紀男弁護士 その時、谷口さんは、簡単に言うと、あなたに対して、どういうことを言ったんでしょうか?

吉松育美 まず、「吉松さんはこっちに来てください」と。それからマット・テイラー氏に対しては、「詐欺師だ」そして、「本物のマネージャーではない」と。私に向かっても「金返せ、金返せ」と心当たりのないことを、彼は私に向かって発言しました。(続く)

○吉松育美さん公式サイト=http://ikumiyoshimatsu.com
○吉松育美さんFacebook=https://www.facebook.com/yoshimatsuikumi?ref=hl
○吉松育美さんYouTube=http://www.youtube.com/user/yoshimatsuikumi

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

◎《脱法芸能36》宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎《脱法芸能37》『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎《脱法芸能38》音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買
◎《脱法芸能40》安室奈美恵──「移籍劇」は芸能界決壊への「パンドラの箱」を開いたか?

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなき傑作ノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社2014年5月13日刊)

大阪ダブル選挙──「安倍と橋下どっちを選ぶ?」の選択肢しかなかった不幸

「橋下打倒を!」と書きながら、本心どこか冷めている自分がいた。橋下徹が先導する地域政党「大阪維新の会」と、自民推薦、民主、共産なども推した候補者の実質的な対決となった大阪府知事、大阪市長の同日選挙は11月22日投開票され、知事には現職の松井一郎、市長には元衆議院議員、吉村洋文の両氏が当選した。

◆「自民党議員にも考え方に幅のある人がいる」という擁護論の終わり

嘘八百はいい加減にしてくれ!と「ハシモト」についてはこれまでも散々書き連ねてきたけれども、今回大阪同日選挙の何よりの不幸は「反ハシモト」として投票意欲を掻き立てる候補者が擁立されなかったことだ。知事候補だった栗原貴子氏、市長候補の柳本顕氏とも、出馬前はそれぞれ自民党所属の大阪府会、市会議員だった。

「地方に行けば自民党所属の議員といえども、考え方に幅のある人がいる」という擁護論は昔からある。「人格が立派な地方議員の中に自民党所属の人がいる」という話は散々聞かされてはいる。しかし、私そういう人に会ったことがない。中央であろうが地方であろうが「自民は自民」なのだ。とりわけ21世紀に入って以降の自民党には、寸分の油断もならないと感じてきた。麻生政権が瓦解し民主党が政権を担った時は「これで憲法改正へ向かうスピードだけには歯止めがかかった」と多少安堵したことは確かだった。

しかし、省みればこの「安堵」すらが油断だったのだ。民主党政権下では小泉政権や第一次安倍政権時のような露骨なファシズム指向政策が表出はしなかった。だが、今日の自民党政権に負けず劣らぬ「悪政」が行われていたじゃないか。思い出してみよう、原発事故後に「脱原発依存」を掲げた民主党政権は野田首相時代に大飯原発の再稼働を行っていたじゃないか。消費税の引き上げだって民主党政権時代に決定していたじゃないか。そして野田政権は自爆的に瓦解したことを。

◆「古いもの、しがらみ、旧弊とは相いれない」という言説ポーズが橋下の真骨頂

大阪人に限らず「ハシモトはうんざりだ、とんでもない」の認識は広がりを見せた。国政の場でも「維新の党」から設立者である「ハシモト」や「マツイ」が離党し、維新周辺にうごめく議員たちは混乱を極めている真っ最中だ。

実際には最高の指揮権を握っていた「ハシモト」がわざわざ離党する必要などなかった。松野頼久や民主党から合流した連中が気に入らなければ、これまで通り「首を飛ばせ」ばよかったのだ。市長の任期途中で「信任を得るため」と不要な選挙に打って出るわ、住民投票までやって否決された「大阪都構想」をまたぞろ蒸し返すは、世論は「ハシモト」や「維新」を選択肢から外し始めていた。メディアの狂気じみた「ハシモト」礼賛もトーンが下がってはいた。

でも「ハシモト」の目論見は的中した。私は「ハシモト」離党は大阪での同日選挙に向けたパフォーマンスだと感じていたが、残念ながら結果がそれを示している。

「古いもの、しがらみ、旧弊と相いれない」ポーズ──。これこそが「ハシモト」言説の真骨頂だ。有権者を騙し続けてきた嘘八百、朝令暮改の神髄はここにある。あくまで「ポーズ」である。そのポーズに無批判なマスメディアが便乗する悪循環。

この時代の閉塞感を感じている少なくない人々が「古いもの、しがらみ、旧弊と相いれない」ポーズに程度の差こそあれ期待を寄せていた(全く的外れにも)。実態は何もないこのポーズに共鳴する人は表面上「ごく普通の良き市民」である。

◆TPP甘利や極右稲田朋美が応援演説に来る対抗候補に誰が投票する気になるか

対する「古いもの、しがらみ、旧弊」の実態はどうだ。その中心である自民党、安倍晋三を総裁に無投票で再選した自民党の実像はどうだ。

わざわざここで私が詳述することもあるまい。戦争へ向かい、米国の下僕としての忠犬振りに熱をあげることを専らにする安倍自民党はちょっと政治に関心が芽生えた高校生からも「自民党感じ悪いよね」とプラカードに書かれるほどだ。

