「目が覚めた」人たち──抗議行動はいろんなカタチがあっていい

戦争法案の審議と国会会期延長、更には辺野古での基地建設、TPP推進などの市民を虫けらとも思わない安倍政権に対して全国各地で様々な抗議活動が行われている。6月24日(木)には国会前に3万人が集まり「戦争反対」、「安倍政権倒せ」の声を上げた。またここへ来て若者の街頭活動も見られるようになってきた。


◎[参考動画]「とめよう!戦争法案 集まろう!国会へ6・24国会包囲行動」

◆反対する契機は「純粋な怒り」

同意できない政策を推し進めようとする、政府や行政への抗議行動は時代により形や規模が異なりながらも綿々と続いてきた歴史がある。2011年3月11日、福島第一原発の事故で初めて街頭行動に足を運んだ人の中には、「原発爆発」という脅威により初めて「目が覚め」て「居てもたってもいられず」行動を起こした方々が少なくなかっただろう。

そういった「普通」の人はそれまで「市民運動」に関わっていたわけではなく、ましてや政府に対する抗議行動などとは無縁の方々で、「どうしてくれるんだ!」、「政府・東電は責任を取れ!」という純粋な怒りと恐怖が街頭行動の動機となっていた。少なくとも私が直接知る複数の人々はそうだ。

原発に限らず、戦争反対の前段階である自衛隊の海外派兵や、教育基本法改悪への反対、国家国旗法制定への反対行動は3・11以降「目が覚めた」人々がまだ、あまり興味を抱かない頃から、一般市民には異端視されながらも行われていた。

3・11以前、街頭での抗議行動が低調であった頃には「デモに行く」と言えば、極端に危険な行為に加担するような偏見で見られることは当たり前だったし、あらゆるテーマを掲げて集会を行っても、組織動員がなければ東京でも万の単位の集会開催はほぼ皆無に等しかった。


◎[参考動画]爆笑!偽安倍晋三──2006年12月6日ヒューマンチェーン第3波に偽の安倍さんが現れた!

◆「冬の時代」から声を挙げ続けてきた人々

でも、忘れてはならないのはそういう「抵抗冬の時代」から怯むことなく声を挙げ、時に権力に不当弾圧されながら、一般市民から「変わり者」と蔑視されようと、この島国の権力者たちが推し進めようとする悪意に満ちた政策と正面から闘っていた人々の存在だ。


◎[参考動画]なぜ警告を続けるのか~京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち

抵抗や闘争のテーマは数限りなくある。「改憲」はいよいよここにきてその危険性が広く認識されることになったけれども、1955年、保守合同により発足した自由民主党の党是が当初より「自主憲法制定」=「改憲」であることを知っていた人々は早期から各地に「九条の会」を立ち上げ地道な活動を行って来た。

千葉県に位置する空港は、そこに住む農民の意見を聞くこと一切なく建設が決定され、その反対運動は熾烈を極めた。自分の生活の糧である農地や家が一方的「国策」により奪われる、と聞かされた農民は実力闘争に踏み切らざるを得ず、学生や労働者も空港建設反対の運動を支援した。多くの死者も出した。

そこではあからさまな「暴力」が数々繰り広げられた。「強制収容」という名で農民の家が重機により取り壊された。それに抵抗する農民達は家や立木に自分の身体を括りつけ機動隊の暴力に抵抗した。

◆不合理な国策への抵抗は自然

ここで読者の皆さんに問いである。世界のあらゆる場所、あらゆる地帯で「無用」な暴力は排除されるべきだと私は考える。

だが、ご自身の住居が合理性のかけらもない「国策」により取り壊されたら、何も言わず、何もせずに沈黙していられるだろうか。「住居取り壊しをやめろ!」と叫びそれに身を持って抵抗するのは不自然だろうか。

千葉県にある空港は「国際化に伴い羽田では敷地が手狭になるから」と言う題目で建設が強行されたが、一時国際線を控えていた羽田空港(正式名称は「東京国際空港」)はその後拡張工事を行い、現在乗り入れている国際便を運航する航空会社の数は30社に上っている。国際線専用ターミナルも人であふれている。一時「新東京国際空港」が正式名称であった千葉県の空港は国際線の発着を羽田から引き継ぎ、専門に担うはずだったが現在国際線乗り入れ航空会社数は43社止まりであり、名称も2004年に「成田空港」と変更され、実質的に首都エリアで「国際空港」の名は通称「羽田」の「東京国際空港」だけである。

この現実を見て土地を奪われた農民や、反対運動で傷つきあるは亡くなった反対派、推進派の方々はどうお感じになるだろうか。国が引き起こした無茶非道理を尽くした「空港政策」の犠牲になった方々の多数はもうお亡くなりになっているけれども、現在も農地を国に奪われることを阻んで闘っている農家の方が存在する事実を前にどう申し開きするのか。

「極端な例を出して」とソッポを向かれる読者もいるかもしれない。でもこの構造は何変わることなく今日に引き継がれているじゃないか。

先に霞が関で抗議行動最中に不当逮捕された被害者の方から直接お話を聞くことが出来た。その方は勾留されている間にネット上や批判的な人々から「逮捕される方が悪い」、「警察が逮捕したのは当たり前」などの言葉が交わされているのを接見した弁護士から知らされ、「とても残念に感じた」という。「逮捕を肯定する人は『権力』の本質がわかっているのでしょうか」とも語っていた。

◆抗議行動には様々な形態があっていい

本質的な対立が生じれば国家権力は当然反対者を弾圧(逮捕)する。いくら「非暴力直接行動」などと言っていても、そんなことに一切配慮はされない。「反国家」、「非暴力」は市民が定義するものではなく、国家がその時の都合で一方的に決めつける。そのことは70余年前の戦争時代に何が起きたかを振り返れば明らかだ。

6月27日渋谷ハチ公前SEALDs街頭アピール行動に参加した山本太郎さん(山本さんのfacebookより)

抗議行動には様々な形態があっていいと思う。その方が画一的な運動より健康だろう。だが、最終的に国民の「抗議・抵抗」に対して国家は「非和解」であること私は考える。

私は戦争に反対する。だから抗議する。
私は原発に反対する。だから抗議する。
私は差別に反対する。だから抗議する。
私の目的は「抗議」ではない。
受け入れない政策や行動の阻止だ。

「抗議を続ける」ことは長期戦では重要だ。でもそれ自体が目的になっている人がいるとすればもう一度考えてほしい。本当に獲得すべきものは何なのかと。


◎[参考動画]BO GUMBOS「目が覚めた」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

『NO NUKES voice』Vol.4──世代と地域を繋げる脱原発情報マガジン!

