イオングループが不振であるようだ。日本経済新聞(2015年1月9日付)によると「価格政策など消費増税後の対応を失敗した」(岡崎双一=イオン専務執行役)そうで、「消費者の支持を得られなかった」という。結果、食料品や衣料品などを幅広く扱う総合スーパー(GMS)事業の不振からイオンの連結営業利益は493億円と前年同期から48%減少。連結対象に加わったダイエーの業績悪化も響き、営業損益で289億円の部門赤字(前年同期は65億円の黒字)を計上した。

◆「AEON」増殖風景の気持ち悪さ

それにしてもあっという間に「AEON」の看板や店舗が日本全国にあふれるようになった。イオンは「イオンモール」を経営する「イオン株式会社」もと「イオンリテール株式会社」が中核をなす。大型ショッピングモールを経営するのは「イオンモール株式会社」で、スーパーマーケット等小規模店舗を経営するのが「イオンリテール株式会社」である。

同社のHPによると、営業収益6兆3951億円(3期連続で日本小売業営業収益NO.1)で、モール型店舗は国内外で168、小型店舗は611に上るという。「イオン」を名乗らないけれども「TOP VALUE」や「ダイエー」と言った小売店も資本系列としてはイオン傘下なので、全国に展開する「イオン」関連の店舗数は数を数えるのが難しいほどだ。

元は「ジャスコ」の名前でさほど派手な印象はなかった「イオン」だが、大規模「イオンモール」を全国に展開し始めてから俄然存在感が高まった。当初は土地の安い都市部から遠隔地に大規模モールを建設し、専ら自動車利用の顧客中心の店舗展開だったが、その後駅前など利便性の高い場所への出店も相次ぎ、「営業収益6兆3951億円」企業へと成長した。

関連会社は、銀行から保険不動産まで。財閥の体をなしてイオンであるが、その増殖振りはやや気持ち悪い。

長距離移動の電車に乗れば10分とおかず、車窓からは「イオン」の名前が目に入って来る。そしてイオンモールを訪れると、どの店も同様の仕様で建築されていて、専門店街に入っているテナントの種類も大差ない。

専門店街テナントは高級ブランドというわけではなく、価格的には中間層のやや上から低所得者層を想定しているようだが、平日に訪れると、イオン自体はともかくテナントに集まっている客がことのほか少ないことが分かる(程度の差こそあれ私が訪問した10店舗ほどのイオンモールは全国いずれもそうだった)。

聞くところによるとテナントとして入るにはかなり厳しい審査があるほか、テナントで働く人々への管理も相当うるさいらしい。更にテナント料が高く、一度は出店したものの、収益が期待期待できず撤退するテナントが後を絶たない。

まあ、それは「イオンモール」内のいざこざだ。本質的な問題はこのように巨大かつ画一的な「ショピングモール」が出来てしまえば、個人商店など到底太刀打ちできないことだ。東京、大阪といった大都市でも駅前商店街には閉店した店が並ぶ。地名を上げて申し訳ないけれども、岐阜などは駅前商店街がほとんど死滅状態だ。

◆つくづく感じる「資本の寡占」

個人商店の危機は深刻というレベルを通り越している。かつて「ダイエー」が栄華を誇った時代に、ダイエーの発祥の地である神戸では「ダイエーが神戸を壊した」と言われた。安価な大規模小売店は商店街や個人商店を直撃し多くの商店主が職を失った。しかし皮肉なことに飛ぶ鳥を落とす勢いで中国進出を本格的に画策していた「ダイエー」は経営破綻に陥りイオンの傘下に収まっている。近く「ダイエー」という屋号も消えるという。

コンビニエンスストアチェーンや「イトーヨーカードー」そして「イオン」を見ていると、何かしら「画一的な購買」しか許されていないような気がしてくる。

品ぞろえは確かに豊富だろうし、価格だって大量仕入れだから高い訳ではない。価格では個人商店より確実に優勢だ。

でも、顔見知りの魚屋さんで、おやじに「今日は何がいい?」と聞いたら「今日はハマチがええよ、お造りでばっちりや」、「ほなそれ貰うわ」といったやり取りや、こちらの嗜好とと懐具合を知り尽くしている店主に「お勧めを」任せられるような買い物は大型店では出来ない。イオンモールのような「怪物」が続出すれば、地域に根付いている商店文化も壊滅してゆくだろう。

資本の寡占が進むというのはこういうことだと「AEON」のロゴを目にするたびに感じる。商店街が懐かしく思い出される。

私たちの生活は本当に便利で、豊かな方向に向かっているのだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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