付録つきファッション雑誌の覇者、宝島社のビジネスにかげり?

〈命運をかけた「ダレノガレ明美のフォトエッセイが売れないと」と悲鳴!〉

「ファッション雑誌に軒並み、付録をつける手法で100万部を突破した『sweet』や徹底したマーケティング商法で30代女子のハートを捉えた『InRed』で講談社が寡占していたファッション雑誌の市場をこじ開けるなどしていた宝島社の雑誌の売り上げにかげりが出ています。モデルのギャラもかなり下がっていて、プロじゃなくて、半分素人のようなモデル、つまり学生や若い主婦もかり出してモデルとして誌面を作っています」(ファッションライター)

かつて、宝島社は、「付録屋」と揶揄された。とにかくファッション雑誌に付録をつけまくり、売りに売った。
「海外に付録を作る工場を作ったほどです。やはり傘やバッグを付録にするのはインパクトがありました。ですが、とりたてて特別なことではありません。ヨーロッパでは、雑誌にカメラやラジオがついてくるなんて当たり前です。つまり、新製品が出たときに、雑誌に付録としてつけて、読者に意見を聞くというスタイルがヨーロッパには浸透しているのです。宝島社は、それを模倣したにすぎないのです」(同)

そんな中、今ひとつの売れ線である「モデルのスタイルブック」の売れ行きに苦しんでいるという。この6月、宝島社は勝負に出た。ツイッターのフォロアーが67万人もいるという、人気モデルにしてタレント、ダレノガレ明美のフォトエッセイの発売だ。たとえば、フィールドキャスターはこう伝える。


◎[参考動画]ダレノガレ明美 「歩くダルマ」から24kgのダイエットに成功!
初のスタイルブック「I’ll give you my all」発売イベント (フィールドキャスター2015/06/28掲載)

24キロのダイエット、そして人気者の食事やエクササイズの仕方も網羅した本。もし人気者のダレノガレのこの書籍が売り上げがよくない場合、宝島社はおそらくファッション雑誌から音楽雑誌やアニメ雑誌方向に舵を切るだろうとささやかれている。

◆「このミス」大賞作家にインタビューするふりをして、引き抜きを狙う?

宝島社は去年の12月25日、80年代の『宝島』を現代によみがえらせるべく、季刊誌『宝島AGES(エイジス)』を創刊した。そしてさかのぼれば、宝島社は90年代に「社員成金化計画」を蓮見社長がぶちあげた。そこには、利益を生み続けるという、確信に近い自信があった。事実、徐々に売り上げはのびていき、ついには集英社を蹴ってまで宝島社に入社する人が出てくるような事態となった。

「ですが、実際問題、40歳をすぎると給料はあがりませんし、実績を積んだ編集者は閑職にまわされます。今は契約社員や嘱託の編集者ばっかりですよ。ファッション雑誌を100万部を売り上げた伝説の編集者も去っていきましたしね」(元社員)という状態のようだ。

そんな宝島社の「このミステリーがすごい!」は、ミステリー小説のランキングをするのが受けたが、当初は実は、作家にインタビューするふりをして、引き抜きを狙っていたふしもある。

そして簡単に引き抜けないと知るや、今度は2002年から「このミステリーはすごい!大賞」を設立、自らミステリー小説を集めて、業界トップの「賞金1200万円」で才能を集めまくる。かくして、以下の作品群が映画化された。

○浅倉卓弥『四日間の奇蹟』
○上甲宣之『そのケータイはXX(エクスクロス)で』
○海堂尊『チーム・バチスタの栄光』
○中山七里『さよならドビュッシー』
○乾緑郎『完全なる首長竜の日』
○深町秋生『果てしなき渇き』

◆社員はすぐ辞め、カリスマ編集者もいまはなし

さて、話をファッション雑誌とモデルのフォトエッセイに戻せば、そんなものはとっくに売れない時代になっている。この本の制作で、編集者はさんざんぱら、ダレノガレに「この写真がいい」などとわがままをいわれ放題だったようだが、それもカリスマ編集者が不在ゆえの事態だ。
「この4月までは、それぞれの雑誌にとって試金石で、結果が出ない編集部では大胆なリストラが始まるはずだ。そろそろ、徐々にリストラ勧告が始まるのではないかな」(元社員)

だいたいにおいて、雑誌付録で読者を集めようというファッション雑誌部の考えが気にいらない。それに、思い出すが、ここの社員はあまりにもコロコロと辞めすぎだ。ファッション雑誌に大枚を払って付録をつける。もしそんな制作費があるのなら宝島社よ。一瞬だけホームページに募集要項を掲載したが、すぐに削除して「なかったことに」した「この官能小説がすごい! 大賞」を復活させてはいかがだろうか。

(鈴木雅久)

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タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』絶賛発売中!

 

年内解散総選挙か?「安倍晋三退陣」への道──「紙の爆弾」8月号の注目記事!

タブーなき「紙の爆弾」8月号は注目記事満載!

「力には二種類しかない。それは、剣の力とペンの力である。そして、剣の力はしばしばペンの力に打ち負かされる」と言ったのは、英雄・ナポレオンである。このナポレオンの言葉を具現化しているラディカル・スキャンダル・マガジンこと「紙の爆弾」8月号の紹介記事を展開する。

このブログの読者は、鹿砦社のファンはもちろんのこと、月刊「紙の爆弾」のファンも多いようだ。今月発売号の紹介を柄にもなくするが、告知だけでは味気ないので、10年前の「紙の爆弾」創刊以前に、前身としてすでに創刊されていた「スキャンダル大戦争」までさかのぼり話をしよう。

この「スキャンダル大戦争」の編集方針が後に大きく「紙の爆弾」の編集に当然ながら影響していくのだが、当初から現在に至るまで「なんでも書いていい」と中川編集長は宣言していた。「三井銀行はマフィアバンク」など訴訟されそうなタイトルを打ち、なんとセブンイレブンまでガチで批判してみせたその突撃精神には、頭が下がるのひと言だ。「鹿砦社は訴訟されることで有名になりたがっている」という変な誤解も生まれた。そしてその突撃精神を、松岡社長は「帰りのガソリンを積まない片道飛行」と表現した。この危険でありながら冒険心に充ちた編集制作に、僕は一貫してつきあうことになる。

