広島の外国人労働者が流出する理由 「労組代表」の筆者の説明で納得の町幹部 さとうしゅういち

介護福祉士である筆者は、広島県安芸郡の介護施設(以下、弊社とします)に派遣される形で勤務しています。また、広島県内の自治体労働者や公共関連の労働者で構成される「広島自治労連」の執行委員をこの10月から拝命しています。

以前、ご紹介したとおり、弊社では外国人労働者が多く働いておられます。しかし、最近、次々と辞めていかれます。賃金のより高い東京に行かれるのです。すぐに新人の外国人労働者が入ってこられるのですが、数か月でまた東京の介護施設へ転職される、という傾向が最近定着してしまっています。円安の中で、政情不安もある母国への送金をより多く確保するため、東京へ、という彼女たちの選択ですので引き留めることはできません。そんな中、筆者は、地元の自治体に対して、この問題について、改善をお願いする機会をいただきました。

筆者の属する労働組合「自治労連」が加盟している「広島県労連」が事務局となっている「国民大運動実行委員会」は、「自治体キャラバン」と銘打って毎秋、自治体首長と議会を表敬訪問し、労働や医療、福祉、教育など様々な課題の改善をお願いしています。

今回、11月8日に安芸郡内の自治体を訪れる「キャラバン」があるということで、「外国人労働者流出問題」を取り上げたいと考えていた筆者は参加させていただきました。組合の会議で、「誰か行く人はいませんか?」と募集していたので渡りに船と考えていた筆者は「あ、俺、行くわ」と手を挙げた次第です。この鹿砦社通信含めて様々な媒体でこの問題を取り上げたり、街頭演説で訴えたりする。これも大事です。

実は、11月3日に、広島県庁前で筆者の組合も参加する「県民大集会」があり、筆者も参加しました。その開会前に、医療労働者の組合・医労連が、「医療・介護職員の大幅増員と夜勤の改善」を求める署名活動をされていました。

筆者も「乱入」し、マイクを握り、「外国人労働者も広島の介護現場から流出している。日本人がやりたくないことは外国人もやりたくないのだ。いまこそ、ガツンと待遇を改善し、大幅増員で環境も改善を。」などと訴えました。しかし、やはり、行政・議会にもきちんと働きかけることが大事です。そこで、今回このキャラバンに参加した次第です。

11月8日、この日はまず、わたしにとり、組合の上司でもある広島自治労連の浜崎書記長が代表して、要請書を先方の首長(代理で担当部長)、議長(代理で事務局長)に提出しました。

提出した要請書では、国保料や介護保険料について、減免の充実や減免の周知徹底、事業主にも国保の傷病手当を求めています。物価の高騰については、医療や介護などの事業所への支援の充実を求めています。最低賃金については、1500円に引き上げることを求めています。子ども医療費については、県としても、小学生以上にも助成を行うことを求めています。存廃問題が焦点となっているJR芸備線などについては、国の責任で維持するように求めました。

その後、参加者から具体的に要請が行われました。病院の経営者からは、年間で数千万円、光熱水費の負担が増えているとの訴えがありました。医療者の団体からは経済的困窮からがんの治療などが手遅れになって亡くなった人が続出していることへの対策を求めました。

また、医療関係の労働組合役員からは「弊社ではここ数年で10円しか時給が上がっていない」と窮状の訴え。最低賃金を上げることで、韓国では一時は混乱が起きたが、現在では一人当たりGDPでも日本を抜いている、と指摘。賃上げの必要性を力説しました。

わたしは、自分の勤務先の安芸郡の弊社から東京に外国人労働者が次々と流出している問題を主に取り上げました。
(前回記事参照)

「このままでは介護現場は持たぬ。3%の政府の賃上げでは到底足りない。介護現場の大幅賃上げに協力していただきたい。」

「弊社の場合、日本人スタッフが最低賃金ギリギリ、外国人労働者がその約1割増し、派遣のわたしが1100円。それでも、外国人労働者は出て行ってしまう。円安の中で、ちょっとでも故国に送金をしないといけない彼女たちのことを思えば止められない。最近では、外国から広島に来てしばらくして東京の給料が高いことを知って弊社を辞めていく方も多い。すぐにやめられてしまうと、戦力として育たない。」

「もちろん、最低賃金と同額の時給の日本人については、若者は入ってこず、年金が足りないから働かざるを得ないという年配の方が多い。」と訴えました。

◆自治体側も筆者の要望で外国人労働者の「真相解明」

安芸郡のこの自治体では実は町長さんも外国人登録が伸び悩んでいることを「なぜだろう?」と気に掛けて、この日対応された部長さんに分析を命じていらっしゃったとのこと。そうすると、介護現場の労働者において転出が多いことがわかったとのことです。

部長さんは、わたしの発言をお聞きになって、「そういうことか?!よくわかりました。」と、納得されていました。

また、最低賃金を全国一律1500円にすることについて「東京は物価が高くて生活費も高いのでは?」という当局の方からの疑問に対しては、同行した組合幹部の方から、「東京では住居費は高いけれども、公共交通が発達している。地方はクルマに依存せざるをえず、維持費がかかるので生計費はあまりかわらない」と補足。

わたしからも、東京で育ち、県庁職員時代は山間部で仕事をした経験から、「東京は、実は安い飲食店も多い。わたしは2000年に東京から広島に来たが期待ほど安くなかった。しかし、さらに山間部に赴任すると、メシを食うところは少ないし、あっても広島市より高い。地元の商店に並ぶものも高いし品質もいいと言えない。だから、地方の最低賃金も上げないと結局、外国人も日本人の若者も流出してしまうと思う」くと、納得されていました。

今回、自治体幹部の方とも、実体験に基づいて要望をしていくことの重要性を感じました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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ピョンヤンから感じる時代の風〈11〉異常円安、日本が買われてしまう 小西隆裕

◆円安が止まらない

尋常ではない。何が起こってもおかしくない時代、これもその一つかも知れない。しかし、それにしても異常だ。それが、昨今の円安ではないか。

1ドル、148円。一昔前には、考えられない安さだ。これが年を越してまで続くと言われている。下手をすると200円を超すかも知れない。

1ドル、360円の大昔、ドル危機以前への逆戻りだ。そんな冗談も冗談でなくなってしまう。そんな勢いだ。

一体、何が起きているのか。この異常円安の原因をさぐるとともに、それがもたらす日本経済と日本への影響について考えてみたい。

◆なぜ止まらないか、異常円安

言われているのは、米FRBの政策金利の引き上げだ。このところうち続く、0.75%を前後する連続大幅利上げ。合計すると4%を超えると言う。

この常軌を逸した政策利上げが、大挙しての円売りとそれにともなう急激な円安の主因になっているのは間違いない。

問題は、なぜ今この異常な政策金利の引き上げかということだが、それについては、現在米国で進行中の高インフレ、景気の過熱に水を掛けるためだという公式見解以上のものは出てきていない。

だが、この異常円安の原因はFRBのこの異常な政策利上げ以外にもあるように思える。それは、日本自体の「価値」が下落しているからではないだろうか。

特にそれは、この間のウクライナ戦争を契機に日本の「原料・燃料小国」「食糧小国」としての姿が浮き彫りになってしまったからではないかと思われる。

実際、この戦争、特に、それに対する米欧側のロシアへの制裁を通して、原油やガス、穀物など世界的な原料・燃料難、食糧難が顕在化しているが、そこでそれらの自給率がひときわ低い日本の姿が目立つようになったということだ。

それがFRBの政策利上げで生まれた円安に拍車を掛けたというのが、この異常事態の本当のところと言ってのよいかも知れない。

◆異常円安、何が問題なのか

物事何でもそうだが、円安にも良いところと悪いことがある。

良いこととしては、日本からの輸出がそれだけ安くなって、有利になることが挙げられる。観光も同じことだ。実際、外国人観光客の日本を見る目が熱い。このところ外国からの日本観光が急激に増えていると言う。