知事候補だった栗原貴子氏のTwitterとFacebookにはこんな言及がある。

この選挙戦、自民党本部から本当にたくさんの閣僚や党役員の皆さんが応援に駆けつけて下さいました。谷垣禎一幹事長、石破茂地方創生担当大臣、稲田朋美政調会長、甘利明経済再生担当大臣…国とのパイプを活かし、力強く大阪の発展を進めて参ります。 (2015年11月21日付くりはら貴子FB)

このコメントと顔ぶれを見て、「反ハシモト」の気持ちを抱いていた人の中には落胆を感じた人が少なくなかったのではないだろうか。「国とのパイプを活かし」なんて地方自民党候補者の常套句じゃないか。TPPを進める甘利、確信的右翼の稲田の顔見て投票する気になるだろうか。

◆安倍自民と橋下維新の両方に反対する人にとって投票の選択肢は100%なかった

つまり、こういうことだ。今回の大阪同日選挙には安倍自民党政権、「ハシモト」の両方を嫌う人には選択肢がなかったのだ。どちらの候補者に投じても「安倍を支持する」か「ハシモトを支持する」ことへ繋がる。そして中央では「維新」が割れ、形ばかり自民党と少しは異なる方向性を見せようとはしているけれども「大阪維新の会」はその主張において自民党と大差ない。何よりもハシモト自身が安倍に直談判しに上京していた様を見れば、こいつら2人が「同じ穴の狢」であることは明らかだ。こういった「投票に値する候補者がいない不幸な選挙」は小選挙区制導入後以前にもまして増えている。

「安倍とハシモトのどっちを選ぶか」の選択肢しか示し得なかった時点で大阪の同日選挙は意味を失っていたといっても言い過ぎではないだろう。「反ハシモト」陣営は真剣に主張や手法が「ハシモト」とは異なる候補者を早期に擁立すべきだった。「オール大阪」などという馬鹿げた茶番が敗因なのだ。なぜ実質自民党候補に共産党が相乗りできるのか。してしまったのか。師走に入って政治でろくなことがなかったこの1年を痛感する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎挙句の果ての「1億総活躍」──狂気、矛盾、悪意、恫喝づくしの安倍暴走政権
◎隣のクルド人──「国を持たぬ民」が日本社会で暮らすということ
◎パリ襲撃事件報道の違和感──言葉の収奪、意味の無化を進める不平等な世界
◎《追悼》杉山卓夫さん──「不良」の薬指に彫られた指輪のような刺青の秘密

11月25日発売開始!「脱原発」×「反戦」の共同戦線総力誌『NO NUKES voice(ノーニュークスヴォイス)』第6号!

 

《ウィークリー理央眼028》秋山理央写真集『ANTIFA』遂に発売!

自身初の単行本『秋山理央写真集 ANTIFA ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』が、11月21日に発売になった。是非お近くの書店で購入して欲しい。


『秋山理央写真集 ANTIFA ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』
写真=秋山理央 文=朴順梨 発行=鹿砦社
定価1944円(本体1800円)

もともとジャーナリズムに興味があったわけでもなく、何の志も持たないカメラマンである私はただただ「今の日本」を記録することだけに専念してきた。

3.11以降、福島原発事故に端を発した反原発デモが日本各地で頻発していたにも関わらず、大手メディアはなかなか取り上げなかった。もちろん様々な理由があって、それはある意味で仕方がないことだった。
「ならば自分でやってやろう」と、2011年6月から反原発のデモにカメラを向け徹底的に記録することにした。こんなにもデモが起こっているのに報道が少な過ぎるのは不自然だと思ったからだ。
当時は、あるいは今でもそうかもしれないが、デモはハードルが高く特殊な行為という感覚が強かった。私もその感覚を持っていた一人だったが、考えてみると私たち市民にとって一番身近な主張の場はデモだった。

次の行動に繋げてもらう為にも、明確な「原発反対」の立場の自分が一つのメディアとなり、人々の消えていくはずだった想いを記録し残すことにした。デモのマイナス・イメージを払拭し、デモ文化を根付かせようと心に決めたのだ。
現在でもほぼ全ての土日は取材に出掛け、年間100?150回程度の撮影を続けられている理由はそこにあるのかもしれない。

デモや抗議を行なう人々を撮り始めて4年半、反原発から反レイシズム、反安保法制を訴える路上の姿を追い続けて、遂に写真集が世に出ることとなった。正直なところ、出版が決まっても感動があったわけではなかった。月刊誌と季刊誌での連載を抱え、本・新聞・テレビ・その他に多数の写真や映像を提供していたので、本が出るからと言って特別な感情が沸き起こりはしなかった。…現物を手にするまでは。
制作の過程で見ることができたのは印刷見本のみで、きちんと製本されている完成状態のものがなく、出版の素人の私には想像が全くできていなかった。しかし、写真集の現物を手にしてみると、紙も印刷も良くて驚いた。質感も良かったし、重量感があって、「絶対に買って損はしない!値段以上の価値がある本だ!」と仲良くしている友達にメールしてしまった。自分が撮って選んだ写真なのに、だ。

