私の内なるタイとムエタイ〈49〉タイで三日坊主!Part.41 還俗を願い出る!

なるべく寺の作業を撮り収めようと、掃き掃除をサンくんに撮って貰う

◆寄進を深く受け止める

日々の出来事はやや前後するが、年明けた1月3日、軽四トラック荷台に6僧が乗せられ、昼のニーモンに呼ばれて行った。田舎道の広々したところに牛や鶏が放し飼いされている農家の敷地内に、信者さんが大勢と、他の寺の比丘も数名来ていた。
新年のお清めらしき儀式で、地べたに茣蓙が敷かれた所に座って読経が始まる。昼食もそこで寄進された。幾つも美味しそうな料理が出され、生菓子にフルーツ、アイスクリームまで出された贅沢なほどの量だった。私より年輩のオジサンがせっせと食材を運んで我々比丘に差し出してくれる。水が無いと気が付くと、それも駆け足で持って来てくれる気の利きよう。これら全て徳を積む行為なのだ。

しかし、その働く姿を見てフッと考えてしまった。ノンカイから帰る途中に藤川さんが、「ああいう人らが、ワシらに飯くれて何とも思わんか?、ワシは申し訳ない気持ちになる、飯食わせてくれて、ワシは詐欺みたいなもんやと思う」と言った言葉が改めて蘇えってくる。

黄衣纏っているだけで、こんな豪華なタダ飯食って、お布施貰って帰るんだ。料理運ぶオジサンに申し訳なくなった。俺って本当に詐欺だな。情けなくなって泣きそうになってしまった。本当に涙出そうになった。堪えた。こんなところで何でこんな感情になったのだろう。藤川さんの言葉が分かっていたつもりが心からは分かっていなかったのだろう。比丘でなかったら、これらの行為は受ける立場にはない。
安易に出家したことを恥じてしまう。こんな反省の念を抱えてカメラなど捨て、真面目に修行を積もうと思ったら3年ぐらい修行すべきだろう。そんな想いから短期出家のつもりが何十年と続いた比丘も居るのかもしれない。

バイク整備が得意なケーオさんの仕事

◆わがままな心の内

そんなカメラを捨てられない私は、コップくんに還俗の相談をすると、還俗すると決めたら、和尚さんにその気持ちを伝えればいいらしい。但し、自分から還俗する日を決められない。散々客寄せパンダとなっていた我々日本人。還俗なんて認めてくれないのではと不安が過ぎる。

それと同時に再出家も頭を過ぎっていた。こんな寺より品のいいノンカイの寺で再出家するとしたら、それは可能か。そんな我がままな望みは誰かに言い出せることではなかった。

還俗する相談は、やや年輩のイアットさんにも聞いてみた。コップくんと同様の意見ではあったが、その2~3日後、朝食の場で「もう和尚さんに還俗願いはしたのか?」と口に出してしまうイアットさん。これで周囲に知れ渡ってしまった。

メーオくんは「還俗しなくていいよ、ずっと居ろよ!」と言ってくれるし、サンくんも「まだ早いよ!」と言う引止めが多かった。メーオくんはやたらと和尚さんの部屋を出入りしているから、薄々和尚さんにも伝わったようだ。

以前も藤川さんが、日本での不動産業で億(円)単位のお金を日々動かしていたことや、タイでの事業で稼いだ財産を、ほとんどタイでの妻などに渡して離婚後、出家した話を信じない奴らばかりで、資産の一部を残しておいた200万バーツ(1千万円弱)ある預金通帳を、「メーオに見せてやったら、一、十、百、千、万と目を疑うように桁を数え直して、目が点になっとったわ!」と笑う。

その後、「和尚が遠回しに、“ウチの寺もでっかい仏像置いて、立派な寺に増築したいなあ”と普段と言うことが変わってきたから、予想どおりメーオが喋りおったとはすぐ分かった」と言うほどメーオくんは和尚さんにとって周囲を探るバロメーターであったことは確かなようだ。

そして1月8日、和尚さんに正式に還俗を願い出た。「相談があります。今月末に還俗したいのですが……」と言ったところで、「ウン、いいよ!」という素っ気ない返答。すぐ運気の本を開いて、「生年月日は? いつ還俗したいんだ?」と聞かれ、「27日がいいです」と応えると「27日は良くない、28日にしろ!」と言う和尚さん。

それはちょっと苦しい、29日は伊達秀騎のムエタイ試合があるのだ。

「29日にチェンマイに行く用があるので」と言うと、「じゃあ25日にしろ!」とあっさり決まってしまった。運気と言うより六曜(大安、仏滅など)に近い気がするが、意外な決め方だった。

更に、「ネイトは1月22日に来る」と藤川さんから新たに聞いたばかりで、比丘としての再会は果たせそうだった。

夕方頃、藤川さんが掃除が終わるのを見つけたところで、還俗願い出たことを伝えた。藤川さんに相談せず決めたことが、ちょっと後ろめたかったが、普段からあまり話さないのだから、もう気を遣わなかった。それと「還俗後、いずれノンカイの寺でもう一回出家できたらなと思います!」とだけ打ち明けた。すると、「もう一回やったら、足洗えんようなるぞ。ここの和尚に対しても失礼に当たることや」と言う。

ある意味、戒律違反で、藤川さんがこの寺で再出家する前、前年一時出家した籍のあるスパンブリーの寺に出向いて再出家することを報告すると、そこは理解を示す和尚さんで問題なかったが、通い慣れた、かつて渋井修さんが在籍したバンコクのパクナム寺の和尚さんに話したら、「それはスパンブリーの和尚に対し、失礼に当たることだ」と言われたらしい。

この時、私はまだ再出家に掛かる意味、責任を理解していなかった。場を変えて足りない修行を積み重ねて比丘生活の締め括りをやりたい愚かな気持ちしかなかったのだった。

◆依頼が絶えない

残り少なくなっていく比丘生活にも葬儀が頻繁にあり、また葬儀の撮影を頼まれる日もあった。寺に居てカメラを持って歩くことは頻繁にあった訳ではないが、皆からカメラマンとしての印象は強かったようだ。

ノンカイでも藤川さんに言われていたことだが、「お前、タイで葬式カメラマンやれ、人は毎日死んでいくからどっかで必ず葬式はあるぞ、お寺幾つも回って契約取ってやってみい。今だけでもこれだけ頼まれるんやから売り込めば仕事増えるぞ。出張撮影、車の手配も助手も要るなあ!」と、勝手に話を膨らませる。ビジネス戦略は常に鋭い勘が働く人だったが、鈍感な私はそんな気にはなれなかった。

こんな野良犬も寺に住み着く大人しい犬だった。コップくんが可愛がる

◆阪神淡路大震災発生!

1月17日の夕方、庭掃き掃除をしていると、藤川さんが「兵庫で地震あったらしいぞ!」と言いながらラジオを持って現れた。毎日聴いて居られたNHKニュースである。後に詳しく知る阪神淡路大震災だった。

「1132人が死亡」という声に、これは相当な震災だったことに驚く。最大震度6。死傷者はその後も増えた。

「ワシ、京都に帰ってみようかな、娘らが心配やし」と言う藤川さん。

そうそう実家に帰ることはないタイで出家した身だが、我が娘夫婦や孫のことは心配だろう。

「我が身の命はいつ終わるか分からん。皆、当たり前のように明日がやって来ると思うて、どこ遊びに行こうか、何食おうかと、呑気に過ごす奴が多いやろが、明日が必ずやって来ると言えるか?、震災で死んだ人も、今日死ぬとは思って居らんかったやろう。日々が諸行無常や!」

こんな話は何度となく藤川さんに言われて来たこと。こんな災害が他人事ではないと思うと、やっぱり悔いの無い日々を送らねばならないと改めて思う。しかしこれも心からは分かっていないんだろうな、我が身にも災難に見舞われるまで。

まあ考え過ぎず、ここでの残り少ない比丘生活を頑張ろうと思うところだった。

残り少ない日々、洗濯姿をケーオさんに撮って貰う

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

熱狂MAXのヤバい野獣たち! NJKF

YETI達朗の自信を持った右ストレートがクリーンヒット
YETI達朗の右ストレートでダウンした匡志YAMATO

YETI達朗の豪快KOが印象的な今年の活躍。白神武央(拳之会)から王座奪取した2月は僅差だったが、6月のクンタップ戦から続いて、いずれも左フックが決め手の2連続1ラウンドKOとなった。そこにはプロボクシングH’s STYLE ジムに出向いて吉野弘幸会長から指導を受けたパンチの強化があり、日本重量級での存在感が増してきた今、他団体交流戦があれば更なる飛躍が期待できそうなYETI達朗である。マイクアピールでは「NJKFはヤバい選手がいっぱい居るヤバい団体」と褒め言葉で持ち上げた。

フライ級ではデビュー8ヶ月の16歳でチャンピオンとなった松谷桐がアグレッシブな打ち合いに出る存在も目立つ。こちらも今後、他団体チャンピオンやムエタイ第一線級選手と戦ってどう試練を乗り越えていくか、来年の興行主役の期待が掛かります。

“頑張ったよ、ママ!”と勝利者インタビューで、応援してくれる高校生の息子に応えた伊織。家庭の空気が読めるような微笑ましいムードが流れる場内。キック界の流行語になりそうな一言だった。昔の殺伐としたリング上から比べて、時代が大きく変化したものである。

◎NJKF 2018.4th / 12月2日(日)後楽園ホール 17:00~20:50
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆第11試合 WBCムエタイ日本スーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

第4代チャンピオン.YETI達朗(キング/69.55kg)
    VS
挑戦者NJKF同級チャンピオン.匡志YAMATO(大和/69.8kg)
勝者:YETI達朗が初防衛 / TKO 1R 2:13 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:竹村光一

開始から両者の蹴りでのやや様子見の後、パンチの交錯に移り、YETI達朗の重そうなパンチが当たり出す。タイミングを計ったところで、強いロングフック気味の右ストレートをヒットさせると匡志YAMATOがダウン。更に勢い付けてロープに詰めての接近戦で左右フックを連打し、右フックで2度目のダウンを奪ったところでレフェリーがストップするYETI達朗の豪快なTKO勝利となった。

更なる右ストレートで倒し切ったYETI達朗
「NJKFはヤバい団体」とアピールするYETI達朗

◆第10試合 58.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.新人(ESG/57.9kg)
   VS
NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.95kg)
引分け 三者三様 / 主審:宮本和俊
副審:神谷29-30. 和田29-29. 竹村30-29