 


百田尚樹「沖縄2紙を潰せ」発言で強まる「琉球独立」という島唄の風

自民党の安倍に近い若手議員議員懇談会に呼ばれた作家の百田尚樹が「政治家は国民に対してアピールが下手だ」、「沖縄の二つの新聞はつぶさなければならない」と発言した。会に出席した議員からは「経団連に働きかけて広告を引き揚げさせてもらっては」など、報道批判の意見が相次いだそうだ。

また、6月25日に予定されていた自民党の「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」が講師に漫画家の小林よしのりを呼ぶ行う予定だったが自民党幹部の「安保法制審議批判に火をつける」との理由で中止になった。小林よしのりは「ああ負けたんだなと思った。自民党は全体主義になっている」と感想を述べている。

もうこれだけ書けば本当は付言することはない。誰にでもわかるだろう。言論弾圧はこれまでも山ほどあったけれども「沖縄の二つの新聞はつぶさなければならない」という言葉には、単なる敵意以上に琉球を侵略、支配してきたこの島国支配層の差別と選良意識が隠すところなく吐露されている。


◎[参考動画]安倍晋三「沖縄慰霊の日」全戦没者祈念式典スピーチ(2015年6月23日)

◆「沖縄2紙をつぶせ」の百田尚樹は「呼べば暴言」の自民党腰巾着

もっとも百田は確信的な歴史修正主義者であり、これまでも数々の暴言を吐いてきた。NHKの経営委員に就任するも都知事選に出馬した田母神俊雄の応援演説で、「南京大虐殺はなかった」、「他の主要候補は人間のくずみたいなもの」と語るなど品位の欠片も名無い発言を連発し、任期途中で退任に追い込まれた経歴がある。関西ファシズム牽引役芸能人だった「やしきたかじん」没後の経緯を書いた「殉愛」では遺族から名誉棄損だとして「出版差し止め」と1100万円の損害賠償請求も起こされている。

百田を呼べば暴言を吐くことは織り込み積みで自民党の連中は講師にしたに違いない。そして奴らは馬鹿だから、百田が大問題発言をしてもその重大性に気が付くどころか、それに乗じて「経団連に頼んで広告を引き揚げさせよう!」とこれ以上ない報道弾圧発言を何はばかることなく吐き続けたのだろう。

「つぶさなければならない」と名指しされた「琉球新報」と「沖縄タイムズ」はむしろこのような連中から本気で恐れられている新聞だということが逆に証明された訳で、これは皮肉ではなく「喜ばしい」事態と言っていいだろう。本土のほとんどのメディアが「官報」と変わりない体たらく振りの中で「琉球新報」と「沖縄タイムス」にはジャーナリズム精神が残っていると誌面を読むたびに感じてきたけれども、それほど敵にとっては目障りであり「脅威」の対象だということが図らずも証明されたということだ。


◎[参考動画]翁長知事「沖縄慰霊の日」全戦没者祈念式典スピーチ(2015年6月23日)

◆沖縄の怒りの度が増し、「琉球独立論」は加速するかもしれない

けれども、それは事件を斜めから見た私の感想であり、この発言に沖縄の人々が更に怒りの度を増すことは違いない。そこここで議論されている「琉球独立論」が加速するかもしれない。先の衆議院選で自民党は沖縄の小選挙区で1人の当選者も出せなかった。たった2割の得票で当選できるいびつな「小選挙区」システムですら全く支持が得られていなかったのだ。そのことへの思慮や洞察すら自民党の連中は持ち合わせてはない。

百田や自民党議員の意見には言わずもがな100%反対だが、恥ずかしくも同じ島国に生まれ沖縄を苦しめる「本土」に居住する人間としては恥ずかしく、申し訳ない気持ちが一層つのる。政権もろとも歴史修正主義者を徹底的に糾弾しなければならない。


◎[参考動画]宮沢和史 慰霊の日に 沖縄の唄者と共に『島唄』熱唱(NEWS ZERO 2015年6月23日放送)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
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通信傍受法の適用拡大次第で携帯電話は容易に「盗聴」される時代へ

1999年、当時勤務していた大学である企画を準備していた時、私は携帯電話による通話を「盗聴」されたことがある。ややデリケートな国際問題にも関係する企画だったので、外務省や政治家との折衝のため霞が関や永田町に何度も出向かねばならなかった。ある時通話が明らかに「盗聴」されたと分かった時には本当に驚いた。まだ「盗聴法」もなかったし、そもそも「携帯電話の盗聴技術」は相当な資力と技術力のある団体でなければ無理だろうと考えていた時代だった。私の通話を「盗聴」したのは、某国の諜報機関であった。日本の捜査機関ではない。わざわざその証拠を私達に解る形で残して行ったから間違いない。

◆1999年にはすでに確立されていた携帯電話の「盗聴」技術

その時、私は議員会館の某議員の事務所で通信社の記者と待ち合わせする予定になっていた。私と彼は共に周りに誰もいない場で、携帯電話により落ち合う場所と時間を確認していたから当事者2人以外にその打ち合わせ時刻と場所を知る人間はいないはずだ。しかし議員の事務所に定刻の15分ほど前に見知らぬ人物が現れて「ここに田所さんが来ると聞いたんですけれども」とだけ言い残し去っていったと秘書に伝えられた。打ち合わせは議員を含め1時間を超えたがその間その人物が戻って来ることはなかった。

私も通信社記者も、もう一度その待ち合わせについて誰か他人に話をしていなかったかを思い返した。かなりセンシティブな内容でもあったので誰にも話していない事が再度確認された。そうであれば可能性としてはどこかで通話を聞かれたと考えるしかない。固定電話の「盗聴」はいとも簡単だけれども、1999年の時点で携帯電話の「盗聴技術」もその筋では確立されていたわけだ。

◆威嚇するかのように尾行され、通信妨害も企てられた

「盗聴」はともかくその時は打ち合わせを終えて、私は次の場所へ徒歩で移動した。ところがどうも背後が気になる。普段感じた事のないような視線のようなものが、勘違いかもしれないが背中に張り付いている。霞が関の昼間は大きなビルが林立する割に舗道を歩く人の数はさほど多くはない。幾度か後ろを振り返るとかなり後方にだが2人が等距離で付いてきている。試しに地下鉄の階段を下るとやはり彼らも距離を詰め、後ろからやってきた。

明らかな尾行であることが判明したが、いかんせん人目の多い場所だ。精神的に圧迫を加えるのが目的だろうが、それ以上に手出しは出来まいと考えたし、実際にそうだった。私は地下鉄のホームから再び地上に上がり次の目的地へ向かった。

だが彼らの攻撃はそれでは終わらなかった。イベント当日私達はゲストの移動や進行の把握に携帯電話での通話を予定していたのだが、電波が弱い地域でもないのに、いくらダイアルしてもどこにもかからない。私の携帯電話だけでなく、連絡を取り合うことになっていた全ての携帯電話(皆至近距離にいたのだが)が通話不能になっていた。

電話会社のシステムトラブルであろうかと、最初考えたが身内の関係者が複数のアンテナを車の後ろに立てた不思議な自家用車が周辺を行き来しているのを発見した。その不審な自家用車が遠ざかると携帯電話の発信が可能となる。また近づいてくると全く携帯電話は使い物にならない。いわゆる「妨害電波」を発信することによって彼らは我々の通信妨害を図っていたのだ。

と、ここまでは私の昔の経験である。読者の中にこれまで「盗聴」をした(されたではない)経験の持ち主はいるであろうか。仮にいても「あるよ!」と名乗り出られることはないであろう。

◆「盗聴」されていることは固定電話よりも携帯電話の方が分かりにくい

私も「盗聴」ではないが、法で定められた範囲で他人の電話会話を「傍受」した経験がある。

日本に電話会社が一つしかなかった時代、そこへ勤務していた時のことだ。当時は電話局と呼ばれていたその場所には「局内」と呼ばれる場所が主として地下に位置していた。電話回線を交換機に結ぶいわば電話機能の心臓部があり、「ジャンパー」と呼ばれる細い線が「収容位置」により各固定電話が認識され、交換機と接続され通話が可能となる仕組みであった。当時電話の交換機には旧型の機械的なものからコンピュータ化された最新型への入れ替えが盛んであり、古い交換機は中国などへ輸出されてもいた。

電話回線は自然災害や不慮の事故がない限り概ね安定的なものであったけれども、時にそれを確認するためにランダムな電話番号を短時間「チェック」(傍受)して安定性を確認する業務があった。勿論「通信の秘密」を厳守すべきことは先輩方から厳しく指導され、その上で業務にあたるわけだが、同時にその場所は新たな固定電話を設置した際に現場から回線が問題なく開通しているかなどの試験を行う場所でもあり、その確認作業も行うので、そこそこ賑やかな場所でもあった。