この写真集には、2013年3月31日?2015年10月4日までの期間、12都道府県と韓国・ソウルの路上で行なわれた41の反レイシズム行動の写真140点が時系列に沿って収録されている。時が進むにつれて、路上でのヘイト・スピーチとの闘いが広がりを見せていくことを感じる事ができるはずだ。
今回、掲載写真にはキャプションはあえて付けず、記すのは日付と撮影場所だけにした。彼女自身がヘイト・スピーチの被害者でもあるライターの朴順梨さんに寄せてもらった文章に心を揺さぶる力を感じたので、写真ページはビジュアルに特化し「写真集」としての完成度を重視した。言葉は彼女に任せ、私の想いは全て『ANTIFA(アンチ・ファシズム)』と冠したタイトルに込めた。

ヘイト・スピーチに抗議するカウンターは広く理解され、多数の支持を得る必要はないのかもしれない。そもそも差別が無ければ不要の存在なのだから。しかし、カウンターをするしかない状況は今でも変わらず存在している。
私はこれからも記録者として、路上の事象を写し取っていくつもりだ。

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。
11月21日には全国の路上でヘイト・スピーチと闘うカウンターの姿を追った初写真集『ANTIFA アンティファ ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』(鹿砦社)が全国書店にて発売決定!

《ウィークリー理央眼》
◎《027》戦争法案に反対する若者たち VOL.21 金沢
◎《026》戦争法案に反対する若者たち VOL.20 新宿
◎《025》戦争法案に反対する若者たち VOL.19 川越
◎《024》戦争法案に反対する若者たち VOL.18 郡山
◎《023》戦争法案に反対する若者たち VOL.17 弘前

 

大塚隼人が引退し、ムエタイ王者がリングに上がった11.15「Kick Insist 5」

今年の新日本キックボクシング協会は、年間11回興行があり、興行はジム持ち回りですが、後楽園ホールだけで8回、定期興行において各チャンピオンが随時出場する安定した団体です。興行のひとつを受け持つビクトリージムは共催ながらリーダーシップを持って年1回のディファ有明で興行を打ち、「Kick Insist」という興行タイトルで東日本大震災復興チャリティーイベントとしての5年目を迎え、そのスケールも年を重ねる毎に大きくなってきました。
Kick Insist 5 / 11月15日(日)16:00~20:25(主催:ビクトリージム、治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会)

◆元・日本ウェルター級1位の大塚隼人引退式

今回のイベントのひとつは、元・日本ウェルター級1位の大塚隼人(ビクトリー)が引退式を行ないました。2012年10月、当時の日本ウェルター級チャンピオン、緑川創(目黒藤本)に挑戦も3-0の判定負け。その緑川創選手が今回快くエキシビジョンマッチの相手となって対戦に応じてくれました。

大塚は試合から遠ざかり、“太った”という言い方は正しいとは言えませんが、ドッシリとした体格に変貌。悔いなくお互いが激しく打ち合いました。引退式は興行を開催するジム会長との信頼関係が伺える、最後の勇姿を披露させて頂けるリング。大塚は協会役員に囲まれ、伊原信一協会代表から労いの言葉を受けたセレモニーの後、引退テンカウントゴングを聴きました。

大塚隼人テンカウントゴング

大塚隼人もビクトリージム坂戸支部を任される立場となって第2の人生を歩み出しています。王座挑戦は2度。2014年7月には、緑川創が返上して王座決定戦となって、同級2位の渡辺健司(伊原稲城)に2-1接戦の判定負け。恵まれた環境で、入門からタイトル挑戦まで育ててくれた八木沼広政会長への恩返しを果たすため「絶対チャンピオンになります」と言って挑んだいずれの試合も敗れ去ってしまいました。

しかし、2010年6月には日本人キラーだった元ラジャダムナン系スーパーライト級チャンピオンのガンスワン・Bewell(タイ)をパンチでグラつかせると一気にノックアウト勝利し、2012年2月には過去にKO負けを喫した相手、元ラジャダムナン系ライト級チャンピオンのソーンラム・ソー・ウドムソン(タイ)に狙ったカウンターヒジ打ちで切ってリベンジTKO勝利。チャンピオンにはなれませんでしたが、これを超えなければ世界に行けないという“日本人の壁”となって立ちはだかったムエタイボクサー2人に貴重な勝利を挙げている大塚隼人選手でした。

大塚隼人EX緑川創

そんな中、日本人の壁の向こうにある本場の試合を披露しようと、ビクトリージムの八木沼会長が、頻繁にタイ国のムエタイジムを回り、選手を選抜して招聘された今回のビッグカードが実現。

◆メインイベント56.0kg契約5回戦

タイ国ルンピニー系バンタム級チャンピオン=クワンペット・ソー・スワンパッディー(タイ/56.0kg)
VS
タイ国ムエスポーツ(プロムエタイ)協会バンタム級9位=ペップンソーン・ペッチンダー(タイ/55.4kg)

勝者:クワンペット・ソー・スワンパッディー / TKO 5R 1:44 / 主審.ノッパデーソン・チューワタナ(タイ)