三者三様となる見極めの難しい展開となった。両者の手数足数多く、互いのパンチのヒットも多かったが強烈にヒットは少なく、一進一退の攻防に見解が分かれた結果。パンチで出る勢いはNOWAYにあったが、新人は下がり気味でもヒットが目立ち持ち堪えた。

互角の展開ながらパンチの攻勢が目立ったNOWAY
僅差ながら積極性で優った波賀宙也

◆第9試合 56,5kg契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA/56.5kg)
   VS
ペットワット・ヤバ・チョーベース(タイ/56.05kg)
勝者:波賀宙也 / 判定2-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本29-28. 和田29-29. 竹村29-28

離れた距離での蹴り合いから、首相撲からヒザ蹴りが主体の攻防が長く続く。ヒジ打ちも加え、次第に先手を打って圧力掛けて出た波賀が判定勝利を掴む。

◆第8試合 NJKFフライ級タイトルマッチ 5回戦

第11代チャンピオン.松谷桐(VALLELY/51.0→50.8kg)
   VS
挑戦者同級4位.池上侑季(岩崎/50.7kg)
勝者:松谷桐が初防衛 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:宮本49-47. 多賀谷49-47. 竹村49-48

ローキックの様子見からパンチ、ハイキック、前蹴りを織り交ぜていく両者。両者パンチの被弾も恐れずスタミナ切れない攻防が続いていく。ハイキックや前蹴りのヒットが多く、更にパンチや蹴りで圧した後、手を止めずに打っていく勢いがあったのは松谷で、踏ん張る池上を突き放した。

松谷桐が優った突進ハイキック

◆第7試合 64.5kg契約3回戦

ISKA・M・IC・ライトウェルター級チャンピオン.宮島教晋(誠至会/64.2kg)
   VS
NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/63.9kg)
勝者:畠山隼人 / 判定0-2 / 主審:和田良覚
副審:宮本29-29. 多賀谷28-30. 神谷28-30

宮島は左ミドルキックを多発し、畠山は左右パンチの連打で出る。宮島の蹴りを上回る畠山のパンチが徐々にクリーンヒットが増やし、判定勝利を掴む。

大田原友亮の格差を見せ付ける重いハイキック

◆第6試合 57.0kg契約3回戦

HIRO YAMATO(大和/56.6kg)vs大田原友亮(B-FAMILY NEO/56.5kg)
勝者:大田原友亮 / TKO 2R 2:31 / ヒジによるカットで悪化によるレフェリーストップ
主審:竹村光一

ムエタイスタイルの両者だが、本場タイでの経験値が大きい大田原が経験値でタイミングを見極め、左ハイキックや前蹴りで突き飛ばす。HIROのパンチと蹴りにやや下がる大田原だが、しっかりHIROの動きを見ており、カウンターのヒジ打ちが見事にヒットするとHIROの額のカットに成功。ドクターチェック後、パンチで出て来るHIROを組んで転ばせ、応戦している間に流血が酷くなり、2度目のドクターチェックを受け、続行可能かと見えたがレフェリーが止めて試合は終了。大田原のTKO勝利となった。

◆第5試合 NJKF女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級タイトルマッチ 3回戦(2分制)

チャンピオン.伊織(T-KIX/51.3kg)vs同級1位.三宅芳美(OGUNI/52.0kg)
勝者:伊織 / KO 1R 1:44 / 2ノックダウン制によるKO / 主審:宮本和俊

長い手足で芳美の顔面に前蹴りを入れた序盤からヒザ蹴りに持ち込むと、ボディーをカバーし、効いた様子の芳美に更にヒザで攻めると、コーナーに詰まった芳美はスタンディングダウンを取られる。続けてボディーに狙いを定めた伊織がヒザ蹴りで攻めるとレフェリーがストップした。伊織は息子さんが高校3年生で、「頑張ったよ、ママ!」とメッセージを送った。

伊織が開始早々からボディーに狙いを定めた
「頑張ったよ、ママ!」とアピールする伊織

◆第4試合 バンタム級3回戦

NJKFバンタム級5位.鰤鰤左衛門(CORE/53.2kg)
    VS
NJKFバンタム級7位.清志(新興ムエタイ/53.35kg)
勝者:清志> / TKO 3R 1:02 / ハイキックによるダウンでレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

◆第3試合 61.0kg契約3回戦

NJKFライト級6位.野津良太(ESG/60.8kg)
    VS
NJKFスーパーフェザー級4位.梅沢武彦(東京町田金子/60.9kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定0-3 / 主審:神谷友和
副審:多賀谷28-30. 竹村27-30. 宮本27-29

◆第2試合 スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級6位.木村弘志(OGUNI/63.3kg)
    VS
MA日本スーパーライト級4位.増井侑輝(真樹AICHI/63.5kg)
勝者:増井侑輝 / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:多賀谷28-30. 神谷29-30. 宮本28-29

◆第1試合 バンタム級3回戦

雨宮洸太(キング/53.25kg)vs翔YAMATO(大和/53.0kg)
勝者:翔YAMATO / TKO 2R 2:21 /
有効打によるカットの悪化でレフェリーストップ

王座初防衛を振り返る松谷桐

《取材戦記》

宮島教晋の持つ王座は“ISKAのムエタイルールのインターコンチネンタル王座”。文字数が長くなるので、別枠記載としました。

伊織がヒザ蹴りで三宅芳美をグロッギーに追い込む中、レフェリーが「1回目のスタンディングダウンで止めようかと思った」と言うほど強烈にヒットし、腹を押さえる行為に出た芳美。どこまでやらせるかはレフェリーの判断ですが、追撃を受けたところで止めに入ったタイミングは順当なところでした。

先日の立嶋篤史の試合など、ダメージはあるが、なるべく長く戦わせてやろうというレフェリーの判断、配慮を感じる時があります。一方で「早いよ、何で止めるんだ!」と言うセコンドの抗議があるのも事実。

先日10月7日の舟木昭太郎さんトークショー内の「増沢潔、サミー中村両氏を称える会」での参加したレフェリーの意見では、こういう抗議には、「危ないから止めるんです」と率直に応えると言う主張もありました。最近はレフェリー判断を尊重される傾向にありますが、ルールでの明記の難しい境界線での判断は、延々と語られる終わりなきテーマなのかもしれません。

12月9日はNJKF若武者会主催のDUEL16が大森ゴールドジムで16時30分より開催。来年も連盟主催興行は4回と少ないが、若武者会などやジム主催興行が増え、年間でプロ興行は12回。現在に於いては少なくはない。2019年最初のNJKF連盟主催興行は2月24日(日)後楽園ホールで開催されます。

加藤愛香さん。2年務めたマスコットガールを卒業、最後の登壇

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

ルンピニースタジアム路線強化成るか、MuayThaiOpen!

貴(たかゆき)の右ミドルキックでポンサクレックを襲う
KO前の貴(たかゆき)が切る狙いの右ヒジ打ちヒット

ムエタイオープン興行を主催するセンチャイプロモーターは、ジャパンキックイノベーション(JKI)とのマッチメイク交流を発表。2019年より、ルンピニージャパンタイトルの活性化が期待されます。

この日、ルンピニージャパンとムエタイオープンの各2試合ずつの計4試合は、3つの王座決定戦でチャンピオンが誕生。1つの防衛戦は壱センチャイジムが王座奪取。昭和デビューの立嶋篤史と息子の挑己との親子出場は揃って敗北。

◎MuayThaiOpen.43 / 11月25日(日) 新宿フェース 16:00~20:55
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニージャパン(LBSJ)

最後は倒す右ヒジ打ちで勝利に導いた貴(たかゆき)

◆第14試合 54.0kg 契約3回戦  

LBSJスーパーフライ級チャンピオン.貴センチャイジム(センチャイ/33歳/53.95kg)
VS
ポンサックレック・シンセンデート(タイ/22歳/53.15kg)

勝者:貴(=たかゆき)センチャイジム / TKO 2R 2:42 / 右ヒジ打ちヒット
主審:河原聡一

貴(=たかゆき)の引退に向けたカウントダウンが進む中、長身を利した前蹴りや組み合ってのヒザ蹴りが効果的にヒットする。第2ラウンドにはコーナーに詰めて、ヒザ蹴りから右ヒジ打ちを顔面にヒットさせると、ポンサクレックは崩れ落ち、レフェリーがカウント途中で試合ストップし、TKO勝利を収めた。

◆第13試合 67.0kg契約3回戦

喜入衆(=きいれ・とも/NEXTLEVEL渋谷/39歳/66.8kg)
VS
ルンラビー・OZ(タイ/26歳/66.65kg)
引分け / 判定0-1 / 主審:山根正美
副審:大沢29-29. シンカーオ29-30. 河原29-29

ルンラビーが相手の出方に合わせて場慣れした多彩な攻勢が目立った。首相撲ではルンラビーに転ばされるも、喜入はパワフルな蹴りとパンチが巻き戻しに至り、引分けに終わった。

パワフルに出る喜入のパンチにミドルキックで応戦するルンラビー
喜入とルンラビーの蹴り合いはルンラビーの方がバランスが優る

◆第12試合 MuayThaiOpenスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

渡辺優太(PK/28歳/55.1kg)
VS
キョウヘイ・ゴールドライフジム(ゴールドライフ/30歳/55.05kg)
勝者:渡辺優太 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:大沢50-45. 山根50-46. 河原50-46

初回から渡辺がパンチとローキックでジワジワ出て、第2ラウンドには渡辺のローキックがやや効いた様子のキョウヘイ。その影響を引きずり、第3ラウンドには渡辺が上下打ち分けたパンチでダウンを奪う。渡辺ペースは変わらず、大差判定勝利を収めて王座獲得。

接近戦での渡辺優太のヒザ蹴りとキョウヘイの左フックの交錯
壱(いっせい)センチャイジム(左)と小嶋勇貴の攻防が激しく続いた

◆第11試合 ルンピニージャパン・バンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.小嶋勇貴(仲FG/24歳/53.52kg)
VS
壱センチャイジム(センチャイ/21歳/53.52kg)
勝者:壱(=いっせい)センチャイジム / 判定0-3 / 主審:シンカーオ
副審:少白竜49-50. 山根48-49. 河原48-49

初回の様子見から壱(=いっせい)がパンチをヒットさせ、ペースを掴んで勢い付けていく。後半に入って劣勢を挽回しようと小嶋の勢いが増すが、壱(=いっせい)のペースを崩すに至らず、判定敗けを喫し、王座を空け渡してしまった。

激しい攻防の中、壱(いっせい/左)のヒットが目立った
壱(いっせい)の右ヒジ打ちがヒット

◆第10試合 MuayThaiOpenスーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

J(=ジェイ/TSK Japan/27歳/68.9kg)vs 清水武(sbm/31歳/69.8kg)
勝者:J(=ジェイ) / 判定3-0 / 主審:大沢武史
副審:少白竜49-48. 山根49-48. シンカーオ49-48