しかし、今回の円安、悪いことの方が多いように思える。まず、輸入品の高騰だ。それがウクライナ危機による物価高騰に拍車を掛ける。

それにもう一つ、怖いことがある。日本買いの急増だ。安くなった日本の物件に外国人バイヤーが群がってくるようになる。

時に、「米中新冷戦」。米国は、同盟国、それも対中対決の最前線である日本に日米統合を呼びかけ、日米の経済統合、一体化に向け、米国企業の日本浸透を奨励している。そのために、折からの異常円安は、これ以上にない絶好の好条件になっている。

米国による日本買い。軍事、経済をはじめとするあらゆる領域。あらゆる分野に亘る日米の統合、一体化、すなわち日本の米国への溶解がこの異常円安を通して、一気に進むのではないか。

そのことを考えると、FRBによる政策金利の引き上げ、ひいてはウクライナ戦争それ自体に至るまで、米国による策謀に見えてくるのは、一人私だけであろうか。

小西隆裕さん

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年、ハイジャックで朝鮮へ

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)
『一九七〇年 端境期の時代』
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「『しばき隊がリンチ事件を起こした』等は、根拠のないデマ」とツイートした高千穂大学の五野井郁夫教授、事実の認識方法に重大な欠陥 黒薮哲哉

研究者の劣化が顕著になっている。大学の教え子にハラスメントを繰り返したり、暴力を振るったり、ジャーナリストの書籍を盗用したり、最高学府の研究者とは思えない蛮行が広がっている。事件にまでは至らなくても、知識人の相対的劣化は、ソーシャルメディアなど日常生活の中にも色濃く影を落としている。

11月8日に「Ikuo Gonoï」のアカウント名を持つ人物が、ツイッターに次の投稿を掲載した。

こちらの件ですが、担当した弁護士の神原元先生@kambara7の以下ツイートの通り、「しばき隊がリンチ事件を起こした」等は、根拠のないデマであったことがすでに裁判で証明されており、判決でもカウンター側が勝利しています。デマの拡散とわたしへの誹謗中傷に対する謝罪と削除を求めます。

「しばき隊」が起こした暴力事件を「根拠のないデマ」だと摘示する投稿である。

「Ikuo Gonoï」のアカウント名を持つ人物が11月8日に投稿したツイート
 
「しばき隊」のメンバーから殴る蹴るの暴行を受け、全治3週間の重傷を負った大学院生(当時)のM君

◆2014年12月17日の事件

「しばき隊」というのは、カウンター運動(民族差別反対運動)を進めていた組織で、2014年12月17日の深夜、大阪府北区堂島の北新地で複数のメンバーが飲食した際に、大学院生をめった打ちにして、瀕死の重傷を負わせた事実がある。

この日、カウンター運動の騎士として著名な李信恵を原告とする反差別裁判(被告は、「保守速報」)の口頭弁論が大阪地裁であった。

閉廷後、李らは飲食を重ね、深夜になって事件の舞台となる北新地のバーに入った。そして「しばき隊」の仲間であるM君を電話で呼び出したのである。M君の言動が組織内の火種になっていたらしい。

M君がバーに到着すると、李はいきなりM君の胸倉を掴んだ。興奮した李を仲間が制したが、その後、「エル金」と呼ばれるメンバーが、M君をバーの外に連れ出し、殴る蹴るの暴行を繰り返し、全治3週間の重傷を負わせたのである。

M君は事件から3カ月後の2015年2月に、警察に被害届を出した。2016年3月、大阪地検は李信恵を不起訴としたが、エル金に40万円、それに他の一人に10万円の罰金を言い渡した。

「エル金」は、M君に対して次のような書き出しの謝罪文を送付している。

この度の傷害事件に関わり、ここに謝罪と賠償の気持ちを表すべく一筆文章にて失礼致します。私による暴行によってMさんが負うことになった精神的及び肉体的苦痛、そして甚大な被害に対して、まずもって深く真摯に謝罪し、その経過について自らがどのような総括をしているのかをお伝えしたいと思います。(略)

暴力行為の真最中、その時点で立ち止まり、過ちを改める行動に移すべきだったし、酔いがさめ興奮が沈着した時点で、もっと迅速な事態収拾を図っておれば深刻化を軽減できたかもしれません。

また李信恵も、次のような謝罪文を送っている。

●●さんがMさんに一方的に暴力をふるっていたことも知らずに店の中にいて、一言も●●さんに注意ができなかったことも申し訳なく思っています。

その後、2017年、M君はエル金や李信恵ら5人に対して約1100万円の支払いを求める損害賠償裁判(民事)を起こした。この裁判でも、李の責任は免責されたが、大阪地裁は「エル金」と伊藤大介に対して約80万円の損害賠償を命じる判決を下した。大阪高裁で行われた控訴審では、エル金に対して約114万円の支払いを命じる判決を下した一方、伊藤に対する請求は棄却された。

つまりこの裁判で勝訴したのはM君だった。李信恵の責任が免責されたことや、怪我の程度に照らして損害賠償額が少額だったことに、M君は納得しなかったものの、裁判所は暴力事件が実在したこと実態は認定したのである。この点が非常に重要だ。五野井教授の「『しばき隊がリンチ事件を起こした』等は、根拠のないデマであった」とするツイートは、著しく事実からかけ離れているのである。その誤情報をツイッターで拡散したのである。

ちなみにこの事件では、著名な人々が申し合わせたように「リンチ事件」を隠蔽する工作へ走った。『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波新書)の著者・師岡康子弁護士は、その中心的な人物である。マスコミも一斉に隠蔽の方向へ走った。唯一の例外は、『週刊実話』と鹿砦社だけだった。

◆ツイッターという社会病理

冒頭のIkuo Gonoïによるツィートに話を戻そう。繰り返しになるがIkuo Gonoïは、「担当した弁護士の神原元先生@kambara7の以下ツイートの通り、『しばき隊がリンチ事件を起こした』等は、根拠のないデマであったことがすでに裁判で証明されており、判決でもカウンター側が勝利しています」と投稿している。

 
高千穂大学(経営学部)の五野井郁夫教授

わたしは投稿者の人間性に好奇心を刺激され、Ikuo Gonoiという人物の経歴を調べてみた。その結果、高千穂大学の著名な国際政治学者・五野井郁夫教授であることが分かった。五野井教授は、上智大学法学部国際関係法学科を経て、2007年3月に東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻で学位を取得した。日本を代表する知識人である。民主主義に関する研究の専門家である。

朝日新聞の『論座』にも繰り返し投稿している。また、『「デモ」とは何か ―変貌する直接民主主義―』(NHK)などの著書もある。

五野井教授が教鞭をとる高千穂大学は、1903年に母体が設立された歴史ある大学である。そこを本拠地として、五野井教授は高等教育の仕事に携わっているのである。

しかし、五野井教授のツイッターを見る限り、社会科学を職業とする者にしては、事実の裏付けを取る能力に疑問を感じる。「事件を担当した弁護士の神原元先生」の言葉を鵜のみすることが、客観的な事実を確認するプロセスとしては充分ではないはずだ。五野井教授は、記事を執筆する際にどのように事実を捉えてきたのか、これまでの著述の裏付けも疑わしくなる。少なくとも、しばき隊による事件が「根拠のないデマ」だとする認識は、社会科学の研究者のレベルではないだろう。想像の世界と客観的な事実の世界の区別が出来ていないからだ。

さらには五野井教授は、高千穂大学の学生に対して、どのようなリサーチ方法を指導しているのかという疑問も浮上する。

2014年12月17日の深夜にしばき隊が起こした暴力事件の裏付けは、裁判の判決や加害者による書簡、さらには事件の音声記録など広範囲に存在している。それを無視して、被害者のM君を傷つける暴言を吐くのは、「南京事件はなかった」とか、「ナチのガス室はなかった」と叫んでいる極右の連中と同じレベルなのである。ましてこうした言動の主が最高学府の研究者となれば、ソーシャルメディアの社会病理が別の問題として輪郭を現わしてくるのである。
 