通話が安定的に保たれているかは交換台に座り所定の手続きを行えば、特定の電話番号を一時的に傍受が可能となり、それにより問題がなければ速やかに切断することになる。私がこの仕事に従事していたのは「盗聴法」が施行されるはるか昔のことだで、この業務は「盗聴」ではなくあくまでも通信回線の安定性を確認するためのものだった。

実は警察や捜査関係者あるいは「犯罪者」でなくとも、固定電話の「盗聴」は技術的にはたやすい。少し電気の知識と技術それに簡単な器具が準備できればさほどの困難なく「盗聴」は可能だ。実際私も前述の企画を進行中に関係者宅が一斉に「盗聴」されて困惑した経験がある。詳細は犯罪防止のために省くが特定の方法で「盗聴」をされると通話の音質が変わり、エコーのような反響が起こるので、予備知識のある人間には直ぐに判明する。だが、「局内」からの「傍受」の際にはそのような通話状態の変化は起こらない。

他方、今日は固定電話よりも携帯電話が主流となっている。携帯電話の「傍受」技術はとうの昔に確立されているだろうが、固定電話と異なり、携帯電話は電波により通話をしているため、話者が「盗聴」をされていても通話音質の変化などで「盗聴」に気が付くことはない。

通信傍受法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律)」により理由づけが行われば誰の電話が「盗聴」されても、技術的にも法的にも不思議ではない時代になった。万が一程度の可能性だろうが注意をするに越したことはない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「チャイナスクール」出身外務官僚の不思議な価値観への違和感
◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
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日本の警察大失態──叔父逝去時に遭遇したあまりに稚拙な管理能力

数年前、叔父が風呂場で亡くなった。

極寒の日、従兄弟が電話をかけても返答がないので不思議に感じ、叔父宅を訪ねたところ浴槽の中で既に息絶えていたらしい。従兄弟は救急と警察に電話した後私に急を知らせてきたので、駆けつけた。叔父の亡骸はまだ浴槽の中で警察による「検死」が行われていた。

警察の義務なのだろうか、第一発見者の従兄弟にはかなり詳細な事情聴取が行われ調書も取られた。浴槽内でどのような体勢で叔父が亡くなっていたかなどかなりの枚数の書類を作成していたので、亡骸を布団に安置できるまで発見から4~5時間は要したろう。

◆葬儀の段取りをしている最中、警察が何遍も失礼な家捜しを繰り返す

警察は引き上げ、従兄弟と私は葬儀の段取りなどの打ち合わせや親戚、知人への連絡に忙しくしていると、玄関のチャイムが鳴る。戸を開けてみるとさっきまで検死に従事していた警官のうちの1人が立っていて「ちょっと忘れ物をしたかもしれませんので恐れ入りますが中を見せてもらっていいですか」という。こちらには断る理由はないから家の中に入れるとあちこちをうろうろ探し回っているが、表情に落ち着きがない。しばらくして「ないみたいですわ。失礼しました」と言い残し警官は帰って行った。

私たちは手を止めていた葬儀の段取りの相談を再開する。叔父は病に伏せていたわけではなく体調は崩していたものの急逝の部類に入るだろう。だから従兄弟とて心の準備もなかったのでショックと目前のしなければならない段取りとで神経は相当消耗していた。

あれこれ1つづつ話を進めていると、また玄関のチャイムが鳴る。再び戸を開けると先ほどとは別だがやはり検死に立ち会った警官が「何度も恐れ入ります。もう一度お宅の中を探させて頂きたいのですが」と。

先に何かを探しに来た警官は亡骸を安置している部屋を含めてくまなく「何か」を探して出て行っていた。こちらにすれば身内でもない人間にあまり踏み荒らしてほしくない場所である。同じことをまたしたいのだという。

夜も遅いことだし取り合えず警察官を家に入れたが「いったい何をさがしてはるんですか」と従兄弟が問いかけた「いえ、バインダーみたいな形をした物なんですが…」と答えの歯切れが悪い。検死が終わってもう4時間以上経過しているのに今頃まで何を探しているのだろうか、我々には想像できなかった。しかしこちらは急な不幸に見舞われその対応に追われている最中だ。

先ほどの警察官と同じように亡骸を安置している部屋の中どころか、布団までめくって中を調べている。

「何ですの? 布団かけたのはあんたらが帰ったあとだからその中には何もありませんよ」私は少し不機嫌に言い放った。果たして「バインダーみたいな形をしたもの」は見つからず非礼を詫びて帰って行った。

それから30分も経過しないで三度目の玄関チャイムが鳴る。今度は検死の際に指揮を執っていた刑事が立っている。「何度も夜分申し訳ございません。ちょっとお詫びとお話をさせていただきたいのですが」と。居間に通すと刑事は深く一礼し「実は…」と話を始めた。

刑事によると検死が終了して車で署に帰ったが、検死で作成した調書や書類が見当たらないという。

「どういうことですの?」と私が聞くと「担当者がどこかに置き忘れたんだと思われまして今鋭意探しているところであります」と言う。

◆警察は調書や検死関係書類を「紛失」してしまっていた

最初は刑事の話が飲み込めなかった(そんなばかげたミスがあるとは思わないので、もっと複雑な事情があるのではないかと考えていたのだ)が、要は調書や検死関係書類を「紛失」してしまった、しかもそれが家の中にないし、警察署の中にもない。だから今家から警察署への帰り道を順次探しているのだと言う。

調書には従兄弟の証言が書かれている。いわば「事件性がない」証明の文章だ。と言うことは警察の作文の前提には「もしこの件が事件であったら」の仮定形の文章も含まれる。そんな文章は万が一にも他人様には見られたくはないし、出てこないとなれば余計に気分が悪い。そのほかの書類にしても警察以外の人の目に触れるべき性質のものではない。人の死に関するものなのだ。私は怒りが頂点に達したが従兄弟が「親父の遺体の横だから穏便に」と言うので、押し殺した声で刑事に向かった。

普段は決して部屋の中では吸わない煙草を咥え刑事の顔に煙を吹きかけた。

「あんたら、それミスではすまへんのはわかってるわな。こいつ(従兄弟)を散々絞って長時間かけた調書をどこかで失ったて? 出てこなかったらどうするんや? お? あるいは他人が見たらどうしてくれるんや? さっきから何べんも失礼な家捜し繰り返しやがって。わかってるやろな」

刑事はうつむいて「申し訳ございません。鋭意探しておりますので……」と言うのが精一杯だ。

◆深夜の道路わきを大動員体制で書類を探し続ける黒ジャンバーの警察官たち

腹は立つが、こちらもあれこれ段取りがある。「はよ探せや!」と言って帰らせると私も従兄弟もどっと疲れが出た。家に食べるものもなかったので近所のコンビニまで気分転換に買い物に行こうと言うことになり外へ出た。

道路の両側に50メートルから100メートル毎に黒いジャンバーを着た男たちが4、5人で懐中電灯を照らしている。刑事が言っていたのはこの事だった。家からコンビニまでは400メートルほどだが、その間に数十人は下らない黒ジャンパーの男たちが深夜の道路脇に懐中電灯を向けている。亡くなった叔父は悪戯好きな性格だったので「おっさん、ただでは死なへんな、警察大動員させるなんてさすがやな」と従兄弟と冗談を苦笑しあった。

コンビニからの帰路、一群れの黒ジャンバー軍団に「見つかりそうでっか?」と私は話しかけた。途端に鋭い視線と「何ゆうてるんやあんた!」と言うキツイ調子の言葉が返ってきた。

「何言うてるて、書類なくされた田所やがな」と言うと黒ジャンバー軍団は一気に顔色が青ざめ「大変失礼いたしました、鋭意捜査中であります」と全員が深々と礼をして来た。

「ご苦労さんやな。夜遅くに」言い残すと家に戻った。自宅周辺だけであれほどの人数が配置されているなら警察署に帰るまでの道のりは相当あるから動員は100の単位ではきかないだろう。ひょっとしたら市警だけでは人数が足らず、県警にも応援要請を出しているのかもしれない。こちらも迷惑だが、書類を紛失した警官は立場がないだろう。

◆失態を演じた警官にどんな処分が下されたのか?

