MuayThaiOpen 世代交代が進む中にもベテランの意地!

貴センチャイジム vs 岩浪悠弥。岩浪悠弥の左フックが貴にヒット
パンチの交錯、貴を研究した岩浪のパンチが上回る

42回目を迎えたムエタイオープン興行。貴センチャイジムはアゴを打ち抜かれて王座陥落、NOWAYはヒジ打ちで劇的勝利。

ルンピニースタジアム王座へ向けて、下部タイトルでも熾烈な戦いが繰り広げられました。

この日、来賓としてタイ国からWBCムエタイ役員で、アメリカでムエタイスクールを開校しているというノックウィード・スリアムタイ氏が、この日のタイトルマッチの立会人としてレフェリングも担当されました。

◎MuayThaiOpen.42 / 2018年7月22日(日)新宿フェース16:30~20:20
主催:センチャイジム
認定:ルンピニー・ボクシングスタジアム・オブジャパン(LBSJ≒LPNJ)

◆第12試合 MuayThaiOpenバンタム級タイトルマッチ 5回戦

Champ.貴・センチャイジム(センチャイ/53.4kg)v
VS
JKイノベーション同級Champ.岩浪悠弥(橋本/53.45kg)
勝者:岩浪悠弥 / TKO 4R 2:56 / 主審:ノックウィード・スリアムタイ

貴センチャイジムは経歴長く、幾つかの国内タイトルと世界の称号のタイトルも獲得している33歳のベテラン。長身からくる手足の長さが武器となる技と首相撲からの膝蹴りも得意とする。しかし打たれ脆さが目立つこの頃。

若い20歳の岩浪が狙うのはそのアゴかと注目される中、第2ラウンド、ローキックでやや優勢気味の岩浪がパンチの打ち合いに入った一瞬、連打から左フックを合わせ、ダウンを奪う。

岩浪の更なる左フックをヒットさせ貴からダウンを奪う
岩浪の立て続けの左フックに貴は完全に立ち上がれないダメージを負う
二つ目の国内王座を制した岩浪悠弥、センチャイ代表、ノックウィードレフェリー、ラウンドガールに囲まれる

技量・総合力が現れる第3ラウンド以降に入る中、貴は組み合ってのヒザ蹴りで挽回を狙うが、第4ラウンドには接近戦で岩浪の左フックがヒット。組んでの崩しに出る貴だが、岩浪の左フックに2度倒されレフェリーに止められました。

両者は2016年7月17日にルンピニージャパン・スーパーフライ級王座決定戦で対戦、貴が首相撲で優位に進め、僅差の2-1判定で王座奪取していますが、岩浪はその雪辱を果たしました。

貴(たかゆき)センチャイジム:37戦26勝(6KO)9敗2分
岩浪悠弥(いわなみゆうや):24戦16勝(2KO)7敗1分

◆第11試合 MuayThaiOpenフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.翔貴(岡山・水島/57.1kg) vs NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.15kg)
勝者:NOWAY / TKO 3R 2:47 / 主審:少白竜

NOWAY vs 翔貴。若い翔貴に打ち勝った37歳NOWAYの左ミドルキック
裂傷を負った翔貴はダメージ深くすぐには立ち上がれず
翔貴 vs NOWAY。NOWAYの左ヒジ打ちが翔貴の左目上にヒット
諦めなくてよかったと語ったNOWAY。デビューから10年の開花

ローキックを軸にパンチの交錯が始まる。第2ラウンドに入ると主導権争いは、距離感を掴みリズムに乗っていった37歳のNOWAY。第3ラウンドもヒットが目立っていく中、翔貴がパンチで出てロープ際に迫ったところでNOWAYの左ヒジ打ちがカウンターで翔貴の顔面にヒット。翔貴は顔面をカットされるとともにダメージで立ち上がれそうになく、カウント中にレフェリーストップされました。

翔貴(しょうき):27戦10勝(6KO)12敗5分
NOWAY:19戦13勝(1KO)4敗2分

◆第10試合 ルンピニージャパン・スーパーライト級王座決定戦 5回戦

2位.実方拓海(TSKJapan/63.0kg) vs MOD-X・センチャイジム(タイ/63.25kg)
勝者:実方拓海 / 判定3-0 /主審:河原聡一
副審:田中49-47. 少白竜49-47. ノックウィード48-46

ローキックの攻防から、次第にロープ際に下がるMOD-X。パンチで出る実方に対し、ロープやコーナーに下がる展開が多くなりながらも蹴られたら蹴り返すMOD-X。

組み合えばムエタイ技を発揮し崩しもあるが、パンチとローキックの離れた攻防となるとロープ際に下がるMOD-X。第5ラウンドの終盤には、これで時間稼ぎして終わろうとしたような動きの残り時間少ない頃、MOD-Xにパンチのラッシュを掛ける実方。連打を浴びグロッギーになったMOD-Xはスタンディングダウンを取られる。

MOD-X vs 実方拓海。打ち合えば実方が圧勝しそうな勢い
スタンディングダウンを喫したMOD-X、意外な結末だったか
王座奪取に喜ぶ実方拓海のインタビュー姿

こういう出て来ないスタミナ足りないタイ戦士にラッシュしてくれたことには、ファンのストレス発散させてくれた結末。大差にならぬもノックダウンの差は大きく現れ、判定で実方が勝利を掴む。

実方拓海(さねかたたくみ):18戦13勝4敗1分
MOD-Xセンチャイジム:72戦51勝20敗1分(推定)

◆第9試合 MuayThaiOpenバンタム級挑戦者決定戦3回戦

鳩(=あつむ/TSKJapan/53.1kg) vs 飯尾馨一(=いいおけいいち/ストライブル世田谷/53.15kg)
勝者:鳩 / TKO 2R 2:42 / パンチによる連打でダウン、レフェリーストップ
主審:北尻俊介

鳩:20戦12勝(10KO)7敗1分
飯尾馨一:6戦2勝3敗1分

◆第7試合 ライト級3回戦

笠原淳矢(=かさはらじゅんや/フォルティス渋谷/60.85kg)
VS
亜努(=あとむ/新宿スポーツ/61.75kg)520gオーバー、減点1とグローブハンディー有り。
勝者:笠原淳矢 / 判定3-0 / 主審:田中浩明
副審:北尻30-26. 少白竜30-26. 河原29-26

笠原淳矢:43戦16勝(3KO)24敗3分
亜努:14戦6勝8敗

◆第6試合 80.0kg契約3回戦

ナンファーCHU(ANT/78.9kg) vs ルンラウィー・OZGYM(タイ/70.2kg)
勝者:ルンラウィー / 判定0-3 / 主審:ノックウィード
副審:北尻28-29. 田中28-30. 28-29

ナンファー:9戦4勝(2KO)5敗
ルンラウィー:61戦41勝18敗2分(推定)

◆第5試合 LPNJ U-15 -50.0kg3回戦(2分制)

花岡竜(橋本) vs 松田虎之介(ストライフKB)
勝者:花岡竜 / TKO 2R 0:47 / 続行中のタオル投入による棄権
主審:少白竜

◆第4試合 バンタム級3回戦

壱(=いっせい)センチャイジム(センチャイ/53.35kg) vs 渡辺亮(武風庵/52.9kg)
勝者:壱センチャイジム / TKO 1R 1:45 / カウント中のレフェリーストップ
主審:河原聡一

壱センチャイジム:4戦3勝1敗
渡辺亮:9戦3勝(1KO)6敗

◆第3試合 70.0kg契約3回戦

齋藤敬真(=さいとうけいま/インスパイヤードM/69.1kg)
VS
吉田英司(クロスポイント吉祥寺/69.45kg)
勝者:吉田英司 / KO 2R 0:55 / 3ノックダウン
主審:北尻俊介

齋藤敬真:7戦5勝(3KO)2敗
吉田英司:4戦3勝1敗

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

ウルフ タツロウ(ANT/58.8kg)
VS
角谷祐介(=かくたにゆうすけ/NEXTLEVEL渋谷/58.65kg)
勝者:角谷祐介 / 判定0-3 / 主審:田中浩明
副審:少白竜28-30. 北尻28-30. 河原28-29

ウルフ タツロウ:7戦4勝2敗1分
角谷祐介:9戦6勝1敗2分

◆第1試合 45.0kg契約3回戦(2分制)

Sae_KMG(クラミツ/44.7kg) vs ピーポー梨乃(ストライフ/42.9kg)
勝者:Sae_KMG / 判定2-0 / 主審:田中浩明
副審:少白竜30-29. 北尻29-29. 河原29-28

Sae_KMG:7戦3勝3敗1分
ピーポー梨乃:2戦2敗

《取材戦記》

上位王座も下位王座も関係なく入り乱れる交流戦。世界の称号を持っていても国内王座に挑む現象は、任意団体の似たもの王座であることが浮き彫りとなっています。

NOWAYが勝利者インタビューで「皆さんに言いたいのは、何でもいいので、自分が一生懸命になれるものをずっと続けていると、いつか結果が出るということで、諦めなくてよかったと思います」とアピール。27歳と遅く始めてもそれが実ることを実証されました。他にも30歳越えてデビューした選手も多い大器晩成の時代でしょうか。

センチャイジム主催のMuayThaiOpen興行も2005年から数えて42回目。この継続力も凄いことで、また過去の「タイファイトエクストリームやムエタイTOYOTA CUPのようなビッグ興行やってよ」とセンチャイ会長にお願いにしたいところです(無理難題と知りつつ)。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