J(=ジェイ)が距離を取る戦略で、蹴りやヒジ打ちの交錯があっても互いに効果的なヒットは難かしく、主導権が掴み難い展開が続く中、ややヒットが優るJ(=ジェイ)が僅差の判定勝利で王座獲得。

◆第9試合 フェザー級3回戦

立嶋篤史(元・全日本Fe級C/ASSHI-PROJECT/46歳/57.15kg)
VS
成澤龍(SRC/30歳/56.8kg)
勝者:成澤龍 / TKO 2R 2:06 / パンチ連打されてレフェリーストップ
主審:河原聡一

初回から成澤のパンチの猛攻の右ストレートでダウンを奪われた立嶋は、コーナーに追い詰められ連打でスタンディングの2度目のダウンを奪われる。更なる猛攻を受けたところをゴングに救われるも、フラつく足取りでコーナーへ帰る立嶋。

第2ラウンドには、この状況下でも底力発揮かと思わせるローキックとしつこいパンチで出る立嶋だったが、更なる成澤の連打を浴びたところでレフェリーが止めに入り、試合は終了。

成澤龍に右ストレートを打たれてしまう立嶋篤史
成澤のパンチの猛攻を貰い続けてしまった立嶋篤史
立嶋の底力発揮かと思わせたローキックだったが・・・

◆第8試合 ライト級3回戦

笠原淳矢(NEXTLEVEL渋谷/41歳/61.2kg)vs 雅駿介(PHOENIX/24歳/61.15kg)
勝者:雅駿介 / 判定0-3 / 主審:山根正美
副審:河原24-30. 大沢24-30. シンカーオ25-30

◆第7試合 スーパーフライ級3回戦

加藤洋介(チームドラゴン/39歳/52.05kg)vs 佐藤仁志(新宿スポーツ/30歳/52.0kg)
引分け 三者三様 / 主審:少白竜
副審:河原28-29. 大沢29-29. 山根30-29

◆第6試合 女子45.0kg契約3回戦(2分制)

Sae-KMG(クラミツ/44.75kg)vs ミレイ(ペルー/HIDE/44.9kg)
勝者:ミレイ / 判定0-3 / 主審:シンカーオ・G
副審:河原28-29. 少白竜28-30. 山根28-30

◆第5試合 フライ級3回戦

立嶋挑己(ASSHI-PROJECT/20歳/50.6kg)vs 白幡裕星(橋本/16歳/50.45kg)
勝者:白幡裕星 / 判定0-3 / 主審:大沢武史
副審:シンカーオ28-30. 少白竜29-30. 山根29-30

「親子だなあ」と思わせる父親の動きそっくりの挑己のローキック。硬い動きも似ていて挑己より柔軟に動く白幡が的確さと崩し技で優り、判定勝利を収めた。若い頃の父親(篤史)のように、例え5回戦であっても初回からガンガンいけば、業師発揮かと思わせる素質も垣間見れるところ。

白幡裕星vs立嶋挑己(右)。立嶋挑己のセコンドに付く父親・篤史
先手に出る白幡の圧力でリズムに乗れなかった立嶋挑己

◆第4試合 バンタム級3回戦

加辺陸翔(北流会君津/18歳/53.15kg)vs 村井雄誠(エイワスポーツ/16歳/53.35kg)
勝者:村井雄誠 / 判定0-3 /主審:河原聡一
副審:シンカーオ28-30. 少白竜28-30. 大沢28-30

◆第3試合 女子45.0kg契約3回戦(2分制)

ピーポー梨乃(ストライフ/43.9kg)vs 田中千草(ボス/43.9kg)
勝者:ピーポー梨乃 / 判定3-0 / 主審:山根正美
副審:シンカーオ30-27. 河原30-28. 大沢30-28

貴センチャイジムの勝利ポーズ

◆第2試合 フェザー級3回戦

山田龍弥(北流会君津/17歳/56.0kg)vs 山口浩太郎(トイカツ/19歳/56.9kg)
勝者:山口浩太郎 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:山根28-29. 河原28-29. 大沢28-29

◆第1試合 ルンピニージャパン・スーパーミドル級(-76.18kg)王座決定戦 5回戦

プイユウ・リム(中国/33歳/74.6kg)vs グラモア(マレーシア/27歳/75.2kg)
勝者:プイユウ・リム / TKO 2R 0:21 / ローキック、カウント中のレフェリーストップ
主審:シンカーオ・ギャットチャーンシン

《取材戦記》

ジャパンキックイノベーションとの交流戦が宣言され、新たなルンピニージャパンタイトル活性化と、本場ルンピニースタジアム王座挑戦へ繋がる、この路線は今後上手く展開されるのか、NJKFとの交流戦で進めて来たWBCムエタイ路線はどうなるか、動向を見ていく必要があります。

プイユウ・リムがルンピニージャパン王座獲得したが、酷くレベルの低い試合だった。当然ながら、本場スタジアムに行けるかは更なる条件の査定試合が必要でしょう。

立嶋篤史の悲壮感漂う打たれる姿、まだ続けるには苦しい道程となりそうで、気が付けば負け越している戦績だが、通算100戦は近い。

ムエタイオープン.44は、2019年2月24日(日)新宿フェースに於いて開催されます。貴センチャイジムが公式戦を終えて引退式を迎える予定です。

チャンピオンベルトを巻いて貰う壱(いっせい)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈48〉タイで三日坊主!Part.40 旅は貴重な体験が出来る修行の一環

托鉢から帰るとここにサイバーツされた食材を纏めます

◆比丘の姿で迎えた年末年始

大晦日は毎年、日本レコード大賞、紅白歌合戦、ゆく年くる年見て、除夜の鐘聴いて賑やかに新年を迎えていた。誰かの家に呼ばれたり、一人で過ごす年越しもあったが、実家に居た幼い頃から習慣だった大晦日も、1994年は大きく違った。今年は何でこんなタイの寺に居るんだろう。お寺の日常は変わらないから、この日も夜10時ぐらいに就寝。

翌日は1995年“元旦”と言ってもいつもと変わらない托鉢に向かう。新年という節目か、サイバーツ(寄進)が多い。頭陀袋はいっぱいになり、バーツ(お鉢)も御飯が溢れるほど入れられた。藤川さんがひとつ惣菜を落とすも、そのまま行こうとするから、「落としましたよ」と言うと「拾って!」と私に拾わせた。

お互いしゃがむのも大変なのだ。なのに拾って渡すと藤川ジジィは礼も言わずに行ってしまう。私は立ち上がろうにも立ち上がれず地べたに尻餅をついてしまった。起き上がろうとするとバーツから御飯がこぼれ、そんな姿を近くのオバサンに見られてしまう。

スカートの女性が重い荷物を抱え込んだまま尻餅ついたらどうなるか……、パンツ丸見えである。同様に比丘が尻餅ついたらどうなるか、戒律だからパンツは穿いていない。新年から無様な姿を見せてしまった。バーツからこぼれた御飯を道の端っこに足で払い寄せ、「クソジジィ、ふざけんなバカヤロー!」と小声で叫ぶ。キレたの久しぶりだった。

朝は方々のニーモンに呼ばれた比丘がほとんど。寺に残ったのは若いサン(仲のいい一人)くんと高橋克実似のオジサン比丘と私だけ。この克実似比丘も物静かで読経が上手く経験豊富な比丘だ。私が前年3月に藤川さんを訪問した時も居た、巡礼の旅で寄ったこの寺に長く居住しているらしい。

午後はサーラーに移って信者さんを20名程迎えて全員での読経が行なわれた。終わると更に車に乗って向かった先はケーマー寺。他所からも大勢の比丘が揃う中、ここでも15分程度の読経をして帰るだけの、新年のお披露目的に行なわれた御挨拶程度の読経だった。それ以外に新年の儀式たるものはなく、ほぼいつもの日常と変わらぬ元日であった。

ベテラン比丘は剃るのも慣れたもの
比丘生活最後の剃髪

◆巡礼の比丘

1月の半ば、大きな頭陀袋を背負った、五十代ぐらいの一人の巡礼らしき比丘が寺に入って来た。庭の落ち葉を掃いていた私に、「和尚さんは居ますか?」と尋ねられて近くの木下のベンチに座っていた和尚さんのもとへ案内すると、その比丘はサンダルを脱ぎ、跪いて平伏す。和尚さんは「マイトン、マイトン!(やらなくていいよ)」と促すが、見事キレイな三拝をやり遂げた。

一目見たら分かるとおり、「この寺に暫く泊めてください」と願い出る。来る者を拒む理由は無い。和尚さんは早速、デックワットに指示し、空いている私の隣の部屋に案内されていた。

カミソリ持つのはこの寺に辿り着いた高橋克実似のベテラン比丘

この日は前日に剃髪を済ませたばかりだったが、この巡礼比丘はまだだった。私に「頭を剃ってくれんか?」と頼まれるが、そばに居たアムヌアイさんが「よっしゃ、俺に任せとけ!」と言わんばかりに準備を始めたが、剃る側の機会はもう無いなあとも思った。私は剃ってあげたことは無いから血を噴き出させてしまうかもしれないな。なんせ髭剃りもシェーバーなのだから。

その剃髪の日にも4僧ほどの年輩比丘と幼いネーン2人を連れた家族のような巡礼比丘がやって来ていた。早々から大きい声で品の無い口の利き方。和尚さんは留守だったので待つように言うと、「剃髪したいからカミソリくれんか?」と厚かましく寄って来るし、剃った髪は庭に散らかしっぱなし。比丘仲間の少々年輩のイアットさんは関わり合いたくないと見えて、早々に部屋に引き上げてしまうし、ケーオさんは「何だあいつら、ここはホテルじゃない!」と渋い顔。

イアットという比丘はちょっとセコく、「信者さんの前ではお布施を当てにして機敏に動いとるが、普段は面倒なことあると隠れてしまいよる!」と藤川さんが以前、愚痴っていたとおりだった。

夕方になって、「もう他の寺に行きますわ!」と諦めたかのような集団年長者。和尚さんはすでにいつもの定位置に座って居たので、「和尚さんは帰ってますよ」と言ってやると、早速和尚さんのもとへ向かった集団。見栄っ張り和尚さんは踏ん反り返るように「よっしゃよっしゃ、泊まっていきなさい」と、いつものエエ格好しいの笑顔で迎え入れてしまった。私は余計な導きをしてしまったかなとは思ったが、藤川さんと私がノンカイとビエンチャンの寺で快く受け入れられたように、どうも冷たい無視は出来なかった。その後、彼らは和尚さんのもと大人しく居て、翌朝の托鉢には向かい、朝食後、和尚さんに挨拶して旅立った様子。

イアットさんとツーショット、教わることは多かった
読経の場にある仏像と撮影を頼まれること多かった。サンくんも性格良く、いつもフォローしてくれた

◆藤川さんの先輩の行方は!?