空が白み始めた頃玄関のチャイムが鳴った。戸を開けると「あ、ありました!発見しました!」と見たことのない顔が興奮している。

「お宅は誰」と聞くと「失礼しました。××署の△△であります!」と写真の入った身分証明書をこちらに見せた(警察手帳のような形態ではなかった)。「詳しくは後ほど報告するものが参りますので」と言い残し急いで△△氏は去って行った。

夜が明けて説明に来た刑事によると家から3キロほど離れたトンネルの中で書類が散逸している状態で発見されたらしい。見つかった書類を見せられたが確かにタイヤに踏まれた跡が何箇所もある。トンネル内だったので人目には触れていないこと、散逸の原因は検死を終え警官達が車に乗り込む際、書類を持っていた警官が、バインダーごと書類をトランクの上に置いたのを忘れて、車を走らせたためと思われる、と説明があった。

こちらは一睡もせずに朝を迎えたが、検死に関わった警官たちも生きた気がしなかったろう。幸い見つかったから良かったものの、散逸場所が別の場所ならば発見できなかった可能性もあったわけで、そうなれば関係者の処分も格段に重いものになったろう。

その事件があった直後にマスコミに情報を流す選択肢もあったが従兄弟が「今回は穏便に済ませたい」と言うので、それをすることはしなかった。失態を演じた警官にどんな処分が下されたのかは知らない。が、今でも検死の際に指揮を執った刑事の携帯電話の番号は私の携帯電話に残してある。従兄弟の意見を尊重して当該警察がどこであるかも伏せておく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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就活、婚活、終活──マニュアル過剰世界を捨ててみると見えてくるもの

あまりにも当然なことだけれども、私達は日々「生活」をしている。「生活」の延長線上には、誰にも平等に「死」が待ち受けている。若くて持病もないうちは「死」を意識することはそうそうなないのだけれども、そこそこの年齢になり、友人の逝去や自分の身体の衰えを感じ始めるとおぼろげだった「死」について、嫌でも考えを巡らせる時期がやって来る。

個人的営為の最終章としての「死」くらいは、世相や流行と関係なく我流でお願いしたいと考えても、「終活」というマニュアルが葬儀関連企業や書籍によって示される。仕方がないと言えばそうなのだが、今日生れ出てから「死」を迎えるまで、意識しても、しなくても必ずその周辺に待ち構えている資本や企業や団体、時によっては宗教の食い物にされのを避けるのは至難の業だ。


◎[参考動画]2013年イズモ葬祭CM

◆不合理を隠して進むマニュアル化「就活」「婚活」

発語すれば同じ音である「しゅうかつ」を「就活」と表記した時に、その各段階でリクルートという企業が悪辣な仕組みを立ち上げ、巧みに利益を上げる構造を確立していることは過去にこのコラムで述べた。
「就職活動」が「就活」と言い換えられた時代にリクルートのこの分野での収益構造はたぶん完成していたのだろう。学校を卒業して直ぐに仕事を見つける作業は、その先が企業であれば採用側も、応募側もほぼマニュアル化していて、渦中の人達はその「不合理さ」や「非人間性」に気が付くことはない。


◎[参考動画]2015年リクナビCM(リクルートキャリア)

更に、伴侶探しに市場があると目星を付けた連中は「婚活」という言葉と収益事業を立ち上げた。「結婚相談所」という業種やボランティアは昔から大小含め全国にあったけれども、その業種に漂っていた、どこか「人には言いにくい」心理的側面を「婚活」という言葉で切り落とし、これまた多彩に「お見合いパーティー」や「価値の高い男・女になるために」、異性への話の仕方やデートの方法、果てはプロポーズをするのに適した場所やその言葉まで丁寧に指導してくれる「婚活」セミナーが出現した。

女性が美(と言われているもの)を追及するエステティックサロンは昔から存在したが、近年男性は頭部以外の体毛が嫌われる傾向にあるらしく、脚や腕から始まってヒゲの脱毛も女性の好感を得るには有効との宣伝がある。その手の男性エステの広告には出演料も高かろうにジャニーズのタレントなどが多用されている。

ヒゲなんかを脱毛して皮膚に悪影響はないのだろうか(私が心配する筋合いは微塵もないのだが)、一体いくら取られるんだろうかと、面倒くさい(馬鹿らしい)から取材する気にもならない。どうでもいいのだが、どうしてそこまでして自分自身の価値を一時的な流行、しかも企業が作り出したそれに沿わせようとするのだろうか。


◎[参考動画]2014年ゼクシィCM 広瀬すず篇

◆とめどなく広がりつづける「●活」というマニュアル世界からの離脱

「活」が幅を利かせているのはそれだけではないようだ。まだあまり一般的ではないかもしれないがかつては「胎教」と呼ばれた言葉を「妊活」(妊婦としてどう過ごすか)と言い換えたり、「育活」(要するに育児)なども「活」と言う範疇に囲い込まれようとしている。「現代用語の基礎知識」にはその他「離活」、「朝活」、「保活」、「温活」、「寝活」、「ソー活」、「友活」など、ここまで来るともう訳が分からない「活」が満載されている。

出産も育児も教育も、そして進学も就職も結婚も、更には「死」も、言わば人生の全てが情報商品化の対象となり、折々その周囲に控えている企業や医療機関、教育機関や冠婚葬祭社へのより収益性の向上が見込まれるキャッチコピー「○○活」と名付けられる。薄気味悪い。人生の「総マニュアル化」と言ったら言い過ぎだろうか。

「慶弔ごとは値切らない」という慎ましくも(払わせる側には)ずうずうしい習い性のようなものが長く支配的であったこの島国では「婚活」や「終活」で結局ボッたくられる人が多発しているだろう。「婚活」をしたことはないけれども、少なくないの「葬式」を出した経験から、黙っていると本来支払えばいい額の数倍を要求してくる葬儀業者が少なくないことを不幸にも私は知っている。そんな業者に限って綺麗なパンフレットで生前からの「終活」を勧める互助会などへの勧誘に熱心だ。

◆自分の「生活」を全うすること──誰かに命じられたり誘導されたりしない生活

生活していれば楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、悔しいこと、様々経験して最後に人生を閉じる。それは似ているようでいても一人一人全く異なる人生史の編纂作業であり、便利で自らの個性に合致した制度やサービスは採用すればよいけれども、企業が利益目的に「これが今トレンドですよ」と誘導する選択肢に人生を委ねるほど、没個性的な事はない。それはまた、遠くかけ離れてはいるけれども「付和雷同」、「事なかれ主義」といった社会態度を底支えするものともなり、さらにうがった見方をすれば、2015年時点での現社会体制=戦争準備の時代に少し加担することにも繋がる、と此処まで言うと極端が過ぎようか。一人一人が誰かに命じられたり誘導されるのではなく自分の「生活」を全うすることが、実は地味に見えて大切なのではないかと思う。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎沈黙する大学の大罪──なぜこんな時代に声を上げないのか?
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎イオン蔓延で「資本の寡占」──それで暮らしは豊かで便利になったのか?

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《大学異論37》沈黙する大学の大罪──なぜこんな時代に声を上げないのか?