本田圭佑が訪朝へ? ── 民間外交に追いつめられる安倍政権

7月19日、サッカー日本代表の本田圭佑が神奈川の朝鮮学園を訪ねた。名古屋グランパスエイト時代の同僚・安英学のもとめに応じたものだが、この訪問が訪朝につながるのではないかとの見方がひろがっている。本田圭佑は4月の南北会談に「素晴らしく、歴史的な第一歩」とツィートし、「多くの韓国人と北朝鮮の友人たちよ、本当におめでとう。そして乾杯!」と称賛していた。それが契機となって、安英学が朝鮮学校訪問に誘ったというわけだ。そしてこれが、本田の訪朝につながるのではないかという観測がひろがっているのだ。


◎[参考動画]本田圭佑が朝鮮学校をサプライズ訪問 「夢を諦めないこと」を訴える(Angelic Faulkner 2018/07/19公開)

 
フットボールサミット第8回『本田圭佑という哲学 世界のHONDAになる日』(2012年8月カンゼン)

◆本田の社会的な意識の高さ

本田はアメリカの俳優とともに、ベンチャー企業に投資するファンドを立ち上げ、そこでの収益を西九州集中豪雨の被災者支援に向けるなど、社会貢献に高い関心をもっている。引退後のサッカー選手が、たとえば貧困問題に取り組んできた中田英寿らのように、社会貢献活動に献身するべきだという考えをしめしてきた。

韓国も北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)も、サッカーは人気スポーツである。スポーツ外交ということでは、北朝鮮はバスケットボールのデニス・ロッドマン(元NBA)を再三にわたって招き、金委員長自身がバスケットファンとして迎えている。日本でもアントニオ猪木議員が32回にわたって訪朝し、民間外交の成果をあげている。猪木議員の場合は個人的なパフォーマンスの色合いがつよく、そもそもプロレスにどこまでスポーツ性をみるかという問題がある。しかるに、サッカー日本代表の顔だった(本人は代表からの引退を表明)本田が、指導をかねて訪朝することになれば、ある種本格的なスポーツ外交の流れが生まれるかもしれない。

◆ポーズだけの安倍政権の内実が暴露される

しかし、そんな歓迎すべき流れの源流が出来つつあるなかで、その流れに追い詰められかねないのが、わが安倍政権なのである。米朝会談でトランプが「拉致問題の解決を提起」していらい、安倍政権も日朝対話にむけて動き出しているかにみえる。ポーズだけでもそうしなければ、日米・米韓、あるいは日韓の協調の流れから孤立し、東アジア外交のなかで何らの役割りも果たせなくなるからである。

このかん、北朝鮮側は「拉致問題の調査報告を日本側に説明する」と、対話の糸口をちらつかせている。しかしこれは、日本側が「受けとらなかった」2015年の特別調査団の報告書であって、2014年のストックホルム合意に基づくものにほかならない。その内容は、日本政府がけっして認めることのできない「8名の死、4名は未入国」なのである(6月22日ごろ、北朝鮮当局者から日本政府に連絡があったと、政府関係者が明らかにした)。

日本のインテリジェンス(情報力)と歴史問題への決着(植民地化の清算)をもって、先行的に拉致問題をリードすべきだ(蓮池透氏)ったのに、安倍は「徹底した制裁をつづける」ことで北朝鮮の崩壊を期待してしまった。これが戦略的な誤りだったのは、現在の日本政府の孤立に照らせば火を見るよりも明らかだ。

◆戦争を前提にした外交は破綻する

長距離ミサイルを開発し核で武装する北朝鮮こそ、おそらく安倍晋三にとっては理想の好敵手だったに違いない。そのために安保法制で自衛隊の交戦権、すなわち集団的自衛権を開封し、イージスシステムなど最先端の兵器で武装を推し進めてきたのだ。それはアメリカの軍産複合体(兵器産業)の要請でもあった。同時にそれは戦争の危機を煽りつつ、アメリカの一極支配と固い盟約関係をむすぶことにある。近未来的には、日米同盟を機軸に中国の台頭と対決し、軍事力による平和をめざすものにほかならない。しかしながら、アメリカトランプ政権が、なかばロシアにコントロールされ、ヨーロッパと中国にも保護主義を全面化しているなか、その一貫性のなさに振り回される運命にある。

気がついてみたら、アメリカに引きずられて戦争を始めてしまっていた、という事態も考えられないわけではないのだ。戦争をまねくかもしれない危険な政権を、これ以上つづけさせるわけにはいかない。


◎[参考動画]本田選手 ピッチの外で新たな挑戦(日本経済新聞2018/07/17公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)、『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

月刊『紙の爆弾』8月号!
『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す
横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

キックボクシングの夏祭り MAGNUM.47!

ペットヤソーに左ミドルキックを浴びせる江幡睦
あらゆる技を酷使、飛びヒザ蹴りを見せる江幡睦

「いよいよ江幡睦の牙城が大きく揺らぐ」という見出しが気になる展開へ

◎MAGNUM.47 / 7月8日(日)後楽園ホール 17:00~20:30
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第12試合 54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/54.0kg)
VS
ペットヤソー・ダープランサーラカム(タイ/53.7kg)
勝者:江幡睦 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名50-47. 宮沢50-45. 和田50-46

最もKOに結びつけてきたローキックも仕留めるに至らず

これほどタフな対戦相手は過去にいなかったかもしれない。メインイベント、江幡睦の相手は元・ルンピニー系フライ級9位で、パタヤにあるスタジアムで開催されるMAXムエタイの55kg級チャンピオンという肩書きを持つ。その実力は“厄介な強豪”と称されたが、本当にタフだった。

江幡睦もノックアウトで沈めるテクニックは何パターンも持っている。今回も圧勝かと思われた第1ラウンド、ローキックで鋭く攻め、早くも効いた様子のペットヤソー。仕留めるのはボディーブローか、アゴにフックかストレートか、ハイキックか。ダメージが蓄積しているはずのペットヤソーが怯む様子を見せながら前進してくるタフさ。江幡睦のあとちょっとの追撃で仕留めそうなパワーが、当たっても倒れないもどかしさ。

怯みながらも打ち返してきたペットヤソーのボディブローが江幡睦にヒット

5ラウンド戦えるスタミナ充分な睦も打ち疲れか、終盤の攻めは少なくなる。ペットヤソーの反撃はさほど強い打撃は無いが、油断ならない隙を突いたカウンターのヒジやパンチと組んでのヒザがある。睦は組み合った際のヒザ蹴りが少ないのが勿体無い。大差の判定勝利ながら仕留め切れなかった展開に表情は曇りがちだった。

このままムエタイ二大殿堂のひとつ、ラジャダムナンスタジアム王座奪取まで、課題が残る試合はしていられないだろう。

連打を打つ江幡睦。いくら打っても倒れなかったペットヤソー
大差判定勝利もいつもの笑顔は無かった
勝次vsペットシラー。勝次(左)の右ストレートでノックダウンを奪う

◆第11試合 62.0kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/62.5kg)
VS
ペットシラー・ポー・パタラ(タイ/61.5kg)
勝者:勝次 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-27. 宮沢30-28. 仲30-28

「KNOCK OUT」から凱旋し、スピードとパワーが増した勝次。ペットシラーもMAXムエタイ60kg級チャンピオンという肩書き。ペットシラーにヒットする技は何か、探りながらもその距離が掴み難いところ、第2ラウンドにはタイミングを掴んで、勝次の右ストレートでダウンを奪う。仕留めるには至らなかったが、距離を詰めてパンチを打ち込み威圧的に攻めることで主導権を握った展開が見られる。

また更なる上位への挑戦のチャンスを求めたマイクアピール。ムエタイ殿堂王座か、WKBAか、どういう舞台が用意されるだろうか。

ペットシラーvs勝次。攻勢を続けた勝次(右)、自信が増した試合展開だった
Tomo vs 斗吾。残りわずかな時間でノックダウンを奪った斗吾

◆第10試合 73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)vsTomo(天下一/72.7kg)
勝者:斗吾 / TKO 1R 3:09 / ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:和田良覚

初回早々にTomoがパンチでラッシュ。斗吾は少々貰ってしまいロープ際に下がるが、打ち合いながらも立て直しは早かった。本来のリズムを取り戻すと、経験値の差を見せ、ヒジとパンチの連打をヒットさせダウンを奪う。

これが第1ラウンド終了5秒前。効いていたTomoだったが、踏ん張ってカウント9で立ち上がるが、斗吾のヒジ打ちで額をカットされておりドクターチェックが要請される。タイムはこの時点で一旦ストップされるはずで、試合はドクターの勧告を受入れ第1ラウンド3分09秒、レフェリーストップによる斗吾のTKO勝利となる。

Tomo vs 斗吾。劣勢から一転ペースを掴み、パンチ連打を叩き込む斗吾

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

重森陽太(伊原稲城/61.7kg)vsヨーペットJSK(タイ/61.7kg)
勝者:重森陽太 / KO 3R 1:16 / テンカウント
主審:椎名利一

ヨーペットは梅野源治、森井洋介とも好ファイトを展開している名の知れた強豪。階級アップした重森がどう戦うかが注目される。第1ラウンドから第2ラウンドにかけ、鋭いミドルキックのけん制し合いながらも様子見の静けさが続く。

第3ラウンドにはチャンス到来したか、蹴り合いが激しくなると、重森の左ミドルキックがヨーペットのボディーに炸裂。ヨーペットはうずくまるように倒れ込み10カウントアウトされてしまう。重森の評価が上がった試合だった。