現役ルンピニー系バンタム級チャンピオン.クワンペット

一流ムエタイボクサーの簡単には崩れないバランスいい体幹と技。その関節柔らかい蹴りの躍動感が美しく、ムエタイの神秘さが冴え渡ります。序盤は静かな展開から、ややクワンペットが好戦的に、日本人でもわかりやすいパンチと蹴りで次第に優勢に進めている印象。第4ラウンドには攻めの圧力が増していき、その勢い維持したまま第5ラウンド途中、レフェリーが突然試合を止め、クワンペットのTKO勝利を宣言。攻防の差がつき、ペップンソーンの勝ち目は無いと判断されてのストップ。日本では相当の劣勢にならないと止めず、ダメージが深くなければ最後までやらせるのが普通でしょう。タイでは実力均衡する対戦が多く、接戦を展開し、ギャンブラーを唸らせる試合が圧倒的ですが、“接戦”という範疇から外れ、試合を止めてしまう展開も珍しいことではないようです。「何で止めたのだろう」という疑問も残りつつ、タイからのレフェリーに対する抗議も無く、堂々としたレフェリー裁定に貫禄すら感じた観客の様子でした。

◆セミファイナル63.0kg契約3回戦

WKBA世界スーパーフェザー級チャンピオン=蘇我英樹(市原/62.8kg)
VS
元・ラジャダムナン系フェザー級6位=セーンアティット・ワイズデー(タイ/62.4kg)

勝者:セーンアティット・ワイズデー / TKO 3R 2:24 / 主審.桜井一秀

レフェリーが止めた後も諦めない蘇我英樹

5年連続のKick Insistに出場し、激戦を繰り広げる蘇我英樹は、第3ラウンドにヒジで切られてTKO負け。セーンアティットが一枚上手な蹴りと、蘇我の攻めを見透かす中、諦めない捨て身の攻めはいつもの蘇我。5月に爆椀・大月晴明に劣勢に立たされるも、倒すか倒されるかの好ファイトを展開して判定で敗れ、8月には元・ラジャダムナン系スーパーバンタム級チャンピオンのペッシーニ・ソー・シリラットにも激戦の末判定で敗れましたが、ムエタイ第一線級の倒しに来るタイプとの対戦を好む試合ばかり。激戦の末、倒して勝つことも多く人気を誇るが、現在はこれで3連敗と今後の巻き返しロードの展開が注目されます。

◆55.0kg契約3回戦

日本バンタム級チャンピオン=瀧澤博人(ビクトリー/55.0kg) VS チャンプアレック・ゲッソンリット(タイ/55.2kg)

勝者:瀧澤博人 / 3-0 (主審.椎名利一 / 副審.仲 30-27. 桜井 30-26. 和田 30-28)

瀧澤博人は200グラムオーバーで来たチャンプアレックに危なげない圧倒。来年1月には世界へ向けたビッグマッチが予定されます。

◆52.0kg契約3回戦

日本フライ級チャンピオン=麗也(高松麗也/治政館/51.8kg) VS クックリット・ゲッソンリット(タイ/54.0kg)

勝者:麗也 / 3-0 (主審.仲俊光 / 副審.椎名 30-27. 桜井 30-26. 和田 30-27)

麗也は2kgオーバーで来るクックリット・ゲッソンリットにパンチでダウン奪って判定勝利。倒しきれなかったことに不満の表情ではありましたが、2kgオーバー相手に圧勝。

ビクトリージムから出場した選手は6名で2勝3敗1分。ランカー以下は負けが多かったようですが、日本フェザー級3位.石原将伍(ビクトリー)は元・ルンピニー系フェザー級チャンピオンのナコンレック・エスジム(タイ)にKO寸前の計3度ダウン奪うも、ナコンレックも強いパンチで油断ならない捨て身の反撃あって大差判定勝ち。瀧澤博人と共に2人が勝利を挙げました。日本vsタイ国際戦としては3勝1敗でした。

◆『CHACHACHA』『LAMBADA』の石井明美さんがミニコンサート

休憩の合間にもうひとつのイベント、石井明美さんのミニコンサートで過去ヒット曲の『CHACHACHA』と『LAMBADA』を唄いました。テンポのいい曲とまたちょっと懐かしい曲に休憩時間ながら、観衆も聴き入っている人が多く、終わった後も拍手がたくさん鳴り響いていました。

「昔から、お父さんがキックボクシングを見ていて、テレビでは(私も)観ることあったんですが、こうやって実際にまさか自分がリングの中で唄えるとは。どのようなタイムテーブルになるのかなと見てみたら、唄う場所は“リングの中”と聞いてから気分が高まっています。」という石井明美さんでした。現在もテレビには昔ほど頻繁ではないですが、歌番組に出演されているようです。

石井明美さん初のキックのリングでミニコンサート

今年最後の興行は、12月13日(日)に後楽園ホールでの目黒藤本ジム主催興行、日本ライト級チャンピオン.勝次(目黒藤本)の初防衛戦、3位.春樹(横須賀太賀)の挑戦を受けます。先日のNO KICK NO LIFEで黒田アキヒロ(フォルティス渋谷)に逆転負けを喫した勝次のメンタル面と技術の建て直しがどういう展開に持っていくか興味ある一戦となります。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

◎キック新時代を牽引するRIKIXジムの「NO KICK NO LIFE」
◎ルール変更の紆余曲折から辿る日本キックボクシング界の栄枯盛衰クロニクル
◎新日本キック「MAGNUM39」──トップ選手のビッグマッチと若いチャンピオンたち

タブーなき総力取材!「脱原発」×「反戦」の共同戦線雑誌
『NO NUKES voice(ノーニュークスヴォイス)』第6号
11月25日発売!