◆五野井教授に対する質問状
 
わたしは五野井教授に、次の質問状を送付した。五野井教授からの回答と併せてて掲載しておこう。

■質問状

五野井先生が、11月8日付けで投稿された次のツィートについて、お尋ねします。

「こちらの件ですが、担当した弁護士の神原元先生@kambara7の以下ツイートの通り、「しばき隊がリンチ事件を起こした」等は、根拠のないデマであったことがすでに裁判で証明されており、判決でもカウンター側が勝利しています。デマの拡散とわたしへの誹謗中傷に対する謝罪と削除を求めます。」

まず、「『しばき隊がリンチ事件を起こした』等は、根拠のないデマであったことがすでに裁判で証明」されたと摘示されていますが、裁判では主犯のリーダに対する損害賠償命令(約114万円、大阪高裁)が下っており、「根拠のないデマ」という認識は誤りかと思います。先生は、何を根拠に「根拠のないデマ」と判断されたのでしょうか。

次に先生が記事や論文等を執筆される際の裏付け取材についてお尋ねします。引用したツィートを見る限り、原点の裁判資料を重視せずに、神原元弁護士の言動を事実として鵜呑みにされているような印象を受けます。具体的に先生は、どのようにして事実を確認されているのでしょうか。また、大学の学生に対しては、この点に関してどのような指導をされているのでしょうか。

11月14日の2時までにご回答いただければ幸いです。

記事の掲載媒体は、デジタル鹿砦社通信などです。

■回答

 担当者様
 上瀧浩子弁護士を通じて鹿砦社にお送りした通りです。
 以上。

上瀧浩子弁護士による書面の存在を確認したうえで、続編は来週以降に掲載する。わたしが質問状を送付したのが10日で、五野井教授の回答が届いたのは11日なので、上瀧弁護士は迅速に回答を鹿砦社送付したことになる。このあたりの事実関係の確認も含めて、質問と回答がかみ合っているかを検証した上で、五野井教授の見解を紹介する。

※人物の敬称は略しました。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

《関連過去記事カテゴリー》
しばき隊リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

釜ヶ崎で亡くなった医師・さっちゃん先生と共に生きる ── 11月13日(日)大阪で追悼集会『矢島祥子と共に歩む集い』開催 尾崎美代子

11月13日(日曜日)、釜ケ崎で野宿者支援活動なども精力的に関わる医師であった矢島祥子(さちこ)さんの追悼集会があります。祥子さんは、2009年11月13日、勤務先のクリニックから行方不明となり、2日後、木津川で水死遺体で発見されました。当初自殺といわれましたが、医師である両親が祥子さんの遺体に複数の傷があることから殺害されたと警察に訴えました。その後西成警察は自殺と事件の両方で捜査を進めています。祥子さんを知る方の中には自殺と考える人、事件だと考える人がいます。この記事はその両方の方に読んで頂きたいと思います。

事件があった当時、私はあれこれ多忙だったため、釜ヶ崎の夏祭りや越冬闘争などに参加できず、祥子さんも事件のことも知らずにいました。しかし、当時、西成で何が起こっていたかは鮮明に覚えています。

前年2008年のリーマンショックで職を失った人たちが、全国から釜ヶ崎に流れてきました。仕事を探す人、他の地域より比較的受けやすい生活保護を受けようとする人で、店の近くの相談所には、9時前から大勢の人が並んでいました。相談後に、彼らを勧誘しようとする業者で道はごった返していました。その多くは、生活保護者を自社のアパートに住まわせ、保護費の大半をむしりとる「囲い屋」でした。生活保護制度もしらないのか、「今なら、部屋と食事が付いて、おまけに小遣いも貰えるよ」などと書いたチラシを配っている業者もありました。

同じ年、奈良県郡山市にあったの山本病院が、生活保護者や野宿者を入院させ、必要のない手術をしたり、架空請求を行い診療報酬を不正請求していた詐欺容疑で摘発されました。この投稿は、当時、その事件を発端に、何故そんな事件が起きるのか、その背景を精力的に追ったNHK奈良支局取材班の「病院ビジネスの闇 過剰医療、不正請求、生活保護制度の悪用」を参考にしています。

この病院では、心臓カテーテル検査や、血管にステントを入れる手術が極めて多かったそうです。ステントを入れる手術は、ほかの手術に比べて負担は少なく、やりやすい手術と言われるが、病院が受け取る診療報酬は検査と手術で一回約100万円を得ていたそうです。

患者は、医師や看護師に「カテーテル手術をやれ」と執拗に言われ多くの患者が仕方なく手術を受けていました。手術を拒否し、病院を追い出された人もいたそうです。何故こんなことがまかり通るのか?生活保護者、野宿者の多くが単身者のため、相談したり、文句を言ってくれる人がいないからです。餌食になったら、とことんしゃぶり尽くされるのです。山本病院では、ある年1年で延べ437人の生活保護者を入院させていましたが、うち126人がわずか半年で亡くなっていました。

山本病院は、10年前からこのような不正行為を行っていたようで、それまで何度も通報、告発があり、その都度警察も立ち入り調査を行っていましたが、不正はなかなか掴めなかったといいます。

しかし、2009年6月21日、奈良県警は、山本病院に強制捜査に入り、7月1日、患者に心臓カテーテル検査とステント留置術をしたように装って、診療報酬170万円を騙しとった詐欺容疑で、理事長と事務長を逮捕しました。この事務長は金儲けに長けていて、理事長に「これ(手術)一発やってくれたら、今月いけますわ」などと言い、患者に不必要なMRI検査をさせたりしていたそうです。また、ステントを入れていないのに入れたと申請した患者を、病院内では「なんちゃってステント」と呼んでいたという信じられない話もあります。

その後、押収されたカルテなどから、生活保護を受けていたの50代の患者に、不必要な肝臓摘出手術を行い死亡させた容疑で、執刀医の理事長と助手の医師は業務上過失致死で逮捕されました。理事長は、手術中に男性の肝臓を傷つけ大量に出血させましたが、十分な止血や輸血をしないまま(そもそも輸血用の血液を用意していなかった)、「飲みに行く」と出かけてしまいました。残った医師が傷口の縫合手術をするも出血は止まらず、困ってしまい理事長の携帯に電話するも、理事長は出なかったそうです。

理事長には、禁固2年4月の実刑判決が下されましたが、助手の医師は、桜井警察署内で謎の死を遂げています。それについては、遺族が訴えを起こしましたが敗訴し、何があったかは解明されませんでした。

NHK奈良支局取材班が、元ヤクザ関係者にも取材した際、「うしろにいるのはヤクザもんやからな」と言われ、危険な中、身体を張った追求取材で、その背景に、患者を互いにトレード(やりとり)しあう「行路病院ネットワーク」があったことを突き止めました。彼らの中にはNPOを名乗る人もいます。もちろん正式に認可されていない、ただ名乗るだけの、それこそ「なんちゃってNPO」です。肝臓摘出手術で亡くなった男性も、大阪市内の公園で、NPOを名乗る男性に誘われています。

私は当時、こうした連中を釜ケ崎で山ほど見てきました。

そういう囲い屋をやれるのは、ビルなど所有できる経済的に余裕のある人たちです。当時、店の近くに福祉アパート(生活保護者を入居させるアパート)を始めたNPOを名乗る男性は、過去に谷町六丁目で地上げ屋をやっていたそうです。ドヤだった2畳ほどの部屋をぶち抜いて4畳ほどの福祉アパートに改装する工事を、居住する生活保護者にやらせていました。

男は、私の店に食事に来ていました。ある日、みそ汁が辛かったのか、「俺は土方じゃないぞ!」と怒鳴るので「あんた、その元土方の人から金巻き上げてるじゃないか」と大喧嘩になったことがありました。

また、ある時、店の前を3本肢の犬を連れた母親と子供が通りました。聞けば、DV夫から逃れて来たといいます。駅前で途方に暮れていたとき、怪しい業者に「生活保護を世話してやる」と声をかけられ、2人と犬1匹で6畳一間の部屋に囲い込まれました。