重森陽太vsヨーペット・JSK。激しくなった攻防でヨーペットのボディーへ左ミドルキックがヒット

◆第8試合 70.0kg契約3回戦

喜多村誠(伊原新潟/69.4kg)vsRYU謙(拳狼会/69.4kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 1R 2:45 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

蹴りのけん制の中、ローキックでダウンを奪い、更にローキックとパンチ連打するとRYUはうずくまるようにダウンし、レフェリーが試合をストップした。

RYU謙vs喜多村誠。ローキックでノックダウンを奪った後、前蹴りから仕留めに掛かる喜多村誠

◆第7試合 55.0kg契約3回戦

日本バンタム級1位.瀧澤博人(前・Champ/ビクトリー/55.0kg)
VS
國本真義(MEIBUKAI/55.0kg)
勝者:瀧澤博人 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井30-28. 和田30-29. 宮沢30-27

瀧澤は左ミドルキックを主体に攻め、國本もローキックやパンチを返す攻防は互角の展開に進むが、瀧澤はハイキックを含む蹴りの多彩さが見映え良く判定勝利に繋げる。

瀧澤博人vs國本真義。瀧澤の左ミドルキックが連打され試合を支配していった
ローズ達也の左ヒジ打ちが泰史の右目辺りにヒット

◆第6試合 52.0kg契約3回戦

日本フライ級1位.泰史(前・Champ/伊原/52.0kg)
VS
WPMF日本フライ級チャンピオン.ローズ達也(ワイルドシーサー沖縄/51.6kg)
勝者:ローズ達也 / TKO 2R 1:33 / ドクター勧告を受入れレフェリーストップ
主審:仲俊光

泰史のパンチと蹴りのヒットがやや上回る中、第2ラウンドに、ローズ達也のヒジ狙いが泰史の右目辺りにヒットし、瞼を切った負傷で、ドクターの勧告を受入れたレフェリーストップとなる。瞼のカットより右眼のダメージが無いか気になるところ。

◆第5試合 ライト級3回戦

日本フェザー級1位.髙橋亨汰(伊原/61.23kg)
VS
NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/60.9kg)
勝者:髙橋亨汰 / TKO 1R 2:18 / ドクター勧告を受入れレフェリーストップ
主審:桜井一秀

注目の交流戦。高橋のミドルキック主体の距離の取り方の巧みさに棚橋は強打がヒットし難い。高橋のヒジがカウンターでヒットすると棚橋は眉間から激しく流血。短い時間だったが、棚橋にとっては新たなタイプと戦った貴重な経験となる。

棚橋賢二郎vs高橋亭汰。棚橋のパンチと高橋の蹴りの距離の探り合い

◆第4試合 ライト級3回戦

日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/60.8kg)
VS
日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.4kg)
勝者:瀬戸口勝也 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:椎名30-27. 仲30-27. 桜井29-27

◆第3試合 62.0kg契約3回戦

日本ライト級7位.渡邉涼介(伊原新潟/62.0kg)vs林瑞紀(治政館/62.0kg)
引分け 1-0 / 主審:宮沢誠
副審:和田29-29. 仲30-29. 桜井29-29

◆第2試合 フェザー級3回戦

日本フェザー級8位.金子大樹(ビクトリー/57.15kg)
VS
NJKFフェザー級7位.小田武司(拳之会/56.6kg)
勝者:金子大樹 / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:和田29-29. 宮沢29-28. 桜井29-28

◆第1試合 フェザー級2回戦

平塚一郎(トーエル/56.65kg)vs瀬川琉(伊原稲城/56.8kg)
勝者:瀬川琉 / 判定1-2 (19-20. 20-19. 18-20)

《取材戦記》

江幡睦は打ち負けることなく大差判定勝利となったが、もどかしい展開に観ている側は意地悪にも、“もし江幡睦が、衰えずに出てくるペットヤソーのパンチでノックアウトされることがあったら”という心理が働いてしまう心の内。

昔、沢村忠が連戦連勝したタイトルマッチに於いて、TBS実況の石川顕アナウンサーが、「沢村選手の勝利を信じつつも、不動のものが入れ替わる姿を見てみたくなるのもファン心理でもある」といった話を思い出しました。

タイトルは掛かっていないが、頂点を目指している最中での後退は許されない現在、こんな展開もあるんだなという江幡睦の姿。苦戦の勝利ではなく、圧倒した勝利ながら課題が残る、メインイベンターを務める難しさが滲み出た試合でした。

新日本キックボクシング協会次回興行は、8月4日(土)に後楽園ホールに於いてWINNERS 2018.3rdが開催、メインイベントは日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)が出場の、日本vsタイ国際戦4試合と、日本ウェルター級1位.政斗(治政館)がNKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK)と対戦、他、日本バンタム級6位.田中亮平(市原)がNKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館)と、日本ライト級9位.興之介(治政館)がNKBライト級5位.パントリー杉並(杉並)と対戦するNKBとの交流戦3試合の、以上を含む、ちょっと長い全15試合が行なわれる予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』8月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

NJKFの真の主役は誰か!? ニューウェーブ到来なるか!?

隙を突いた健太のパンチ等は度々ヒット、ベテランの上手さが光る

◎NJKF 2018.2nd / 6月24日(日)17:00~21:15
主催:NJKF / 認定:NJKF

◆第9試合メインイベント 66.5㎏契約 5回戦

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(E.S.G/66.25kg)
VS
DEEP☆KICK65㎏級チャンピオン.憂也(魁塾/66.6→66.45kg)
勝者:健太 / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:多賀谷49-47. 中山48-47. 和田49-48

健太の右ストレートヒット、ここから連打して右フックでダウンを奪う

初回は様子見でも健太は憂也の高い蹴りと伸びるパンチに警戒。第2ラウンドには距離感掴んだ健太のフェイントからの右ストレートでグラつかせた後、ラッシュをかけ右フックでダウンを奪う。ここから更に憂也を捻じ伏せるかという勢いも、凌いだ憂也を仕留めるには至らず、一進一退の攻防が続く。必死の形相の憂也に、一発のフイ打ちでパンチやヒジ打ちのクリーンヒットが目立ったのは健太。若い憂也を捻じ伏せるつもりも、倒すに至らなかった健太でも表情にはゆとりある判定勝利でした。

反撃貰う危険ある技、バックヒジ打ちを見せる健太
右ヒジ打ちを見せる健太、切るだけでない倒すヒジ打ちも持っている
左フックがヒット後、崩れるクンタップを追撃するYETI達朗

◆第8試合セミファイナル 70.0㎏契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーウェルター級チャンピオン.YETI達朗(キング/69.9kg)
VS
クンタップ・チャロンチャイ(タイ/69.55kg)
勝者:YETI達朗 / TKO 1R 1:36 / 主審:宮本啓介

蹴りとパンチの様子見、その中でも前に出るYETI達朗、ややロープ際に下がり気味のクンタップへ、いきなり視線を下に落としたフェイントの左フック一発でアゴに命中。崩れていくクンタップに連打で仕留めてダウン、レフェリーストップとなる。
「本日の主役は俺です」と言い切ったYETI達朗、そのインパクトある勝利でした。

ロープ際へ下がるクンタップへ攻勢を掛けていくYETI達朗
しぶとい蹴りが続いていった鈴木翔也(右)の前蹴り
2階級制覇した鈴木翔也、更に上があるタイトルへ進まねばならない

◆第7試合 NJKFライト級タイトルマッチ 5回戦

NAOKI(立川KBA/61.35→61.15kg)
VS
挑戦者1位.鈴木翔也(OGUNI/61.23kg)
勝者:鈴木翔也 / 判定0-2 / 主審:多賀谷敏朗
副審:竹村47-49. 宮本48-48. 和田48-49

互いの戦略に基づく積極的な蹴りパンチの攻防はどちらが主導権を取ったかは難しい見極め。

第2ラウンドにNAOKIの肘で鈴木が右眉を少々カット後、第3ラウンドに、偶然のバッティングらしい衝突で鼻を打撲したNAOKI、折れてはいない様子だが、鼻血が大量に出て息が苦しそうになる。

第4ラウンドにも鈴木のヒジによる左目尻の出血も苦しい展開を導いてしまったNAOKI、鈴木のしぶとい攻めが続き、諦めない気持ちでNAOKIを抑えた鈴木の粘り勝ちとなる。

この日のNJKFタイトル戦はWBCムエタイルールが起用されており、試合続行不可能となっても負傷判定は無くTKOとなります。それでレフェリーによる審判員、タイムキーパー、インスペクターに対する有効打かバッティングかのジェスチャーはありませんでした。通達はしてもしなくても問題は無いところ、つい確認しようと癖が出るスタッフや我々。ルールを理解していた多賀谷レフェリーの方が一枚上手でありました。

鼻血が止まらないNAOKI(左)も懸命に劣勢を免れようと攻勢に出る姿勢

◆第6試合 NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

3位.松谷桐(VALLELY/50.8kg)vs 1位.大田一航(新興ムエタイ/50.8kg)
勝者:松谷桐 / TKO 2R 0:53 / 主審:和田良覚

初回、スピーディーな展開から素早い松谷の一瞬のヒジが一航を捉えたか、続行するも第2ラウンドに傷が悪化し、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。ニューウェーブ到来した16歳対決は松谷桐が王座獲得。

16歳ニューウェーブ対決を制したのは松谷桐、今後も両者はどんな成長を見せるか
陣営と撮影に収まる新チャンピオン松谷桐
一進一退の攻防で引分け防衛を果たしたのは前田浩喜(左)