「年末ジャンボ」狂騒曲!所ジョージ、米倉涼子、原田泰造らが銀座に現る

一攫千金を! 宝くじの当選欲に飢えた人々が銀座に集結。11月25日、「年末ジャンボ宝くじ」の販売初日とあって、すでに朝6時から300人を超える人が今か今かと「西銀座チャンスセンター」の前で「年末ジャンボ宝くじ」の発売を待っていた。

そんな中、普通の芸能人、またそれを取材するスタッフならまず寝ている午前8時40分から「西銀座 チャンスセンター」前で「年末ジャンボ宝くじ&年末ジャンボミニ7000万記念イベント」なるイベントが開催。所ジョージ、米倉涼子、原田泰造ら「宝くじCM」に出ているメンツが集まり、1等賞金が7億円、前後賞が各1億5000万円ということで、「10億円分の札束を積み上げたツリー」の前で「もし1億円当たったらどうするか」をテーマにMCを展開するという、必死に並んでいる客からすればなんともむかつく〝ちゃらいイベント〟が行われていた。


カメラ約50台がひしめくなかで、「もし10億円が当たったら」というテーマでトークは進む。米倉涼子が「セレブ留学」、原田泰造が「サウナ経営」、所ジョージが「世田谷のガレージを改造する」というなんのひねりもない答えをフリップに書 いて、スタッフだけの乾いた笑いと拍手が、雨模様の空にむなしく響いていた。

所ジョージが「俺のところなんか朝着いたとたん、連れてきたスタッフがいつのまにかいないと思ったら、宝くじをいつのまにか買いに言っていたよ」などと購入を誘導するような台詞を吐けば、女性MCが原田に「どこで宝くじを買う予定ですか」と聞くと「あちこちで買います。今日もマネージャーにここで(西銀座チャンスセンター)で買いに行ってもらいましたけど」と暗に購入を勧めれば、米倉も「ぜひ年末ジャンボ宝くじを買ってこのツリーを一度、自宅で見てみたいです」とまるで街中で「年末ジャンボ」のコマーシャル撮りが行われているのではないか、というわざとらしさだ。


米倉たちは、札束のツリーを目の前に奪い合うようなポーズをしてお茶目なフォトセッションになっていたが、実はスタッフが「撮影禁止」という札を持って立ったポイント(パーティションで仕切られていた)の裏では売り場があり、客がタレントたちをうらめしそうに見ていた。

「この仕切り線が天国と地獄を分けているよな。何が夢の10億円だよ。3人あわせれば10億円くらいありそうなメンバーだよな」とサラリーマン風の中年男性が友人とおぼしき若い男につぶやいていた。囲み取材では、米倉が私生活のことを聞かれるのを避けたためか、原田と所だけがインタビュアに対応し、シナリオありきのやりとりをこなした。

「まあ、庶民と金持ちタレントの差がクリアになったイベントだったな」と見物客。イベント終わりで大粒の雨が落ちてきて、濡れながら長蛇の列を作る客たちがまるでこの「年末ジャンボ」狂騒曲に踊らされたようにも見えた。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。
◎愛国的な韓国人や日本のネトウヨが卒倒しそうな韓国艦「テ・ジョヨン」の姿
◎美しきムエタイ女子リカ・トングライセーンのど根性ファイトに大喝采!
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化

「脱原発」×「反戦」の共同戦線雑誌 『NO NUKES voice』第6号が11月25日発売開始!

 

第3回を迎え、ANTIFAのパレード/デモとなった「東京大行進」

JR新宿駅の南口改札付近は今から約3年前に、演説中の在特会関係者が、「うるさい」と抗議をした老人を暴行した場所である。しかし今日はその前を、「差別をやめよう! 一緒に生きよう!」というコールと「SAY NO TO RACISM」などのプラカードを掲げた一団が、笑顔で通り過ぎていった。
11月22日、パレード『東京大行進2015』が、新宿の中央公園を起点に約4キロに渡って開催された。東京大行進は「差別を許さない。一緒に生きよう」をテーマに、2013年9月から始まった。人種や国籍、ジェンダーその他の偏見に基づくすべての形態の差別に反対するためのもので、今年で3回目を迎える。今回は4つのフロート(梯団)が登場し、それぞれ「I AM THE BEST ?? ?? ? ??」「人種差別撤廃推進施策法案のすみやかな成立を!」「ファシズムを許さない」「Refugees Welcome! Bring The Noise, Tokyo 難民ウェルカム! 騒げ東京!」とテーマを掲げ、音楽やスピーチなどで盛り上げていた。

フロートはそれぞれに違ったカラーを持ち、道行く人達の目を引いていたが、なかでも注目されていたのは「ファシズムを許さない」若者による第3フロート、「YOUTH AGAINST FASCISM」(Y.A.F)だろう。SEALDsが参加し、「憲法守れ!」「安倍は辞めろ!」「民主主義ってなんだ?」の、おなじみのコールを繰り返していたからだ。メンバーの何人かは過去2回の行進にも参加していたが、フロートとして参加したのはこれが初めてになる。アップテンポで新宿を軽やかに駆け抜ける姿に、「SEALDsだ!」などの声が沿道からあがっていた。