だから多少、もし僕が「紙の爆弾」について紹介するなら手前味噌で、そして少しばかり感情的だ。それでも、と僕は思う。「紙の爆弾」を応援し続けるのは、僕の使命なのだと。もちろん、「紙の爆弾」創刊で松岡社長が咆哮した「ペンのテロリスト宣言」も僕は永久に支持するであろう。

◆タブーなき言論の砦

自分の恥部をさらすなら、「紙の爆弾」が「噂の真相」の休刊で大きく落胆した「スキャンダル好き」読者の大きな期待を受けて創刊された2005年4月、すでに僕が所属していた週刊誌は大きく傾き、直後の8月には休刊のアナウンスがなされた。だから僕は「紙の爆弾」には大きな、そして過度な期待をこめてお手伝いしていた。

「噂の真相」を雑誌の頂点として考えていた僕は、実は休刊間際に1本だけ原稿を書かせていただいた。このときにアンカーとして、実にうまいまとめかたをしていただいたのが、(当時は面識がなかったが)今も「紙の爆弾」で「コイツラの銭儲け」を連載している西本健氏だ。

「スキャンダル大戦争」が月刊となり、「噂の真相」の後継として生まれかわりそうだ、という話が業界に広まったとき、幸いにも僕は準レギュ ラーのような扱いをしていただいた。「紙の爆弾」の誌面は、何十回も企画を出してボツを食らった「噂の真相」に傾けるエネルギーをつぎこむに、十分な器だった、有象無象の「噂の真相」に書きたかったジャーナリストが怒涛のごとく、売り込みに来たと思う。だが多くの者は馬脚を現した。

他方、さして才能がない僕は、「スキャンダル大戦争」から書かせていただいている、というアドバンテージのみで使ってもらっていたのだ。だから僕は「紙の爆弾」が低空をさまよい、苦渋の思いで合併号を出さざるをえなかったときも、どの案件とは言わないが、内容証明を食らったときも、バーニングと法廷で死闘を繰り広げたときも、常に「無力」ながらも編集部の傍にいた。何人か有能なライターを連れてきて、有能なものは残った。

もちろん、「紙の爆弾」については、一冊書き下ろすほどの思い出はある。松岡社長が逮捕されたときも、「紙の爆弾」のライターたちは、「タブーなき言論の砦」というテーマの庇護のもとで、権力者たちの汚い顔をペンであぶりだしていた。時間軸を今に移せば、このエネルギーは今も脈々と生きている。

「今、あぶりだすべき」ターゲットは、やはり傲慢といえばあまりにも厚顔無恥な安倍政権の独裁ぶりだろう。その意味で、「紙の爆弾」は大きな使命を負っている。たとえば「紙の爆弾」を編集している東京支社にいて、誰かがノックするとき、僕は「だれかがまた記事を書かれて内容証明でも送ってきたか」と身構えてしまう。いまだにそんな緊張感が漂う編集部は、世の中にはもうそんなに残っていない。
そうした言論戦闘の最前基地という位置に、「紙の爆弾」の中川編集長は立っている。そしてこれからも、立ち続けるだろう。「紙の爆弾」が 「権力を撃つ」と宣言している限り、僕は微力ながらも力を差し出すだろう。

◆安倍、沖縄、東京五輪──利権の深層を抉り出す

さて、8月号の紹介だが、まずは巻頭の『安倍晋三 退陣への道』では、ベテランの政治ジャーナリスト、朝霞唯夫が、安倍が「安保法制の信を問う」として年内解散総選挙へのシナリオが脈動していると、警告している。まったくふざけた話である。

『前沖縄県知事 仲井眞弘多の現在』に注目したい。「沖縄の米軍基地問題」の混乱に拍車をかけた仲井眞弘多元沖縄知事の「現在の動向」を、気鋭のジャーナリスト、藤堂香貴が執拗に追いかけている。7億円もかけた知事公舎もそのままに、米軍基地が普天間から辺野古に移設することに「賛成」とした仲井眞だが、沖縄電力の利権を背景にして、小型原発の研究に邁進している疑惑を追及する。

そして開幕まであと5年と迫っているがいっこうに盛り上がらない東京五輪の三人の戦犯について暴いた『返上論も浮上 2020年東京五輪 をもてあそぶ3人のメダリストたち』では、石原慎太郎元東京都知事、建築家の安藤忠雄東京大学名誉教授、森喜朗元内閣総理大臣たちの「唾棄すべき老醜」について触れる。そもそも、たとえば国立競技場のリニューアル工事に2520億円ほどかかるそうだが、都民、いや国民のコンセンサスはとってあるのか。これ以上は、本誌を読んでいただきたい。

「ペンのテロリスト宣言」の脈動は、この雑誌の中になお生きている。
読者諸兄よ、こもるな。『紙の爆弾』を手に権力へ牙を剥こう。いつでもわれわれを「騙して搾取する」のは、常に権力の側なのだから。

(小林 俊之)

「紙の爆弾」2015年8月号は明日7日発売です!

───タブーなき「紙の爆弾」8月号注目記事満載!───

「安倍晋三退陣」への道──“憲法違反”安保法案ゴリ押しの“代償”
危険すぎる「マイナンバー制度」──「漏れた年金」で明らかに
AKB48柏木由紀──熱愛ゴシップで触れられない「真実」
ついに始まる!元ミス・インターナショナル・吉松育美が芸能プロ社長を訴えたストーカー裁判
6LDK邸宅が売りに出されていた元沖縄県知事・仲井眞弘多の現在
田原総一朗(ジャーナリスト)×前田日明(格闘技プロデューサー)
アメリカの言いなり 安倍政権の「憲法破壊」と「売国」
片岡愛之助“破局騒動”で狙われる「歌舞伎利権」
〈スラップ訴訟〉には負けない! 経産省前「脱原発テントひろば」
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出所者が語る全面リニューアルの大阪拘置所
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2020年東京五輪をもてあそぶ3人の「メダリスト」たち …and more!