◆第5試合 NJKFスーパーバンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.前田浩喜(CORE/55.3kg)
VS
挑戦者3位.久保田雄大(新興ムエタイ/55.3kg)
引分け 三者三様 / 主審:竹村光一
副審:多賀谷48-49. 和田49-49. 中山50-48

蹴られても蹴り返し、更に蹴っていく前田だが、蹴り勝つにはインパクトが弱かったか。冷静なベテラン前田の当て勘が上回っていた印象があるが、久保田の負けない手数足数、ラストラウンド終盤の攻勢が目立ったか引分けに落ち着く。この試合の評価は観る人によって分かれる難しい展開。前田浩喜は初防衛となる。

◆引退記念エキシビジョンマッチ(1分30秒制で2人を相手)

エキシビジョンマッチによる兄弟対決を裁く父親の内藤武(=宮越新一会長)

宮越宗一郎(拳粋会)
VS
WBCムエタイ・インターナショナル・フェザー級チャンピオン.MOMOTARO(OGUNI)
WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級チャンピオン.宮越慶二郎(拳粋会)

宮越宗一郎は1987年2月12日、埼玉県出身。父は元・新格闘術ライト級1位.内藤武(士道館)で、現・拳粋会ジムの宮越新一会長。2005年12月にデビュー。父親似のスタイルは変則的な動きをするも、重いパンチ、蹴り、ヒジ打ちを武器にWBCムエタイ日本ウェルター級とスーパーウェルターで2階級制覇。2015年11月にはWBCムエタイ・インターナショナル・スーパーウェルター級王座獲得。

「今後は弟の宮越慶二郎を強くする為に自分が相手になってやったり、若い子を育てる為にもっと指導していきたい」と語る。

スポットライトを浴びた定番テンカウントゴング

◆第4試合 NJKFスーパーライト王座決定戦 5回戦

1位.畠山隼人(E.S.G/63.05kg)vs 2位.真吾YAMATO(大和/63.45kg)
勝者:畠山隼人 / TKO 1R 2:11 / 主審:宮本和俊

真吾が畠山から右ストレートでフラッシュダウンを決めるが、バランス崩した感じで瞬時に立ち上がり、これがWBCムエタイルールでノックダウンとはならず、今度は畠山が右フックで真吾を逆転失神KOする衝撃的終了。

畠山隼人が真吾YAMATOを右フックで仕留める。これも主役級KO
新チャンピオン俊YAMATOがポーズをとる

◆第3試合 NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦

3位.日下滉大(OGUNI/53.3kg)vs 2位.俊YAMATO(大和/53.45kg)
勝者:俊YAMATO / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本48-49. 和田48-49. 竹村48-49

当初出場予定の大田拓真が負傷欠場したことにより、4度目の対戦となったこのカード。手の内の分かる相手で、初回からの主導権争いをするようなスピーディーな蹴りとパンチの攻防。その展開は変わらずも中盤にはその距離が縮まって、倒すかダメージを与えにいく攻防。最後まで踏ん張った俊YAMATOが際どくも判定勝利し、王座獲得。

4度目の対決。俊YAMATO(右)が日下滉大に右ストレートをヒット

※前座ヤングファイト2試合は割愛します。

マスコットガールと並んでポーズをとる健太

《取材戦記》

健太はこの1年間で11試合を消化。「KNOCK OUT」や海外のイベントに出場し、勝ちもあれば負けもあるが、怪我も無く、モチベーションの低下も無く戦えることに、ミスターパーフェクトを目指す健太であることが伺えます。

そして「僕はもう一度NJKFを満員にしたい」と言うように、メインイベント最終試合に進むにつれて空席が目立っていく。かつて満員が続いた2006年開催の真王杯トーナメント2階級決勝のような超満員を戻すべく、スーパーライト級に落として大和哲也(大和)との対戦など、好カード実現に頑張っていく意気込みを語りました。

NJKF興行では1996年の設立以来、超満員だったことは何度もあります。ここ数年を見ると、この団体だけではなく、最終試合のメインイベントへ進むにつれ空席が半分以下に目立っていくことは、よく見られる現象です。それは応援する選手の試合が終わると、支援者や仲間内が帰ってしまうことにあります。それではチケット完売であっても超満員とは言えない状況でしょう。今の時代では動画配信で後でも観られることがあるでしょうが、最後まで会場で生観戦されないことに懸念する関係者の声は多くありますが、これを打ち破ろうと健太のアピールがありました。そしてその他の団体興行でも打開策を考えてイベントを進めている苦労が感じられます。

NJKF 2018.3rdは9月22日(土)に後楽園ホールで開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

どちらも正論だという面白さ ── サッカー日本代表のポーランド戦


◎[参考動画]Japan v Poland – 2018 FIFA World Cup Russia(FIFATV 2018/06/28公開)

そのとき、セネガルがコロンビアに0-1で劣勢に立っていた。このままいけば、日本はフェアプレイポイントで2つ上まわる。そこで西野監督は武藤に代えて投入した長谷部に、ボール回しによる時間稼ぎを指示した。かくして、日本はポーランド戦を0-1で負けることによって、決勝トーナメント進出をねらった。もしもセネガルがコロンビアに1点を返せば、日本はブロックリーグ敗退が決まる。その意味ではスリリングな賭けであり、それ以上に勝つ戦意を見せないもどかしさ、時間つぶしの無気力な光景が観客のブーイングをさそった。


◎[参考動画]会場ブーイング 日本対ポーランド(横浜ベイスターズ応援隊員2018/06/28公開)

みごとに負けきることで目的を果たしたわけだが、当然にも批判が噴出した。勝とうとしないのはスポーツではない、セコいばかりで退屈な試合だった。正々堂々としていない。サムライらしくない。勝ち上がることは大切だが、そのためには何をしてもいいということにならないか。子どもたちに誤まったメッセージになるのではないか。などなど。


◎[参考動画]The Shame moments of Japan team vs Poland(RABONA 2018/06/28公開)

いっぽう、スポーツ報道はドーハの悲劇(2-1で勝っていたにもかかわらず、時間稼ぎをしなかったために、同点にされてしまう)を引き合いに、成熟した戦いだったとしている。長年、サッカーを観戦してきたファンも「ベスト16になったことを評価すべき」というものが多い。ワールドカップの一次リーグは、ああいう戦い方なのだと力説する解説者も少なくない。いや、おおかたは現状のルールでは当然の戦い方、あるいは素晴らしいと評する向きが多いのが事実だ。日本代表の成長とも云われている。

とはいえ、戦意を見せない日本チームに、批判はある意味で当然だろう。日本代表のコロンビア撃破を「侍の挑戦精神」と褒めた韓国メディアも、ポーランド戦については「これがサムライ精神か?」と批判し、FIFAランキング1位のドイツを破った韓国チームをほめたたえた。韓国元代表の安貞垣は中継解説のなかで「韓国は美しく敗退した。日本は醜く勝ち残った」と評している。たしかに醜いゲームだった。

だがそれも、サッカーという競技の特質である。ラグビーならばボールを回さずに、モールやラックなどフォワードプレイで残り時間を使うのが選択肢として考えられるが、それがサッカーのパス回しほど醜くないだけのことである。その意味では日本チームへの批判も好評価も、どちらが正しいというものではない。どちらも正論なのである。


◎[参考動画]Japan reaches 2018 World Cup knockout stages thanks to obscure yellow card rule(ESPN 2018/06/28公開)

ところで、全世界的に盛り上がっているワールドカップだが、サッカー通のあいだでは「単なるお祭騒ぎ」に過ぎないとされているのはご存知だろうか。ヨーロッパプロサッカーが全盛期を迎えている現状から、レベルの低い国別対抗戦よりもクラブチームが覇を競い合うチャンピオンリーグの盛況があるからだ。

EU統合以降、セリエA(イタリア)が外国人選手を解禁したのをきっかけに、各国のリーグに人種の垣根がなくなった。さらに90年代に入ると、南米の選手が4大リーグ(ブンデスリーガ=ドイツ・リーガエスパニョーラ=スペイン・セリアA=イタリア・プレミアリーグ=イギリス)に参加するようになった。現在にいたっては、南米リーグのクラブチームには二流の選手しか残らなくなったといわれている。フランスもナショナルチームは強いが、サッカー自体の人気が低く(第6位)、スポンサーが付きにくい。

上述したチャンピオンリーグは前年優勝チームが参加し、2~3週間に1試合が行なわれる。国内リーグ(土日)と重ならない水曜日にゲームは行なわれる。国内リーグよりもスポンサーが付きやすく、平日にもかかわらず観客動員も多い。選手もワールドカップよりもクラブチームの日程を最優先にコンディショニングするようになっているのが現状だ。

したがって韓国がドイツに勝ったのも、日本がコロンビアに勝ったのも、さほど驚くようなことではないのだ。コロンビアもドイツも、代表チームとして選びぬかれた選手を擁しているとはいえ、チームとしての合宿や練習は日本のそれに遠くおよばないのだから。

なお、チャンピオンズリーグはヨーロッパ圏54カ国から、本戦に参加できるのは32チームに限られているが、FIFAもCLに対抗してクラブアワールドカップを4年に1度、行なう計画である。インターコンチネンタルカップ(旧トヨタカップ)を継承し、廃止予定のコンフィデレーションに代わる大会として位置づけられている。


◎[参考動画]サッカーW杯日本対ポーランド戦直後の渋谷スクランブル交差点付近その1(スタジオエイメイ渋谷店 2018/06/28公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)、『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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伝統の目黒ジムから二人目成るか、緑川創のムエタイ殿堂王座挑戦!