炊事場もなく、自炊も出来ないと母親は嘆いていました。私は、知り合いに相談し、親子を別のアパートに引っ越す手配をしました。すぐさま、囲い屋の強面な男が、私の店に乗り込んできました。

「お前か! うちの客を取ったのわ! わしはこういうもんや」と見せられた名刺には、やはりNPOとありました。実はそこのビルでは数年前まで違法な博打場(ノミ屋)をやっていたのでした。「何いってるねん、あんたのビル、前はノミ屋(博打場)だったやん」と私が怒鳴ると、男はすごすごと帰っていきました。

釜ケ崎がそんな時代だった当時、医師の矢島祥子さんは、自身が診療した患者さんの入院した病院などに足しげく通っていたそうです。ある病院では来ないでくれと言われたそうです。私も客の入院先の病院に何度も訪れたことがあります。中には、患者の多くにオムツを充てているためなのか(車いすでトイレに連れていく手間を省くため)、病院全体がむうんと匂う病院もありました。別の病院では、重病患者でも面会はロビーに限定し、病室を見せない病院もありました。多くの病院を回った祥子さんは、そこで何を見て、何を知ったのでしょうか? そこから事件に巻き込まれたのでしょうか? 真相はなかなかわかりません。

ぜひ、集いにお集まり頂き、いろんな情報を共有していけたらと思います。

追悼集会『矢島祥子と共に歩む集い』
日程:11月13日(日)13時半開場、14時スタート
場所:社会福祉法人ピースクラブ(浪速区大国1-11-1)
アクセス 大阪メトロ大国町駅下車5分

◎追悼集会『矢島祥子と共に歩む集い』11月13日(日)13時半開場、14時スタート 場所:社会福祉法人ピースクラブ(浪速区大国1-11-1)
矢島祥子医師の兄、敏さん率いる「夜明けのさっちゃんズ」ライブ。国賠で二審の勝訴が確定したばかりの桜井昌司さんも登場し、熱唱した(2021年9月13日)

◎[関連記事]尾崎美代子「あの時期、釜ヶ崎で何が起きていたか? 書籍『さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子』(大山勝男著)発刊! 11月14日(日)大阪で追悼集会「矢島祥子と共に歩む集い」開催へ!」(2021年11月10日)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)

《書評》『紙の爆弾』12月号 安倍トモ政治・旧統一教会癒着の再検証 横山茂彦

紙爆の最新号を紹介します。今回も興味を惹かれた記事を深読み、です。取り上げなかった記事のほかに、テレ朝の玉川徹処分の背景(片岡亮)、ヒラリー復活計画(権力者たちのバトルロワイヤル、西本頑児)が出色。読まずにはいられない情報満載の最新号でした。

◆安倍晋三の旧悪を追及することこそ、真の弔いになる

 
最新刊 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

国会における野田佳彦元総理の安部晋三追悼演説が好評だった。とりわけ、安倍晋三の「光」とその先にある「影」を検証することこそ、民主主義政治の課題だというくだりが、議員たちの政治家魂を喚起させたことだろう。

だがその検証は、安倍晋三の旧悪をあばき出し、現在もなお続いている安倍トモ政治を批判することにほかならない。それを徹底することにこそ、安倍晋三という政治家の歴史的評価が議論され、真の意味での弔いになるのだ。

その第一弾ともいうべきレポートが「旧統一教会と安倍王国・山口」(横田一)である。

安倍晋三が地元下関の市長選に並々ならぬ力を入れてきたのは、市長前職の江島潔の時代に「ケチって火炎瓶」(自宅と事務所への火炎瓶事件)、すなわち暴力団(工藤會)との癒着までも明らかになっていた。ちなみに、江島元市長は現在参院議員であり、統一教会のイベントに参加したことが明らかになっている。

◎[参考記事]【急報‼】安倍晋三の暴力団スキャンダル事件を追っていたジャーナリストが、不思議な事故に遭遇し、九死に一生を得た! 誰かが謀殺をねらったのか?(2018年8月18日)

安倍晋三の元秘書である現職の前田晋太郎市長もまた、旧統一教会の会合に参加していたことを定例会見で明らかにした。子飼いの政治家たちが、ことごとく元統一教会とズブズブの関係だったところに、「安倍晋三の影」(野田佳彦)は明白である。票のためなら相手が反日カルトであろうと斟酌しない、安倍晋三の選挙の強さは、ここにあったのである。

さて横田一の記事は、前田市長のあと押しで下関市立大学に採用され、今年4月に学長になった韓昌完(ハンチャンワン)が統一教会と深い関係にあるのではないかという疑惑である。

その疑惑を市議会で共産党市議に追及された韓学長は、事実無根として「虚偽告訴罪」での刑事告発を検討していると返答したのだ。

だが、韓学長が所属していたウソン(又松)大学を、安倍晋三と下村博文(安倍の子飼いで、元文部科学大臣)が訪問していた事実に、接点があったのではないかと横田は指摘する。

というのも、単科大学(経済学部)だった下関市立大学が、突如として「特別支援教育特別専攻科」なるものを新設し、教授会の9割以上の反対を押し切って韓教授を採用したからだ。

この事件がおきた2019年以降、下関市立大学では3分の1の教員が中途退職・転出しているという。学園の私物化が告発されてもいる。具体的には新設学部の赤字、市役所OBの天下りなどである。これはしかし、氷山の一角にすぎないのではないだろうか。

◆鈴木エイト×浅野健一 ── 旧統一教会問題

9月号につづいて、鈴木エイトの記事である。講演会をともにした浅野健一が鈴木の講演録を、わかりやすく紹介するスタイルだ。ちなみに、講演会の司会は「紙の爆弾」中川志大編集長が務めた。

まず第一に読むものを原点に立ち返らせるのは、カルト問題が政治と宗教の問題以前に、人権問題であるという鈴木の一貫した視点である。

そして第二に、信者たちを利用して「ポイ捨て」する政治家たちの「カルトよりもひどい」実態である。

全体にカルト統一教会の触れられなかった10年間を顧みて、ジャーナリズムが執着を持つことが必要だったのではないか。持続的、継続的な取材こそ、組織の闇を解明できるとの印象を持った。

この運動に関連する事件にも、少々触れておこう。

記事では触れられていないが、この連続講座の一か月後に開かれた「10.24国葬検証集会」において、浅野健一も参加した鈴木エイトの講演があった(記事中に記述あり)。このとき、機器の不具合で発言時間をオーバーした浅野にたいして、佐高信がクレームを付けたという。詳細は下記URLの浅野健一ブログを照覧してもらいたいが、声帯をうしなった障がい者(浅野)に、発言時間のオーバーを批判したのは明白な事実のようだ。

おそらく佐高において、初対面の障がい者ならばこのようなクレームはつけなかったであろう。かりに政治的慮りでクレームが左右されるようなら、明らかに障がい者差別である。浅野によれば佐高は過去にセクハラ事件(同志社でのイベント後の飲み会)を起こしているという。運動内部の批判は遠慮するべきではない。日ごろから批判的な論評をもっぱらとする者ほど、自分が批判されたときに謙虚になれないものだ。佐高は浅野の抗議に何も反応していないという。

◎[参考記事]10・24国葬検証集会エイトさん講演 佐高氏が浅野非難 : 浅野健一のメディア批評 (livedoor.jp) 


◎[参考動画]2022.10.24 安倍「国葬」を検証する ―講演:「自民党と統一教会の闇をさぐる」鈴木エイト氏(ジャーナリスト)、浅野健一氏(無声ジャーナリスト)、スピーチ:佐高信氏(評論家)

◆氷川きよし「活動休止」と「移籍説」の裏側

喉のポリープの手術後で、長期休養に入るとされていた氷川きよしの、事務所事情である(「紙爆」芸能取材班)。

2019年の芸能生活20周年を機に、自分らしく生きたいと(ジェンダーレス)表明したkiinaこと氷川きよし。舞台での女装や松村雄基との恋愛関係、プロ並みの料理など、スキャンダラスで華やかな魅力がファンを魅了してきた。