藤川さんはこの寺で再出家した当時、先輩比丘の後に付いて托鉢をしていたと言う。今、私らが歩く同じコースだったらしい。寺を出てソイ(路地)から大通りに出ると、まっすぐ“銀座”方面に歩けば商店街やバスターミナル(エアコン高級バス専用)があるが、私らはそこに至る前のソイを幾つか回って帰って来るコースだった。

新米だった藤川さんがその先輩と一緒に居たのは3ヶ月程だったらしいが、ある日、前を歩くその先輩比丘が最初のソイに入らず、「チョークディーナ!(元気でな)」と言って真っすぐバスターミナル方面に歩いて行ってしまったと言う。そのまま先輩比丘は寺に帰らず。

「“ウチのカミさん、銭湯行ったまま3年帰って来まへんのや!”って言う漫才のオチあったけど、“ウチの師匠、ビンタバーツ(托鉢)行ったまま1年帰って来まへん!”ってホンマになってもうた!」と、笑い話となって聞かせてくれたが、「寺を出る前から何か頭陀袋が膨れていた気がしたなあ、もう寺に帰らんつもりやったんやろうなあ」と言う。

葬式等で受けるお布施は親族からお寺側へ纏めて捧げ、後々比丘一僧ずつに配られる場合が多いが、その頃、配られることが無かった時期があり、その先輩比丘が和尚さんに問い質したところ、「お前は金儲けの為に読経をしているのか!」と窘められ、「何かやる気を無くしておったような様子やったなあ」と後に藤川さんがノンカイの寺での雑談で言ってくれたことだった。お寺の中が、建設ラッシュなのも分かる気がしてきた。

俗人の前では見せない、お茶目なポーズもとってくれる

その先輩、そこから巡礼の旅に出たのだろうか。寺の移籍の場合はしっかり手続きを経なければならないが、ひっそり還俗式もせず俗人に戻ったのかは定かではない。

◆旅の勧め

比丘の修行生活には、寺に留まる派と巡礼の旅に出る派に分かれるが、私を含め多くは寺に留まる派で、好奇心旺盛の藤川さんは頻繁に旅に出る派だろう。但し、安居期は寺に留まって修行に専念しなければならない戒律がある。

私は日々、朝夕読経して、常連信者さんの元へ托鉢に向かい、寺の掃除をしたり仲間と雑談したり、そんな日常が性に合っている。こんな呑気なこと言っては修行とは程遠いが、そんな寺生活を頭に描いて、三日坊主の私が出家したのである。

しかし、こんな品の無い寺に居るよりまた旅に出たくなった。ノンカイの寺もまた行きたい。ラオスへの旅は単なるビザ取得の旅だったが、やっぱり比丘の旅は貴重な体験が出来る修行の一環なのだと改めて思う。

やがてネイトさんがその巡礼の旅としてやって来る。また充実した会話が出来るだろう。再会が楽しみである。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

2018年芸能界最大の衝撃新刊! 上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』西城秀樹、ジョー山中、舘ひろし、小山ルミ、ゴールデン・ハーフ、吉沢京子……。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

北海道震災復興チャリティーイベントは2部制のKick Insist.8!

ヨードゲンの右ハイキックを余裕でかわす石原將伍
ローキックの後、パンチに繋ぎ、隙を読んでいく石原將伍

二大潮流のキックとムエタイ!

打倒ムエタイ路線。伝統あるムエタイに挑み続けるのがキックボクシング。それは個人レベルではない競技レベルの戦いの歴史が続いて行くことである。この日の2人のメインイベンターが果敢にムエタイ戦士に挑んだ。石原は一撃完勝、瀧澤は判定負け。

◎KICK Insist.8 / 11月11日(日)新宿フェース
主催:ビクトリージム、治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

《第2部》(18:00~20:10)

ロープに詰めたところで右ストレートをボディーへ突き刺しKO勝利した石原將伍

◆第8試合 メインイベント 59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー/58.5kg)
VS
ヨードゲン・ルークプラパーツ(タイ/58.65kg)
勝者:石原將伍 / TKO 1R 0:54 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

ヨードゲンは元・ムエサヤーム中部フェザー級1位の肩書きを持ち、蹴りとヒジ打ちが得意の選手という情報。石原はローキックとパンチでけん制、ヨードゲンも前蹴りで様子見から、いきなりのハイキックを見せるが、石原は素早くかわし、圧力をかけるようにパンチとローキック中心に前に出て、ロープを背負いガードを固めるヨードゲンのボディーへ右ストレートを突き刺すと、効いたヨードゲンは崩れ落ちてしまい立ち上がれず、レフェリーが止めるTKO勝利を収めた。

永澤サムエルのパンチ力は、マイより優っていた
ラッシュに入った最終ラウンドの永澤サムエル

◆第7試合 62.0kg契約 5回戦

日本ライト級2位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/62.0kg)
VS
マイ・ルークプラパーツ(タイ/61.7kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / KO 3R 2:10 / テンカウント / 主審:少白竜

元・タイ国ムエスポーツ協会スーパーフライ級チャンピオンのマイは、頑丈そうな体格の重い蹴りで出て来る。永澤はパンチ中心に互角に応戦していくが、倒すにはやはり、パンチしかない流れではあった。

最後は右ストレートで倒しきった永澤サムエル聖光

第3ラウンド半ばには、ここで行くしかない残り時間で一気に出た永澤。左アッパーをヒットさせた後、左右のパンチ連打を5~6秒手を止めずに打ち続け、最後は右ストレートで仕留め、マイは崩れ落ちた後、立ち上がれず、レフェリーがテンカウントを数えた。

◆第6試合 フライ級3回戦

日本フライ級3位.細田昇吾(ビクトリー/50.6kg)
VS
JK・イノベーション・フライ級6位.多根嘉輝(直心会/50.8kg)
勝者:細田昇吾 / 判定2-1 /主審:仲俊光
副審:少白竜30-29. 宮沢30-29. 桜井29-30

若い二人の素早く多彩な攻防が続き、ラウンドが増すごとに激しさも増す。多根がやや蹴りの前進が目立ったが、細田の右ストレートがヒットし、一瞬腰が落ちかけた多根だが、スリップだとしても印象は悪かった。しかしすぐ立て直しダメージはほぼ無し。スタミナ切れない攻防に応援も激しくなるが、判定は2-1に分かれた結果となった。

◆第5試合 54.0kg契約3回戦

日本フライ級4位.幸太(ビクトリー/53.6kg)
VS
日本バンタム級3位.阿部泰彦(JMN/53.8kg)
勝者:幸太 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜30-25. 桜井30-25. 仲30-26)

蹴り終りや脚が揃ったところへ貰ったパンチで、二つのダウンが大きく響いたベテラン阿部にとっては残念な結果。

◆第4試合 63.0kg契約3回戦

日本ライト級8位.林瑞紀(治政館/62.7kg)
VS
細野裕希(NEXT LEVEL渋谷feat MSJ/62.8kg)
勝者:細野裕希 / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名28-29. 桜井28-30. 仲28-30

◆第3試合 61.5kg契約3回戦

日本ライト級9位.興之介(治政館/61.2kg)
   VS
LBSJスーパーフェザー級1位.角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/61.4kg)
引分け 三者三様 / 主審:少白竜
副審:椎名28-29. 桜井29-28. 宮沢29-29

瀧澤博人も崩し技で転ばされた

◆第2試合 バンタム級2回戦

翼(ビクトリー/53.3kg)vs 一斗缶テツ(契明/53.0kg)
勝者:翼 / TKO 2R 0:20 / カウント中のレフェリーストップ

◆第1試合 フェザー級2回戦

睦雅(ビクトリー/56.8kg)vs又吉淳哉(市原/57.0kg)
勝者:睦雅 / 判定3-0 (20-17. 20-17. 20-17)

瀧澤博人のパンチはヒットせず、巧みな攻防戦を見せるチャモアペット

《第1部》(14:00~15:45)

◆第7試合 メインイベント 56.0kg契約 5回戦

瀧澤博人(元・日本バンタム級C/ビクトリー/56.0kg)
VS
チャモアペット・ルークプラパーツ(タイ/55.2kg)
勝者:チャムアペット / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:少白竜27-30. 仲27-30. 桜井27-30

チャムアペットは元・ラジャダムナン系スーパーフライ級2位の肩書きを持つ。
初回はローキックの攻防で次第に高めの蹴りと接近戦でのパンチに移っていく。瀧澤の出方を見抜いたか、第2ラウンドに組み合った接近戦で瀧澤はチャムアペットの右ストレートでダウンを喫してしまう。更に組み合う接近戦が増え、ヒジ打ちも見せるチャムアペットの完全なペース。瀧澤の右ストレートをスウェーバックしてかわすなど距離の取り方が上手いチャムアペットが判定勝利。

チャモアペットの右ストレートでダウンを喫した瀧澤博人
ダーウサヤームの崩し技で馬渡が宙に舞う

◆第6試合 55.0kg契約 5回戦

日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館/55.0kg)
VS
ダーウサヤーム・ノーナクシン(タイ/54.9kg)
引分け 0-1 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-29. 宮沢29-29. 桜井29-29

ダーウサヤームは元・ラジャダムナン系スーパーフライ級9位で、日本でも他団体チャンピオンクラスから何度も勝利を上げている実力者。初回はローキックで短い様子見から、すぐにハイキックや接近戦でのパンチやヒジ打ちの攻防に移っていく。馬渡は関節柔らかいハイキックやヒザ蹴りを繰り出すが、ダーウサヤームは接近戦での巧みさのヒジ打ちや足払いで馬渡を引っくり返す転ばしを見せる。馬渡の苦戦は珍しい展開だったが、打ち負けないハイキックやパンチの攻勢もあり、結果は引分けに終わり、馬渡の成長と他団体チャンピオン勢との実力も計れる展開となった。

馬渡のしなりあるハイキックが先にヒット

◆第5試合 72.6kg契約3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.4kg)v
VS
ルンチャイ・ペットポートング(タイ/71.6kg)
勝者:今野顕彰 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-28. 宮沢30-28. 仲30-28