アンモープロモーターや伊原信一代表、鴇稔之トレーナーに囲まれるシップムーン(左から2番目)と緑川創(中央)。計量にて

6月27日(水)タイ現地
ラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級(154LBS)王座決定戦 5回戦
5位.シップムーン・シット・シェフブーンタム(2代前・チャンピオン/タイ/69.85kg)
VS
6位.緑川創(藤本/69.85kg)

緑川創、ダウン奪われ大差判定負け。

当日朝の計量にて、緑川創は0.2ポンドオーバーで、2回目の計量は154ポンドリミットでパス。 シップムーンが0.1ポンドオーバーで、2回目の計量はこちらも154ポンドリミットでのパス。

第1ラウンドからシップムーンのパンチをカウンターされた緑川はダウンを喫し、その後もシップムーンの蹴りの強さ、足数が主導権支配していき、緑川はその距離を詰めにくく、詰めたところでヒザ蹴りがあるシップムーン。パンチのクリーンヒット多発させることには持ち込めない。

左ミドルキックをタイミングよく蹴ってくるシップムーン
ノックダウンとなればダウン1点とその有効性に1点が付く10-8

最終5ラウンドに、ポイント逃げ切りに出たシップムーンの一瞬の隙を突いてヒジでカットさせるも、残り時間は少なく、負傷箇所が相当危なくない限りはレフェリーは試合を止めることはない。これが4ラウンドまでだったら、逆転のチャンスもあっただろうが、時すでに遅し。

接近すればヒザ蹴り、そのタイミングが上手いシップムーン
追い詰められていく緑川、シップムーンの左前蹴りヒットで疲れが目立ちはじめる
追う一方、ラストに懸ける緑川創
最終ラウンド、ヒジでカットに成功した緑川、ラッシュするが、時すでに遅し

採点は、未確認情報ながら49-46. 50-45. 50-45という情報あり。タイ側関係者から見た印象では、「大差で相手にならなかった。タイトルマッチでなければ、途中で止められていたのではないか」という声があったようです。

王座奪回に成功したシップムーン、更なる日本人の挑戦を受けるか

シップムーン・シット・シェフブーンタムは昨年5月25日に現地で当時のチャンピオン、T-98(=今村卓也/クロスポイント吉祥寺)に挑戦して判定勝利、王座奪取した選手です。今年2月にイントラーチャイ・チョー・ハーパヤックに判定で敗れ陥落。イントラーチャイが返上したことにより、今回の王座決定戦が実現しています。

日本人が獲得したムエタイ殿堂チャンピオンの中で、「同一ジムから2人目誕生成るか」という点も注目されたタイトル戦。石井宏樹が2011年10月にラジャダムナン系スーパーライト級王座獲得して以来、2人目の獲得成れば、伝統の目黒ジムを継承する藤本ジムが初となるところでしたが、脆くも夢破れました。

やはり本場のリングでのムエタイボクサーの本気度は違うものだと実感する。険しくて当然です。そして今後も、この現地で上り詰める挑戦であって欲しいと思うところです。

緑川創は2014年6月に4度防衛した日本ウェルター級タイトルを返上して以来、長く待たされたラジャダムナン王座初挑戦でした。敗戦後、緑川は力の足りなさを反省しつつ「落ち込んではいられない」という、まだ諦めず上を目指す精神力はたいしたもので、7月8日(日)の新日本キックボクシング協会MAGNUM.47興行ではエキシビジョンマッチが予定されており、王座奪取成らずの出場で何を語るか注目されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき『紙の爆弾』2018年7月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

今回も豪快なKOが続いたNKB闘魂シリーズ!

高橋聖人の左ハイキックが安田浩昭にヒット
立ち上がってきた安田浩昭に飛びヒザ蹴りの高橋聖人

  

◆安田浩昭 vs 高橋聖人

過去1勝1敗の、ひろあき(=安田浩昭/SQUARE-UP)vs 高橋聖人(真門)戦は予想された展開で、安田浩昭のパンチ主体と高橋聖人の上下散らす多彩な蹴り。

昨年12月は一瞬の隙を突いた安田浩昭が右フック一発で倒しているが、今回の流れは前回の轍を踏まない高橋聖人の距離を保った蹴りが増していく。

安田浩昭は蹴りでは優ることが出来ず、前回同様パンチしかない中、高橋聖人がローキックから左ハイキックヒットに繋ぎ、見事にダウンを奪った。

効いている安田浩昭に更にパンチ連打とローキック、ヒザ蹴りとラッシュし、最後もローキックから左ハイキックで倒すとレフェリーはノーカウントで試合を止めました。

NKBタイトルでの三兄弟による同時三階級制覇を達成した高橋聖人は「ここからがスタート」と言うとおり、今後はファンの厳しい目線で注目される、真の日本のトップに立つチャンピオンロードが始まります。

崩れ落ちた安田浩昭、高橋聖人は勝利確信
勝利の瞬間、高橋三兄弟が喜ぶ
打ち合いに出る西村清吾
夢中でヒザ蹴りヒットさせた西村清吾
ヒットしたらYOSHIKIが転落した
無意識に戦う本能でリングに戻ろうと立ち上がる
カウントアウトされたことに気付くYOSHIKI

◆西村清吾 vs YOSHIKI

パンチとローキック主体の攻防は単発で流れが盛り上がらない中、第2ラウンドにはパンチから軽く飛んだヒザ蹴りでダウンを奪った西村。しかしその後、組み合っての西村のヒザ蹴りでYOSHIKIに股間ファールブローを当ててしまい中断。再開後、組み合ってのブレイクの際、今度はYOSHIKIのヒザ蹴りで西村の鼻骨部分を切る負傷。折れた疑いもあってドクターチェックが入る。その後、組み合って反則紛いの加撃にエキサイト気味に進むが、クリーンヒットそのものは少ない。

第4ラウンドに西村のパンチ連打でバランス崩したYOSHIKIがロープ際に吹っ飛ぶと西村は勢いつけて飛びヒザ蹴りを当て、YOSHIKIはリング下に転落。パンチと飛びヒザ蹴りとリング下に落ちた衝撃でダメージ深いYOSHIKIは何とか立ち上がり、リングに戻るが規定の20カウントアウトとなり、西村のKO勝ちとなる。

◆パントリー杉並 vs 白井達也

ローキックのけん制からパンチのスピーディーな打ち合いは次第に距離が詰まり、ボディーへストレートパンチから左フック、そしてローキックへ繋ぐパントリー杉並。互いに似たような戦略で激しさが増していく。

ガードが空き気味の両者。パントリー杉並の左フックで白井からダウンを奪う。更に仕留めに掛かろうとパンチの打ち合いが増す中、白井の左フックがヒットし、パントリーがダウン。

立ち上がろうとするも足がもつれるとすぐにレフェリーがカウント中の試合ストップ。悔やむ表情のパントリー杉並。8月には新日本キックの治政館興行に臨むパントリー杉並は、打たれない注意をしなければならないでしょう。

既存する団体の中では最も古くキックボクシングに関わってきた代表同士の団体、新日本キックボクシング協会との交流が実現へ!

7月8日(日)新日本キックボクシング協会MAGNUM.47では、ライト級3回戦、日本フェザー級1位.髙橋亨汰(伊原)vs NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館)戦が予定され、8月4日(土)新日本キックボクシング協会WINNERS 2018.3rdに於いて、NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK)、NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並)、NKBバンタム級5位.海老原竜司(神武館)らが出場予定。

10月13日(土)日本キックボクシング連盟・闘魂シリーズvol.4では、NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK)vs 日本ミドル級1位.今野明(市原)戦が予定されています。

◎闘魂シリーズ vol.3 / 2018年6月16日(土)後楽園ホール17:15~20:40
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第13試合 第15代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE-UP/57.05kg)vs 3位.高橋聖人(真門/57.15kg)
勝者:高橋聖人 / TKO 3R 2:30 / 主審:前田仁

◆第12試合 73.0kg契約5回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM-KOK/72.9kg)
VS
YOSHIKI(大和魂一族/72.5kg)
勝者:西村清吾 / KO 4R 1:19 / 主審:鈴木義和

◆第11試合 ライト級3回戦

NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/61.05kg)vs 白井達也(TRY-EX/61.15kg)
勝者:白井達也 / TKO 2R 2:20 / 主審:佐藤友章

◆第10試合 ライト級3回戦

NKBライト級4位.野村怜央(TEAM-KOK/60.9kg)
VS
WMC日本フェザー級5位.藤野伸哉(RIKIX/60.8kg)
勝者:藤野伸哉 / 判定0-3 / 主審:川上伸
副審:前田28-30. 鈴木27-30. 佐藤28-30

白井達也(左)の反撃で再び打ち合い
白井の逆転の左フックでパントリー杉並が倒れる
崩れ落ちたパントリー杉並
セコンド陣と喜びツーショットの白井達也

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

ガオパヤック・ワイズディー(タイ/55.6kg)vs 加藤有吾(RIKIX/56.0kg)
勝者:加藤有吾 / TKO 2R 0:35 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

◆第8試合 フェザー級3回戦

NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/56.9kg)vs 石川翔(BIGMOOSE/57.15kg)
勝者:石川翔 / 判定0-3 / 主審:佐藤友章
副審:川上27-28. 前田27-29. 鈴木27-29

◆第7試合 ウエルター級3回戦

NKBウェルター級5位.SEIITSU(八王子FSG/66.68kg)vs 青地大祐(TRY-EX/66.55kg)
勝者:SEIITSU / TKO 1R 2:38 / ヒザ蹴りによるカット、ドクターの勧告を受入れ、レフェリーストップ
主審:川上伸