◎[参考動画]氷川きよし「革命前夜」in 明治座【公式】

肥った男性の女装は勘弁してほしいと思うことがあっても、kiinaの場合は別だという方は多いのではないか。LGBTQとは無縁なつもりでも、誰でもアニマ(内的女性性)・アニウス(内的男性性)があると言われている(ユング心理学)。

たとえば艦隊これくしょんや美少女ゲームに興じる男性には女体化願望があり、その願望がゲームの中の少女に同化するのだ。女性の場合はもっと露骨で、ボーイズラブ志向として、やおい小説・やおい漫画に熱中することになる。

このようなアニマを体現するリアル系が、氷川きよしの女装化だと言えるのだ。Kiinaの場合は、おそらく誰もが受け容れる美貌のゆえに、イケメン演歌歌手からロック女装、舞台での女装が歓迎されてきたのであろう。

しかるに長期休養の裏側に、事務所(神林義弘社長)の暴力的な体質があるというのだ。氷川きよしの自宅の抵当権(3億4500円)も長良プロが設定しているという。

問題は休養後に、長良プロからスムースに移籍できるか、であろう。記事のなかで氷川きよしの名付け親を、ビートたけしとしている(大手プロ役員)が、じっさいは長良プロの神林義忠会長(故人)である。ということは、芸能人がプロダクションを移籍するときに起こりがちな、芸名の商標登録をめぐるトラブルの可能性である。来年からのKiinaの休養が、つぎの活躍へのステップになるのを期待してやまない。記事ではほかにGACKTのスキャンダルもあり、美形歌手たちの危機が気になるところだ。 


◎[参考動画]氷川きよし / 限界突破×サバイバー ~DVD「氷川きよしスペシャル・コンサート2018 きよしこの夜Vol.18」より【公式】

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

日本経済新聞の「押し紙」裁判と今後の課題 ── 露呈した新聞社保護の実態  黒薮哲哉

2022年7月時点における全国の朝刊発行部数(一般紙)は2755万部(ABC部数)である。このうちの20%が残紙とすれば、551万部が配達されることなく無駄に廃棄されていることになる。30%が残紙とすれば、827万部が廃棄されていることになる。1日の廃棄量がこの規模であるから、ひと月にすれば、おおよそ1億6530万部から、2億4810万部が廃棄されていることになる。年間に試算すると天文学的な数字になる。「押し紙」は重大な環境問題でもある。

しかし、裁判所も公正取引委員会も、いまだに「押し紙」問題に抜本的なメスを入れようとはしない。新聞社の「押し紙」政策を保護していると言っても過言ではない。新聞社を公権力機関の歯車として取り込むことによりメディアコントロールが可能になるから、「押し紙」を黙認する政策を取っている可能性が高い。

 
東京大手町の日経ビル(左)(出典:ウィキペディア)

◆書面で20回にわたり減紙を申し入れるも……

筆者は、日本経済新聞(以下日経新聞)を扱う販売店(京都府)が起こした「押し紙」裁判(4月22日判決)の判決文を入手した。判決からすでに半年が過ぎているが、興味深い判決なので内容を紹介しておこう。

この「押し紙」裁判は、販売店主のBさんが2019年の春に起こした。「押し紙」により損害を被ったとして約4700万円の損害賠償などを求めたものである。

判決によると原告のBさんは、「平成28年9月から平成31年3月まで少なくとも合計20回にわたり、被告の担当者に対し減紙を求めるファクシミリを送信」した。つまり書面で新聞の「注文部数」を減らすように繰り返し申し入れていたのである。

請求の期間は2016年4月から2019年3月の3年間だが、それ以前から「押し紙」は存在したという。最も「押し紙」の量が多かったのは、2012年9月だった。次のような部数内訳である。

朝刊送り部数=3259部
朝刊実配数=2285部
残紙=974部

夕刊送り部数=3131部
夕刊実配数=1657部
残紙=1474部

残紙率は朝刊で30%、夕刊で47%である。

書面で減紙の申し入れをしたのは、弁護士のアドバイスに従った結果だった。独禁法の新聞特殊指定は、「販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む)」を禁止しているので、減紙を申し出た書面の証拠を残しておけば、裁判になった場合に、独禁法違反で請求が認められる可能性が高いからだ。

◆絶望的な判決

判決は、4月22日に下された。結果は、原告Bさんの敗訴だった。損害賠償は全く認められなかった。減紙を申し出た事を示す書面が23通も残っているにもかかわらず、杉山昇平裁判長は敗訴の判決を下したのである。

その理由として杉山裁判長は、Bさんからの書面による減紙要求を受けて、日経新聞の担当者とBさんが話し合いの場を持っていたから、「原告の減紙を求めるファクシミリは被告との協議の前提となる減紙の提案に留まるというべきであり、これをもって確定的な注文とみることはできない」というものだった。

しかし、Bさんは、「話し合いは毎月の訪店時の定例的なものであり、減部数を求めるファクシミリをたたき台にした話し合いではなかった」と話している。

 
「押し紙」の写真。新聞で包装されているのは折込チラシ。本文とは関係ありません

◆新聞特殊指定の下での「押し紙」とは

この裁判では、「押し紙」行為が不法行為にあたるかどうかが争われた。わたしは、今後の「押し紙」裁判のために、原告と被告の双方が新聞特殊指定の定義そのものを明確にする必要性を感じた。それは、2016年に起こされた佐賀新聞の「押し紙」裁判から、販売店の原告弁護団が着目した点である。

従来、「押し紙」の定義は、なんらかの形で「押し売りされた新聞」とされてきた。わたしもかつてはそんなふうに考えて、自著でも、「押し紙」の定義を「押し売りされた新聞」と説明している。しかし、佐賀新聞の「押し紙」裁判で、「押し紙」の定義に新しい観点が加わった。結論を先に言えば、「押し売りされた新聞」という定義は、正確ではない。

独禁法の新聞特殊指定の下における「押し紙」の定義は、新聞の実配部数に予備紙を加えた部数を「必要部数」と位置づけ、それを超える部数のことである。理由のいかんを問わず「必要部数」を超過すれば「押し紙」なのである。「押し売りされた新聞」かどうかは、2次的な問題に過ぎない。「必要部数」を超えて、新聞を提供すれば独禁法違反なのである。新聞社と販売店が話し合いをしたから、「必要部数」を超えて新聞を提供してもいいという論理にはならない。

京都地裁は、この点に関しては、何の言及もしていない。裁判所は、最も肝心な点についての判断を避けたのである。新聞社を保護する姿勢が露呈している。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』
タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

広島から東京へと流出する介護施設の外国人労働者たち 円安も背景に加速する労働現場の崩壊 さとうしゅういち

◆日本人の時給より1割高い外国人労働者たちが東京の介護施設に引き抜かれる現実

最近、筆者の勤務先の介護施設で外国人労働者が、東京の介護施設に引き抜かれる動きが加速しています。

筆者の勤務先では、実を申し上げると外国人労働者の時給は日本人直雇用職員より1割程度高めです。

なお、筆者自身はピンチヒッターの派遣社員ということで派遣手数料を引いた手取り時給でも、外国人労働者よりさらに高めの時給をいただいております。それでも、県庁職員時代に比べたらはるかに低いし、はるかに仕事がきついことは体感しております。

日本人よりも高めの時給を外国人に出している介護施設。しかし、それでも、外国人が東京へ流出してしまうのです。この秋、複数の外国人労働者が辞めて、東京の大手医療法人系介護施設に転職することになりました。筆者も彼女たちとは長い間一緒に仕事をさせていただいたので、一抹の寂しさは感じます。

利用者様はもっと感じておられます。「**ちゃんは辞めるのではないよね?」と何度も筆者に質問してこられ、筆者も困惑してしまいます。外国人労働者ご本人も慣れているところの方で仕事するほうが、やりやすいとはおもいます。

他方で、彼女たちの選択はやむを得ないと思います。それはそうです。東京の介護現場では、介護職員が世間一般のから比べたら給料が低いと言っても、地方の我々から見たら驚くべき給料の高さです。