今野はルンチャイに手数足数、ヒット数を上回る勢い。終盤はパンチで怯んだルンチャイにロープ際で更にパンチを打ち込む。主導権を支配した展開で判定勝利。

◆第4試合 63.0kg契約3回戦

日本ライト級3位.直闘(治政館/63.0kg)vsマサ・オオヤ(八王子FSG/63.0kg)
勝者:直闘 / TKO 2R 0:46 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

NKBとの交流戦となった1戦。直闘が第1ラウンドに右フックでダウンを奪い、第2ラウンドにはローキックで倒し、レフェリーが止めるTKO勝利。

◆第3試合 55.0kg契約3回戦

日本バンタム級5位.田中亮平(市原/54.8kg)vs高橋茂章(KIX/54.9kg)
勝者:高橋茂章 / TKO 2R 0:30 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:仲俊光

◆第2試合 ウェルター級2回戦

モトヤスック(治政館/66.5kg)vs RYOTA(トーエル/66.5kg)
勝者:モトヤスック / TKO 1R 1:36 / カウント中のレフェリーストップ

◆エキシビジョンマッチ2回戦

リカルド・ブラボ(伊原)EXハルキング(Typhoon club Okinawa/74.0kg)

高橋デミアン(伊原)の体調不良ドクターストップによって欠場し、ハルキングのエキシビジョンマッチに日本ウェルター級チャンピオンのリカルド・ブラボ(伊原)が出場。

◆第1試合 58.0kg契約2回戦

RYOUICHI(トーエル/58.0kg)vs眞斗(KIX/57.9kg)
勝者:眞斗 / 判定1-2 (19-20. 19-20. 20-19)

《取材戦記》

2011年秋から昨年まで、地震国日本の、主に東日本大震災を切っ掛けに始まった震災チャリティーイベントとして、7回を重ねたKick Insist、今年は9月に発生した北海道地震復興チャリティーイベントとなったムエタイ路線を突き進むビクトリージム主催のイベント。

石原將伍は昨年10月22日、日本フェザー級チャンピオンとなって1年あまりが経過。常に強い相手とのマッチメイクを懇願してタイ選手との戦いが続きます。それは瀧澤博人も同様に、勝ち星に恵まれない時期もあるが、諦めない心で戦いが続いている。各団体でそれぞれの方向性は違っても、こんな挑戦が50年も続いている日本のキックボクシング。打倒ムエタイは今後も続く永遠のテーマなのでしょう。

次回、新日本キックボクシング協会興行は、12月9日(日)に後楽園ホールに於いて、藤本ジム主催「SOUL IN THE RING」が開催されます。勝次の次なるステップに挑む前哨戦が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈47〉タイで三日坊主!Part.39 新たな選択

比丘として優秀、機械イジリも優秀、喧嘩技も併せ持つケーオさん

◆送られてきた贈り物

大きな旅も終え、埃溜まった部屋の掃除、郵便物の確認を済ませると、藤川さんにも幾らか届いていたものがあった様子。部屋に呼ばれて行くと、春原さんから1995年用のカレンダーが10部以上、幾つかの筒に入れられて届いていた。以前から藤川さんがねだっていた日本を象徴する富士山や金閣寺、桜満開など風景画のカレンダーである。

「ノンカイの寺にどれにする?、ウチの和尚にどれにする?」と言われて、「そんなこと勝手にしろ!」と思うところ、更に「ボケーッと見とらんと袋破れ!」と文句言う藤川ジジィ。

これは春原さんから藤川さんに送られた郵便物、私が手を付けるのも失礼と思い、それも珍しいものではないから放っておいただけ。ムッとしつつ何も言い返さなかったが、寺に帰った途端、笑顔減り、厳しい言葉に変わるのはなぜ? ノンカイに居た時のように朗らかになれんものかな、このクソジジィは!

何かと憂鬱になる元の寺生活。「ああ、ノンカイの寺に移りたい、雄大なメコン河の風景が見たくなってきた」本気でそう思えるようになってきた。

そんな翌日の12月26日、更に私に郵便物が渡される。再び春原さんからボクシングのカレンダー、お願いしていた得度式の写真を使っての1995年用年賀状。これはケーオさんが持って来てくれたが、どうやらもう少し早く届いていたのに忘れていたようだ。恐縮していたが、ポットから煙が出るのでまた修理をお願いしつつ、お互いに“マイペンライ”を繰り返す。

年賀状は日本の元旦から極力遅れないよう、出し日を気をつけなければならない。年賀印はあるが、エアメールで届いたものが年賀状扱いになるか分からない。年末に届かないよう気をつけるが、元旦に届くことは難しい。正月から私の坊主頭を見たら皆驚くだろうなあと思う。或いは「得体の知れない宗教に洗脳されたか」と避ける奴も居るだろう。どういう反響であれ楽しみな反応だ。

春原さんから贈られたボクシングカレンダーと雑誌付録のポスターを飾る

◆空腹の苦しさ

いつもの托鉢も再開後は、お菓子オバサンに「暫く見かけなかったけど、どうしたの?」と聞かれて「ビザ取得の為、ラオスに行っていました」と応えると「ああそうだったの!」と少々心配されていたのか、安心されたような様子。藤川さんはサッサと先に進むし、托鉢中に長話は出来ないのは以前と同じ。そんな声が私にだけ数軒掛かる。藤川さんに追いつくのがキツかった。

旅から戻ってからは凄くお腹が空いている。体調崩して食欲が無い頃の失った体力を回復させようとしているのだろう。ガツガツ食うのも恥ずかしいが、いつもより御代わりも増えた多めの食事が続いた。出家したばかりの頃、夕方はお腹が減って苦しかったなあと思い出す。境内の空地のゴミ拾いをやらされて、皆元気にせっせとやっているのに私だけヘロヘロだった。和尚さんに「ヒウマイ(腹減ったか)?」と聞かれたが、「すぐ慣れるよ」とも。実際にその後の夕方の空腹感は無くなっていった。

◆乾季の中の寒気!

この年末はノンカイなどの北部だけではなく、バンコクよりやや南に位置するペッブリーでも早朝、日本の秋深い頃と同じと思うほど寒い日があった。比丘には内衣となる右肩の無い黄色い毛糸のセーターが存在する。それを他の比丘も着ていたほどだったが、10時頃になると夏に戻り、暑くて脱ぐことになる。気温の高低差が大きいこの乾季とも寒気とも言える時期だった。

ノンカイに居た時、藤川さんが、「タイ北部やと黄衣の生地が厚いところもある」と言っていた。「更に2枚重ねが出来るように黄衣の上部に輪ゴムのように小さい紐の輪があるけど、これは単にこっちが上っていう目印かと思とったわ!」と笑わせたが、私も知らずにこれを目印に毎日纏っていた。

埃溜まった部屋の掃除と年末掃除に明け暮れる

◆再び寺の行事

12月28日の早朝、メーオから「今日は托鉢は行かなくていい」と言われる。そう言えば以前、藤川さんが「年末に学校へ向かう行事がある」と言っていた。車の荷台に乗せられて向かった先は中学校らしき校庭。すでに大勢の生徒が外で待っており、他の寺からも集まった大勢の比丘らは、運動会の観覧席のような一旦椅子がある席に座らされて、ミルクと揚げパンが配られた。

それを受け少々落ち着いていだが、どこからか読経が聞こえてきた。学校らしく校庭では伝達が聴こえ難く、こちらまで伝わらないのだ。と思っていると比丘や生徒達が一気に立ち上がり、集団托鉢が始まった。生徒らがドッと押し寄せて来て、サイバーツされる。それは神聖なるものとは言えない。我先にと頭陀袋やバーツに笑いながら雑談混じりに手を差し入れて来る。あっという間にバーツと頭陀袋はいっぱい。

すぐデックワットが受け取ってくれて次の頭陀袋を開くとまたすぐいっぱいになったところで終了。生徒は持参しやすい缶詰やスナック菓子ばかり。更に儀式は続くのかと思ったらそのまま撤収。車の荷台に導かれ帰って来る、何とも呆気ない終了だった。これはタイの文化を生徒らに再認識させるような学校行事の一環なのだろう。

◆比丘の中には裏の姿も

その日の午後、暇な時間にコップくんが寺のベンチに座っているのを見かけた。何か元気が無い様子。何となく聞いてみると、「1000バーツ盗まれた」と言う。部屋の鍵は掛けて無かったとも。こんな品の無い奴らが集まる下級の寺では、そんなことは起こり得る。誰でも入って来られるから部外者の可能性もあるが、タイ国内でも過去に比丘が犯す強盗、強姦が実際に起きているから信頼できるものではない。テーラワーダ仏教の汚点である。

この日はたまたま頼まれた撮影があって一眼レフカメラを持っていたら、元気復活したかのようにコップくんが慌てて「カメラ貸して!」と言って奪い取るようにして本堂の方へ向かって行った。何やらデックワットが寺に侵入して来た不審者を2人で暴行している。そんな姿を撮ろうとしたコップくん。上手くは撮れないだろうと思うが撮り方教えて任せてみた。

その後、ケーオさんが勢いよく走って来て、この侵入者に飛び蹴り、右廻し蹴り連打。そこはカメラを構えないコップくん。たまらず不審者は寺から逃げて行った。この不審者は本堂で何かやらかしたようだが、比丘が飛び蹴りとは・・・!こんな姿は在家信者さんには見せられない。真剣に修行に励む神聖な比丘と間逆に変貌する比丘も存在するのだ。

侵入者へ暴行するデックワット(コップくん撮影)

◆来年の計画!

来年の計画を練りながら日記を書く(セルフタイマー撮影)

12月30日の昼食時、藤川さんが「ネイトが1月25日頃、来ると言うとった。今は寺の行事が忙しくて来れんと!」とネイトさんから携帯電話に連絡があったようだ。

その頃、私は一緒にタイに来た時の伊達秀騎くんから、「1月29日にタイのチャンマイで試合が決まりました」という手紙を貰っていた。10月にノンカイでのムエタイで倒された相手との再戦だった。倒すか倒されるかの激闘をやってギャンブラーを盛り上げたからプロモーターから声が掛かったようだ。これもひとつの縁か、私の日課となっていた境内の落ち葉を掃きながら、これを期に本格的に還俗を考えてしまう。チェンマイに試合の撮影に行こうか。ネイトさんが来るのなら、それは比丘として待っていてやりたい。どう展開するか分からないが、来年の計画を練りながら過ごした年末だった。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

格闘道イベント「敬天愛人」11月11日(日)鹿児島アリーナにて開催!鹿砦社取締役・松岡朋彦も出場します! 九州、鹿児島近郊の方のご観戦をお願いいたします!