「絶歌」騒動で見過ごされている問題

平澤貞通著「遺書帝銀事件―わが亡きあとに人権は甦えれ」(現代史出版会1979年4月)

犯罪加害者が自分の起こした事件を題材に本を出していいのか――。神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗こと元少年Aが上梓した著書「絶歌」(太田出版)をめぐり、そんな議論が続く中、私は大変不思議に感じていることがある。

この議論では、永山則夫や加藤智大、市橋達也ら著名な殺人事件の有罪確定者たちの著書があちこちで引き合いに出されている。それなのに、この議論に参戦する人たちはナゼ、以下のような本の存在を黙殺しているのだろうか?

平澤貞通著「遺書帝銀事件―わが亡きあとに人権は甦えれ」(現代史出版会)1979年4月発売 ※発売元は徳間書店
袴田巌著「主よ、いつまでですか」(新教出版社)1992年8月15日発売
菅家利和著「冤罪 ある日、私は犯人にされた」(朝日新聞出版)2009年8月20日発売
須田セツ子著「私がしたことは殺人ですか?」(青志社)2010年4月6日発売
高橋和利著「『鶴見事件』抹殺された真実―私は冤罪で死刑判決を受けた」(インパクト出版会 )2011年5月発売
林眞須美著「和歌山カレー事件―獄中からの手紙」(創出版)2014年7月発売

菅家利和著「冤罪 ある日、私は犯人にされた」(朝日新聞出版2009年8月)

すぐにピンときた人は少なくないだろう。ここで挙げた6人はいずれも「殺人事件の有罪確定者」という立場でありながら著書を上梓している。ただし、のちに再審で無罪を勝ち取った足利事件の菅家利和をはじめ、世間的には冤罪だと確信されているか、もしくは冤罪の疑いが根強く指摘されている。この6人の出版行為を否定する者はいないだろう。つまり、絶歌をめぐり議論になっていることの多くは、冤罪問題を入口に考えれば、議論せずとも答えが出ることなのだ。

こう言うと、「冤罪被害者の人たちを酒鬼薔薇のような犯罪加害者といっしょくたにするな」と思った人もいるだろう。しかし、「冤罪被害者」と「犯罪加害者」を完璧に見分けることは現実的に不可能だ。げんに、菅家をはじめ、ここに挙げた6人の著者たちも当初は世間の大多数の人たちから「正真正銘の犯罪加害者」だと認識されていたのである。

したがって、冤罪被害者が公に向けて無実を訴える機会を保証されるには、正真正銘の犯罪加害者が本を出す程度のことは当然に容認される社会である必要がある。もちろん、本を出すのに実名を明かす必要などないし、遺族に話を通す必要もない。冤罪被害者には、報道などを通じて無実を訴える際に匿名を望む人は存在するし、冤罪被害者が本を出すために遺族に話を通す必要がないことは論じるまでもないだろう。

林眞須美著「和歌山カレー事件―獄中からの手紙」(創出版2014年7月)

表現の自由は、ヘドの出るような表現にも保証されるものだ――というのは、よく言われることである。「絶歌」騒動を見ていると、まったくそのとおりだと改めて思う。ヘドの出るような表現を弾圧すると、一緒に真っ当な表現まで弾圧されることになる。だからこそ、ヘドの出るような表現も、表現の自由のもとに守られなければならないのだ。

絶歌騒動をめぐっては、「市の図書館では購入しない」と宣言し、書店に販売への配慮を求める発言までした明石市の市長という権力者が世間の多くの人から賞賛された。表現の自由をないがしろにする発言をした権力側の人間たちが大バッシングされている百田尚樹騒動より、こちらのほうがよほど表現の自由が危機にさらされている状況だと私は思う。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

◎発生から15年、語られてこなかった関東連合「トーヨーボール事件」凄惨な全容
◎献花が絶えない川崎中1殺害事件と対照的すぎる西新宿未解決殺人事件の現場
◎3月に引退した和歌山カレー被害者支援の元刑事、「美談」の裏の疑惑
◎国松警察庁長官狙撃事件発生20年、今年こそ「真犯人」の悲願は叶うか

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』は毎月7日発売です!

福島原発被曝の現実から目をそらさない「DAYS JAPAN」と広河隆一氏の在野精神

「DAYS JAPAN」と言う月刊誌をご存知の方も多いであろう。
今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」だ。

「DAYS JAPAN」2015年7月号

悲しいニュースだが直視を避けられない現実が詳細に報告されている。本号は発売直後よりアマゾンをはじめとするネット上の図書販売サイトでは完売となり、書店でも残部僅かのようだが、増刷されるとのことであるのでまだご覧になっていない方にはご購読を強くお勧めする。

「DAYS JAPAN」はかつて講談社が発行してたが休刊となり、2004年にフォトジャーナリストの広河隆一氏が会社を立ち上げ編集長に就任し復刊した。表紙の右下には発刊以来毎号「一枚の写真が国家を動かすこともある」との腰の据わったメッセージが記されていたが、その場所には編集長が丸井春氏に代わった昨年からは「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」と、より明確な「宣言」が掲載されるようになった(「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」はそれ以前にも時に表紙に書かれていたメッセージではある)。

◆発刊以来、原発問題に深く取り組んできた「DAYS JAPAN」

この雑誌の最大の特徴は現在世界でも希少となった「フォトジャーナリズム」を実践し続けていることだ。同時にパレスチナ、イラク、中東など世界中の紛争地帯(それが脚光の当っている場所であろうがなかろうが)の問題を取り上げ、視覚に訴えると同時に卓越した視点から解説を行うことだ。国内問題も同様である。一貫して在野の立場から権力監視を続ける骨太の編集方針は「ジャーナリズム」の原点から全くぶれていない。

また同誌が主催する「DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」は世界的に権威のある写真コンテストとなり、ここでの受賞者がピューリッツアー賞などを後に受賞することも珍しくない。実は世界のフォトジャーナリストから注目されている雑誌でもある。世界的な注目を浴びる雑誌はこの島国に「DAYS JAPAN」だけである。

「DAYS JAPAN」2015年7月号より

前述の通り今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」である。同誌は発刊以来一貫して原発問題に深く取り組んでおり、2011年の1月号(大震災の2カ月前)特集は「浜岡原発爆発は防げるのか」だった。事故直前まで月刊誌でこれだけ原発問題に警鐘を鳴らしていた雑誌は他にはない。スリーマイル島やチェルノブイリで原発事故取材経験豊富な広河氏は福島事故発生後3日目には現地入りしている。そこで持参した放射線測定器がチェルノブイリでも経験したことのない高い値、針が振り切れる経験を初めてする。目前には何も知らない人々がマスクもつけずに危機感もなく往来している姿を見て、取材を止め高線量地帯へ向かう人々の車を止め引き返すように説得を始める。