過日ある大学の先生とあれこれ雑談を交わしていた時の事だ。

前段で「(内容が)社会的発言力を持つ若い世代の話者不足」が話題になった。原発、格差社会、貧困、差別、報道の惨状、そして暴走する悪政。どのテーマでも安心して一定レベルを満たした論を展開出来るのは、若くて50代。下手をすると70代、80代の人しか見当たらないという惨憺たる人材不足に2人で溜め息をついてしまった。貧困などではまだ比較的若い活動家が見当たるけれども、「改憲」反対の大きな集会で登壇するのは大江健三郎、澤地久枝、落合恵子、鎌田慧といった方々で失礼ながらその平均年齢は70を超えているだろう。

逆の立場から発言する者は、1つも2つも若い世代にいくらでもいる。古い言葉を持ち出せば「反動保守」という範疇にあたる主張を声高に(しかも早口多弁に)語る連中は世代を問わず溢れている。

それがこの救い難く絨毯爆撃を受けたかの如き、惨憺極まる言論状況の理由であり原因だ、と結んでしまえばそれはそれで的中しているのだが、それを甘受するほど屈辱的な現状肯定は無い。先生と私はこの惨禍をもたらした犯人探しをどちらから切り出すともなく試みてみることになった。

犯人は横にも(同時代)縦にも(今に近い過去)前にも(近未来)幾らでも転がっていて、どいつが主犯かを見立てる仕分けに手間取りそうな予感がしたが、そのあやふやな作業を、先生は極めて明確かつ深い含蓄を込めバッサリ斬り捨てた。

「こんな時代なのに大学の中で声が上がらないのです。憲法が無き物にされようとしているのに、学生がまた戦場に引きずり出されようとしているのに教授会決議どころか議論すらない。社会的存在として今の大学の有り様は罪深いですよ」

「自省を込めて」と切り出して先生が批判された「総体としての大学批判」は寸分狂いなく的中していると私も同意する。そうだ。大学の沈黙こそ大罪だ。

◆建学理念を放棄してまでなぜ大学は文科省(国)に隷属したがるのか?

ところで、最近の大学経営陣は何を指向しているのだろうか。大規模総合大学は、文科省がぶら下げる「補助金」というエサに競って食い付こうと血眼だ。公平性も哲学も微塵もない、言葉の用法からして誤っている「スーパーグローバル」なる実質的公共事業の入札競争で「補助金」を獲得すれば、あたかも当該大学の価値が上がると勘違いしている。採択されると選挙に当選した利権政治屋みたいに大はしゃぎ。

何故そこまで分別を棄てるのだろう。何故各大学が持っている建学理念を放棄(または諮意的曲解)してまで文科省(国)に隷属したがるのか。そこまでお上に従おうというなら私立大学としての存在意義なんてないじゃないか。羞恥の感覚はないのか。

教員は何をしている。この時代憲法学者、法学者や近代史専攻学者は勿論、工学であろうが、経済学であろうが専門領域など関係ない。大学に職を持つ研究者、教育者は自らの専攻を差し置いても、状況の危険性を学生に示唆しているか。

何故「戦争」を目前にしても何も発語しないのだ。全てに優先して学生を守るのが大学の責務ではないのか。「昔のことは知らない」と言い放ったバカ閣僚がいたが、万が一奴と同じような心境の大学教員がいるのであれば断ずる。そんな教員は「大学を去れ」と。

◆「安全保障関連法案に反対する学者の会」の否めない「出遅れ」感

安全保障関連法案に反対する学者の会HP

実はここまでを今月初旬に書き殴っていたのだが、6月中旬「安全保障関連法案に反対する学者の会」が始動し、この会の趣旨に賛同する学者・研究者は6月17日の時点で4000人超に達している。こういった行動や意思表明は意義深い。この活動を始動したか方々には深い敬意を払うものである。

だが、誠に身勝手な私見を述べれば、この法案群が本国会で審議されることは昨日今日に判明したことではなく、かなり前から解っていたことだ。市民レベルでは昨年から警戒心や抗議行動もあった。

「安全保障関連法案に反対する学者の会」の活動には敬意を払うけれども、国会の審議入り前に研究者や学者はその危険を察知し、活動を始めることは出来なかったのだろうか。

「特定秘密保護法案」の際も同じような「出遅れ」が気になった。気骨のあるジャーナリスト達が法案成立に反対の意を表明し、署名などを提出したが、その半年以上前から市民レベルで「特定秘密保護法」の危険性は認知されていて、反対の行動も相当激しく行われていた。市民の行動に比すれば、「ジャーナリスト」の行動が遅きに失した感は否めない。

研究者・学者をことさら市井の人々より「お偉い方々」と崇めるつもりはないが、社会問題については日々企業に勤務する給与所得者や、一般庶民より職務上深い洞察力と考えをお持ちの方々であるはずだ。そういった資質があるからこそ教壇に立っておられるのであろう。大学教員・研究者の皆さんには署名だけではなく、その「行動」により為政者達の悪意を暴く「覚悟」を是非見せて頂きたい。


◎[参考動画]「安全保障関連法案に反?対する学者の会」の代表会見(2015年6月15日東京・神田の学士会館)

◆大学の主役たる学生は何を考え行動しているだろうか?

そして、大学の主役たる学生は何を考え行動しているだろうか。残念だが極少数の例外を除き、学生は自らが被害者(または加害者)となる「戦争」の危機を察知出来ているとは言いがたいだろう。最高学府で学ぶ学生は自らの考えと言葉で、毎日浸っているこの社会を独自に解析する事が出来るだろうか。そうしたいという欲求があるだろうか。学生の暮らすこの島国の社会は、戦争や暴虐、放射能から十分に安全な場所だと安息していられるだろうか。回りくどい?なら直言する。

普段は封印していて、余程のことがなければ本当は使いたくない表現を敢えて文字にする。

「昔の学生の中には君達と違い、社会に深く関心を抱き、責任すら感じていた人が少なくなかった」のだよと。

更に言おう。

「昔の学生の中には命がけで社会的不正と闘い、本気でより良い社会の実現を目指していた人がいたのだ。今日本の大学の学費はとても高いけれども、それでも『学費値上げ反対』を戦った多くの学生がいなければもっと高額に引き上げられていただろう」と。

学生の言い訳は聞かない。うらぶれた年長者が如何に対抗しようとしても、絶対に叶う筈がない「若さ」と言う無限のアドバンテージを持っている学生に、懐古趣味(本当は私自身大嫌いなのだけれども)がボヤく戯言など本質的に敵うはずはないのだ。


◎[参考動画]全共闘 日大闘争 東大闘争 – 1968

「若さ」たる無限の可能性の前で年長者の戯言など無力以外の何物でもないことを私は知っている。だから私は学生に(それが限りなく難儀な注文だと解っていながら)目を覚まして欲しい。その可能性に期待する。変革のエネルギーの源泉が若者になければ、そんな社会は早晩破綻が宿命づけられているだろう。

かように、総体として大学は沈黙してしまっている。大学が沈黙するような時代だから、こんなに傍若無人がまかり通るとも言えよう。社会の中で「大学」が果たすべき役割は企業と一緒に商品開発に熱を入れることではない。社会的存在である大学(並びにその構成員である、教員、学生)は研究や学びを通じてよりよい社会の実現に寄与するものであるべきだ。

その正反対が、文科省の下僕に成り下がったり、企業と不埒にいちゃついたり、警察や役人のOBを教員として学内に迎え入れる姿勢だ。さらに言えば声を上げた学生をあたかも「危険分子」のように扱う大学などは看板を「学生収容所」と架け替えるべきだ。こんな時代だからこそ大学の果たすべき役割は大きい。期待するだけに私の要求水準は嫌が上でも高まってしまう。妄想と言われるだろうが、私の願いが少しでも誰かに反響してくれないだろうか。


◎[参考動画]日大闘争の記録「日大闘争」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎加速度を増す日本の転落──なぜ安倍政権には「正論」が通じないのか?
◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

自由なはずのアメリカで、自由なはずの日本で、
何も言えない、何も行動できない、
ガンジガラメの時代が始まっている!
闘う心理学者、矢谷暢一郎の心情溢れる提言に心が震えた!
──加藤登紀子(歌手)──

大学人の必読書!矢谷暢一郎『日本人の日本人によるアメリカ人のための心理学━アメリカを訴えた日本人2』(鹿砦社)

 

加速度を増す日本の転落──なぜ安倍政権には「正論」が通じないのか?