格闘道イベント「敬天愛人」HP https://ktaj.jp/

月刊『紙の爆弾』12月号! 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

私の内なるタイとムエタイ〈46〉タイで三日坊主!Part38 我が寺と、帰路で起きていたこと

◆夢から覚めていくような帰路

寝台列車は陽が上る頃になるとベッドは折り畳まれ、普通の座席に替わった。到着まで座って風景を眺めよう。もうドンムアン空港を過ぎた辺りまで来ていた。昔、居候していたチャイバダンジムの近くだ。そのジムの近くの駄菓子屋の可愛かった20歳の女の子に会ってみたいと無性に恋しくなる。会おうと思えば歩いて行ける距離に来ているという切ない想い。早く自由の身になりたいと思ってしまう。

帰った寺で外を見れば、以前と違った風景

◆早速出会うタンブンの朝

終点、フアランポーン駅には6時30分に到着。重い荷物を背負って外に出ると藤川さんが「飯食うか?」と言い、もちろん私は頷く。すぐにブッ掛け御飯のある屋台へ向かい、お店の前で惣菜を指差すと、「目玉焼きは?」と聞かれ、それも頷いて2皿注文し席に着く。こんな自ら店に入る姿は俗人の前では見せたくないものだ。だが旅に出ていては仕方無い場合も発生する。注文したブッ掛け御飯を手で受ける儀式を済ませ、格好だけ短い読経をして食べていると、藤川さんにスープが運ばれて来た。一瞬、「いつ注文したんだろう」と錯覚したが、私にも運ばれてくる。更にカオマンカイ(鶏肉御飯)も2皿置かれる。すぐ「ああこれはタンブン(寄進)だ」と察知した。誰が捧げてくれたのか。申し訳ない気持ちになる。

「この恩をどうやって返していけばいいんだろう」と考えながら、ここはキチンと受けて食べ終えるしかない。でもお腹はいっぱいになった。我々が注文したものだけでも、藤川さんが「タウライ(幾ら)?」と言ってお金を払おうとすると、「全部あのオジサンが払ったよ」と別の席にいたオジサンを指差したお店の人。とてもタンブンしそうに無い、厳つい顔のオジサンだったが、御礼を言う訳にいかない比丘の身、藤川さんは軽く頷く程度の目線を送って、私も笑顔でオジサンに視線を送って出て来た。オジサンも笑顔になっていた。徳を積む行為を拒否は出来ない。だが、こんな愚かな比丘に施される行為には何度体験しても慣れないし、何度も申し訳なく思ってしまう。

出家した頃からすいぶん変わった寺の外

更にバス乗り場に向かおうとしたところで、また若い女性から声が掛かる。今度は普通に、朝の托鉢を待つ信者さんの寄進だった。我々はバーツ(お鉢)を頭陀袋の中に仕舞い込んでいるので用意出来ない。托鉢行ではない状況ではあるが、頭陀袋を開けて、寄進用のビニールに入った御飯とオカズを入れて貰う。更にオジサンからもう一件あり、荷物いっぱいでも早朝に歩けば托鉢僧と同じなのだ、その心構えで歩かねばならない。

青いエアコン市内バスに乗ると、いつものタイ南部に向かうサイタイマイバスターミナルへ向かう。バスでは入口付近の比丘用の席が譲られた。今日の朝だけでどれだけ寄進を受けただろうか。

藤川さんが「ああいう人らが、ワシらに飯くれて何とも思わんか?、ワシは申し訳ない気持ちになる、あの人らが徳を積む為に施した相手は、お経もたいして出来ん未熟なワシやのに、飯食わせてくれて、ワシは詐欺みたいなもんやと思う。そやから、あの人らに返していくのはキチンと修行していくしかないと思うで!」と窘められる。

そんなこと言われるまでもなく、すでに「俺だって申し訳ないと思っとるわい!」とは言い返さなかったが、心の中で叫ぶ。しかし、私が何も感じてないとでも思っているのか、この藤川ジジィは!

◆留守の間に起きていたこと!

サイタイマイに着いて長距離エアコンバスチケットを買うと、8時ちょうどの出発。今回がいちばん切ない気持ちで乗っている。前回と同じ、終点間近の交差点で降ろして貰い、歩いてワット・タムケーウに帰る。境内には誰も見当たらず、「着いたら和尚に挨拶だぞ」と藤川さんが言うが、和尚さんも居ない様子で自分の部屋へまっすぐ到着となった。部屋の中は埃だらけ。外は工事が続いているから、窓を閉めていても砂埃が凄い。

それにしても外の砂利道は舗装が進み、草むらだった空地も区画整理が進んでいた。更に低料金(エアコン無し)バスターミナルまで営業開始している。この周辺も旅に出ている間にかなり発展したものだ。

ブリキのおもちゃ風、安い、遅い、暑い、バスターミナルも営業開始されていた

ようやく和尚さんの姿を見つけて小走りで挨拶に向かう。いちばん先に和尚さんに無事帰って来たことを報告しなければならない。アメリカ人に出会って出家に導いたことで滞在を延期したことも話すも、ほとんど関心が無いようで、「ああ分かった、もういいよ!」といった具合だが、一応帰って来た報告が済んで安心感を得る。

朝、フアランポーン駅前で受けた施しの食材を出して昼飯に向かい、やがて仲間らが徐々に用も無いのに普段あまり話さない奴まで寄って来る。

「ラオスはどうだった?」と聞いてくる周囲の奴ら。ビザ取得に行ったこと、お腹壊したこと、どこの寺も品格が良かったこと、ネイトさんが現れたこと、とても興味を持たせるような語り口を作れないが、何が面白いかが日本人とタイ人では捉え方が違うのだ。ネイトさんとの出会いや、タイ領事館の奴らの遅く態度悪い仕事など、ここの比丘には言っても、日本人目線では伝わらない話題だろう。

ただ、「メコン河がキレイだったとか、パトゥーサイ(凱旋門)がカッコ良かった」とか、適当に言っておいた。「ゴメンね、お土産無くて!」こんな言葉も繰り返し、やっぱり何か買っておくべきだったなあ。

昼食後は、デックワットから留守の間に届いていた郵便物を貰う。春原さんからワールドボクシング増刊号が届いていた。表紙は「ジョー、敗れたり!」の見出し。11月下旬に行なわれていた話題の薬師寺保栄vs辰吉丈一郎戦の結果の掲載だ。今までに無いこの試合の重み、辰吉の去就が注目の内容と伺える。

私らが留守の間に、高津くんが私を訪ねにこの寺に来たらしい。コップくんが彼の置き土産を持って来てくれた。しばらく寺の敷地内を歩いて世話好きな比丘らとお話して帰ったようだった。

アナンさんのジム近くにある、以前から親しくしていた商店(コンビニ)のオバちゃんがお菓子をタンブンしてくれたようだ。あくまで寄進だが有難く頂いた。雑誌は格闘技通信があった。立嶋篤史の試合も掲載されていた。7月にKO負けで全日本フェザー級王座を失って以来の復帰戦に判定勝利した内容だった。それぞれの注目度が分かるだけに、皆それぞれの苦悩と戦っているのだなあと察する。肩透かしを食わせてしまった高津くんにはラオスへ行くこと伝えてなかったことを申し訳なく思う。

更に寺の脇の砂利道は舗装が進んでいく

◆今後の旅は?

ウチの和尚さんは藤川さんの外泊には、いつも渋い顔をしていた。私には関心が無いと見えて、ビザ取得の為のラオス行きは比較的簡単に許可されたが、これ以外に藤川さんと一緒に巡礼の旅に出ることは難しいところだった。

当初の藤川さんの計画では、かつて御自身が回ったタイ国内の寺で、貴重な体験が出来ると思う寺へ私を連れて行くつもりだったらしい。また新たに巡礼の旅をするとしたら、今回の旅先ですでにカンボジア行きの話もあったように、私の還俗後しかないのではないか。せっかくラオスまで行って取得したビザだったが、帰って来たこの時点で、私の仏門生活もやがて終わりに近づくことは間違い無さそうだった。

かつて藤川さんが托鉢で歩いた寺の路地が広くなった

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

格闘道イベント「敬天愛人」11月11日(日)鹿児島アリーナにて開催!鹿砦社取締役・松岡朋彦も出場します! 九州、鹿児島近郊の方のご観戦をお願いいたします!

格闘道イベント「敬天愛人」HP https://ktaj.jp/

進化するNKB! NJKFと交流開始!

日本キックボクシング連盟(NKB)は12月よりニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)との交流開始を決定した。

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【交流開始のお知らせ】NKBオフィシャルリリース

NKB(日本キックボクシング連盟、K-U)は2018年12月からニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)との交流を開始致します。これに伴い、2018年12月8日(土)、NKB後楽園ホール大会(闘魂シリーズvol.6)では、NKBフェザー級1位 ひろあき(SQUARE UP道場)vs NJKFスーパーバンタム級1位 久保田雄太(新興ムエタイ)の1戦が行われます。
 この交流がキックボクシング界の発展に必ずや寄与するものと信じ、今後も関係各所とより良い関係を築いていく所存でございます。今後ともNKB、そしてキックボクシングをよろしくお願い致します。

NKB代表理事、日本キックボクシング連盟代表 渡邉信久
(日本キックボクシング連盟広報部より発表)


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メインイベント前に、日野実志リングアナウンサーによって、リングサイドに来賓として来場されていた新日本キックボクシング協会、伊原信一代表が紹介されると、伊原氏はNKB・渡辺信久代表理事に歩み寄り、握手しハグする親密さを見せたという。

1996年に伊原氏率いる伊原ジムが離脱した経緯はあるが、元々は1984年の日本キックボクシング連盟発足当時から歩みを共にし、それ以前にも日本系・全日本系の壁はあれど、キックボクシング隆盛期から低迷期にかけて、力を合わせて来た古き仲であった。

7月から始まった新日本キックボクシング協会との交流戦、今回の代表的カードとなったメインイベントは、団体のプライドを懸けた意地のぶつかり合いとなったようです。

◎闘魂シリーズ vol.4 / 10月13日(土)後楽園ホール 開始17:15
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会
全12試合 公式記録(主催者発表、計量結果、主審名は不明)

 
今野顕彰vs西村清吾(2018.10.13)

◆第12試合 72.5kg契約 5回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM-KOK)
VS
日本ミドル級1位.今野顕彰(市原)
勝者:西村清吾 / 判定2-1 (馳49-48. 亀川49-50. 川上49-48)

◆第11試合 フェザー級 5回戦

NKBライト級5位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE-UP)
VS
コッチャサーン・ワイズディー(元・ルンピニー-系スーパーバンタム級7位/タイ)
勝者:ひろあき / 判定3-0 (佐藤友章49-45. 前田49-46. 亀川49-46)