しかし同時に、
「彼らは、差別反対って言わないんだ……」
という声も聞こえてきた。そして一部参加者からも「ワシントン大行進へのリスペクトから始まっているのだから、差別反対に絞った方がよいのではないか」「政権批判は、主張がぶれている気がする」などの意見が、パレード終了後にあがっていた。
なぜ差別反対で始まったにも関わらず、政権批判を盛り込んだのか。それに対して、実行委員代表の西村直矢さんは言う。
「これは東京大行進2015がANTIFA(アンチ・ファシズム)のパレード/デモでもあり、現政権が排外主義を内包する極右である以上、反安倍政権の主張が出現するのは必然だと私は考えています。そしてすべての参加者に通底するのは、自らの社会を自ら正し守るというポジティブな意識ではないでしょうか」と。つまり現政権が右傾化にかじを切り続けている以上、その存在を許容していては差別問題も解決には至らない。あらゆる差別に反対するなら、政治の在り方そのものを変えなくては、道が開けないのかもしれない。
そしてもうひとつ、これは私自身も被差別当事者として残念に感じてやまないのだが、今の日本には、差別問題に対して憤りや関心が向かないマジョリティが多数存在する。そんな彼らにいくら「差別はいけないことだ」と訴えても、なかなか響かない。しかし自身の生活と密接している政治についてなら、関心や怒りを持つ人の数はぐんと増える。自分事への関心をきっかけに、日本で起きているレイシズムにも目を向けてもらえたらと、個人的には思う。
「すべての被差別者や支援者が連帯することは、1人が100歩進むのではなく、100人で1歩前に踏み出せることになる。より広い連帯のなかで、在日が抱える差別問題を問い直して行動すれば、運動の幅も広がっていくと思う」
これは今年もパレードに参加していた、上瀧浩子弁護士が第1回の頃に話していたことだ。今年の第1フロート先頭で横断幕を掲げていたのは、反差別を訴え続けてきた民主党の有田芳生議員と、政権与党に反対の立場を取る共産党の池内さおり議員、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士、そして東京レインボープライドの山縣真矢共同代表だった。違う問題に取り組む彼らが一緒に歩くように、より広い連帯をしていくことで、重たいドアをこじ開けることができるようになるかもしれない。

2時間に渡るパレードには約2500人(主催者発表)が参加し、無事に幕を閉じた。しかしながらパレードの最中、参加した児童に向かってモノを投げつける事件が起きている。幸い大事には至らなかったものの、これは立派な犯罪である。子どもをターゲットにしていることも、卑劣極まりない。このような犯罪を未然に防ぐという課題はあるものの、第4回を楽しみにしながら、2016年を待ちたいと思う。

▼朴 順梨(パク・スニ)
1972年、群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。雑誌編集者を経てフリーライターに。主な著作に北原みのりとの共著『奥さまは愛国』(河出書房新社)、『離島の本屋』、『太陽のひと ソーラーエネルギーで音楽を鳴らせ!』(共にころから)など。ヘイト・スピーチに抗うカウンターの姿を追った『秋山理央写真集 ANTIFA アンティファ ヘイト・スピーチとの闘い 路上の記録』に収録された『「私」と秋山理央、新大久保の路上にて』も話題に。

歌舞伎町ぼったくり裏事情《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

外国人が同国人を安心させてぼったくりするのは「同胞ぼったくり」なんて呼ばれている。
「韓国人や中国人が同胞をだますのが多いですね。たとえば、『私が出資しているから大丈夫』とか『観光ガイドにはない裏情報で長い間、日本にいる僕しか知らない』として、ぼったくり店にぶちこむ。出てきた客に文句を言われる前に姿を消す」と韓国人キャッチ。

影野臣直氏氏。20歳の頃、大学生ながら歌舞伎町でぼったくりを始める

◆歌舞伎町の「食物連鎖」

こうした「ぼったくり」は、歌舞伎町ならではの「食物連鎖」だと影野氏は指摘する。

「ホステスがホストに金をつぎこむ。そしてホストが遊んでぼったくりに遭う。ぼったくりで儲けた男の連中がホステスにつぎこむ、という風に回転する。私は、ぼったくりが減らないひとつの原因はキャッチが増えたことによると考えています。昔は脱サラで一攫千金を夢見てキャッチになりたがる人がたくさんいたんですが、最近は、ほかの業界で使いものにならなくなった連中にくわえて、半グレのような不良が『ひとまずキャッチでもやるか』と気軽に入ってくるようになった。僕らがぼったくりをしていた時代はそれが本業なのでもう少し人情もあったものです。客が数十万円を払ってショックを受けているところへ、私たちも立場があるから、せめて泣き半にして、半分にしましょう。30万なら15万に、という人情があった。それに比べるといまのぼったくりは、すぐ暴力をふるってしまい、まるで余裕がないのです。それが、まるで弱肉強食の『食物連鎖』、キャッチの声のかけかたも強引になる。それで警察がさらにきつくマークする」

不良少年たちが安易にキャッチになることが確かに増えた。歌舞伎町では、未成年との淫行をガイドする連中も増えているという。

◆事件性があれば警官はいつでも容疑者をパクれる

今年6月10日、歌舞伎町交番に「ぼったくり被害に遭った」と駆け込んできた客を警察が保護し、新宿署へ搬送、そして加害者側の店員を取り調べた。この手の弁護士に強いぼったくり側の弁護士が登場しても警察は怯まなくなっている。

