4月に入ったので、この記事を斬る。それは大胆にも『スクープ 大横綱 白鵬 決意固めた三月場所後 電撃引退』というタイトルが掲載されていた「週刊大衆」2月23日号だ。

記事には、「三月の大阪場所後に電撃引退!」とある。この背景には、初場所で大横綱・大鵬の史上最多33回目の優勝という記録を抜き、前人未踏の記録を作った翌日、「疑惑の相撲があるんですよ。あんなの子供が見てもわかる」と、取り直しとなった稀勢の里との取り組みで、土俵際の「物言い」がついた一番について、審判部を批判した事件がある。

「一気に白鵬は『生意気だ』『品格がない』と相撲ファンに叩かれるヒールとなりました。あの瞬間に、白鵬は朝青龍と同列の品格がない横綱になり下がったのです。マスコミの前だけでなく、後援会でもぶっきらぼうな態度を貫き、34回目の優勝を果たした大阪場所でもマスコミには優勝インタビューまでは、口をききませんでした」(スポーツ紙記者)

「週刊大衆」はこう書いている。

「引退があるとすれば、はたしていつなのだろうか。『白鵬は最近、〝自分の独り勝ち状態に〝張り合いがないよね〟と漏らしていましたからね。キリのいいのが好きな横綱のこと。自身が初土俵を踏んだのと同じ三月場所でーつまり次の大阪場所にでも〝Xデー〟があるかも……』(白鵬のタニマチ筋)

また、協会内部からは、
「白鵬は八百長疑惑で揺れる協会を一人で支えてくれた功労者ですが、今回の発言は重大。もし、また白鵬が問題を起こすなら、協会は引退させるくらいの覚悟で臨まないと…」という声まで聞かれる。 だが、相撲界を盛り上げた最強横綱がこのまま引退とは、あまりにも寂しい。

ひとまず白鵬は、1月31日にテレビ番組で「多くの人にご迷惑、心配をかけ、お詫びしたいです」と謝罪した。ところが審判部への謝罪はまったくない。

白鵬の問題発言に「問題があった」するならば、白鵬が押し出すときに、白鵬の足が返っているタイミングと、稀勢の里の体が土につくのが同時であったと審判部が説明のアナウンスしていない点につきる。そう、あの問題の本質は「審判部」が下手すぎるということだ。

「あれは誰がどう見ても同体だ。誰も白鵬に『足が返っていました』と教えていないとすれば、部屋の中で弟子や側近にも『甘やかしすぎだ』と批判されてもしかたがない側面があります」(相撲記者)

ちなみに、宮城野親方は1月27日に北の湖理事長と審判部長の伊勢ヶ浜親方(54=元横綱旭富士)に謝罪し、白鵬本人にも注意を与えたという。

◆幕内力士の半分以上がモンゴル出身の時もある大相撲の現実

だが、僕はもっとこの問題に強く踏み込む。そもそも大相撲にモンゴル人は多すぎではないだろうか。

場所にもよるが、幕の内に限っては、半分以上がモンゴル出身のときもある。

「そもそも、大相撲のなり手が少ないから、親方たちがモンゴルにスカウトに行って大量に連れてきた。それなのに『日本に来たら日本流に従え』とばかりに品格を押しつけるのはいかがなものか。そんなに品格や振る舞いが重要ならば、相撲教習所で徹底的に言葉使いから教えていくべきだ。その場しのぎで力士を連れてきて、今。礼儀がどうのと嘆いても始まらないと思うが」(同)

とくに白鵬は苦労人だ。その這い上がる様子はときとして美談となる。白鵬が少年のころ、まったく目が出ずに、師匠たちは誰も引き取らなかった。「さあ、もうあきらめな」とモンゴルに帰る飛行機のチケットを渡された白鵬は「モンゴルに帰りたくない」と大泣きし、見かねた宮城野親方が白鵬を引きとった。そこから血がにじむような努力を重ねて、今の横綱の地位がある。

「白鵬は、尊敬する双葉山と大鵬については、徹底的に研究してきました。もちろん、輪島の取り口もビデオで見て研究を重ねました。読書の量も半端ではない。そのあたりの日本人よりもよほど日本を愛している。もし、白鵬を傲慢にさせた者がいるとしたら、まったく稽古量でも、実力でも大きく水をあけられた周囲の力士たちでしょう。最近では、場所直前にならないと稽古をしない白鵬にまったく歯がたたないのですから」(同)

◆『売れればよし』とする週刊誌のやりかたは通用しない

それにしても「週刊大衆」よ。白鵬は、まだまだ引退しない。

「希望は大阪場所で13勝した照ノ富士です。彼が横綱になって白鵬のライバルとなって壁にならないとおもしろくない。遠藤も逸ノ城も人気ばかりが先行して、実力が追いついていってませんからね」(同)

つぎのつぎの場所くらいで、照ノ富士が大関になっているのは、まず間違いないだろう。

「それにしても、週刊大衆は早まった見出しを打ちましたね。白鵬は、日本で部屋を持ちたいと希望しているのは、相撲関係者なら、誰でも知っていること。ましてや相撲協会とこじれたまま引退なんてバカなことをするような男でもない。もういいかげんに『売れればよし』とする週刊誌のやりかたは通用しないのではないかね」(同)

そのとおり。またも白鵬の勇姿がしばらく楽しめる。残念ながら「週刊大衆」の心配はまったく空振りに終わったようだ。さあ今度は、どの誤報を斬ろうか。記者のみなさま、ご注意あれ。うししししし。(鈴木雅久)

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