◆第10試合 ライト級3回戦

NKBライト級4位.野村怜央(TEAM-KOK)vs山澤裕介(號志會)
勝者:野村怜央 / KO 1R 0:54

◆第9試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級2位.高嶺幸良(真門)vs同級5位.海老原竜二(神武館)
勝者:高嶺幸良 / 2-0 (佐藤友章30-28. 鈴木30-29. 馳29-29)

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

NKBウェルター級5位. SEIITSU(八王子FSG)vs洋介(渡邉)
勝者:洋介 / KO 2R 2:10

◆第7試合 ヘビー級3回戦

山中政信(真正会)vs打田知彦(テツ)
勝者:打田知彦 / 0-2 (鈴木29-30. 前田29-30. 佐藤友章29-29)

◆第6試合 ウェルター級3回戦

雅喜(ReBORN経堂)vs火人(TEAM-KOK)
引分け 0-1 (副審 川上29-29. 佐藤友章29-29. 亀川29-30)

◆第5試合 バンタム級3回戦

古瀬 翔(ケーアクイティブ)vs剣汰(アウルスポーツ)
勝者:古瀬翔 / KO 3R 2:21

◆第4試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM-KOK)vs川畑RYU直輝(NK)
勝者:川畑RYU直輝 / KO 2R 1:10

◆第3試合 バンタム級3回戦

志門(テツ)vsダルシム・ヤイタレー(ReBORN経堂)
勝者:ダルシム・ヤイタレー / 0-2 (鈴木29-30. 佐藤友章30-30. 馳29-30)

◆第2試合 フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ)vs松下裕太(マッハ)
勝者:松下裕太 / 0-3 (馳28-29. 佐藤彰彦28-29. 亀川28-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

則武知宏(テツ)vs北田竜汰(光)
勝者:則武知宏 / KO 3R 2:24

◆12月8日闘魂シリーズvol.6(FINAL)の対戦予定カード発表!

12月8日(土)後楽園ホールで開催の闘魂シリーズvol.6(FINAL)の対戦予定カードが発表。

高橋一眞は毎度の危険な打ち合い2度目の防衛戦。

▼メインイベント NKBライト級タイトルマッチ5回戦
チャンピオン.高橋一眞(真門)vs挑戦者1位.棚橋賢二郎(拳心館)

▼セミファイナル NKB-NJKF交流戦 57.0kg契約 5回戦
NKBフェザー級1位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE UP)
VS
NJKFスーパーバンタム級1位.久保田雄太(新興ムエタイ)

▼59.0kg契約 3回戦
野村怜央(Team KOK)vsKEIGO(FLAT UP)

▼56.0kg契約3回戦
WBCムエタイ日本フェザー級5位.大脇武(GET OVER)
VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館)

▼63.0kg契約3回戦
NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並)vsちさとkiss Me(安曇野キックの会)

他、7試合を予定。

日本キックボクシング連盟・渡辺信久代表とNJKF・藤田真理事長(当時)は1999年当時に話し合いの場があり、後にアジア太平洋キック連盟(APKF)とK-Uが加わりNKB設立に繋がりました。1年以上かけて2002年4月から王座決定戦に進んだ順調な流れも2004年11月を最後にNJKFが脱退する運命を辿って行きました。NKBは本年12月に本格的にNJKFと再び交流を開始し、すでに7月から新日本キックボクシング協会とも交流戦が始まっており、NKBの2019年はまた新たな挑戦へ突き進むことになります。

古くから囁かれていた、興行数が少なく、交流戦を拒み、ムエタイ第一線級選手の招聘力も無い中では選手は育たず孤立するばかり。それぞれの団体がそこから脱却してきた中、ようやくNKBも動き出した現在。「KNOCK OUT」ばかりが注目されていてはいけない。そんな巻き返しに自然と結束力が働いてきたようなキック業界です。

※筆者の諸事情(母親の永眠)により、この10月13日のNKBには取材に行っておりません。主催者公式発表の試合結果を頂いての掲載で失礼します。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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老舗、変革! 交流戦が名勝負を生む! MAGNUM 48

仕留めたのは江幡塁の左ヒザ蹴り、下腹部だが、股間ではないと見える

「華麗な技で倒すのが僕の得意なKOパターン」と言う江幡塁の今回のKOに結びつけるまでの攻防は、“強い”と思わせるテープブリーの蹴りとパンチの返す強さと素早さ、判定までもつれ込むとしたら苦しい攻防となりそうな気配の中、幾つものコンビネーションブローを試しながらKOパターンを掴んでいく江幡塁の戦略は3ラウンド中盤に突然やって来た。

それまでに狙いを定めたか、左ボディーブローから右ローキックでテープブリーを怯ませるとコーナーに追い詰め、パンチ連打から左ヒザ蹴りがテープブリーの下腹部へヒットさせ悶絶、テンカウントを聞かせるKO勝利。

ファールブロー(ローブロー)をアピールするテープブリーと陣営だが、レフェリーは認めず。ボクシングで言えばベルトラインより下となるローブローだが、キックでは直接的にノーファールカップに当たらなければ反則とはならない。

「ラジャダムナン王座へいつでも挑戦できます。そして獲ることができます」と伊原代表に、いつでもいける臨戦態勢をアピールする江幡塁。2013年の初挑戦の敗戦から、勝利を重ね再挑戦を待ち続けてもう5年。来年こそは実現させたいだろう。

江幡塁のローキック、序盤は素早く蹴り返すテープブリーが厄介だった
喜多村の右ヒジ打ちがT-98の顔面をカット、勝負をほぼ決めた一発

T-98 vs 喜多村誠戦は、初回から両者の重いローキック、ミドルキック、パンチへと相手の出方に応じた打撃が交錯する。主導権を握って圧倒したい、その意地の競り合う攻防が第4ラウンドに入るまで続き、一瞬の喜多村の右ヒジ打ちがT-98の顔面を捕らえると流血したT-98。ドクターは続行可能と判断するが、再開直後の喜多村のヒジ打ちが軽いながらもまたヒット、ややパンチの打ち合いと組み合ってもつれた中、T-98は流血激しくなり、レフェリーが試合を止めたTKO。

喜多村陣営、大勢の応援団が静止出来ないほどドッとリングになだれ込む。日本統一果たしたかのような興奮醒めぬ歓声と祝福の応援団。タイトルは何も懸かっていないが、それに値するプライドが掛かった密度の濃い試合だった。

喜多村の右ストレートがT-98の顔面にヒット
最後も左フックをヒットさせ完全に倒しきった勝次

 

勝次は再起戦3連勝。今回も初回から早くも左ボディーブローでダウンを奪い、連打の後、左フックが顔面を捕らえると沈み込むように倒れたオートー。

レフェリーが止めるTKOで豪快に仕留めた勝次は、次なる目標がWKBA世界タイトルと言う。

来年3月に挑戦が内定しているが、その前に12月の藤本ジム興行でインパクトある勝利を掴まねばならない。またKO勝利で見せるパフォーマンス“1、2、3、ハッピー”が見られるか。

勝次のボディーブローでオートーを怯ませる

9月2日のTITANS NEOSに於いて、NKBとの交流戦で田村聖(拳心館)に敗れ、「負けたままで終われません。明日にでも再戦したいぐらいです」と語っていた斗吾がヨードプーパーをローキックからパンチ連打、左ボディーブローから右フックで圧倒、うつむき気味に怯むヨードプーパーに追撃し、あっけなく35秒でレフェリーが止めたTKO勝利。悪夢から醒めた開放感か、マイクで興奮気味に嬉しさを表現するも、早口で声も響かず、何を言っているのか聴こえないマイクアピールだったが、応援団に向かって感謝の言葉を述べていたことにはその観衆から拍手喝采を浴び、喜びを分かち合っていた。

斗吾の連打でヨードプーパーを一気に倒した

リカルド・ブラボがデビューから9戦目で初黒星。トリッキーなUMAの繰り出す前蹴りで前進を止められるだけでなく、ボディーも効いたかのようなブラボは、次第にリズムを狂わされてしまう。

蹴り返しやパンチはリカルド・ブラボの方が重く強い技を持っているが、この欧米パワーで勝ち上がって来た新人クラスと違い、チャンピオンとして総合力が試される今、UMAに主導権を握られ、終了間際にもパンチ連打を受け劣勢のまま判定負け。

いろいろなタイプの選手がいるものだと試練の壁にぶつかっているようなデビュー1年半、18歳のリカルド・ブラボ。対戦可能なトップクラスと戦い、経験を積めばまた新たな強さが見えてくるだろう。

UMAの前蹴りがリカルド・ブラボのリズムを狂わせた

MAGNUM 48 / 10月21日(日)後楽園ホール17:00~
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.6kg)
VS
テープブリー・オー・デットポン(元・ルンピニー系フライ級2位/タイ/56.0kg)
勝者:江幡塁 / KO 3R 2:00 / 10カウントアウト / 主審:椎名利一

◆70.0kg契約 5回戦

T-98(=今村卓也/元・ラジャダムナン系スーパーウェルター級チャンピオン/クロスポイント吉祥寺/69.85kg)
VS
喜多村誠(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原新潟/69.5kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 4R 0:45 / レフェリーストップ / 主審:少白竜

KO勝利のポーズを再現してくれた勝次、1、2、3、ハッピー!