◎[参考動画]「3・11メルトダウン 福島原発取材の現場から」Part2
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)綿井健陽氏2011年7月18日公開

◆「DAYS JAPAN」行動原理の体現者・広河隆一氏

「DAYS JAPAN」の行動原理はこの時の広河氏が体現している。ジャーナリストとして現地へ赴くがある時期「人間として」何をすべきかと感じた瞬間に彼らは「行動者」へと転身する。広河氏がレバノンの難民キャンプ取材から難民支援を始めて20余年が経つ。チェルノブイリ取材を50回ほど行っている広河氏は1991年に「チェルノブイリ子供基金」を設立し、保養施設「希望21」を各国のNGOと政府の協力により設立し、そこで保養を行った人の数は7万人を超えたという。

福島原発事故のわずか2か月後、早速保養所設立プロジェクトは動き出し、早くも翌年2012年7月には久米島に「球美の里」を設立し福島から子供達(親同伴の場合もあり)の受け入れを開始する。常人には想像できない発想と行動力は編集長が代わっても引き継がれている。

原発や被曝については「付け焼刃」ではなく長年の取材経験と人脈、知識と実践を持つこの雑誌に敵うものはないだろう。いや違った。「NO NUKES voice」ははるか後ろを走っているけれども志だけは負けたくないと編集長以下腹を固めている。
◎「DAYS JAPAN」Facebook
◎広河隆一氏のtwitter


◎[参考動画]DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 特別講演会「震災と原発問題」
2012年11月20日京都造形芸術大学 学校法人瓜生山学園公開

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎百田尚樹「沖縄2紙を潰せ」発言で強まる「琉球独立」という島唄の風
◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎「松岡社長逮捕は当然」か?──関西大学「人間の尊厳のために」講義の白熱討論

『NO NUKES voice vol.4』原発いらない!全国から最前線の声を集めた脱原発情報マガジン!
タブーなきスキャンダルマガジン月刊『紙の爆弾』は毎月7日発売です!

売れる時代小説をどう書くか?──執念の作家上田秀人氏に聞く

このブログは、小説家やライター志望の人も多く見ているようだ。志望者に少しだけ役にたつ話をしよう。

「若桜木虔小説講座」の塾生だけが対象となっているクローズドな会だったので、時間も場所も記せないが、作家養成で知られる実力派の若桜木虔氏が主宰して、大阪から上京してくる時代小説家の上田秀人氏の歓迎会・親睦会に行ってきた。不良塾生である僕にとってはうれしい限りだ。

もはや上田秀人氏は時代小説のトップランナーであるのは疑いがないだろう。上田氏の本がもし書店にないとしたら、もう本屋を引退したほうがいいほど、売れているのだ。歯科医を続けながら、大賞をとっていない中で、上田氏(佳作はあり)は、執念でデビューし、今の地位にたどり着いた努力の人である。やはり継続は力で、後に2010年(平成22年)、『孤闘 立花宗茂』で中山義秀文学賞を受賞。2014年(平成26年)、『奥右筆秘帳』シリーズで第3回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞する。

生徒が「文章技術以外で、もしデビューに必要なことがあるとしたらそれは何ですか」と聞くと「執念です」と即答した。別の生徒が「執筆時間はどうやって捻出していましたか」の問いには「時間は作ればなんとかなる。治療中にも執筆していました。麻酔を一本打ったら、5分あく。そうしたら2行は書ける」と答えていた。

◆今、書籍は「時代小説」と「ビジネス本」しか売れない

なにしろ、今、書籍は「時代小説」と「ビジネス本」しか売れない。この2つはすでに独立したコーナーが書店にあるほどだ。そう、今はこの2つのジャンルを制覇すれば版元としても生き残れると各出版社は見ているのだ。だが現実として「プロの時代小説家」「プロのビジネスライター」になるのにはハードルが高い。そうした状況下で、山のような原稿が編集者のところに持ち込まれる。

困ったことに、多くの「作家志望者」は、「自分に才能がある」と思い込んでいるふしがある。「いつから連載を始められますか」と平気で週刊誌の編集者に言ってのける。連載など、たとえば週刊誌の編集者と10年以上つきあっている僕でさえ、いまだにとれないというのに。

そういうバカに限って、「今、手持ちの原稿はない。どんなものを書けばいいですか」と言い出すから始末が悪い。ストックがない時点で、作家志望者としては、名刺なしで営業しているようなものだ。無礼にもほどがある。

◆「感覚」で書くか、「手法」で書くか

さて、時代劇を書きたい人たちにとっては、「時代考証」が大きく立ちはだかる。たとえば、織田信長の時代に望遠鏡はあったのかなかったのか。時間を知るのに人々はどうしていたか、という生活考証だ。時代考証には、たとえば、若桜木氏と長野峻也氏が共著の「時代劇の間違い探し」(角川書店発行)がなかなか秀逸だ。「大名行列に一般民衆は土下座しなかった」「峰うちをしたら刀はポキッと折れる」など意外に知らない事実が、蘊蓄としてこれでもか、これでもかと展開されるので時代劇志望者は必読だ。

小説を「プログラムで書く」という実験的なことにトライしているのは、小説家の中村航氏だ。氏は、「僕は小説が書けない」という小説を中田永一氏といっしょに書いた。

これは小説を「感覚」で書くのか、「手法」で書くのかという難しいテーマに挑戦した力作だ。たとえばシナリオにはもうハリウッド御用達のプロットプログラムがある。主人公や敵、恋人などをデータで打ち込めば、ある程度は展開してくれる。ただし英語だが。

中村氏の小説の中で、「僕たちは才能がないぶん、道具で切り開いていくしかないんだ」として「ものがたりソフト」で小説を作っていく登場人物は、たとえば才能がない僕には共感できる。