実時間の進行速度はいかなる場所でも時代でも、人間の意思などとは全く無関係に、平等に、中立に、正確に不変であるはずだ。

「ヒト」という一生物種として400万年程の歴史しかない人間が、一見地球上全生物の支配序列の頂点に立っていると私達は日々無感覚に勘違いしているけれども、高度に機械化された文明が今、目前で創造しつつある近未来の像は、人間の進歩を示すそれとなるのだろうか。

こんな漠然とした物言いから始めたのは、直接語ればどうあろうと荒っぽい単語だけの羅列になってしまいそうな、自身の内心を警戒してのことである。「実時間の進行」などと大上段に切り出したが、他でもないこの島国の為政者達が行っている乱暴狼藉を目の前にして、私はそれに全く同意しない。だが問題はその意を表明するにあたり、この状況に即した適切な「言葉」が見つけられないことだ。専ら自身の不勉強に起因するのだが、私の獲得した語彙ではもう追いつかないのではないかという焦りが日々高じる。

書き出せばテーマは掃いて捨てるほどある。そのどれを採ってもニッコリとした表情になれるような穏便な話題はなく、ひたすら暗渠に留まり「時間進行」に対する自分の感覚が、いつの頃からかおかしくなったのだろうかと繰り返し反芻してみるしかないのだ。だが、どうやら「時間進行」と自身の不調和を感じているのは私だけではないようだ。「おかしいよな」の声は確かに広がってはいる。

○1999年05月28日──「周辺事態法」成立(後方支援の法的枠組みを整備)
○1999年08月13日──「国旗及び国歌に関する法律」公布・即日施行
○1999年08月18日──「住民基本台帳法」改正(住基ネットの導入決定)
○2002年08月05日──住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)稼動
○2003年05月23日──「個人情報保護法」成立(2005年4月1日に全面施行)
○2003年04月01日──郵政民営化(郵政事業庁が特殊法人日本郵政公社に改組)
○2003年07月26日──イラク特措法(時限立法。2009年7月に延長期限切れで失効)
○2006年12月22日──新「教育基本法」公布・施行
○2007年01月09日──防衛庁が防衛省へ昇格 ……

◆小泉政権と比べても転げ落ちる速度が速すぎる安倍政権

20世紀末から一連のキナ臭い流れの一部を参考までに抽出したが、「周辺事態法」から「防衛庁の省への昇格」までは8年を要している。主としてコイズミというあのペテン師が躍った8年間だって「時間の速度が増してやしないか?」と感じたものだが、その当時と比較してすら眩暈がしそうなほど、仮に「国家」と言う名の「石」があったとすれば、それは「ゴロゴロ」と轟音を鳴らし急傾斜を転げ落ちながら、地響きをここまで伝えて来ている。

○2011年03月11日──東日本大震災・福島第一原発事故
○2012年06月16日──大飯原発再稼動を正式決定
○2012年12月26日──第2次安倍内閣成立(~2014年9月3日)
○2013年03月15日──TPP交渉参加表明
○2013年12月13日──「特定秘密保護法」公布(2014年12月10日施行)
○2014年04月01日──消費税8%へ引き上げ
○2014年04月01日──「武器輸出三原則」が撤廃され「防衛装備移転三原則」制定
○2014年06月29日──トルコとの原子力協定発効
○2014年07月01日──解釈改憲閣議決定・集団的自衛権容認
○2014年07月10日──UAE(アラブ首長国連邦)との原子力協定発効
○2014年09月03日──第2次安倍改造内閣成立
○2014年12月24日──第3次安倍内閣成立
○2015年06月04日──衆院本会議で選挙権18歳へ引き下げ(公職選挙法改正案)可決
○2015年06月17日──参院本会議で公職選挙法改正案可決成立
○2015年06月現在──有事関連法=戦争準備法成立の画策が進行中

※[参考資料]平成27年1月から現在までに公布された法律一覧(内閣法制局)(2015年6月5日現在)

◎[参考動画]SEALDs戦争法案に反対する抗議行動での小林節=慶応大学名誉教授(2015年6月5日国会前)

◆3・11による放射能被害を大音響で消し去るかのように転げ落ちる安倍政権という「狂乱の石」

4年前、3・11による放射能の影響はどんなに深刻化しているだろうか、とチェルノブイリを知る人々は心配したものだった。が、あろうことか、その深刻な懸念を大音響で消し去るかのように「起きることが前提とされた戦争」が目の前に堂々たる「既成事実」として据えられて、為政者達や武器商人は既に武器の商談に忙しい。一刻も早く「集団的自衛権」と言う名の「自爆行為」に自衛隊を参加させたくて、関連法案の審議では「参考人」の憲法学者が「違憲だ」と声を揃えても「賛成の学者もいる!」(菅官房長官)とガキ大将並の屁理屈を堂々と披歴して恥じることさへない。支配しているのは「狂乱」と言うほかない。

「国家」と言う名の「石」は4年間で以前は8年掛かった距離の何倍もを転がり落ちている。

加速度を増す「石」の転落に対して、この島国に住む人々はどう反応しているだろうか。誰もが無関心でいる訳では勿論ない。いや、形に見える為政者達・権力者達への異議申し立て行動は3・11後確実に増加してはいる。いささか俄かに過ぎる態度の変化と言えなくもないけれども、「破滅を目指す」為政者への対抗行動が強まるのは当然過ぎるほど当然だ。だが、対抗行動の量は勿論必要だけれども、質はどうだろうか。

権力者や武力強者間による執権の移行は、歴史上数限りなく経験しているこの島国だが、残念ながら庶民が旧体制を転覆させた経験は持ち合わせていない。2015年6月、「戦争を前提とした」法制審議にあたり、対抗言語や行動の「質」は「狂乱」に見合っているだろうか。

論理上、為政者達の破綻を看破するには「憲法違反だ!」の一言で十分足りる。何のことはない。立憲制の国にあり根本法を犯すことは行政、立法にとっては明確な「禁じ手」なのだから。

だが、奴らに正論は通じない。「解釈改憲」などという「反則」を平然と行う連中とは、整然とした論理だけでは戦えない。では何が必要なのか。推測するにそれは恐らく、もっともっと真剣かつ冷徹な「怒り」だ。極普通の生活を送ることすらままならない収入を得る事しか出来ていない非正規労働者、増税により生活苦を強いられている低所得層や、「戦争」に駆り出されることが必至な若年層が、感応しなければ、転落を加速させる「石」は止めることは困難だろう。

そのために一体自分には何が出来るのかを行動しながら考え続けたい。


◎[参考動画]小林節=慶応大学名誉教授、長谷部恭男=早稲田大学法学学術院教授「憲法と安保法制」①(2015年6月15日日本記者クラブ)

▼田所敏夫(たどころ としお)
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「731部隊」の存在を証明した「金子論文」の発見者、奈須重雄さんに聞く!