「飲食店がこれまでバカのひとつ覚えみたいに『民事不介入』を振りかざして調子にのっていたからです。いくら民事不介入といっても、事件性があれば警官はいつでも容疑者をパクれる(逮捕できる)。これは借金の取り立て、地上げの立ち退き、どんな民事上の事件でも、いきすぎた行為には恐喝等で、事件送致できますし、これは僕らが逮捕された時代からあまり高圧的な態度で相手を畏怖させたり暴力行為、また「飲み代を払え」と強く請求することは犯罪となります。私自身も強盗と恐喝2件で逮捕されたのですからね。これまで逮捕された店側の人間は、略式起訴で罰金50万円以下程度だったところ今後は正式な起訴(地裁での公判請求)もありうるので、そうなれば店員は20日間の検事勾留もついて身柄拘束されるでしょう」

これまで「文句があるなら警察に行きましょう」と自ら客を連れて交番前に行き、警察が対応しないことを嬉々として見せつけていた連中がいたが、これだけ警察が本気になると交番前のパフォーマンスもできなくなる。

こうなるとキャッチは立場がますます弱くなり、最近は「4000円ぽっきりだというなら証拠に一筆書いてくれ」とスマートフォンで顔を撮影されることもあるという。

「ただ、こうなると店側もまた新しい抜け道を探すでしょう。警察にもメンツがありますから街頭の防犯カメラでキャッチと客のやりとりを無断で録音したり、客を装って店内に潜入する囮捜査など、不当捜査があるかもしいれませんし、泥沼のいたちごっこになる可能性もあります」と影野氏。

苦しいキャッチはさらに悪質化。「私に前金を払ってください。追加一切なし」といって、客から路上で料金を受け取り店に紹介。店側は後に「金をもらってない」と再請求するケースもある。

「あまりに極端なぼったくりが頻発すると、今後は条例を強化した改正もありうるでしょう。たとえば料金表について営業許可を申請する際に東京都公安委員会に届け出る仕組みとか。国家権力が店の営業にも関与するようになると、歌舞伎町の飲食店は成立しなくなりますよ」(影野氏)

今日もまた、歌舞伎町では多くのキャッチが「4000円ぽっきり」などと客に声をかけているが、その動向は歌舞伎町の治安に直結している。

◆警察監視強化で歌舞伎町から池袋、上野、錦糸町にシフトするぼったくり店

10月上旬、ある土曜に歌舞伎町を歩いていると、まったくキャッチを見かけなくなった。見かけるのは、居酒屋のユニフォームを着て「3000円で飲み放題、いかがですか」と声をかけている“合法な声かけ”の店員たちだけ。

歌舞伎町のスナックのバーテンが言う。
「もう、キャッチをしていると、すぐに二人組で赤いベストを着た警官が『やめなさい』と止めに入る。常に見張られているのです。歌舞伎町でぼったくりは難しくなったと思います」

そして、クラブ店員が言う。
「10月上旬に、警官たちがぼったくり店やキャッチを徹底にパトロールした。『このままだと摘発されるぞ』と。それで、逮捕されては叶わないと、ぼったくり店はあわてて池袋、上野、錦糸町などに散ったのです」。 [完]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

スクープ!武黒一郎=元東電フェローを直撃! 大注目の総力特集は「脱原発と反戦・反安保」!

11月25日発売開始!『NO NUKES voice』第6号!

原発は菅直人×武黒、反戦はSEALDs×ハンスト学生の『NO NUKES voice』第6号!

この夏は熱かった。11月も後半になり記憶が薄れかけている向きもあろうが、安保法案をめぐる抗議行動は国会周辺だけでなく全国で多彩に闘われ、そこではこれまで少なかった若者の姿があった。その中心としてメディアの寵児にのし上がった感すらある「SEALDs」。中心メンバーの奥田愛基さんは国会でも発言するなど多くの注目をあつめた。「本当に止める」、「民主主義ってなんだ」といたフレーズがネット上でも飛び交い、大きな話題となった。

だからこそ、本日11月25日発売の『NO NUKES voice』(NNV)第6号の特集は「脱原発と反戦・反安保」だ。

◆菅直人元首相の「告白」から見えてくるマスメディアが伝えてこなかった真実

まず、特集の頭を飾るのは、当時首相であった菅直人さんの激白だ。「いまこそ、私の話を聞いてほしい なぜ、あの時、情報が正しく伝わらなかったのか?」は、反原発運動に長年携わってきた槌田敦さん(物理学者)が聞き手となることにより、他媒体では決して実現できない踏み込んだ事実をいくつも掘り起こしている。首相官邸内でどのような思案がめぐらされたのか、情報は正確に伝わっていたのか、最高責任者として事故直後福島に飛ぶ決意をした理由とは……。息をのむような事実がこのインタビューでは明らかにされている。

少しだけ種明かしをすれば、「菅インタビュー」は今日のマスメディアが重要な事柄を全くと言っても過言でないほど「伝えていない」ことを示す証拠を読者に提供してくれる。

◆「SEALDs」奥田愛基に鹿砦社松岡社長が挑む激論生録インタビュー!