彼女たちは、ここでもそうですが、会社の寮で生活しています。遊びに行くこともほとんどありません。休みも取らずに、ずっと真面目に働き、お金をためて故郷に送金しているのです。

もちろん、東京は広島に比べたら物価は高い。ただ、遊ばずに暮らすだけであれば、そんなにお金を使うわけではない。給料が高い東京で働いて故国に送金した方が効率的なのは明白です。

現在、ご承知の通り、大変な円安です。広島の給料のままでは、故郷への送金が大きく目減りしてしまいます。

そこで、より給料が高い東京へ目が向くのも当然です。

◆東南アジアの労働者から見れば、働く場としての日本の魅力は低い

また、東京のこの大手医療法人系介護施設では研修体制も充実しています。実を言うと、彼女たちの母国は政情不安です。日本で長く働くことを視野に入れると、なおさら資格を取りやすいところへ、というのもわかります。

そういう要素はあるにせよ、やはり、円安で、広島の給料では、故郷に十分な送金ができないというところが、東京への移動の背景にあるのは、ご本人と話していてもよくわかります。ご本人のためを思えば仕方がありませんし、東京でのご活躍をお祈りするとともに、故郷の政情安定化(独裁で安定するという意味ではなく健全な民主主義という意味で)を心からお祈り申し上げる次第です。

しかし、このままいけば、外国人労働者が東京へと流出し、広島の介護現場はさらに崩壊しかねません。ほかの業種でもそういう動きになる可能性は高い。さらに、彼女らの場合は日本語を最初の外国語としておぼえたということで、日本になるべく居たいとは思います。だが、これから、外国で働こうという例えば東南アジアの労働者から見れば日本は選択肢として著しく魅力は低い。

それどころか、マスコミでも報道されている通り、オーストラリアなどに、いわゆるワーキングホリデーで行き、日本では考えられないような給料を稼いで戻ってくる、という日本人も増えるのは必至です。

新たに外国人労働者を入れるどころではありません。

◆きちんと労働者のために動く労働運動が必要

まず、介護現場を維持していくには、岸田政権は、これまでの3%にとどまらず、介護労働者の給料を引き上げることです。冷静に考えれば、日本人がしたがらないような給料・労働条件の仕事は結局、外国人もしたがらないのは当然すぎます。

もうひとつは介護業界だけに限らず、日本全体を見ても、「どうせ、外国人労働者を安く入れればいいから、給料は低くても大丈夫」という時代は終わったということです。

日本がいわゆる実質実効為替レートで最も円高だった1994年に当時の日経連(現・経団連)が「新時代の日本的経営」で派遣社員や有期雇用を増やすことを打ち出しました。それ以降、円高対応として、とにかく、労働者の給料を低く抑えることに日本の経済界は狂奔。それを前提とした企業経営や経済の在り方をつくってしまいました。

本来であれば、技術革新や時代に合わせた新機軸を打ち出すなどすべきだったのをサボってしまった。労働者を安く使い捨てることに依存してしまった。その結果、技術者はどんどん流出し、いつのまにか技術力でも韓国や中国に逆転されてしまった。

介護にしても、例えばオーストラリアでは、要介護者を介護者が持ち上げるような介護はさせていません。日本は逆に言えば腰痛を引き起こす特攻隊のようなことを介護労働者にさせています。日本は低賃金労働を前提とした古臭い国になってしまったのです。

過去20~30年のこうした誤りを総括する。ただ、資本側はそれを自分からやることはない。岸田政権が、賃上げとか、所得倍増とか言っていたのが、あっという間にしりすぼみになり、むしろ、安倍政権さえよりも新自由主義的になってしまったのは良い例です。

野党、それも労働組合に支援されているのに公務員賃下げに賛成するような「労働貴族」ではない野党が強くなる必要がある。そして、きちんと労働者のために動く労働運動が必要である。そのことも、この秋の「外国人労働者流出事件」を契機に強く感じました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号
『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

『紙の爆弾』最新12月号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

コロナワクチンの生後6カ月~4歳を対象にした無料接種が10月から始まっています。子どもの重症化例はきわめて少ないことが報告されているなか、接種の理由はない、というよりも、感染症防護とは別の目的があることは自明と言っていいでしょう。厚労省は保護者に接種を検討する「努力義務」を課しています。副作用が出ても、自ら被害を訴えられない子どもへの強制接種(自分で接種するかを選べない)の残酷さはもちろん、そもそもワクチンの「主作用」とは何なのかについても、あらためて考えなければなりません。

厚労省はワクチンについて、「感染予防」「発症予防」「重症化予防」という「効果」の説明をあいまいにしてきました。そして、ワクチン接種が人々の間で進んだ時期と、陽性者の増減のタイミングに関連性はみられない一方、接種が進んだ時期に死亡数が増加するという現象が起きています。今年でいえば2~3月、接種の増加にあわせて死亡者数も増加、4月に接種数が低下すると死亡者数も減少。7~8月にも、接種拡大に合わせて死亡者数が増加しています。そんななか、世界に目を向ければ、ワクチン、そしてコロナ禍そのものへの人々の見方に、少しずつ変化が生じているようにも見えます。10月22日にはカナダ・アルバータ州のダニエル・スミス州首相が、ワクチン未接種の労働者に対する差別を「不適切」と認め謝罪しました。

今月号でも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題を特集、自民党政治家との関係に注目するとともに、なぜメディアにおいて「空白の30年」が生まれたのか、9月号で執筆の鈴木エイト氏の講演内容を収録しました。連日のマスコミ報道のなかで、ジャーナリストや弁護士らが活躍を続けていますが、鈴木氏が一貫しているのは徹底して被害者に寄り添うこと。その視点に立つからこそ、メディアがこの問題を放置し、政治家がそれを見越して旧統一教会と協力関係を結んできたことが、信者らへの被害を拡大させ、被害者による安倍晋三元首相の銃撃事件につながったという一連の経緯が理解できます。それを具体的に説明した今月号記事は、日々報じられるニュースを受け取るうえでの基礎として、ぜひ多くの方にお読みいただきたい内容です。

さて、旧統一教会問題では精力ぶりが評価されるマスコミでも、ことワクチン問題、そして今月号で重点的に採り上げたマイナンバーカード“義務化”に関する報道を見れば、(報道しないことを含めて)完全に政府広報に徹していることが見て取れます。「デジタル社会」の名のもとで、国民監視・管理体制が着々と構築されています。また11月号で、日本ですでに進んでいる「戦争準備」について特集しましたが、「国民監視」がそのキーワードであることを、あらためて指摘しておきたいと思います。

その他、多様な視点を盛り込み、『紙の爆弾』は全国書店にて発売中です。今月号も、ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

森井翼が海老原竜二を倒し、龍太郎と杉山空が決勝へ ── 2000年世代の躍進! 堀田春樹

NKBバンタム級タイトルマッチ、海老原竜二は初防衛成らず。森井翼が王座奪取、テツジムから5人目のチャンピオン誕生。

田村聖が剱田昌弘に戦略勝ちで有終の美、引退テンカウントゴングに送られた。

フライ級王座決定トーナメントは龍太郎と杉山空が決勝となる王座決定戦出場へ、2000年代生まれの躍進が目立った。

テンカウントゴングを聴く田村聖、胸中は「実感が無かった」

◎喝采シリーズ Vol.6 /10月29日(土)後楽園ホール17:30~21:00
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第11試合 NKBバンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.海老原竜二(神武館/1991.3.6埼玉県出身/ 53.1kg)25戦14勝(6KO)11敗
      VS
挑戦者同級2位.森井翼(テツ/2000.5.31/大阪府出身/ 53.25kg)8戦7勝(1KO)1分
勝者:森井翼 / TKO 5R 2:07
主審:前田仁    

初回、両者のパンチと蹴りで主導権支配へ探り合いから森井のストレートがヒットし、森井にやや印象点が優る中、第2ラウンド終盤に海老原が左ローキックに入ったところで森井の左ストレートで海老原がノックダウン。形勢は森井に大きく傾いた。