◆第6試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.佐藤勇士(拳心館/53.4kg)vs スダ456(BRING IT ON/53.52kg)
勝者:佐藤勇士 / TKO 3R 1:39 / ヒジ打ちによるカット、ドクターの勧告を受入れ、レフェリーストップ
主審:鈴木義和

◆第5試合 女子フライ級3回戦

サソリ(テツ/49.0kg)vs 後藤まき(RIKIX/49.5kg)
勝者:サソリ / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:佐藤30-28. 川上29-28. 鈴木30-29

◆第4試合 フェザー級3回戦

キョウスケ(大塚/57.1kg)vs 山本太一(ケーアクティブ/56.7kg)
引分け / 0-1 (30-30. 30-30. 29-30)

◆第3試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM KOK/61.1kg)vs 海登(光/60.7kg)
勝者:海登 / 判定0-3 (26-29. 26-29. 26-30)

◆第2試合 バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ/53.3kg)vs 五嶋龍太郎(KENSEIKAI/52.2kg)
勝者:古瀬翔 / 判定3-0 (30-27. 29-28. 29-28)

◆第1試合 フェザー級3回戦

岩田行央(大塚/57.15kg)vs 森田勇志(KENSEIKAI/56.6kg)
勝者:森田勇志 / TKO 1R 2:50 / カウント中のレフェリーストップ

《取材戦記》

アクシデントが発生した西村清吾vs YOSHIKI戦。

選手がリングから転落することは、なかなか遭遇することはありませんが、それでも過去の長い歴史の中では何度も起きています。有効打を浴びて転落した場合、プロボクシングでは20カウントでKO。キックボクシングでは団体によりますが、昭和の時代は日本系、全日本系とも通常のノックダウンと同様の10カウントでした。

昭和54年に、日本系では、当時の日本ライト級チャンピオン.有馬敏(大拳)のボディから顔面パンチの連打を浴びた小野寺仁(横須賀中央)はリング下に転落、リングに戻る前に10カウントアウトされた試合がありました。

プロボクシングでは、リングから落ちた選手を誰も助けることは許されないのがルールで、キックに於いては、落ちそうになっている選手を支えてやるジャッジや役員、セコンド、カメラマンを見ることがありますが、これも厳密には選手に触れてはいけません。しかし、落ちて深いダメージを負うことを未然に防ぐ為の、審判や試合役員が支えてやる処置は仕方ない範疇かと思うところでもあります。

また次の興行で何が起こるか、あらゆる事態を想定しておかねばならない審判員です。

NKBの日本キックボクシング連盟と、新日本キックボクシング協会との交流戦が発表されたのは、この日の興行より数日前でしたが、両団体代表が会談の場を持ったのは5月上旬だったと言われています。

キックの団体交流戦は昔からあり、乱立した現在では頻繁に行なわれ、珍しくはないものの、この両団体代表は、昭和のキック黄金時代からの波乱万丈の歴史を知り、ある時期は同じ団体で活動した仲であり、見ている側からは、金正恩委員長と文在寅大統領が南北軍事境界線で握手したことや、米朝首脳会談に至る諸々のシーンがダブってしまいます。

順調に進むことを願いつつ、一波乱あっても将来に繋がる何らかの進展があるであろう両団体の交流戦を届けたいものです。

チャンピオンベルトを掲げる三兄弟、歴史的快挙はこれから

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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若さとベテラン入り混じり、王座争うM-ONE興行!

2016年11月23日にデビューしたMASATOと柊斗が6戦目でWPMF日本王座狙うも、スーパーバンタム級の柊斗は計量失格の波乱。医科大学生MASATOがウェルター級で王座獲得。「KNOCK OUTイベント」の主軸のRIKIXジムからベテランの長谷川健がライト級で王座獲得。

◎M-ONE 2018 2nd 6月3日(日)新宿フェイス 16:30~19:26

主導権支配して、どの距離からでも攻めに出たMASATO
MASATOの前蹴りが喜入衆の距離感を狂わす

◆第9試合 第5代WPMF日本ウェルター級王座決定戦 5回戦

1位.MASATO BRAVERY(BRAVERY/25歳/66.35kg)
VS
3位.喜入衆(フォルティス渋谷/39歳/66.68kg)
勝者:MASATO BRAVERY / TKO 3R 1:19
主審:チャンデー・ソー・パランタレー

MASATOの前蹴り中心のけん制が目立つ第1ラウンド、時折ハイキックも繰り出す。喜入はいつもながらのパンチとローキックが力強い。第2ラウンド、続く攻防が激しくなり、組み合うとヒジ振るうMASATOはインパクト強い攻め。喜入は続けてパンチ・ローキック中心の展開。第3ラウンドには、MASATOのヒジがヒットし喜入の額をカット、喜入の決死の猛攻が始まるが、レフェリーが出血具合を見てドクターを要請。ストップ勧告を受入れレフェリーストップとなりました。

MASATOの左ヒジ打ちが喜入衆の顔面にヒット
MASATOが王座獲得、右はウィラサクレックWPMF日本支局長
渡辺優太の左ローキックが柊斗の左太腿を潰しに掛かる

◆第8試合 第8代WPMF日本スーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

2位.渡辺優太(PKムエタイ/28歳/55.34kg)
VS
バンタム級4位柊斗(WSR・F西川口/18歳/56.35kg)
勝者:渡辺優太 / TKO 2R 2:02 / 主審:ソンマーイ・ケーオセーン

柊斗が前日計量で900gオーバー。当日再計量は16:00に行なわれ57.7kg
この試合は、渡辺が勝利した時のみ王座を認定となります。

初回は両者ローキックからミドルキックへ繋ぐけん制で様子見のラウンド。第2ラウンド、渡辺のローキックが決まりだす。蹴り応えあったか、左内腿を蹴ると呆気なくダウンする柊斗。続けて狙い定めた左太腿にローキックを続けると再びダウンした柊斗。そのままレフェリーがノーカウントのストップとなりました

足が麻痺してしまい、ヒザをついてしまう柊斗
渡辺優太が王座獲得、次は他団体チャンピオンと勝負か
2度右ストレートを喰らったDAIJUはダメージ深くレフェリーに支えられる

◆第7試合 第7代WPMF日本ライト級王座決定戦 5回戦

DAIJU(尚武会/36歳/61.23kg)VS 長谷川健(RIKIX/34歳/61.23kg)
勝者:長谷川健 / TKO 2R 1:27 / 主審:北尻俊介

初回、DAIJUのパンチとローキックの手数が長谷川を上回るが、長谷川の右ストレートでスリップ裁定ながらDAIJUが尻餅をつく。これで勢いに乗りかけた感じの長谷川だったが、第1ラウンド終了。次も長谷川がパンチで攻勢を掛け、接近すると膝蹴りも繰り出す。懸命に打って出るDAIJUだが、長谷川の優位の距離となって右ストレートをヒットするとDAIJUは一気に後退。すかさず組み合って更に右ストレートを打ち込むとDAIJUは倒れ込み、ダメージ深くレフェリーが試合をストップしました。

DAIJUの突進を防ぐ長谷川健の右ローキック
長谷川健が王座獲得、セレモニーでチャンピオンベルトを巻かれる

◆第6試合 スーパーバンタム級3回戦

島んちゅ泰(Y’ZD 沖縄/55.05kg)
VS
MITSURU(WSR・F三ノ輪/55.25kg)
勝者:MITSURU / 判定0-3 / 主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:ナルンチョン28-29. ソンマイ28-29. チャンデー28-29

MITSURUの左ミドルキックが島んちゅ泰にヒット

◆第5試合 58.0kg契約3回戦

疋田拓巳(T’s KICKBOXING/57.65kg)VS 酒井洋一(WSR・F西川口/57.55kg)
勝者;酒井洋一 / 判定0-3 / 主審:北尻俊介
副審:ナルンチョン28-30. ノッパデーソン28-29. チャンデー29-30

◆第4試合 スーパーライト級3回戦

嵐士(AKT/63.0kg)VS 池上貴将(WSR・F西川口/63.0kg)
勝者:嵐士 / TKO 3R 0:34 / 主審:ソンマーイ・ケーオセーン

パンチと上下の変化をつけた蹴り合いから池上貴将の左ローキックを返した嵐士の左ハイキックが池上の側頭部にクリーンヒット、バッタリ倒れた池上は担架で運ばれました。

嵐士の左ハイキックが池上貴将にクリーンヒット
この日も輝いていた2名のラウンドガール

◆第3試合 53.0kg契約3回戦

大崎草志(Struggle/52.75kg)VS 福間光佑(WSR・F三ノ輪/52.6kg)
勝者:大崎草志 / TKO 3R 1:45 / 主審:チャンデー・ソー・パランタレー

◆第2試合 57.0kg契約3回戦

JACK(WSR・F三ノ輪/55.95kg)VS 鮫島博人(WSR・F荒川/56.7kg)
勝者:鮫島博人 / 判定0-3 / 主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:チャンデー26-30. ソンマイ27-30. 北尻26-30

◆第1試合 67.0kg契約3回戦

TAMAJIRO(尚武会/67.0kg)VS 関川翔平(WSR・F三ノ輪/66.4kg)
勝者:関川翔平 / 判定0-3 / 主審:ナルンチョン・ギャットニワット
副審:チャンデー28-30. ソンマイ28-30. 北尻27-30

《取材戦記》

柊斗の計量失格でこの王座決定戦は、グローブハンディと減点1が課せられる条件となっていましたが、「ハンディは付けないことになりました」と審判団より連絡がありました。これは渡辺優太陣営からの「ハンディは不要」という要望だったようですが、これはプロボクシングルールと同様で、タイトルマッチに於いてはハンディは付きません。更に公式計量後での両者の体重差制限があり、「どうせ失格なら思いっきり増量してやろう」という思惑は許されません。また更に、グローブハンディは数年前から廃止されている様子で、失格側にグローブを重くすること自体に異論があるようです。

キックボクシング系での、タイトルマッチに於いても失格者に付けられること多いグローブハンディや減点は、タイトルマッチ制度のあらゆる見直しも必要かと思うこの競技です。

柊斗は2000年4月生まれで、2009年に誕生したM-1ジュニア(後にWPMFジュニア)格闘技で、25kg級から55kg級まで制覇し、2016年11月23日プロデビュー。計量失格と敗北で王座は遠のき、今後も試練は続くでしょうが、幼児期から鍛えられた力を今後見せて欲しい新世代組の選手です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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石原將伍、初のメインイベントは大差で敗れる!!