戦後70年の節目である。さまざまな角度から「反戦」を叫んでいこうと思うのだが、「731部隊の功罪」を暴いていくのにあたり、非常に歴史的な発見をした奈須重雄さん(NPO法人731部隊・細菌戦資料センター理事)に会ってきた。

警備員をしながら、国立国会図書館に通い続けて、「731部隊」の関係者で名前をひたすらに検索、膨大な資料を仕事の合間に探し続けて、2011年夏についに発見したのが、「金子順一論文」だ。

◆元731部隊員の金子順一が東大医学博士論文に記した事実

「金子順一論文」を発見した奈須重雄さん

奈須さんは語る。
「名前と単語で検索するのです。100人以上の名前で検索をかけましたね。博士論文は、国立国会図書館の関西図書館にあるのですが、東京(の国立国会図書館)からは5つ単位で取り寄せることができるのです。勤務はローテーションでしたから、あいまあいまに調べていました。金子論文は、8本まとめて閉じてありました。露骨に人体実験をしていた人などは、論文を隠したと思うのです」

金子順一氏(以下、金子という)は、元731部隊員(1937年~1940年7月)で、敗戦時は防疫研究室員。 戦後、金子は米軍から731部隊の活動について事情聴取を受けている。

『金子順一論文集(昭和19年)』は、東京大学に博士論文として申請され、1949年1月10日に医学博士号が授与された。

金子順一の博士論文は、以下の①(①)ないし⑧の「防疫研究報告」に掲載された8本の論文を合冊して表紙をつけたもので、その表紙には[(秘)]とある。

①(①)「雨下撒布ノ基礎的考察」
②(②)「低空雨下試験」
③(③)「PXノ効果略算法」
④「しろねずみヨリ分離セル「ゲルトネル菌ノ菌型」
⑤「X.Cheopisノ落下状態ノ撮影」
⑥「滴粒ニヨル紙上斑痕ニ就テ」
⑦「X.高空撒布ニ於ケル算定地上濃度」
⑧「火薬力ニ依ル液ノ飛散状況」

上記8本の論文は、「軍事機密」と記された防疫研究報告第1部が7論文と、[(秘)]と記された防疫研究報告第2部が1論文だ。

金子論文が発見されるまで、防疫研究報告第1部で発見されていたものは、平澤正欣の論文他数冊の論文のみであった。

また上記の防疫研究報告第2部第791号は、不二出版から復刻された防疫研究報告第2部の中に入っていない未発見の論文であった。

要するに、旧日本軍は、細菌兵器としてペストを中国にばらまいていたのだ。この一点をもってしても「細菌の研究や人体実験の資料はない」などという政府のその場しのぎのいいわけはとっくに瓦解しているのだ。少なくとも金子論文の中の、「PXノ効果略算法」論文(陸軍軍医学校防疫研究報告第1部第60号)で、731部隊により少なくとも6カ所、細菌戦が行われていたことが明らかになったのだ。

◆2012年には「金子論文」を基に服部良一議員(社民党)が国会で追求

これをもとに服部良一議員(社民党)が国会で追求。2012年8月21日提出の質問だ。以下は質問書の抜粋だ。

————————————————————————-
金子論文の八本の論文のうち、最初に綴じられている「雨下撒布ノ基礎的考察」の「緒言」には、「(前略)部隊ニ於テハ斯カル見地ヨリ既ニ創立以來研究ヲ續ケ、昭和十三年、雨下用法草案トシテ其ノ一端ガ示サレタ所デアル。予ハ昭和十三年秋命ゼラレテ此ノ方面ニ於ケル理論的研究ヲ擔當シ今日ニ到ツタ。此ノ間石井部隊長ノ指導ニ依リ鋭意之ガ基礎實驗ヲ重ネ來ツタガ、顧ミルニ淺學非才何等加フル所ノ無カツタ事ヲ甚ダ遺憾トスル。今般從來ノ成績ヲ總括シテ將來ノ参考トスベキ命ヲ受ケ、此処ニ主トシテ昭和十四年以降ノ實験考察ヲ羅列シ更ニ若干將來ニ對スル希望ヲ開陳シタ(後略)」との記述がある。右の記述は、七三一部隊が細菌戦の実施手段である雨下ないし撒布実験を繰り返して研究開発していたことを推認させる重要な証拠である。

また「PXノ効果略算法」には「第一表 既往作戰効果概見表」があり、同表には、①昭和十五年六月四日に吉林省農安においてペスト感染蚤五グラムを撒布したこと、②昭和十五年六月四日ないし七日、吉林省農安・大賚においてペスト感染蚤一〇グラムを撒布したこと、③昭和十五年十月四日、浙江省衢県においてペスト感染蚤八キログラムを撒布したこと、④ 昭和十五年十月二十七日、浙江省寧波においてペスト感染蚤二キログラムを撒布したこと、⑤昭和十六年十一月四日、湖南省常徳においてペスト感染蚤一・六キログラムを撒布したこと、⑥昭和十七年八月十九日ないし二十一日、江西省広信、広豊、玉山においてペスト感染蚤一三一グラムを撒布したことを示している記述がある。右の記述は、七三一部隊が昭和十五年から昭和十七年にかけてペスト感染蚤を用いた細菌戦を中国国内で実施したことを強く推認させる重要な証拠である。

右のように七三一部隊が細菌戦部隊であり、中国に対して細菌戦を実施したことを強く推認させる金子論文の存在が明らかになった現在、政府は同論文及びアジア歴史資料センターが公開している公文書等を研究対象として、七三一部隊の活動内容を検証する作業を、内外の歴史学等の研究者と協力して開始するべきであると認識するが、政府の見解を示されたい。(http://www.mod.go.jp/j/presiding/touben/180kai/syu/situ377.html
————————————————————————-

◆「金子論文」発見の衝撃──政府が存在を否定していた『細菌実験の資料』が見つかった!

奈須さんは語る。
「農安・大賚でペスト菌がばらまかれたことが初めて金子論文で出てきたのです。政府は731部隊があったと認めているのですが細菌被害や人体実験があったとは認めていないのですから、大きな発見だったと思います」

この金子論文の発掘は、731部隊の研究者たちにも衝撃を与えた。世界中で報道されたのだ。もしも中国人の遺族が起こした731部隊の賠償請求裁判(2007年最高裁は結審。請求棄却)に、金子論文の発見が間に合っていたら、裁判の流れが変わり、結果が変わったのかもしれないのだ。

「服部さんの質問にも政府の回答は『細菌戦の資料はない』とのことでした。今後も、図書館に通って731部隊があったことを文書でもさらに証明していきたい」と奈須さんは語る。

「私たちは活動の一環として、731部隊の関連施設が世界遺産に認定されることを応援しています。アウシュビッツとはいかないまでも、それで世界中の関心をかなり集めるはずです」

世界の戦争の常識では、細菌を空から落とすのは、禁じられているが、日本軍は平気でやっていたことがようやくわかった。戦後70年を迎える今年、大きく731部隊について動きだそうとしている。奈須さんは今もなお、「少しずつ隊員の名前がわかってきていますから、今も博士論文を探しています」と奈須さんは言う。
これからも「731部隊」関連の報道に注目していきたい。

※ 「731部隊映像コンテスト ホームページ」(http://731-vc.wix.com/compe
※ 「当時の新聞記事」(http://www.anti731saikinsen.net/img/nicchu/bunken/kaneko/asahi/20111016asahi.pdf

※[参考資料]『金子順一論文集(昭和19年)』紹介(NPO法人731部隊・細菌戦資料センター)
http://www.anti731saikinsen.net/nicchu/bunken/index.html
※[参考資料]]『金子順一論文集(昭和19年)』(PDF 14MB)(NPO法人731部隊・細菌戦資料センター)
http://www.anti731saikinsen.net/img/nicchu/bunken/kaneko/kaneko.pdf

(小林俊之)

◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日
◎占領期日本の闇──731部隊「殺戮軍医」石井四郎はなぜ裁かれなかったのか?
◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して
◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

戦後70年を憂国と愛国から問う!──内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え 強い国になりたい症候群』

 

 

「かかりつけ薬局」「癌登録」制度導入は百害あって一利なし!