◆上田氏は「プロットは書かない」

話を上田氏に戻せば、氏は「プロットは書かない」と名言した。これは、書かないということではなく、膨大な資料を読み込む氏のことだから、頭の中にすでに展開されていることだと思う。僕が雑誌や書籍での文章のライティングを教わった、エディトリアルライターとしての師匠、瀬戸龍哉氏は「有能なライターは、取材したらもう原稿用紙に何を書くか決まっている。ひとりにインタビューしたら、もう原稿用紙10枚から20枚くらいは頭の中に展開されているものだ。あとは、ライティングしながら削っていく。『ひとまずテープを起こさないと』なんて言っているやつはプロじゃないんだよ」と言いきった。

そうなのだと思う。

運がいいことに、僕が所属していた編集プロダクションには後にミステリー作家になる北森鴻がいて、手取り足取り、文章の書き方や、記事の切り口、発想のなどを丁寧に教えてくれた。これは今でも役にたっている。残念ながら北森氏は2010年に亡くなられたが。

若桜木氏の小説メソッドだと、重要なのはプロットを練り込み、誰も発想しないような展開を文章でつづることだ。実際に、ハリウッドの映画製作会社などは、映画を作るときに何十通りもプロットを作り込む。日本のテレビ製作会社だって、原作がある本を脚本にするときなど、何十種類もプロットを作る。プロット専門のライターがいるくらいだ。

いずれにせよ、時代小説家は今、不足している。チャンスといえばチャンスである。

同時に不足している「ビジネスライター」についてはまた機会があれば言及しよう。

※上田秀人公式HP「如流水の庵」

(小林俊之)

◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日
◎「書籍のPDF化」を拒み、本作りを殺す──経産省の「電子書籍化」国策利権
◎プリズム公演「闇をときなす音色」はダンスも演技も熱かった!

鬼才板坂剛による天才ポール・マッカートニー「逆襲」来日ライブ写真集の怒涛!

ポール・マッカートニーがついに武道館に帰ってきた! 連日満員の東京ドームと、49年ぶりに戻ってきた日本武道館での「体験」を700枚超の写真とともに記録した本が出た。

ポール自身も「とてつもなくクレージーで、最高の夜だった」と評した日本での出来ごとを振り返るフォトブックだ。

『2015 PAUL in Japan』(鹿砦社2015年05月25日) 板坂 剛=編著 B5判/128ページ/オールカラー/カバー装 定価:本体1600円+税

◆YouTubeがまだなかった1990年、ポールの初来日ライブ体験は衝撃だった!

初めてポールのコンサートにでかけたときは、就職を4日後に控えた90年3月13日のことだ。初来日に日本中が涌いている中、ポールは次の演奏曲をやった。そして私と友人は、ボロ泣きしながら、完全にポール・フリークとなっていた。

1990年3月13日のポール来日コンサートのセットリスト

そして次にポールと接触するのは、留学の本を作っていたときに、ポールが自費を投じて作った音楽学校の紹介記事なのだが、とにかく、ここで語るのははばかれるほど、ポールが音楽界に果たした功績は大きい。

今でこそ、YouTubeで楽しめるが、その昔は音源が手に入りにくい「ウイングス」時代の曲「グッドナイト」などは、探すのが難しく、ここ10年ほどは聴けなかったが、今年、YouTubeで10年ぶりに聞いた。そうした意味で今はなんでも聴けていい時代だと思う。

◎[参考動画]Paul McCartney – Out There Tokyo Japan 2013 東京公演HD完全版
Tokyo Dome, TOKYO 2013年11月21日

◆ポール日本公演実現までの長く曲がりくねった道

編著者の板坂剛氏は、「リベンジの来日!」と題して前がきでこう書く。

ポール・マッカートニーは、今回の来日を〝リベンジ〟だと位置づけた。この言葉には、複雑な情感が込められているような気がする。

これまで、ポールの日本公演は決して平和裡に実現したわけではなかった。1966年のビートルズ(初来日にして最後の来日となった)武道館公演からして、「ビートルズを日本から叩き出せ」という右翼団体の罵声を浴び、「神聖な武道館を河原乞食に使わせるな」と、あるテレビ番組から悪質な中傷を全国に流布された。(〝河原乞食〟の芸が歌舞伎座で上演されることは許されるのか?)

そこに当時の首相の佐藤栄作首相までが「(ビートルズは)武道館にふさわしくない」と発言。この〝佐藤発言〟はそれほど辛辣なものではない。しかし、たかが(と言ってはポールに悪いが)ロックバンドの公演に一国の首相が言いがかりをつける大人気なさに、当時の若者たちは皆「国家権力の正体見たり」と冷ややかに反応したものだった。

(中略)日本公演に続くフィリピンでの受難、あるいは、ウイングス時代の麻薬がらみの公演中止事件も、カリスマ性を持つ人間が大衆をリードすることに対する国家権力側の嫉妬に充ちた嫌がらせだったとしか思えない。1966年、『時事放談』というテレビ番組で暴言を吐いた小灯利得も細川隆元も、また首相の佐藤栄作も、もちろん「ビートルズを日本から叩き出せ」と言い切った大日本愛国党の赤尾敏も、その後、武道館がコンサート会場として常時、数多くの〝河原乞食〟に使用されることに対しては全く非を唱えようとはしなかった。彼等は、ただただビートルズという巨大カリスマが憎かったのである。

だから今、ポールの口から〝リベンジ〟という言葉を聞かされると、どうしても彼等のふてぶてしい顔が、まず目に浮かんでしまう。彼等は既にこの世にはいないが、死者に鞭打つなという批判を退けても、私は、佐藤栄作、赤尾敏、小灯利得(おばまとしえ)、細川隆元の4人がもし今も生きていたら、首に縄をかけて武道館に連行し、ポールの前に土下座させたい気分でいることを正直に記しておきたい。

4.28 日本武道館にて (板坂剛「まえがき」より)

鬼才・板坂の文章はこの本ではコラムとしてスパークする。そこにはポールとジョンがなぜ仲違いしたのか解説しているが、これは買ってのお楽しみとしてとっておきたい。ポールファン、ビートルズのファンは見逃せない一冊だといえるだろう。

(小林俊之)

◎[参考動画]Paul McCartney – Out There Japan Tour 2015 大阪公演HD完全版
Kyocera Dome, OSAKA 2015年4月21日

『2015 PAUL in Japan』

ファシズム日本の予言書──辺見庸「抵抗3部作」がどれも絶版になっていた!