ケンスワンの強い右ハイキックが石原を苦しめた
組み合えばヒザ蹴りの餌食に、組まれると最も苦しいヒザ蹴り
ケンスワンの何十発もの右ハイキックは石原の右腕脇腹が赤く染まる

昨年10月にチャンピオンとなってから一段と自信と発言力が増した石原將伍が「強い選手とやりたい。強い選手とやらなければ面白い試合にならない」と臨む。

それは強い蹴り、巧みなテクニック、アグレッシブな展開を見せる選手が望ましい。そうして選ばれ呼んで来られたのが、ケンスワン・サシプラパー。アグレッシブな展開を見せると言われるテレビマッチ、昨年までBBTV(タイ7ch)スーパーバンタム級4位だったという、こういった選手にどう立ち向かうかを石原將伍に与えたメインイベントの役割。

◎WINNERS 2018.2nd
5月13日(日)後楽園ホール17:00~
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆メインイベント 59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー/58.6kg)
VS
ケンスワン・サシプラパー(タイ/58.8kg)
勝者:ケンスワン・サシプラパー / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:少白竜46-50. 宮沢46-49. 仲46-50

想定どおり、ケンスワンは重く速いハイキックを繰り出し、石原を襲う。石原はパンチを狙うがその距離に入るには危険な賭けとなる。ケンスワンは首相撲に持ち込めばヒザ蹴りの脅威もあり、ボディ攻めや捻じ伏せての顔面ヒザ蹴りにピンチの石原。何とか致命的被弾は逃れるがケンスワンの右ミドルキックを再三受けた石原の左腕は赤く染まる。

第5ラウンドにはブロックした上からでも蹴ってくる威力に疲労困憊した石原はよろけるが、パンチの距離に持ち込むと最後の力を振り絞り一気に連打。ケンスワンにダメージを与えるには至らず、大差が付く判定負けとなったが、石原も持ち味を出し切った試合。

石原も得意のパンチを振るうが、なかなか難しい攻略
政斗の粘り強い蹴りもリカルドを苦しめた
打ち合う二人、リカルドも気を抜けない展開が続く

◆日本ウェルター級王座決定戦 5回戦

1位.政斗(治政館/66.3kg)
VS
3位.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/66.68kg)
勝者:リカルド・ブラボ / TKO4R 1:41 / ヒジによる顔面カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:桜井一秀

リカルド・ブラボはアルゼンチンでアマチュアキックを経験し、昨年4月に日本でプロデビュー。6戦全勝(4KO)の戦績を残している。日本に来て修行したキックボクシングとタイ人トレーナーから学んだムエタイ技とはまた違う、中南米のパワフルなリズム感と攻撃力が光った攻め。わずか1年でチャンピオンに達する実力が身に付いていたリカルド・ブラボ。

政斗も2度目の王座挑戦となり、ここまで勝ち上がって来た中には粘り強い攻撃力があったが、政斗を上回るリカルド・ブラボの重いパンチがヒットする数がラウンド毎に増していき、第3ラウンドにはヒジ打ちで政斗の顔面カットに成功。これが運命を決定付け、第4ラウンドに入ると、攻撃力が増すリカルド・ブラボで政斗の負傷箇所が悪化し、TKOで下す王座獲得となった。

今後の目標はWKBA世界王座と、ラジャダムナンスタジアム王座奪取を目指すことという。いちばん難しいムエタイ殿堂にアルゼンチンのチャンピオンが誕生する日が来るか、今後の関心はここに集まるでしょう。

リカルド・ブラボのパンチの重さと当て勘が政斗を上回ってヒットが増えていった
内田雅之はロング右ストレートで主導権を奪った

◆ライト級3回戦

日本ライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/61.1kg)
VS
日本ライト級2位.内田雅之(元・日本Fe級C/藤本/61.0kg)
勝者:内田雅之 / TKO 3R 2:40 / ヒジによる顔面カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:少白竜

パワーで前進する永澤の蹴りがやや優勢に見える中、やや離れた距離からの内田の右ストレートが何度かヒット。更に前蹴りが永澤のアゴにヒットさせとリズム掴んだ内田。しかし、永澤もジワジワと出てくる圧力があるが、第3ラウンドに内田が放ったヒジ打ちで顔面カットさせ、更に右バックヒジ打ちを強烈にヒットさせると永澤の負傷箇所が広がり、続行不可能となり、ライト級で2階級制覇狙う内田雅之のTKO勝利。

内田はパンチに続いて前蹴りを永澤のアゴにヒット
皆川裕哉vs新人(あらと)。前半は皆川のハイペースでハイキックがヒット

◆59.0kg契約3回戦

WBC・M日本フェザー級チャンピオン.新人(=あらと/ESG/58.7kg)
VS
日本フェザー級4位.皆川裕哉(藤本/58.8kg)
勝者:皆川裕哉 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-29. 少白竜28-29. 桜井28-29

新人と皆川裕哉の交流戦での新旧対決は、皆川の若さあるアグレッシブな攻めが新人を上回る攻勢。第2ラウンドには皆川が軽い右ストレートながらヒットしダウンを奪う。

しかし、ダメージが無いことをアピールする新人は、ここから盛り返し、ジワジワ力を発揮する新人、長身を利した蹴りを多用したり、組んだら崩したり、本来の持ち味を出し始めた新人の、経験値の差が出てきた展開になるが、3回戦ではダウンの劣勢は取り戻せず、皆川は逃げ切った形の判定勝利。

皆川裕哉vs新人(あらと)。新人も反撃に出るカウンターがヒット

◆ミドル級3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.3kg)vs齋藤智宏(Ys.k/72.57kg)
勝者:今野顕彰 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:少白竜30-28. 桜井30-28. 仲30-28

過去、斗吾に敗れている両者。そして2年前には今野が齋藤智宏にヒジによるTKO勝利している。今回は初回に今野の軽い右ストレートで齋藤智宏がダウン。接近戦になると齋藤の長身からくるムエタイ技を発揮するが、今野を掴まえるに至らず、今野も更なるダメージを与えるに至らないまま判定勝利となる。

◆フライ級3回戦

日本フライ級2位.幸太(ビクトリー/50.7 kg)vs同級5位.空龍(伊原新潟/50.6kg)
勝者:空龍 / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:少白竜29-30. 宮沢誠28-30. 仲29-30

◆バンタム級3回戦

日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館/55.0kg)vsチェ・ジェヨン(韓国/54.3kg)
勝者:.馬渡亮太 / TKO 1R 1:10 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

◆バンタム級3回戦

日本バンタム級3位.阿部泰彦(JMN/54.6kg)vs同級6位.田中亮平(市原/54.6kg)
引分け 三者三様 / 主審:少白竜
副審:椎名28-29. 宮沢30-29. 桜井29-29

◆フライ級3回戦

日本フライ級3位.細田昇吾(ビクトリー/50.6kg)vs山野英慶(市原/50.6kg)
勝者:細田昇吾 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-28. 少白竜30-28. 桜井30-27

新人戦4試合まで割愛します。

ライト級3回戦勝者の内田雅之。プレゼンターとラウンドガールと我が子とともに

《取材戦記》

この日メインイベントとセミファイナルに出場した、ケンスワン・サシプラパーとリカルド・ブラボは生まれ育った国と環境は全く違うものの、戦う基本となる土壌がしっかりしている環境で育った二人でした。とにかくパワフルでリズム感がある。リカルド・ブラボはムエタイとしてはまだ新人の域でも、アルゼンチンで育った格闘技の基礎は、アジア系とは違う強さがある印象。

過去12名が出現した外国人ムエタイ二大殿堂チャンピオンの中、かつてブラジルから誕生した、ジョイシー・イングラムジムは2度防衛に成功。他、石井宏樹とダミアン・アラモス(フランス)も2度防衛。本場タイ選手でも連続防衛はなかなか難しいムエタイ殿堂王座であります。

6月27日には元・日本ウェルター級チャンピオン.緑川創(藤本)が現地、ラジャダムナンスタジアムで王座決定戦出場が決定しました。

相手は2016年10月23日に後楽園ホールで対戦、三者三様で引分けた相手で、前チャンピオンのシップムーン・シット・シェフブーンタム。現地プロモーターからお声が掛かったようで、念願のラジャダムナンスタジアム王座初挑戦となります。