5月21日の本コラム「『医薬分業』や『お薬手帳』で利を得ているものは誰なのか?」でこの制度への疑問を述べた。22日の各紙朝刊は「かかりつけ薬局」制度導入を政府が模索していることを報じた。

共同通信によると、「厚生労働省は21日、全国に約5万7千カ所ある薬局を、2025年までに患者の服薬情報を一元管理できる『かかりつけ薬局』に再編する検討に入った。薬の飲み残しや重複を防ぎ、膨らみ続ける医療費の抑制にもつなげる狙い。患者各人がかかりつけ薬局を決め、どの病院を受診してもその薬局に処方箋を持ち込める環境を目指す。24時間調剤に応じたり、在宅患者に服薬指導したりする機能も整備する。塩崎恭久厚労相が26日の経済財政諮問会議で、将来に向けた『薬局構造改革ビジョン』(仮称)を作成すると表明する。16年度の診療報酬改定で、かかりつけ薬局普及に向けた考え方を反映させる」そうだ。

先の記事で私は「医薬分業により薬の過剰投与が抑制されることはない」と指摘したが、この疑問に答える形で「かかりつけ薬局」制度が準備されようとしているらしい。

◆「かかりつけ薬局」制度で投薬の一元管理が進み「国による個人の監視」は強化される

だが、何気ない記事の中でさらりと言及されているが「かかりつけ薬局」導入の目的は「患者の服薬情報を一元管理」することだ。これは一見合理的で患者本位のようにも受け取られるかもしれないがその実「国による新たな個人の監視」に他ならない。

個人の健康状態や通院、服薬状態が包括的に把握された上での処方は「過剰投与」防止の観点から一定程度は有効だろう。しかしそれを国に管理される理由はないし、これぞ正に秘匿性が高い「個人情報」ではないのか。また「どの病院を受診してもその薬局に処方箋を持ち込める環境」は現状の制度でも全く問題なく行える。処方箋を受け取った患者のほとんどは実質的な「かかりつけ薬局」を既に持っているだろう。

◆医薬をめぐる一連の流れは個人の「健康」に主眼を置いたものではない

ここで厚労省が目指しているのは現状のような「選択的かかりつけ薬局」ではなく「どの病院を受診しても特定の薬局に処方箋をも持ち込まなければならない」制度だ。投薬の一元管理により個人の健康、通院、服薬状態を国が把握しようとするのが真の目的である。

国が目指す「かかりつけ薬局」制度導入の背景には前述の通り、「医薬分業が実質的には過剰投与や薬価抑止にはつながらない」という明白な批判をかわす狙いがあろう。また「医薬分業」自体が厚労省、製薬会社の牽引の元推進され、それに文科省も大学に「薬学部」の新設を促す形で便乗し進められてきた「国策」との背景を見れば、一連の流れが個人の「健康」に主眼を置いたものではないことは明らかだ。

しかし、「医薬分業」は当初「どこの薬局でも処方された薬がもらえるようになります」とその利便性を広報していたではないか。患者にとって最も役に立つと宣伝されてきた「どこの薬局でも」は早々に姿を消して、「かかりつけ薬局」という名の「特定の薬局」へと患者は囲い込まれようとしている。

外資系の製薬会社に勤務する知人によると「薬価」自体が実はかなりあいまいで、発売直後(特許有効期間)の薬は開発費や諸経費で高価だけれども、いわゆる「ジェネリック」になると価格が大幅に下がる。さらに「ジェネリック」の価格であっても利益率は途方もなく高いらしい。「どう転んでも大手製薬会社は儲かる仕組みになっている」と知人は言う。利益率に費えは企業秘密だそうだ。

◆来年1月から始まる「癌登録制」──どう転んでも大手製薬会社が儲かる仕組みは変わらない

一方「癌登録制」が来年から始動することを読者はご存知だろうか。「国立がん研究センター」によると、「『全国がん登録』とは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する新しい仕組みです。この制度は2016年1月から始まります。『全国がん登録』制度がスタートすると、居住地域にかかわらず全国どこの医療機関で診断を受けても、がんと診断された人のデータは都道府県に設置された「がん登録室」を通じて集められ、国のデータベースで一元管理されるようになります」とのことである。

「かかりつけ薬局」強制を前に、来年度から癌患者の情報は国に一元管理されることになる。「癌登録制」には様々導入理由が述べられている。どれもこれも「ああ、そうなのか」と一見合理的にその利点を述べてはいるが、その全てが本音ではないだろう。

完全な私見だけれども、福島原発事故による癌患者増加とその動向を国は「観察」したがっているのではないか。純粋に癌治療の向上を目指すのであればともかく、この議論が原発事故後俄かに盛り上がり、ほとんどの国民が認知しない中で来年早々に導入されるのはあまりにもうさん臭くはないか。福島だけでなく食物の流通により内部被曝は全国に拡散している。その結果を探りたいのではないのか。

医療と、製薬・薬局業界は利にまみれている。彼らの本音を見抜いておかないと我々は必ず美名を冠した制度の犠牲者となろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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第3回「前田日明ゼミin西宮」──田原総一朗氏を迎えて聴衆120人の大盛況!

6月7日ノボテル甲子園で前田日明ゼミ第3回目がゲストにジャーナリスト田原総一朗氏を迎え約120人の聴衆が参集し行われた。

前田氏は冒頭、前回ゲストの孫崎享(うける)氏が「安倍首相は戦後最悪の売国奴」と看破したことに驚き、「様々調べたところ、年金原資の25%が株式購入に充てられていること、また日銀も年間3兆円株式を買っている。日本の国債発行残高は1200兆円あるが、そのほとんどは現状郵貯などが引き受けているので、実はそれほど心配ないが、2018年からはルールが変わり格付けの悪い国債を金融機関が引き受けることが禁止される。そうなれば国家予算が組めるだろうか。東京オリンピックなんてできるのかと思う。アベノミクスの本質は実はとんでもないモノかと気がついた」と語った。

田原総一朗さんと前田日明さん

◆小選挙区になってから自民党の中に反対勢力が居なくなった(田原氏)

次いで田原氏が「自民党が変わった。中選挙区時代は自民党の中に主流派、非主流派もあった。ところが小選挙区になってから自民党の中に反対勢力が居なくなった。先日憲法に関する自民党推薦の有識者参考人が3人とも『自衛隊の集団的自衛権は違憲だ』と予想外の発言があった。かつてなら反主流、非主流派からごうごうたる非難を浴びているはずだ」と述べた。田原氏は「自分も当時は中選挙区制は金がかかり過ぎるから小選挙区に賛成した」とも述べた。

田原総一朗さん

◆立派だと思った政治家は鈴木宗男と亀井静香くらいだった(前田氏)

休憩を挟んだ質疑に移ると前田氏は会場から「前田さんは自身が将来政治家になるつもりは?」との質問に「5年間、民主党を応援したが、正直政治家には魅力のある人が少なかった。立派だと思ったのは鈴木宗男と亀井静香くらいだった。今やろうという気にならないですね」と述べた。

田原氏は参加者から寄せられた「小選挙区」に関する質問に回答を試みたが、的を得ないと感じたので私は「小選挙区で金がかかるのは自民党だけの話しではないですか」と問いかけた。

「小選挙区導入議論の際に今日語られる弊害が予想されたので、大きな反対があったが、何故賛成されたのか」と質問した。回答は「今は小選挙区制は間違っていたと思う」とお答えを頂けた。

田原総一朗さんと前田日明さん

次の予定があり田原氏は懇親会に参加なさらなかったが参加者にとっては濃密な時間となった。

次回ゲストは前田氏が尊敬する政治家と称賛した、鈴木宗男氏との発表が懇親会の席であった。

写真左から鈴木邦男さん、田原総一朗さん、前田日明さん、松岡利康=鹿砦社代表(前田ゼミ開始前の昼食兼打ち合わせの席にて)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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