3・11後に日本社会の不条理を初めて考え出した若い知人に「最近の社会問題がわかりやすくて役に立つ本はないか」とかなり前に問われたので、10冊ほどを推薦したが、その中に辺見庸の『永遠の不服従のために』、『いま抗暴のときに』、『抵抗論』(いずれも単行本は毎日新聞社、文庫本は講談社)を入れておいた。

彼の人は私に意見を求めておきながら、なかなか腰が重かったようでつい最近になって連絡があった。「教えてもらった3冊とも、もう絶版になっていて、本屋に売っていませんでした」とのことだった。先般の船戸与一の逝去についで、また「え!」とメールを見ながら声を上げてしまった。

この3冊は21世紀に入っていきなりの9・11から米国のアフガニスタン侵攻、イラク殲滅の時代に対する辺見のエッセーや取材が収められているものだが、文庫の初版は2005年だった。今日的な国家主義、ファシズム急加速の序章を詳述した10年ほど前のこの3冊は、今読んでも(否、まだ未読の方々には今の時代にこそ)示唆と警告に満ちているのだが、あろうことか絶版だそうだ。

単行本ならばともかく、文庫でも買い求める人がいなくなったということなのだろうか。この事実、私にはかなりショックである。

いつのまにか絶版本になっていた辺見庸「抵抗3部作」(『永遠の不服従のために』、 『いま、抗暴のときに』、『抵抗論』いずれも講談社文庫)

◆辺見の「悪い予感」を上回って加速する日本の終末状況

絶版になっているの知ったので、まことに大雑把な種明かしをしておこう。「抵抗3部作」とも呼ばれたこの物々しいタイトルの3冊は辺見による「戦後民主主義終了、国家主義ファシズム完成、そして戦争へ」との警鐘が綴られたものだ。往時の米国大統領はブッシュで、日本の総理は小泉純一郎。前述の通り9・11、NYでは貿易センタービルに航空機が突っ込み2つの高層ビルが崩壊、ワシントンではペンタゴン(国防総省)へも同様の航空機突入など米国史上初めて本国に甚大な攻撃を受けた事件(これに絡んでは米国の謀略説も根強いが)を引き金に、猛獣と化した米国は戦争に猛進する。小泉もあろうことか憲法前文を「解釈抽出」して実質的海外派兵を行った。

「改革の本丸は郵政民営化」とのわかったようなわからないようなワンフレーズを多用する総理は、不幸にも絶大な人気を得、共産党支持者の中でも70%が支持をした。

また小泉は朝鮮を訪問し拉致被害者の一部が帰国を果たす(当時の官房副長官は現首相安倍)が、それにより在日韓国朝鮮人への差別が一層激化した時代でもあった。排外主義の激化があからさまになりだした。

一連の出来事は主として13-14年前で、この「抵抗3部作」が文庫化されたのが10年前である。

辺見の悪い予感を上回る第一次安倍内閣誕生から、いっときの民主党政権、そして3・11を経て自民党政権回帰へと、語られるべきテーマや登場人物は明らかに悪化の一途を猛進する。戦後最悪、否新たな戦争を運命付けられた「戦前」とも言うべき時代を迎えている。

2003年頃にいわば「終末」宣言を出していた辺見にすれば、もうこの期に及んで紡ぐ言葉などない、というのが本音なのだろうか、ここ数年の辺見の文章は「最後のアジテーション」とでも表現すべき「抵抗3部作」の激情的ともいう文体ではなく、総じて詩的である。

だからこそ「抵抗3部作」は戦後民主主義の死滅がいかなるものであったかを個々が総括するために、今日的終末状況が21世紀に入りどのように加速化したかを再確認するために(この書群では当然それ以前の状況への言及も豊かだが)是非ともこの時代に読まれるべき価値があると思う。

これからさらに暴虐の時代に突入することは間違いない。その心構えはあなたにあるだろうか。

◆辺見庸「抵抗3部作」絶版は単に「売れなくなった」ことだけが理由だろうか?

戦争の時代がやってくる。どうやらそれは辺見や私が懸念していたよりも到来の時期は大幅に早まるようだ。辺見は相当な危機感とそれまでの小説やエッセーで見せたことのない(たぶん辺見自身が忌み嫌う)直接的な表現をあえて多用し危機の深刻さと重大さを吼えまくっていたのだけれども、今読み返せば辺見の咆哮はそれでもまだ足らなかったのだ。

「抵抗3部作」絶版は単に「売れなくなった」ことだけが理由だろうか、などと意味もない詮索をしてしまう自分の未練たらっしさもみっともないけれども、げに、恐ろしい時代に生きているのだと痛感する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎5月17日熊本で知名定男プロデュースのライブイベント「琉球の風」2015開催!
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』目下話題の6月号発売中!

 

関西大学の教壇で鹿砦社の松岡社長が〈生きた現実〉を語る!

松岡利康=鹿砦社社長(2015年5月22日関西大学)

関西大学で共通教養科目の中のチャレンジ科目として開講されている『人間の尊厳について』で5月22日、講師としてついに松岡社長が教壇に立った。浅野健一同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)に次いでの登場で、出版人として受講学生に松岡節が披露された。

さて、どんな講義が展開されるやら。鹿砦社、松岡社長が学生にどんな球を投げかけるのか。ど真ん中の直球か、胸元すれすれのブラッシュボールか、と期待半分に案じていたが、内容は至極穏やか、かつ優しさに満ちた講義となった。

◆〈社会〉との関わりの中で〈死んだ教条〉ではなく〈生きた現実〉を語る

配布されたレジュメは「はじめに─〈人〉と〈社会〉との関わりの中で、〈死んだ教条〉ではなく〈生きた現実〉を語れ!」と勢いのある書き出しから始まる。学生運動経験のある松岡社長のことだ、その後にアジビラ風の文章が続くと思いきやそうではなかった。レジュメは出版のあれこれというよりは松岡社長が社会的に手掛けている活動紹介が中心となっている。

したがって講義内容も出版人というよりも松岡社長(鹿砦社)がどのように「社会」と関わっているか、関わりを創造しているか、の紹介に主眼が置かれていた。

◆「人権破壊」としての福島原発事故への衝撃から『NO NUKES voice』発刊

最初に言及されたのが「人権破壊」としての「脱(反)原発」活動への関わりだ。福島原発事故に強い衝撃を受け、また怒った出版人として『NO NUKES voice』を発刊したことがまず紹介された。