◆62.5㎏契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/62.5kg)
VS
オートー・オー・デットポン(タイ/62.1kg)
勝者:勝次 / TKO 1R 2:12 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:仲俊光

◆73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原73.5kg)
VS
ヨードプーパー・オー・デットポン(タイ/70.7kg)
勝者:斗吾 / TKO 1R 0:35 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:宮沢誠

◆67.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/67.0kg)
VS
UMA(=ゆうま/元REBELS65kgC/K&K BOXING CLUB/66.6kg)
勝者:UMA / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲28-30. 宮沢29-30. 少白竜28-30

◆65.0kg契約3回戦

石井達也(元・日本ライト級C/藤本/64.9kg)
VS
MA日本ミドル級3位.竹市一樹(二刃会/65.0kg)
勝者:石井達也 / TKO 3R 2:59 / レフェリーストップ / 主審:椎名利一

◆67.0kg契約3回戦

日本ウェルター級1位.政斗(治政館/66.6kg)
VS
レック・エイワスポーツ(WMC世界SW級1位/タイ/66.7kg)
勝者:レック・エイワスポーツ / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:椎名28-30. 宮沢29-30. 桜井29-30

◆ライト級3回戦

髙橋亨汰(伊原61.23kg)vs TASUKU(CRAZY WOLF/60.9lkg)
勝者:TASUKU / 判定1-2 / 主審:仲俊光
副審:椎名29-28. 少白竜29-30. 桜井29-30

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.9kg)
VS
日本ライト級7位.渡邊涼介(伊原新潟/61.0kg)
勝者:渡邊涼介 / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名28-29. 少白竜29-30. 仲29-30

◆フェザー級3回戦

日本フェザー級6位.渡辺航己(JMN/56.9kg)vs FUJIMON(亀岡/57.15kg)
勝者:渡辺航己 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:仲30-27. 少白竜30-27. 宮沢30-

◆70.0㎏契約2回戦

大久和輝(伊原/69.8kg)vs 萩本将次(CRAZY WOLF/69.3kg)
勝者:大久和輝 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)

◆フェザー級2回戦

瀬川琉(伊原稲城/kg)vs 平塚一郎(トーエル/56.9kg)
勝者:瀬川琉 / TKO 2R 0:57 / レフェリーストップ

《取材戦記》

T-98=「ヒジ出すんだも~ん!」
喜多村誠=「狙ってました!」

控室で聞かれた後腐れないサバサバした表情で語り合った両者。業界の総力を結集すればミドル級でも面子は揃うはず。トーナメント戦は「KNOCK OUT」イベントばかりに集中しないで既存の団体興行でも行なって欲しいもの。

健闘を称えあったT-98と喜多村誠

勝次のKO勝利の場合のみ見せる“1、2、3、ハッピー!”は定着するか?拳を突き上げるだけでなく、もう少し決めポーズが欲しいところ。飛びヒザ蹴りポーズでも加えたらどうだろうか。

新日本キックボクシング協会の年内興行は、あと2回。11月11日(日)に新宿フェースに於いて、「KICK Insist.8」が2部制で開催。メインイベンターは第1部(14:00開始)が瀧澤博人(ビクトリー)。第2部(18:00開始)は石原將伍(ビクトリー)。8試合ずつ全16試合が予定されます。第1部終了後、入れ替えとなり、1部と2部のそれぞれのチケットが必要になります。

そして最終興行が12月9日(日)に勝次が所属の藤本ジム主催で、「SOUL IN THE RING.16」が後楽園ホールで開催予定です。

リングに流れ込んだ喜多村陣営と仲間達

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

格闘道イベント「敬天愛人」11月11日(日)鹿児島アリーナにて開催!鹿砦社取締役・松岡朋彦も出場します! 九州、鹿児島近郊の方のご観戦をお願いいたします!

格闘道イベント「敬天愛人」HP https://ktaj.jp/

私の内なるタイとムエタイ〈45〉タイで三日坊主Part.37 ネイトさんの得度式

信者さんとともに本堂を三周歩く
本堂の前に立ち、経文を唱え儀式の始まり

最後の朝

12月24日、クリスマスイブとは全く関係ないお寺の鐘の音で起き、ノンカイ滞在最後の朝を迎えた。日々馴染んだ読経の後、部屋へ戻り、ネイトさんがコーヒーを淹れてくれてホッと息つく。ここでの列になっての托鉢もこの旅最後となるのだと、地面を踏みしめて歩いた。

◆得度式を迎える!

朝食後は慌しくネイトさんの得度式の準備に掛かる周囲。ネイトさんは白い衣に着替えられ、私服を纏めていた。暫くはプラマート和尚さんに預けるのだろう。

ノンカイの高僧、緊張の儀式が続く
先輩比丘に僧衣を纏い付けて頂く

やがてどこから来るのか、近所のオバサン達が集まりだして賑やかになってきた境内。得度式は功徳の場。現世・来世に幸福をもたらす基になる善行。プラマート和尚さんの呼び掛けもあっただろうが、誰の出家であろうと喜んで寄り集まって来るものなのだろう。

そんな準備の中、スアさんが私に苦言を呈する。
「撮影もいいが、ちゃんと座って読経しないとダメだ」と言う。「キツいところ突いて来たなあ」と思い、正直困った。自分の信念とネイトさんへの感謝、それがあるから撮影に専念しようと考えていたのだが、比丘として私のやろうとしていることは間違っている。でもそれを承知で撮影に踏み切るのだ。

プラマート和尚さんには改めて、「撮影に回るので座りませんが御免なさい」と謝りつつお願いすると難なく了承して頂き、何とか立場を守る。でももうひとつ問題があった。ここの本堂は結構狭い。そんな中で偉いお坊さんが来るようだ。

「高僧の前を出入りするのは失礼やぞ」と言う藤川さんに従い、奥側に入ったら出られなくなるので窓から撮ろう。そんな足場をいちいち考えながら計画を練る間に、やがて得度式が始まる。午前9時を回った頃、ネイトさんと先導する引率者のオジサンを中心に信者さんが後に続き、三帰依に倣い本堂を3周歩いている。こんなに信者さんが集まると、やっぱり賑やかでいいものだな。

比丘の姿になっていく瞬間のネイトさん

本堂に入るところで、ネイトさんが信者さんから黄衣を受取り、中へ進む。プラマート和尚さんは控えに回って、得度式を仕切るのは他所から来た高僧だった。

ネイトさんの覚えたパーリー語のお経は充分活かされていた。口移しは少々で、途中トチるところがあっても自分の意思でしっかり応え、赤面しても幼さが現れるように可愛い、私より上手いもんだ。白衣から黄衣に換わり、式もクライマックスを迎える。だんだん場慣れし、笑顔もこぼれる得度式。周囲の賛同を得て無事、比丘となった。

得度式が終わって皆がのんびり退散する頃、高僧が私を呼ぶ。結構パシャパシャ、フラッシュ焚いてシャッター押したから、ここは厳重注意かと思ったら、「ワシも一緒に撮ってくれ」とまた拍子抜けするような御要望。どこも寛大な和尚さんが揃う、街中の一般社会に馴染んだお寺なのかもしれない。勿論、山奥の格式高い修行寺では許されないだろう。

タイミングを見計らったプラマート和尚さんにも「私ひとりで撮ってくれ」と頼まれ、本堂の仏像をバックに撮ってあげた。いずれこの写真をお渡ししなければならないな。

◆同じ立場となったネイトさん!

やがてお昼御飯となる時間になっていた。信者さんに呼ばれてサーラー(葬儀・講堂)へ向かう。

バーツ(お鉢)、僧衣三衣の意味を教わる

ネイトさんに「もう我々と同じ立場だ、こっちへ入れ!」と私がかつて、やられたように迎え入れ、同じテーブルを囲んでの食事は楽しいものだった。

午後はネイトさんの部屋移動が始まり、倉庫部屋は掃除してバーレーくんに御礼を言ってお返しする。彼にも名前や生年月日、この寺の住所などメモ書きして貰った。私はまた来るかもしれない、14歳だったバーレーくんの存在は覚えておこう。

藤川さんと私は帰り荷物を纏め、ネイトさんが移動したプラマート和尚さんの部屋へ移動。2階から見たこの寺の風景はまた鮮やかな木々や広い境内とメコン河が見えてすばらしく、帰るのが惜しくなった。

一旦外に出て、先輩比丘との問答

この寺でネイトさんと修行したい、彼の方が優秀だから年功序列も抜かれてもいいとさえ思う。

早速、藤川さんはネイトさんに黄衣の纏い方一式を教えている。明日の朝から一人で纏って托鉢に向かわねばならないのだ。私の時のような、イライラしながら黄衣で頭が引っ張られることも無く、受け答えしながら飲み込みが早いネイトさんだった。

夕方の我々が帰る列車まで時間があるので、またメコン河を眺めに、ネイトさんと最後の会話をする為、河沿いへ向かうと、プラマート和尚さんもやって来た。こんなノンビリした会話も楽しく、ちょっとプラマートさんの経歴を聞いてみた。この1994年で39歳。「13歳でネーンになり、16年前にこの寺に来た」と言う若い和尚さんであった。

ひとつやり残したことで、私はこのノンカイで、もうひとつ行きたいところがあった。横浜に住む不法就労しているタイ人の実家がこのノンカイにあるのだ。だが、この寺から更に遠い、ブンカーンという街で、実際どれぐらい遠いのか分からない。プラマート和尚さんに聞くと、ここからバスで2時間ぐらい掛かり、とてもトゥクトゥクで行ける距離では無かった。還俗してからもう一度来るチャンスがあったら尋ねることにしよう。
(後の2011年3月23日に、ノンカイ県が分割されブンカーン県が誕生)

再び高僧の前に座り三拝

◆別れの時!

夕方6時になって、いよいよ我々は駅に向かう時間となる。プラマート和尚さんにお世話になった御礼を言い、スアさんにも御挨拶。撮影に集中してしまったことも詫びたが、「えっ、ああそうだっけ!」とそんなこと気にもしていないスアさん。怖い顔しているが、真面目で穏やかで優しい比丘だった。

ネイトさんには「慣れた頃、私が還俗する前に、ペッブリー県の我々の寺へ遊びに来てください」と誘うと、「ぜひお伺いします、また近い内お会い出来たら嬉しいです、ここまで導いて頂き有難うございました」と丁寧に我々に応えるネイトさん。比丘が“遊びに”なんて言うものではないが、「パイ・ティアオ(遊びに行く)」の言葉の語源には、“修行”という意味があると言い、私の僧名の“チャナラトー”を調べたり、何かと言葉の語源を調べるのが得意だったネイトさんだった。

仏陀に向かい全員で、新たに比丘と認め、仏門に迎え入れる誓いの読経

その他諸々にお世話になった皆に御挨拶すると、比丘は余計なことは言わなくても、笑顔だけは比丘も俗人も関係なく心が現れる。その笑顔に送られ、我々はノンカイ駅に向かった。

18時40分頃、列車が発車すると、早くもベッド作りに回ってくる乗務員のおじさん。藤川さんとは席はやや離れていたが、ベッドが作られる間、私の前の席に座った。

「あのネイトは将来立派な坊さんになるぞ、死んだら国王が葬儀に参列されるぐらいになあ」とかなり過大評価でネイトさんを褒める。

「ネイトはお前の5倍は勉強しとるなあ」と腹立つぐらいネイトさんを褒める。
順々にベッドが作られていき、その周辺の人々はベッドに入る準備が始まる。我々もかなり早いが夜7時30分にはベッドに入った。藤川さんの長話から逃れられて、そこは助かった。

2週間の滞在だったノンカイ・ビエンチャンの旅。苦難もあったが、終わってみればやっぱり楽しかったと想う。何か寂しく虚しく感じる線路の響き。寝ながら、「ペッブリーの、品の無い奴らが居る我が寺より、こちらの品ある寺に移籍したい」と、また我侭なことを考えながら眠りについてしまう夜行列車の帰り旅だった。我が寺まではもう少々旅話は続くのであった。

最後に全員で記念撮影

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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