「SEALDs」奥田さんへのインタビューは発行人である松岡社長自らが敢行した。このインタビューは「提灯持ち」視点からのそれではない。よってこれまで他のメディア(一部右派メディアを除く)で紹介されたのとは全くことなる角度から遠慮なく疑問がぶつけられており、「SEALDs」現象が一体何だったのかを理解するためには必読だ。

同時にやはり松岡社長自ら斬り込んだミサオ・レッド・ウルフさんへのインタビューも「激論」と表現しても過言ではないだろう。「反原連」の指導者として、これまでもNNVに登場したミサオ・レッド・ウルフさんへの松岡直撃は予定調和と対極に位置する。反・脱原発運動が今後進むべき道筋、3・11後これまで歩んできた道程を振り返り、成果と問題点を浮かび上がらせる示唆に富んでいる。「反原連」支持者、「反原連」に違和感を抱く方双方にとって読み逃すことが出来ない。

◆「SEALDs」現象と対を成す「ハンスト実行委員会」の学生たちの座談会実現!

若者の活躍では「ハンスト」を戦術に闘った「ハンスト実行委員会」の座談会は内容において「SEALDs」現象とは一線を画す「硬派」のそれと言えよう。僅か10数人のメンバーが4人のハンスト実行者を支え、最長149時間のハンストを戦い抜いた学生たちが見据える未来は「現状肯定」ではなかった。「SEALDs」現象との対比は必ずや読者に強い刺激となるだろう。

◆鹿砦社が執念で実現した武黒一郎=元東電副社長のおっかけスクープルポ!

そして、鹿砦社といえば名物「直撃取材」だ。今回のターゲットは元東電副社長で検察審議会により強制起訴が決定した「武黒一郎」だ。我が取材班の執念は果たして実ったのか……。捕捉した! 武黒の変わり果てた姿を長時間の張り込みの末に自宅で激写に成功!武黒と取材班のやりとりも執念のなせる技。NNV取材班の執念恐るべしである。

◆上野千鶴子さん、鎌仲ひとみさんの熱きインタビュー、各地の運動報告もますます充実!

他にも社会学者の上野千鶴子さん、映画監督の鎌仲ひとみさんなど熱きインタビューが盛りだくさんだ。そして、特集を締めるのは今号で編集長を降りる松岡社長による「解題 現代の学生運動―私の経験に照らして」である。自ら「SEALDs」や「ハンスト実行委員会」に接触し、語った松岡社長にとって「学生運動」は他者のそれではなく、現在の彼を規定している一部である。自らの経験とこんにちの「学生運動」を解析し若い世代へ送る辛口のエール。この文章は「ヘサヨ」、「ブサヨ」といった語彙を持つ方々からはたいそうな顰蹙を買うであろうし、賛否両論激論を喚起すること必至だ。

運動報告では経産省前テント広場裁判「被告」の淵上太郎さんが東京高裁の不当判決を糾弾し、高木久美子さん(笑顔でつながろ会代表)、本間龍さん(元博報堂)、渋谷三七十さん(ライター)、納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)、中村通孝さん/松浦寛さん(FB9条の会)など全国各地の情報が満載だ。

雑誌は「総力特集」、「全力取材」をキャッチコピーに多用するが、NNV6号は誇張抜きに取材班が「総力」を挙げた濃密な報告と思想と行動が詰め込まれている。今すぐ書店へ! (田所敏夫)

タブーなき総力取材!「脱原発」×「反戦」の共同戦線雑誌
『NO NUKES voice (ノーニュークスヴォイス)』 第6号
11月25日発売!

●主な内容●
秋山理央(映像ディレクター、フォトジャーナリスト)
ALL STOOD STILL Vol. 6『冬ニモマケズ』
[報告]淵上太郎さん(経産省前テントひろば裁判「被告」)
経産省前テント裁判控訴審 東京高裁不当判決に抗議する!
[報告]本誌特別取材班
福島原発事故A級戦犯=武黒一郎(東電元フェロー=副社長)を直撃!

[特集]脱原発と反戦・反安保―世代を超えて
[インタビュー]菅直人さん(元内閣総理大臣)
いまこそ、私の話を聞いてほしい なぜ、あの時、情報が正しく伝わらなかったのか?
[インタビュー]上野千鶴子さん(社会学者)
知っていたのに 何もしなかった私も 共犯者だった
[インタビュー]鎌仲ひとみさん(映像作家)
映画と一緒に旅しながら民主主義のエクササイズ続ける
[インタビュー]Misao Redwolf さん(首都圏反原発連合)
再び脱原発のコールの爆発を!──今後の超党派市民運動の行方
[提案]佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
うたの広場
[インタビュー]奥田愛基さん(「SEALDs」メンバー)
デモするたびにパクられてたら 俺、国会行ってないすよ
[座談会]学生ハンスト実行委員会
私たちは直接行動で状況を切り開こうとした
[報告]松岡利康(本誌発行人)
解題 現代の学生運動―私の体験に照らして
[報告]高木久美子さん(笑顔つながろ会代表)
3・11 放射能汚染に負けない! 笑顔でつながり、みんなで立ち上がろう!
[報告]本間龍さん(元博報堂社員、作家)
原発プロパガンダとは何か?(第四回) 福島民報・福島民友(三)
[報告]渋谷三七十さん(ライター)
地獄への道案内は罪! もはやつける薬がない「原発推進メディア」を斬る!
[報告]納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(5)
このシリーズの連載を始めた真の意味を、そろそろ打ち明ける時がきた……
[運動情報]中村通孝さん/松浦寛さん(FB憲法九条の会)
原発をゼロにしてから死ぬのが、大人の責任だと思う
ほか