「応援に来て頂ける方は早めにパスポートの準備をお願いします。何言われようが向こうで強い相手に勝てば文句言われないと思うので、今迄のキック人生、応援して頂いている皆様や仲間に応えられる様、命懸けてやります。」というフェイスブックでアピールの緑川選手。

王座奪取は難しいが、仮に獲っても過去12名が残した実績を上回らなければ“伝説のチャンピオン”とは言われない現在の厳しさがある殿堂王座です。

次回の新日本キックボクシング協会興行「MAGNUM.47」は7月8日(日)後楽園ホールで17時より開催予定です。

かなり上手くなった日本語で周囲の仲間へ感謝を述べたリカルド・ブラボ

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

日本大学の闇 日大フェニックスと日大危機管理学部に宿る開学の精神

これほど大規模に報道されているので、今さら口を挟むのが憚られるが、やはり一言言っておかねばならない。関西学院大学と日本大学アメリカンフットボール部の定期戦(5月6日)に発生した、日本大学ディフェンスによる極めて危険なタックルについての問題である。


◎[参考動画]関学大日大戦アメフット反則シーンその1(日刊スポーツ2018/05/14公開)

◆「人殺し」タックルと内田正人監督

この問題につては、大手メディアもかなりの時間や紙面を割き、解説している。識者により多少の違いはあろうが「あのタックルは許されるものではない」との点で見解の一致をみているようだ。その結論に私も異論はない。そして当該危険プレーを行った選手が、個人の判断ではなく、監督、コーチ公認の戦術のもと、「人を殺してしまうかもしれない」タックルがおこなわれていたであろうことにもほぼ間違いないだろう。

日本大学アメリカフットボール部の内田正人監督はくだんの試合以降、姿を見せることなく、どこかに消えてしまった。この行為ひとつを見ても、大学スポーツ部の監督としては失格である。選手のミスではなく、監督が示した規格外のルール違反を説明する義務は内田正人監督にある。私はこの問題が発生して2日後に日大アメリカンフットボール部に、プレーの不正と事後対応の杜撰さを問う内容のメールを送ったが、5月16日現在何の返答もない。

日大フェニックス(アメリカンフットボール部の愛称)は、かつて、東の日大、西の関学といわれ、毎年のように大学日本一を決める甲子園ボールで対戦を続けてきた。篠原監督率いる日大は、伝統的にショットガン攻撃を持ち味に、相手チームの守備をかく乱した。関東での日大一強は揺るぎなかったが、関西では京大が1980年代から台頭し、立命館も続いた。近年関西リーグでは関学と立命館が例年優勝を争っているが、関東では法政、慶応などに大きな力の差がなく、甲子園ボールにも関東の同一チームが2年続けて出場することは珍しい。

◆「こんな時こそ」アドバイスを仰ぎたい危機管理学部学部

さて、問題は日大によるラフプレーだ。日大には長く強かった歴史があるものの、昨年の甲子園ボールで優勝するまでに実に27年のブランクがあった。そしてあえて指摘するが、日大の監督内田正人氏は日大で常任理事を務める人物でもある。その日大に「こんな時こそ」アドバイスを仰ぎたい学部がある。その名は「危機管理学部」である。

同学部の案内には、
〈学祖・山田顕義の理念を受け継ぐ危機管理学部
本学の前身である日本法律学校を創設した学祖・山田顕義は、1844(弘化元)年に現在の山口県萩市に生まれ、14歳で吉田松陰の松下村塾に入門。高杉晋作や伊藤博文をはじめ、維新史に名を残す門下生たちと深く交わり、大きな影響を受けました。後に岩倉使節団の一員となって欧米諸国の先進的な文化を視察した学祖は、軍備拡充よりも教育の普及や法律整備が急務であると確信し、日本を法治国家とするべく近代法の制度設計に邁進。1883(明治16)年から1891(明治24)にかけて司法卿・司法大臣として、明治法典(刑法、刑事・民事訴訟法、民法、商法、裁判所構成法など)の編纂を行い、我が国の“近代法の父”と呼ばれています。

当時、欧米諸国の法律を学ぶことが主流の法学教育に疑問を抱いた学祖は、日本の伝統・慣習・文化を踏まえた法律教育のための学校創立を構想していた宮崎道三郎ら若手法律学者を支援し、自らが所長を務めていた皇典講究所に校舎を借りて、1889(明治22)年に日本法律学校を創立。幕末の日本が外圧にいかに対処すべきかを考え、明治維新後は国際社会で通用する国家建設を進めた学祖は、日本の近代化の過程で直面した安全保障や危機管理のあり方を法学的な観点から模索したものといえるでしょう。危機管理学は新しい学問領域ですが、その意味で日本大学の起源とも関わる、非常に重要な研究分野だといえます。〉

と紹介されているが、吉田松陰、伊藤博文、高杉晋作らは、私の目から見れば民間政権であった江戸幕府に不満を抱き、神話の天皇制を持ち出し、「富国強兵」、「和魂洋才」との掛け声で、ロシアや中国に戦争を仕掛け、朝鮮半島を侵略したもの(あるいはそのイデオローグ)として記憶されている。

日本大学の「危機管理学部」はそういった連中の直系だ、と紹介文は述べている。なるほど現在の教授陣を見れば、

◎安部川元伸 教授
1976年から2013年まで、37年間にわたって公安調査庁に奉職し、その間、現場局において調査事務に携わり、1989年から本庁にて国際情勢、国際テロ情勢等についての情報収集、情報分析業務及び国際渉外業務に従事した。また、2001年の9.11米国同時多発テロ、2008年の洞爺湖サミットに際しては、庁内において、我が国の危機管理情報の収集並びに分析業務で陣頭指揮を執った。これらの経験は何物にも替えがたいものであり、自身の専門性を築き上げる上で大いにプラスになった。
2013年に公安調査庁退官後は、約2年間、日本アイシス・コンサルティング株式会社において、主に日本企業の在外での活動に資する情勢分析資料の作成、危機管理のアドバイス等を担当した。2014年末をもって同社を退職し、2015年4月から日本大学総合科学研究所に教授として所属。

◎勝股秀通 教授
元読売新聞社記者。1983年入社。新潟支局、北海道支社を経て東京社会部に所属。東京地検でリクルート事件を担当、その後警視庁などの担当を経て93年から防衛省・自衛隊を担当。民間人として初めて、防衛大学校総合安全保障研究科(97-99年)を修了、その後、防衛、安全保障問題の専門記者として編集委員、解説部長、論説委員、調査研究本部主任研究員を歴任し、2015年(平成27年)4月から日本大学総合科学研究所教授、16年4月から現職。

◎金山泰介 教授
昭和32年京都市生。昭和55年東京大学法学部卒業後警察庁入庁。内閣安全保障室参事官補、石川県警察本部警務部長、在タイ日本大使館一等書記官、内閣調査官、警視庁公安部参事官等を経て、山梨県警察本部長、中部管区警察学校長、科学警察研究所総務部長、栃木県警察本部長、警察大学校警察政策研究センター所長等を歴任し、平成26年埼玉県警察本部長を最後に退官。平成28年4月より現職。
 その間、ハーバード大学客員研究員、一橋大学公共政策大学院客員教授、東京大学公共政策大学院非常勤講師、京都大学公共政策大学院非常勤講師、慶應義塾大学大学院非常勤講師、上智大学法科大学院非常勤講師、埼玉大学大学院客員教授として社会安全政策及び刑事司法・警察行政に関する研究、教育にも従事。

◎河本志朗 教授
1954年山口県生まれ。1976年同志社大学経済学部卒業後、山口県警察官拝命。1991年から外務省出向、1994年から警察庁警備局勤務を経て、1997年から公益財団法人公共政策調査会第二研究室長として、国際テロリズム、テロ対策、危機管理などを研究。2015年4月から日本大学総合科学研究所教授。2016年4月から現職。

と、ここは「内閣調査室」か「防衛庁の諜報部隊か」と勘違いするような経歴の教員が並ぶ。大学の中に「入れてはいけない」ひとの品評会のようなメンツである。だが、常務理事内田正人が危機に瀕している、しかも内田は学内ではNO,2の実力者との評価もある人物だ。「危機管理学部」の出番ではないか。だが「危機管理学部」に限らず、日大当局からは、世間が納得のできる説明や弁明はいまだに行われていない。「危機管理学部」は身内の危機管理ができずに天下国家の危機感理を論じても、信用を得ることはできないであろう。

日本大学危機管理学部HPの教員紹介より

◆開学以来、支配層の意図が脈々と流れている日大の歴史

しかし、批判を恐れずに書くが日大とは代々このような学風を持った大学なのだ。先に紹介した「学祖・山田顕義の理念を受け継ぐ危機管理学部」で明確なように、日大には支配層の意図が開学以来、脈々と流れている。1960年代には裏口入学や、20億円(!)の使途不明金が問題化し、それまで学生運動がほとんど見られなかった日大でも、大規模な不正解明を目指した運動が起きる。それに対したのは体育会や右翼学生で、校舎の上から重たい石を投下し多数の負傷者を出した。

日大の学生たちは、日大講堂における団体交渉で古田重二良会頭(この呼称も不思議である)らの総退陣を勝ち取るが、後日総理であった佐藤栄作の後ろ盾を得て、日大当局は約束を反故にする。それ以降も日大の基本性格は変わっていない。

そんな学風の日大が「危機管理学部」を備えながら、せっかく27年ぶりに勝ち得た日本一の座を無化するどころか、アメリカンフットボール部、いや日大の存続までが論じられる危機に瀕している。繰り返すがこのような時に役に立たないようでは「危機管理学部」の存在はないだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)