『NO NUKES voice』Vol.1(2014年08月25日刊)~Vol.4(2015年05月25日刊)

◆左右問わず生きた思想」を学ぶ場としての「西宮ゼミ」

次いで、鹿砦社本拠地で続けられている「西宮ゼミ」に寄せる思いと意義に言及した。関西で鹿砦社と言えば「西宮ゼミ」と言われるほど浸透した感のあるこの企画も、単なる出版にとどまらず、「左右問わず生きた思想」を学ぶ場として市民に提供してきた意義を述べ、これまでの登場した全ての講師陣が資料で紹介された。

2015年の「西宮ゼミ」は「前田日明ゼミin西宮」。第3回は2015年6月7日(日)14:00よりノボテル甲子園にて開催。ゲストはジャーナリストの田原総一朗さん。お題は「戦後レジームの正体を総括する!」

◆鹿砦社はなぜ、Paix2(ぺぺ)「プリズンコンサート」や熊本「琉球の風」を支援し続けてきたのか?

その後は、これまた鹿砦社が長年応援している女性デュオ「Paix2(ぺぺ)」の紹介だ。「プリズンコンサート」でついに全国すべての刑務所を制覇した「Paix2(ぺぺ)」。その活動を高く評価する松岡社長が支援する意味と出版の結びつきについて思いが語られたが、その真意は次週の講義で更に重みを増し、学生に伝わることになろう。

『逢えたらいいな プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり 』(2012年04月20日鹿砦社)


◎[参考動画]Paix2(ペペ)「受刑者のアイドル 網走刑務所」(2014年12月NHK放送)
◎[参考動画]Paix2(ぺぺ)公式youtubeチャンネル

更にはつい先ごろ7回目の開催となった「琉球の風」への協賛とそれに至る経緯が語られ。主たる講義部分は終了した。どれもこれも「社会」、「人間」との生きた繋がりを示す実践であり、素人が想像する専門職的な出版や編集の話とはほとんど無縁だ。

『島唄よ、風になれ!「琉球の風」と東濱弘憲』(2013年11月25日鹿砦社)


◎[参考動画]「熊本に流れる琉球の風」(2012年9月NHK放送)

これは一般的な出版社社長の講義ではない。自社発行物の紹介が無かったわけではないけれども、月刊誌『紙の爆弾』 に言及することもなければ、出版差し止めの苦い経験も語られなかった。敢えて名づければ「社会派企画出版社」の活動実績報告に近いだろうか。

「琉球の風」を語り終わった後には同イベントの様子を記録したDVDが約30分教室で流された。昼食直後の時間帯ということもあり、講義の最中には安らかにお休みになっている学生諸君の姿も散見されたが、DVDの映像が流れると目を覚まし熱心に見入る姿が印象的だった。

島唄の大御所で琉球の風」総合プロデューサー知名定男さん(写真中央)、「かりゆし58」前川真悟さん(右)、松岡利康鹿砦社代表(2015年5月17日「琉球の風~島から島へ2015」会場にて)

◆次回5・29関西大講義の「松岡弾」がいかなるものになるか?

2回連続の講義の初回、松岡社長はたぶん、学生に「言葉」で伝えようと内心弾倉に込めている弾薬を放ちはしなかった。学生に理解しやすい内容でまずは肩に力を抜いてもらい、胸襟を開いた学生たちに「価値観」を揺さぶる衝撃を次回講義に準備しているのではないか。

松岡社長によると、講義の感想を記した学生の感想文は「琉球の風」DVDの内容に感激した内容が多かったそうだ。学生の多くは初回講義である種の「油断」をしたのではなかと私は目星をつけている。そして、それは松岡社長の狙い通りだ。次回講義の「松岡弾」がいかなるものになるか、恐らく松岡社長の壮絶な過去を知らない学生諸君よりも私の方が楽しみにしているかもしれない。5・29関西大学で何が起こるだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎公正な社会を求める企業は脱原発に動く──『NO NUKES voice』第4号発売!

脱原発情報マガジン『NO NUKES voice』Vol.4、5月25日発売開始!

http://www.rokusaisha.com/

「在日特権」は実在する!──『紙の爆弾』6月号の注目記事

「在日特権」は存在する。「在特会」が登場する30年以上前から、「在日特権」を有するこの連中を何とかできないだろうか、と問題視はしてきた。「在日特権」を持つこの集団はしかし、武器の扱いや殺人術を職業的に習得している。「在特会」が行うような、お気楽な「示威行動」で太刀打ちできる相手ではない。しかもその「特権」は日本と米国間で締結された数々の「協定」により公然と認められているからたちが悪い。

私が意味するところの「在日特権」を保持する集団とは、言わずもがな「駐留米軍」のことだ。まかり間違っても「在日韓国・朝鮮人」の方々を指すものではない。

◆緻密に史実を掘り起した「裁かれないヤンキー犯罪天国ニッポン」

今発売中の「紙の爆弾」6月号に佐藤雅彦氏による「裁かれないヤンキー犯罪天国ニッポン」が掲載されている。佐藤氏の論考は常に緻密な歴史事実の掘り起しと、事実の積み重ねにより問題点を浮かび上がらせ私たちに示唆を与えてくれる。この記事は日本と米国の歪(いびつ)な関係、その中で起こった数々の事件を紹介し戦後連綿と続いてきた「日米連盟」の本質を教えてくれる。

沖縄に限ったことではなく、全国各地で「駐留米軍」による犯罪・事件は起きていた。仮に日本人がその犯罪・事件の被疑者であれば確実に重罪に処されることが確実なのだが、「駐留米軍」にはそんな裁きが行われない。ひどい場合は犯罪を犯したものが「名誉除隊」をして、さっさと本国に帰国してしまう。
何故か?

その理由と数々の事例を「裁かれないヤンキー犯罪天国ニッポン」は紹介し問題の本質を解き明かしてくれる。

折しも安倍が「一国の最高責任者が人前で恥ずかしげもなく、よくこんな話が出来るな」と世界中から大笑いを浴びた米国への「忠誠宣言」を米国議会で行った直後だ。

「オール沖縄」の人々が反対する中、辺野古の基地建設は「粛々」と進められようとしている。どうして日本政府はそんなにやっきなのか?