森井翼の左ストレートで海老原竜二が最初のノックダウンを喫する

中盤は大きな差は無いが、次第に森井の左右ストレートが有効にヒットする回数が増え始める。海老原もクリンチワークで森井の勢いを止めようとするが、森井は逆転狙う海老原の攻撃をかわしていく中、ラストラウンドに左ミドルキックが海老原のボディーをえぐると海老原はうずくまるようにノックダウン。苦しそうに立ち上がるも、森井のパンチを避けようと、くの時になったところを顔面にヒザ蹴り連打を浴び、凌ぎ切れず2度目のノックダウンしたところで、レフェリーがノーカウントで試合を止めた。

森井翼は「この日はバッティングが起こる試合が多かったので、それだけは避けたいと意識しながら打ち合いに行きました。海老原さんは打ち合いには応じてくれましたし、KOできたのは嬉しいです。」と語った。森井翼は第10代NKBバンタム級チャンピオンと成る。

ラストラウンド、前進する海老原竜二のボディーへ左ミドルキックヒットで勝負を決定付けた
最後は森井翼のヒザ蹴りの猛攻、この後、海老原が崩れ落ちるとレフェリーが試合ストップ
テツジム、武本哲治会長と大阪支部長のISSAY氏とスリーショットに収まる森井翼

◆第10試合 田村聖引退試合 75.0kg契約 5回戦

NKBミドル級チャンピオン.釼田昌弘(テツ/1989.10.31鹿児島県出身/ 74.8kg)
20戦6勝(1KO)11敗3分
      VS
同級1位.田村聖(拳心館/1988.7.23新潟県出身/ 74.95kg)26戦15勝(10KO)10敗1分
勝者:田村聖 / 判定0-3
主審:加賀見淳      
副審:高谷47-49. 鈴木47-48. 前田46-50

両者は2018年4月21日に初対戦し、田村聖が判定勝利(ランカー3回戦制)。今年6月18日には王座決定戦(5回戦)で対戦。剱田昌弘が柔道や総合格闘技経験で撹乱し、際どくも僅差判定で王座戴冠している。

第1ラウンド、田村聖はローキックと前蹴りで間合いを取り、剱田昌弘は間合いを崩そうとする展開。田村の左フックが軽くヒットし、剱田はバランス崩しスリップ気味に後方に倒れノックダウンとなるが、ダメージもほぼ無くすぐに立ち上がる。

第1ラウンドのスリップ気味のノックダウンとなった田村聖のフック気味ストレート

第2ラウンド、剱田は右ミドル、左ストレートの組み合わせで自分のリズムを作ろうとするものの、田村のクリンチワークで作り切れず、見せ場がないままラウンドが終了。

中盤以降、剱田は自分のペースを作れないまま時間が過ぎ、ラストラウンドはラスト30秒でパンチの打ち合いになるが両者とも決め手に欠き終了。田村の戦略勝ちで6月の屈辱を晴らした。

剱田昌弘は「第1ラウンドのダウンは効いていませんしスリップだと思いました。しかし負けは負けですので、最初からやり直しです。」とコメント。謙虚さと愛想の良さは会長の教えが行き届いている様子がありました。

メインイベント終了後に田村聖の引退セレモニーが行われ、「現役後半は、身体の不調で満足な練習が出来ませんでした。それでも気遣いながら練習に付き合ってくれた拳心館の仲間達、先輩方には本当に感謝しています。皆さん有難うございました。」と挨拶。

関係者からの記念品贈呈とテンカウントゴングに送られてリングを去った。

テンカウントゴングを聴いている時の感想は、「実感がないです。目線のやり場も迷って。これまでいろいろ声掛けてくれた渡辺会長の印象も強くて、そんな想いが過っていた感じでした。」と言った回答。

主導権奪って得意の強打で攻め、リズムに乗れば強い田村聖

◆第9試合 第8代NKBフライ級王座決定4名トーナメント3回戦

NKBバンタム級5位.則武知宏(テツ/1994.12.5岡山県出身/ 50.65kg)
16戦8勝(4KO)6敗2分
      VS
杉山空(HEAT/2005.1.19静岡県出身/ 50.65kg)5戦2勝1敗2分
勝者:杉山空 / 負傷判定0-2 / テクニカルデジション 3R 0:33
主審:亀川明史      
副審:前田28-30. 高谷30-30. 加賀見29-30

アグレッシブな蹴り合いと組み合ってからの転ばせる崩しと蹴りで、僅かながら杉山空が優勢な展開を見せる。偶然のバッティングは第3ラウンド開始からわずかな時間で起こり、右目上のカットと、頬骨辺りの骨折の疑いで試合続行不可能となった杉山空。負傷判定となって攻勢を保った杉山空が勝利。12月24日の決勝となる王座決定戦は龍太郎vs杉山空となった。ただ、杉山空の負傷具合がどう影響するか分からない。

則武知宏のハイキックを受け止め、足を掬って転ばせた杉山空、この時点で負傷していたか?
偶然のバッティングと裁定された杉山空の負傷、12月への影響が心配

◆第8試合 第8代NKBフライ級王座決定4名トーナメント3回戦

NKBバンタム級3位.龍太郎(真門/2000.12.25大阪府出身/ 50.65kg)
9戦4勝(1KO)4敗1分
      VS
佐藤勇士(拳心館/1991.8.12新潟県出身/ 50.7kg)16戦6勝(2KO)10敗
勝者:龍太郎 / 判定2-0
主審:鈴木義和      
副審:加賀見30-29. 前田30-29. 亀川30-30

様子見の時間も少なく、アグレッシブなパンチと蹴りの展開はわずかに龍太郎のコンビネーションの見映えが優り、僅差判定を導いた。  

龍太郎が攻勢を印象付け、僅差ながら勝利を掴んだ

◆第7試合 60.25kg契約3回戦

NKBライト級3位.野村怜央(TEAM KOK/1990.3.27東京都出身/ 59.96kg)
22戦9勝(5KO)11敗2分
      VS
半澤信也(Team arco iris/長野県出身/ 60.1kg)24戦9勝(4KO)12敗3分
勝者:半澤信也 / 判定0-2
主審:高谷秀幸      
副審:亀川30-30. 前田29-30. 加賀見28-30

野村怜央はパンチと蹴りでリズムを作るも、半澤信也のタイミングをずらした反撃でリズムを掴んでいく。後半もパワー衰えず、僅差ながら半澤が判定勝利。

◆山本太一欠場でTAKERU出場のエキシビジョンマッチ2回戦

TAKERU(=大脇武/GET OVER)
      VS
KEIGO(BIG MOOSE/1984.4.10千葉県出身/ 58.7kg)

◆第6試合 フェザー級3回戦

七海貴哉(G-1 TEAM TAKAGI/1997.4.17東京都出身/ 57.1kg)8戦5勝(2KO)3敗
      VS
石川翔(BIG MOOSE/1999.7.4千葉県出身/ 56.85kg)5戦5勝(1KO)
勝者:石川翔 / KO 3R 0:40 / 飛びヒザ蹴りによる10カウント
主審:加賀見淳      

◆第5試合 ライト級3回戦 木村郁斗(BIG MOOSE)欠場で齊藤鷹也が代打出場
蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 61.0kg)3戦2勝(2KO)1NC
      VS
齊藤鷹也(ストライブル茨城/1993.9.22茨城県出身/ 60.85kg)3戦1敗1分1NC
無効試合 1R 2:15
蘭賀大介が偶然のバッティングにより試合続行不可能。第1ラウンドまでは無効と成るルールの為、勝敗無し。

◆第4試合 バンタム級3回戦

シャーク・ハタ(=秦文也/テツ/1987.10.20大阪府出身/ 53.25kg)5戦2勝2敗1分
      VS
山本藍斗(GET OVER/2005.5.27愛知県出身/ 52.65kg)2戦1敗1分
勝者:シャーク・ハタ / 判定3-0 (30-28. 30-29. 30-29)