これらを理解するための力強い武器を「裁かれないヤンキー犯罪天国ニッポン」与えてくれる。小学校から大学まで通っても教えてはくれない「駐留米軍」問題の本質を知るのに最も優れた論考だ。

◆「多様な視野」で差別を撃つ「渋谷区マイノリティー政策は誰のためのもの?」

また、一見、問題の性質を異にするように見えるマイノリティー差別問題を焦点にした朴順梨氏による「渋谷区マイノリティー政策は誰のためのもの?」も掲載されている。この2本の論考は意識的に同じ号に掲載された訳ではないのだろうが、実は分かちがたい、同根の問題への異なる視点からのスポットライトと言えよう。

「在日特権」と「差別」。どちらも厄介だが問題を溶解させるためには「現実を知る」ことと「多様な視野」は必須だ。

上記2本の記事は必読! まだ、未読の読者には一刻も早い購入をお勧めする。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎就職難の弁護士を貸付金強要で飼い殺すボス弁事務所「悪のからくり」

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』目下話題の6月号発売中!

 

 

「書籍」の定義を変えた衝撃の本──「Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説5」

「Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説5 メディアの洗脳から覚めた皆さんへ」(関暁夫著・竹書房) ?の登場は、実に衝撃だった。

そう、「書籍の来るべき未来」を追及する僕にとっては3つの意味で衝撃だった。まずひとつめ。

『Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説5』(関暁夫著・竹書房)

◆まるでYouTubeを見ているような感覚になるほどAR動画が満載

この「都市伝説」は、1万円札に織り込まれた暗号やフリーメイソンなどの陰謀などを展開してヒットを生んでいるのだが、この「5」については、AR動画がいくつものページに織り込まれて、動画を楽しめる構成になっている。つまり、動画を見るためのシールにスマートフォンをかざせば、簡単に動画が始まり、まさにYouTubeを見ている感覚になる。そのシールが随所に織り込まれているのだ。

ということは、この本は「動画を楽しむための導入キー」として機能しているということである。この本の虜になった何人かの読者に聞いたが「動画は見たが、本はあまり読まなかった」という。ということは、書籍の将来への方向性として「動画を楽しみたい人のためのマスターキー」たるものとして書籍が存在し、人たちが求めていくかもしれない、ということだ。もしもそうなら、芸能人の水着も、それから幽霊の写真も、これからは「AR動画つき」として本が売られていき、「動画が主で、文字が従」となる可能性が大きくあることを示す。

◆書籍が「パーティグッズ」として人気アイテムになるならば

ふたつめは、これもまた肉眼で見て驚いたが、この書籍を開いて、スマートフォンで怖い動画を見せる、という行為をキャバクラで見たときも驚いた。見たことはないが、パーティや合コンでの「つかみ」として男が自慢げに見せている人もいるだろう。

もし、書籍が「パーティグッズ」として人気アイテムになるならば、いい傾向なのではないかと思う。「読む」書籍としてはもはや日本については二人にひとりは年に一冊も読まない時代だからだ。

◆マイクロソフトからクレームが入るほど壮絶な陰謀説

話を「都市伝説」に戻すが、じつはマイクロソフトの陰謀を関氏が語りすぎて、マイクロソフトからクレームが入っているという。これは3つめの衝撃だ。 関氏は、テレビ番組でビルゲイツの財団が関わっている事業の一つであるワクチンについて触れ、そこで恐るべき陰謀説を語りだした。

「ビル・ゲイツは、ワクチン事業の裏で、密かに世界人口をコントロールしようとしている」という、壮絶な陰謀説を披露したのだ。これがマイクロソフトの逆鱗に触れたようだ。

◆「都市伝説」のルーツ「消えるヒッチハイカー」

「都市伝説」は、発祥がアメリカとされる。81年に流行した「消えるヒッチハイカー」はそれなりに衝撃的だった。

こんな内容だ。

(類話1) スパーダンバーグに住むひとりの男が、ある夜、家へ帰る途中、ひとりの女が道端を歩いているのを見た。彼は車を停めて「送りましょうか」と言った。彼女は、3マイルほど先の兄の所へ行くところだと言った。彼は「助手席へどうぞ」と言ったが、彼女は後ろのシートに座ると言った。途中、しばらく話をしたが、やがて彼女はおとなしくなってしまった。彼はその兄の家まで車を走らせた。その兄のことは彼も知っていたのだ。そこに着き、彼女を降ろそうと車を停め、後ろを振り向くと、そこには誰もいなかった。彼は妙に思い、その家へ行ってその兄に言った。「おまえさんに会うという女を乗せたんだけど、ここに着いたら消えちまってたよ」。その兄はまったく驚いた様子もなくこう言った。「その子は2年前に死んだ妹だよ。彼女を道で拾ったのは君で7人目さ。でも、妹はまだここまで本当にやってきたことはないよ」(http://roanoke.web.fc2.com/foreign/Vanishing_Hitchhiker.htm

◆都市伝説とは「みんなの間で語られているが、真実かどうか分別がつかないもの」

つまり、「都市伝説」とは、あえて定義すれば「みんなの間で語られているが、真実かどうか分別がつかないもの」ということだ。誰も知らない話は都市伝説にはならない。だから日本では「口裂け女」は都市伝説だ。いい女が寝てくれた。先に帰ったが、鏡にルージュで「エイズの世界へようこそ」と書いてあった。これが90年に流行した有名な「エイズ・メアリー」という都市伝説だ。都市伝説がひとり歩きしていくとき、語り部としては誰が浮上するだろう。

それは「時代が誰を選ぶか」という話となってくるが、関氏については、もはやあまりにもレジェンドとして存在が大きくなりすぎ、「それは裏がとれているのか」というわけがわからない方向に読者の関心が向かってしまうのだろうと思う。
いずれにせよ「6」が楽しみだ。いつ出るのか知らないが、それはおそらく、「書籍」の将来を示す可能性に満ちているのだから。

(小林俊之)

◎占領期日本の闇──731部隊「殺戮軍医」石井四郎はなぜ裁かれなかったのか?
◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告
◎「書籍のPDF化」を拒み、本作りを殺す──経産省の「電子書籍化」国策利権