◆第3試合 63.5kg契約3回戦

青山遼(神武館/1999.2.5埼玉県出身/ 62.8kg)1戦1敗
      VS
折戸アトム(PHOENIX/1982.3.1新潟県出身/ 63.25kg)4戦3勝(1KO)1敗
勝者:折戸アトム / KO 2R 0:46 / 3ノックダウン

◆第2試合 54.0kg契約3回戦

笠見るい(team O.J/2001.10.18茨城県出身/ 54.0kg)5戦2勝(3KO)3敗
VS
橋本悠正(Katana/1997.4.21福島県出身/ 53.75kg)2戦1敗1分
勝者:笠見るい / TKO 2R 1:20 / ヒジ打ちによる額のカット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ

◆第1試合 フェザー級3回戦

堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 56.85kg)1戦1勝
      VS
龍一(拳心館/1955.11.17新潟県出身/ 56.7kg)5戦3勝1敗1分
勝者:堀井幸輝 / 判定3-0 (30-26. 30-26. 30-26)

《取材戦記》

瞬間的ダウンと成るフラッシュダウンは取らない傾向があるキックボクシング界で、まだ古い体質が残っている感があるレフェリングがあります。NKBグループは若い世代のスタッフが運営する時代となっており、レフェリーの若返りも必要な時期かもしれません。身体が動くなら高齢となってもレフェリングは任せられますが、新しい感性も必要でしょう。

蹴りに行ったところへパンチを貰って足を滑らすか、押されるようにバランス崩して尻餅ついて、ダメージは軽い場合等がフラッシュダウンと言われます。剱田昌弘が第1ラウンドのノックダウン扱いとなったのは客観的にフラッシュダウンと見え、海老原竜二が第2ラウンドに森井翼の左ストレートで倒れたのはノックダウン。どちらがどれほど効いていたかは計れませんが、レフェリーが様子見した場合、ノックダウンを認めたくなければ瞬時に立ち上がる必要があり、スタミナ切れて立てないだけでもノックダウンとなるのは仕方無いでしょう。

「田村選手の引退セレモニーが全試合終了後に行われたのは、観衆がまばらに残る程度で可哀そうだった。」という意見がありましたが、セミファイナルで田村聖引退試合が行われ、メインイベントにNKBバンタム級タイトルマッチの重みを位置付けたのも適切なマッチメイクでしょう。引退式は全試合終了後に行なうこと多い日本キックボクシング連盟興行で、後に控える試合が無いのは、ゆとりを持ったセレモニーとなる気がします。

次回、日本キックボクシング連盟興行喝采シリーズは12月24日(日)に後楽園ホールで開催されます。

NKBフライ級王座決定戦は、2010年4月24日に鈴木和樹(真門)が牛若丸将之(テツ)との王座決定戦に勝利した試合以来、12年8ヶ月ぶりの王座始動と成ります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

7日発売 タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ〈6〉森 奈津子

以前より、私は世間の皆様方に向けて「しぱき隊界隈の反差別チンピラに成功体験を与えてはいけません」と繰り返してきた。

成功体験というのは、具体的には、彼らに「差別だ! 差別だ!」オラつかれてびびって、謝罪する必要もないのに謝罪すること。あるいは、そんなオラつきを評価してしまうこと。

つまり、そのような「成功体験」が、彼らしばき隊界隈活動家をますます調子づかせ、勢いづかせるのである。

立憲民主党の尾辻かな子氏の印象操作ツイートを発端に、しばき隊界隈とLGBT活動界隈の共闘によって盛りあがった杉田水脈氏叩きは、マスコミの愚かしいヨイショ報道によって、反差別チンピラにとって大いなる成功体験となった。

ここで、ちょっと笑える朝日新聞のしばき礼讃記事をご紹介しよう。

杉田水脈氏に対する抗議活動が各地で行われたという2018年8月6日のニュースであり、現在も2パターンの記事がウェブ上で確認でき、うち一本は動画つきである。

◎[参考記事1]杉田水脈議員に抗議、各地で “生産性ない”主張「謝罪を」

◎[参考記事2]杉田水脈議員の発言「差別だ」「まず謝罪を」 抗議デモ(動画あり)

記事内の動画の中に、しばき隊界隈活動家・谷口岳氏がコンビニのネットプリントを利用して配布した物騒なデザインのプラカードを掲げた女性がいるという事実だけでも、事情を知る者の失笑を誘うというものだが。

[左]プラカードを配布する谷口岳氏のツイート/[右]谷口岳のプラカードも大活躍!(朝日新聞ウェブ版の動画の一シーン)

さらには、記事内の抗議活動参加者へのインタビュー部分を以下に抜粋し、その香ばしさを読者諸氏と共有したいと思う。

都内から聴きに訪れたフリーライター、竹内美保さん(57)は「『生産性』の発言は議員以前に人としても失格。それなのに杉田氏は謝罪すらしていない。まずはそこから求めたい」と話した。

竹内美保さん(57)、朝日新聞にご登場!

しぱき隊ウォッチャー諸氏は、ここで「ん?」と引っかかりを感じることであろう。

竹内美保さん? 竹内……美保……さん? たけうち……みほ……さん? ズバリ、しばき隊系活動家じゃねーかよーっ!(絶叫)

おそらく、朝日新聞の記者氏は竹内氏の「正体」を承知のうえで、コメントを掲載したのであろう。こういうところから、私は「一部マスコミとしばき隊はズブズブである」と申しているのです。

なお、私はこの竹内美保氏とは一度もやりとりしたことはないのだが、ツイッターでブロックされている。いわゆる「予防ブロック」である。大物活動家様にそんなに警戒されてしまっては、ちょっと照れてしまいますね。てへっ(笑)。

[左]ツイッターで確認できる竹内美保氏のプロフィール/[右]筆者を予防ブロックする竹内美保氏

ところで、しばき隊系の抗議活動においては、しばしばドラムを叩いて仲間を鼓舞する女性活動家がいらっしゃるとの噂が、私の耳にも届いている。なんでも、その女性はウォッチャーから「太鼓ババア」と呼ばれ、畏怖の念をいだかれているのだとか。

その太鼓ババアが竹内美保氏であるか否かは未確認だが、もし、それが竹内氏であったなら、そのニックネームの「ババア」部分には「差別主義者によるエイジズム、セクシズム、ルッキズムに抗議します!」との声をあげていただきたいと、同じ女性として願うばかりである。

旧レイシストをしばき隊、現C.R.A.C.代表の野間易通氏に「おばさん」と呼ばれた私も、その点においては竹内氏と共闘したいと思う。

さて。この渋谷での抗議集会だが、ツイッター上では「 #0805杉田水脈議員の差別発言に抗議する渋谷ハチ公前街宣 」なるハッシュタグが存在する。

この手のハッシュタグは、時として、いい感じにデジタルタトゥー収集道しるべと化すのであるが、今回は、最後に、このハッシュタグをたどり、しばき隊系活動家およびその界隈とつながる政治家・文化人の皆様のツイートをご紹介したい。

しばき隊系活動家およびその界隈とつながる政治家・文化人の皆様のツイート

立憲民主党の有田芳生氏(やっぱりいましたね)、共産党の池内さおり氏(もう、こっち来ないでください)、ANTIFAやTOKYO NO HATEなどの関連団体、あの界隈と仲良しのソウル・フラワー・ユニオン(アカウント運営は中川敬氏でしょうか?)、その他活動家の皆々様……。

繰り返しますが、LGBTの人権を守ると称してオラついておられるのは、実に迷惑です。運動手法を再考してしただきたいものですが、無理なら無理でいいので、別のところでやってくださいね!

なお、ここでマスコミが成功体験を与えてしまったものだから、しばきアクション(苦笑)はさらにまずい方向へ突っ走るのであった。

次回では、それを皆様にご紹介せねばと考える次第である。(つづく)

◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

《関連過去記事カテゴリー》
森奈津子「LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ」

『暴力・暴言型社会運動の終焉』